コロナ禍の中の自公農政 日本共産党国会議員団農水部会長 田村貴昭衆院議員に聞く(下) 持続可能な農業めざして 家族農林漁業の振興こそ

衆院の岡田憲治事務総長(左から3人目)に新品種育成・在来品種保全へ法案を提出する野党議員。左端は田村議員=11日、国会内―先の国会では、環境問題も大きなテーマとなりましたね。
 
田村議員 政府は3月、有機農業の面積を2050年までに現在の0・5%から25%へ拡大する「みどりの食料システム戦略」を発表しました。
 
 有機農業の関係者は、あまりに高い数値が唐突に示されたことに困惑しました。また、その内容も、これまで長年積み上げられてきた有機農業の取り組みを無視し、ドローンやロボット、農薬の開発などの「イノベーションで実現」などとされていたのです。
 
 有機農業に取り組んでこられた研究者の方は、「自然の生態系の中で作物の持つ生命力をどう引き出すかという有機農業の思想からかけ離れている」と、意見を寄せてくださいました。私は国会でそのまま紹介しました。
 
 千葉県いすみ市では、学校給食を100%有機米にする目標を立て、地域の生産者、関係者の努力によって達成しています。このような取り組みこそ、国が応援すべきです。
 

低すぎる政府目標

 
―農林漁業における地球温暖化対策も重要な課題ですね。
 
田村議員 今年8月公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書」は、今後20年間で1・5度以上の気温上昇(産業革命前比)が起きると警告しました。このままでは、異常な高温や豪雨などがさらに激化し、悪化を止められない破局的な事態に陥りかねません。
 
 政府は昨年、ようやく50年までに温室効果ガス排出ゼロを表明し、30年までに46%削減(13年比)を打ち出しました。しかし、目標が低すぎます。国会に参考人として出席した大学生は、この数値を「あなたたちの未来と命はないとの宣告だ」と発言しました。その通りです。
 
 ところが、国土の約7割を占める森林では、環境対策とは逆のことが進行しています。
 
 政府の林業政策は、伐採施業を集約化、大規模化、機械化してコストを下げ、木材生産量を拡大しようというものです。高性能林業機械の導入を促進するために、機械を山へ入れる作業道をつくる費用を支援したりしています。
 
 その結果、今、全国の山中では、見渡す限り伐採する「皆伐」が行われ、うち7割が再造林もされず放置されています。これでは、今は樹木として蓄積されている炭素を、森からどんどん放出するだけになってしまいます。
 
 また、斜面をジグザグに切ってつくった大きな作業道は、雨が降ると川になって崩れます。谷筋にたまった土砂は、大雨が降ると水をせき止めるダムになり、土石流を招きます。川に流れ込んだ土砂で河床が上昇し、下流域の洪水のリスクが増大します。
 
 熊本県球磨(くま)川流域の豪雨被害を調査したNPO法人自伐型林業推進協会は、球磨川集水域で少なくとも180カ所以上が崩れ、うち9割以上が皆伐地の作業道だったと報告しています。
 
 私は、災害を招くような政策を改め、小規模であっても森林を守り育てながら間伐を続ける環境保全型の「長伐期・多間伐施業」を中心に据えるべきだと訴えてきました。
 

共産党の大躍進で

 
―まもなく総選挙です。どう臨みますか。
 
田村議員 農林漁業の効率化、大規模化、IT(情報技術)化によるコスト削減を偏重する政府の政策は小規模な農林漁業者を圧迫し、農村を荒廃させています。環境対策とも矛盾します。
 
 今年は、国連が定めた「家族農業の10年」の3年目です。小規模な家族農林漁業こそ、経済的、社会的、環境的に持続可能な形態であるとして、各国の農業政策の中心に位置づけるよう呼びかけています。
 
 日本の農林漁業政策も、そうした方向に大きく転換しなければなりません。脱炭素と結びついた、小規模な家族農林漁業の振興を本格的に進めるため、日本共産党を大躍進させたいと思います。おわり(しんぶん赤旗 2021年9月11日)