種苗法「改正」の問題点 田村貴昭衆院議員に聞く(中)

企業参入の拡大狙う

 
―農林水産省は、自家増殖の許諾料は高くないといいますが?
 
 許諾料は、開発者しだいです。農水省は「高額にすれば買う農家が減るからそれほど高くならない」といいます。しかし、本当にそうでしょうか。
 
 私は北海道で、病気を防ぐ青い蛍光色の薬剤が塗られたヒマワリの種を見ました。生産元をみると、シンジェンタ社という会社でした。同社は、種苗・農薬の販売で市場の寡占を進めるバイオ大企業です。同社の種を買うしか方法がなくなれば、価格はつり上がります。
 
 実際、トウモロコシや野菜ではハイブリッド技術による一代雑種が席巻し、農家は毎年、農業関連企業(アグリビジネス)から種を買わなければならなくなりました。農家からは「負担が重い」という声も上がっています。
 

育成者の権利を強化

 
―自家増殖の禁止は、農家負担の増加のほかにどんな問題をもたらしますか。
 
 農家から種の権利を奪い、農家を単なる種苗の消費者にしてしまうことです。
 
 実は、作物が日本各地の風土に合った品種へ改良されながら、現代まで引き継がれてきたのは、農家の営みのおかげなのです。
 

 
 だからこそ、国際条約でも、育成者の権利を守る一方で、農家の種の権利をはっきりと認めているのです。
 
 国内法でも、現行の種苗法は、新品種を開発した人の権利と農家の種を採る権利のバランスをとっています。今回の「改正」案は、このバランスを崩し、農家の権利の犠牲のうえに、育成者の権利を一方的に強化する内容になっています。
 

種子法廃止と一体で

 
―「改正」のほんとうの狙い、背景にあるものはなんですか?
 
 政府はなぜ、自家増殖の禁止にこだわるのでしょうか。それは、2018年の主要農作物種子法(種子法)の廃止とセットで考える必要があります。
 

 
 安倍晋三前首相は、13年の施政方針演説で、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すと宣言しました。その農業版が「攻めの農政」です。
 
 「農業の企業化」を進めようというこの路線のもとで、安倍政権は17年4月、わずかな審議時間で種子法の廃止を強行しました。理由は、「国の研究機関や各県の農業試験場などの公的機関があると、民間の種苗会社が参入できないから」というものでした。
 
 それと同時に、公的機関がもつ種苗生産の知見を民間に提供しなさいという「農業競争力強化支援法」が成立しました。
 
 つまり、民間企業が種苗でもうけるには、農家に種を安く提供する公的機関がじゃまだったのです。その次にじゃまになるのは農家の自家増殖だというわけで、今回の「改正」を狙っています。
 
 17年12月の知的財産戦略会議で、農水省ははっきりと「自家増殖が種苗開発への民間参入の障害になっている」と述べました。
 
 つまり、自家増殖は原則禁止にして、登録品種の種子はすべて種苗会社から購入させる仕組みを整えることが今回の法「改正」の狙いです。(しんぶん赤旗 2020年11月6日)