エッセイ

水曜随想 田村貴昭 「自然の警告 聞こえぬか」

IMG_3205-768x514_002 緊急地震速報のけたたましい音で飛び起きた。スマホをみれば震源地は福島。数十秒して地震がきた。東京の議員宿舎、私の部屋は21階にある。ゆらり、ゆらり、建材がギシギシと音を立てる。船か、桟橋にいるような横揺れが長く続き、恐ろしかった。

 

 現地では、警報サイレンが鳴り、「早く逃げてください」のアナウンスが流れる。東北の人は、5年前の出来事が頭をよぎっただろう。これでおさまることを願いつつ、より大きい地震の再来の可能性もある。熊本地震の教訓だ。

 

 数メートル級の津波が押し寄せれば、死傷者も出るかもしれない。南スーダンに自衛隊を派遣している場合か。第一陣派遣の大半が東北の駐屯地所属の隊員だ。郷里の地震をさぞかし心配していることだろう。

 

 福島原発の映像が、テレビで映し出される。もし震度5が7だったら、それ以上だったら、原子炉建屋は、汚染水タンクは・・・想像するだけで恐ろしい。これだけ地震が多発しているにもかかわらず、政府は全国で原発を稼働させ、使い続けようとしている。歴史の教訓を学ばないことに、心底憤りを覚える。

 

 地震、台風、大雪、大雨など、今年は14もの大きな災害が日本列島を襲った。家屋の損壊は18万5766棟に上る。しかし、安倍政権は、被災住宅の再建支援を拡充せず、一部損壊への支援要求にも耳を傾けようとしない。

 

 安倍首相には、自然からの警告が聞こえぬか。防災、減災、災害対策はまだまだだ。警報やサイレンを一番鳴らさなければならないのは、今の政治である。

(しんぶん赤旗 2016年11月23日)

水曜随想 「共闘いっそうホットに」 衆議院議員 田村貴昭

福岡6区補選 新井候補の事務所を訪れ、懇談する田村衆院議員

新井ふみ子候補の事務所を表敬訪問し、選対スタッフと懇談する田村衆院議員

 暑くもなく、寒くもなく、気持ちのいい月曜日の朝であった。加えて、新潟知事選挙で原発再稼働に反対の米山隆一さんが勝利。福岡・宗像市議選も3候補全員当選。門司駅前(北九州市)での朝宣伝に集まった仲間たちもー様に「よかったねぇ」。マイクは軽く、気持ちのいい訴えとなった。
 
 新潟で共産党がいかにがんばったか、応援に行った同僚議員から聞く。「次期衆院選へ共闘加速」。産経新聞の見出しだって躍っている。民進党が自主投票だったことから、「共産存在感 民進ちぐはぐ」とまで。実際は、民選党代表も国会議員も応援に入ったのだが、誠実に共闘を呼びかけて、支援に全力を尽くす共産党の存在感は誰の目にも大きかった。
 
 ところ変わって福岡6区衆院補選。立候補を辞退した共産党の小林とき子さんが、新井ふみ子候補のポスターを手にして全力支援。その姿がテレビニュースで放映された。自(おの)ずと共闘は発展する。19日には野党そろい踏みの演説会開催となり、志位委員長が駆けつける。
 
 私も参加した党の演説会では、民進党の国会議員がかけつけ野党共闘を強調。新井さんの事務所を訪問したら「共産党さんのおとなの対応に感謝しています」。共闘の進化が確認できた。うん、安倍政権打倒にはこの道しかない。
 
 エアコンいらずの快適な気候はあっという間に過ぎてゆく。寒くて厳しい季節の到来だ。しかし、野党共闘にもはや冷え込みはない。いや決して冷え込ませてはならない。市民と一緒にすすめるさわやかな共闘、気持ちのいい訴えは、息が白くなっても続いていく。いっそうホットに。(しんぶん赤旗 2016年10月19日)

水曜随想 「真の備えとは何か」 

DSC_0215_02 毎日タマネギを1個食べるという知人が、価格高騰に嘆いている。生産量日本一の北海道が台風で、2位の佐賀県が「べと病」で記録的不作になったからだ。「だからTPPが必要だ」という声が聞こえてくる。違うだろう。こんな時だからこそ、備蓄・自給率の向上と価格保障で安心の農業に切り替えるべきではないか。
 
 東日本大震災でも熊本地震でも、復興の要となる自治体の職員が決定的に足りない。「派遣要請はしているのですが‥」。地震と豪雨で甚大な被害を受けた熊本県の首長の悩みを聞いた。合併と「行革」で職員を大幅に削減してきたツケがまわっている。それでも「公務員減らせ」という政治家と政党に言いたい。まず被災現場を見てこいと。
 
 「備えあれば憂いなし」といって、有事法制を強行した首相がいた。この国の「備え」は武力行使につながる軍備増強。それは憂えにつながるものでしかない。先日、街頭演説していたら、自衛隊車両から手振りが数回寄せられた。彼らは安保法制に困惑している。災害救助でかけがえのない役割を果たす隊員の命を戦争で奪うな。
 
 老後の備えはどうか。安倍政権は、年金積立金の株式運用を倍増させ、4~6月期だけでも5・2兆円もの巨額の損失を出した。それだけでも辞任に値する。そして病床数を削減し、要介護1、2は介護給付から外す計画など、社会保障は大改悪の一途だ。
 
 憲法を実践すれば、安心の備えはおのずと形成されるが、自公政権には憲法が眼中にないから、アペコベ政治となる。
 
 先の参院選を頂点に野党共闘は大きく前進。政策的一致も格段に広がった。暴走政治にとって代わる備えはできつつある。
 
 もうすぐ臨時国会がはじまる。真の備えとは何か。国民は何を憂えているか―この夏聞いたたくさんの地方の声を、住民の思いを政府にぶつけたい。(しんぶん赤旗 2016年9月14日)

熊本地震 避難生活改善ただちに (1)

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 4月14日午後9時21分、そのとき私は東京にいました。熊本で震度7の地震発生、緊急事態です。熊本となかなか電話がつながりません。「倒壊家屋がおそらく数百はあろうか・・・」。いち早く益城町にいち早く入った熊本県議の山本伸裕さんからの情報で地震と被災の大きさを知りました。

 すぐに小池晃書記局長から電話がかかって「明日、現地入りしてほしい」。防災服に着替え、夜が明けるのを待って羽田空港へ。そして、福岡空港から真島省三議員と一緒に被災地に向かいました。

 

 案内してくれた益城町の甲斐支部長宅は、家は難をのがれたものの、転倒・落下物で足の踏み場もない状態です。被災者を見舞ったら「ヘリコプターの音で防災無線が聞こえない」と言われ、すぐに役場に行って町長に伝えました。被災地域で見聞きしたことを刻々東京の対策本部に伝え、一日を終えました。復興には相当の時間がかかるなと考えていたら、16日の深夜1時25分、さらに大きな本震が襲いました。

 

 震度7の大地震が2度起き、震度6や震度5を含む連続的な地震という経験したことが震災です。災害関連死を含め69名の命が犠牲となり、8万戸を超える住宅が損壊しました。平穏な生活が一瞬にして、悲しみと恐怖の世界にとってかわりました。仕事と生業を失った方は数知れず、世界に誇る阿蘇の美しい山肌が崩落、熊本の観光資源も大きく傷つきました。

 

 いまだ調査の段階ですが、全壊・半壊の住宅は全県で約1万7千棟、西原村では住家の35%が全半壊です。今も1万人近くの被災者が厳しい避難生活を強いられています。

 日本共産党国会議員団は、5月12日、河野太郎・非常災害対策本部長(防災担当相)に対し、現時点で解決が求められる問題について5つの柱で政府に対策をとるように要請しました(別項)。その第1は、避難所をはじめとした被災者の生活環境の改善です。

 

劣悪な避難所の環境

 

 5月16日の衆院予算委員会では、震災後1カ月たった避難所の劣悪な実態を取り上げました。熊本市の避難所では、主食はおにぎり・カップ麺、おかずは缶詰・レトルト食品の繰り返しです。「野菜が食べたい」「弁当など一度も出されたことがない」という被災者の声が耳にこびりついています。こんな食事では体を壊します。総理、大臣、毎日そんな食生活が耐えられますか? ――そんな気持ちで質問に立ちました。

 熊本市の「物資搬送依頼書」では、インスタント食品しか注文できない仕組みになっています。“動かぬ証拠”を示しての改善要求に、内閣府は20日、「避難所における食生活の改善」通知を出しました。通知ではバランスのとれた食事の提供とともに、炊事場や栄養士を確保することまで求めています。この通知に基づく改善を一食でも早く実現させねばなりません。

 

 環境も劣悪です。市内にある国の合同庁舎の会議室には約60人が避難していますが、湯茶の用意さえなく、エアコンが故障中で昼間の室温は29・6度もありました。「家も仕事も失った被災者にお茶の1杯も出せず、扇風機の1つも配置できないのか」と追及しました。

 政府は4月15日に「避難所などの生活環境の整備等について」という通知を出しています。そこでは、プライバシーの確保、暑さ寒さ対策、入浴、洗濯の機会確保、適温食の提供と栄養バランスの確保、高齢者や病弱者への配慮、福祉避難所の設置などを実現することとしています。しかし被災地の実態は、政府の言う「きめ細やかな支援」にはほど遠いのが実情です。IMG_3205

 

 プライバシー対策の仕切りや更衣所が整っていない避難所。人権にかかわる問題です。、政府に「期日を明確にして、通知に基づく生活改善を早急にやりあげるべき」主張。河野担当相は「ニーズに沿った環境改善に努める」と答弁しました。これから気温があがり、梅雨の季節を迎えます。冷房、防虫対策、熱中症・感染症・食中毒への予防対策など、被災者の生活環境改善のためのいっそうの努力が必要です。

 そんななか、熊本市は市内188カ所あった避難所を21カ所の拠点避難所に移転・集約する計画を進めています。「住む家もないのに出て行けというのか」と怒りの声があがりました。被災者の実情と要求に即した避難所の整備と被災者の環境改善へ、草の根の運動が求められます。

 

(福岡民報 2016年6月号 No.1651号)

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熊本地震 避難生活改善ただちに (2)

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「天井がこわい」――今も続く地震

 

 今も活発な地震活動が続いています。発災から1カ月以上たった今も地震が収束せず、5月20日現在で、震度1以上の体に感じる地震の回数は1600回を超えています。避難所にいる方に加え、多くの被災者が車中泊、テント泊、損壊した自宅での「避難」生活を余儀なくされています。

 「ずっと船に乗っている感じ」。そんな感想を聞きました。「家に帰るのがこわい」「天井のないところで寝たい」という声を各地で聞きました。地震が収束せず、被害家屋や被災者の被害の実態もまだつかめない。それが熊本地震の特徴であり、難しさがあります。

 

支援金を500万円に。住宅再建に公的支援をDSC05579

 

 住宅の再建は、被災者の生活と被災地の復興の基盤であり、生活再建への希望がもてるような支援が求められています。かなりの規模での仮設住宅の建設が必要ですが、一部の自治体でようやく着工されたところです。用地の確保をはじめ、仮設住宅建設への支援の強化が必要です。
 5月13日、共産、民進、生活、社民の野党4党で、災害で被害を受けた住宅再建などに対する支援金の上限を300万円から500万円に引き上げる「被災者生活再建支援法改正案」を衆院に共同提出しました(写真)。被災地では「300万円はありがたいが住宅の再建にはまだ遠い」と、拡充を望む声を数多く聞きました。わが党がかねてから要求してきたことが、共同提出に至ったことは大きな前進です。何としても可決して、被災者の願いにこたえたいと思います。

 

 企業が被災したため、解雇・休業も相次いでいます。震災にともなう労働相談は1万件を超えました。就労支援、緊急雇用対策の具体化も急がれます。また、熊本県をはじめ被災自治体からは「10分の1が地元負担という激甚災害制度では予算を全部注ぎ込んでも復興できない」という痛切な声があがっています。「財政負担」への不安で、復興に取り組むことができない状況に陥ることは絶対に避けなければなりません。

 「熊本地震災害に対する申し入れ」を行った翌日、地元紙の熊本日日新聞は「復旧・復興は、全額国庫負担で」というわが党の提案を取り上げ、河野防災担当相が「しっかりやる」と応じたことを報道しました(5月13日付)。

 

Ch1a6eCUoAA9E7Z 熊本の被災地には志位委員長、小池書記局長、藤野政策委員長、そして、仁比議員、真島議員をはじめ、多くの共産党国会議員が入っています。現地の要求、たたかいと結びつけて、復旧・復興への提案、国会質問に結びつけています。衆参で躍進した国会議員団のチーム力、機動力を実感しています。

 私も発災後、熊本に10回、大分に2回足を運び、被災者の声を政府に届けて活動してきました。「やっぱり最初に来てくれたのは共産党だった」「本当に頼りになるばい」。そんな声を避難所で何度となく聞きました。集落移転がとりざたされる南阿蘇の立石地区へ連休に伺ったら、「初めて政治家がきてくれた」と商店主からたいへん感謝されました。

 人々の苦難あるところに出かけ、その解決に知恵と力を注ぐ――日本共産党の活動の真骨頂を実感する日々。一日も早い復旧・復興へ全力を挙げる決意です。

 

 福岡県党と各地区委員会、議員(団)が、被災地支援でかけがえのない役割を果たしています。新幹線と高速道路が不通の中、本震の直後から被災地へ水、食料、物資を届けて大奮闘。熊本の被災者を励まし、たいへん喜ばれています。改めて敬意を表します。

 災害復旧、生活と生業の再建には、長い年月がかかります。九州は一つ。被災者と被災自治体に寄り添って、支援の力をお互い発揮してゆきましょう。

 

 

※別項 熊本地震災害に対する申し入れ(第3次=5月12日発表)日本共産党国会議員団

1 被災者の命と健康を守るために、避難所をはじめ被災者の生活環境を急いで改善する

2 必要な仮設入宅を早急に建設する

3 住宅再建に対する公的支援を実態に合わせて抜本的に強化する

4 中小業者、農業、観光など、事業者が受けた大きな打撃から立ち上がることができるようにする支援や雇用を守るための必要な支援を行う

5 復旧・復興は、全額国庫負担で行うことを明確にして、被災自治体が、被災者の生活再建と復興に全力をあげられるようにする

(熊本地震に対する申し入れ全文はコチラ)

(福岡民報 2016年6月号 No.1651号)

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