水曜随想 がれき処理苦悩 元凶は国


佐賀県玄海町の集会で原発ゼロを呼びかける田村氏=3月11日

 「原発の事故以来、うちの年頃の娘が魚を食べなくなりました」。北九州のつどいでこんな声が出され、はっとさせられた。母体を重んじる本能的な自己防衛。ガイガーカウンターでは「安全」とされても、測定できない放射線もある。低濃度の放射線被爆がとりわけ子どもたちにどういう影響を与えるのか、それは未知数ゆえに「がれきは受け入れないで」との声は、痛切な叫びである。

 昨年、宮城県でがれきの山を何度もこの目で見た。想像を絶する量。それをコンクリート塊、廃材、鉄などに分別し、処分していく。気の遠くなる年月を予感させた。「時間をかけてでも現地で」という意見もあるが、津波で肉親を失った遺族に、悲しみの象徴をいつまでも放置することはできない。岩手、宮城のがれき処理はまだ数%である。

 では、広域処理問題をどうするか。処分の条件が満たせば、放射性廃棄物でないものに限って受け入れる。この立場の自治体が広がっている。

 北九州市が1キログラムあたり100ベクレル以下の基準で、がれき受け入れを検討している。同じ基準で実験焼却した静岡県島田市の焼却灰の放射性物質は64ベクレル(国基準は同8000ベクレル以下)であり、通常の作業内で推移している。

 でも、数の大小問わず「不安」の声を大切にしてほしい。処理の各段階での放射線レベルの測定と結果の公開、安全確保のルールづくりを国と自治体が定め、住民に丁寧に説明してゆくことが何より求められる。

 それにしても政府のふがいなさ。責任と方向性をこの一年示さなかった。住民の苦悩の元凶は国にある。だからこそ、がれき受け入れの是非が、原発ゼロを目指す人たちの対立であってはならない。

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“新・九沖(きゅうおき)”豆知識④

日照時間が一番長い県は?
①宮崎県 ②鹿児島県 ③沖縄県

答え→①