被害者切り捨て、加害企業免罪の与党「特別措置法案」は撤回し、すべての水俣病被害者の救済を/日本共産党国会議員団の提言(全文)

被害者切り捨て、加害企業免罪の与党「特別措置法案」は撤回し、すべての水俣病被害者の救済を

2009年3月24日 日本共産党国会議員団

 与党は議員立法で水俣病「特別措置法」を3月13日に衆議院に提出しました。日本共産党は、その重大な問題点を指摘するとともに、真の解決策を提言するものです。

(1)水俣病は終わっていない―最高裁判決と被害者救済の到達点

(1)被害の全貌をつかむことなしに真の解決の道はない

 「公害の原点」水俣病が公式確認されて、53年を迎えます。

 2004年10月、最高裁判決は、水俣病の発生と拡大の責任が、チッソはもとより、国・県にもあると断罪し、感覚障害だけで水俣病と認めました。

 
公害健康被害補償法認定申請者、訴訟原告、新保健手帳交付者、医療費受給者と、1995年の政治解決時の救済者だけで4万数千人にのぼり、これは水俣市、
出水市などの公健法指定地域の人口約13万人の3割になります。いまなお、不知火海沿岸でも新潟水俣病の阿賀野川流域でも声を上げられないでいる被害者が
多数おり、水俣病被害の甚大さ、深刻さを示しています。胎児性や、小児性の世代へも広がっています。水俣病は有機水銀による人類史上類例のない未曽有の公
害であり、被害の全貌(ぜんぼう)をつかむことなくして真の解決の道はありません。

(2)政府が最高裁判決で断罪されたにもかかわらず、「解決」のためにまともな方策をとっていない

 だからこそ、熊本県は最高裁判決直後、不知火海沿岸に居住歴のある47万人すべての健康調査を提案しました。しかし国・環境省はこれを拒否し続け、最高裁判決で断罪された認定基準(昭和52年判断基準)に固執し、被害者を放置してきました。

(2)被害者切り捨て、チッソ免罪―与党「特別措置法案」の重大な問題点

(1)水俣病被害者を分断し、大量に切り捨てる与党案

 与党の「特措法案」は、最高裁判決で国と県の責任が断罪されたにもかかわらず、加害企業チッソとともに国・県、とりわけ国の加害責任とそれにもとづく補償という根本問題を不問に付しています。

 
「特措法案」は、政府が最高裁判決で否定された認定基準に固執しているため別の枠組みをつくりましたが、調査対象を約1万人に絞り込んだ政府の調査です
ら、認定申請者や保健手帳保持者の三分の二が救済の対象外となり切り捨てられます。さらに救済措置を受けるには、主治医ではなく政府が指定の「公的診断」
が必要であり、ここでも切り捨ての懸念があります。しかも認定申請者、訴訟原告は救済措置の対象から除外され、公健法にもとづき認定申請をすることも憲法
で保障される裁判をする権利も認めないなど二重、三重の被害者切り捨てになっています。

(2)水俣病問題の幕引きを図る「地域指定解除」は許されない

 「特措法案」は、3年以内を目途に被害対象者を確定し、その後公健法にもとづく地域指定を解除するとしています。しかし、これは、水俣病問題を強引に幕引きしようとするもので到底許されるものではありません。

(3)チッソの「分社化」は加害企業を免罪するもの

 
「特措法案」は、チッソから事業収益をあげる新会社を「分社化」し、チッソ本体はその支払い能力(保有する新会社の株式売却)の範囲でしか責任を負わない
とするものです。今後の補償やこれまでの加害責任を果たすためにチッソが国から支援をうけてきた債務返済ができなくなれば、国が税金で肩代わりすることに
なります。いずれチッソ本体は消滅することになります。これは加害企業としての社会的・地域的な責任の免罪そのものです。

 公害患者をは
じめとした人々の命がけのたたかいによって築かれてきた「汚染者負担の原則」を事実上骨抜きにし、企業の利益最優先、公害と環境・健康破壊の加害者責任を
後退させるスキームを、我が国の被害者救済制度に持ち込むことは、水俣病問題にとどまらず将来に禍根を残す重大問題です。

 与党の「特措法案」は撤回すべきです。

(3)最高裁判決にもとづき、加害企業、国・県の責任で、水俣病被害者の救済、水俣病問題の真の解決を

 日本共産党は、すべての水俣病患者・被害者の救済、水俣病問題の真の解決のために以下の点が大事だと考えます。

(1)健康調査、環境調査の実施ですべての被害者の救済を

 すべての被害者を救済するために不知火海沿岸、阿賀野川流域の住民の健康調査、環境調査を実施し、水俣病被害の実相を明らかにするべきです。

(2)被害者切り捨ての国の認定基準の見直し

 被害者を切り捨ててきた国の認定基準(52年判断条件)を最高裁判決基準に見直すべきです。

(3)最高裁判決をふまえ、司法救済システムを確立する

 最高裁判決をふまえ、裁判所の判断による司法救済システムを確立することです。

(4)国の責任で恒久的な被害者救済策を策定する

 
(1)国は、確定した司法が示した基準にもとづき、主治医の診断で水俣病と認めること。チッソ、昭和電工、国、県の法的責任にたって、司法基準に沿った、
被害にみあった一時金、療養手当、医療費を支給すること。(2)期限を設けず、水俣病被害者を最後の一人まで救済する恒久的な救済策を策定すること、など
の抜本的な対策を求めます。