190-衆-総務委員会 ”一極集中”是正策たてよ 衆院委 田村貴昭氏 地方活性化提案

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

総理、私からは、東京圏への一極集中の是正について質問したいと思います。

 総務省の二〇一五年の人口移動報告によりますと、東京圏、埼玉、千葉、東京、神奈川、この転入超過が十一万九千三百五十七人となりました。東京圏への転入超過は二十年連続で、東京一極集中に歯どめがかからない状況となっています。
 まち・ひと・しごと創生総合戦略では、東京一極集中の是正として、二〇一三年を起点に、東京圏から地方への転出を年間四万人増加させ、地方から東京圏への転入を年間六万人減少させて、二〇二〇年時点で東京圏から地方への転出、転入を均衡させるとしています。しかし、現状はそうなっていません。
 資料をお配りしています。をごらんいただきたいと思います。

(委員会配布資料はコチラ)

 住民基本台帳をもとにした東京圏転出入の推移についてグラフにしました。政府の目標では、二〇一三年から転入超過数は下降するはずでありました。しかし、この破線の赤に至らず、青の線のように上昇を続けているわけであります。
そこで、総理に伺います。
 この推移についてどうお感じになっておられますか。二〇二〇年までに均衡させる目標、これはかなり厳しいのではないでしょうか。


 

○安倍内閣総理大臣 確かに、この東京一極集中の流れを変えるというのは、そう簡単なことではないわけでございます。
 他方、東京に住んでいる方々の中でも、約四割の方々が、仕事があれば地方で住みたいという希望を持っておられる方々がいるのも事実でございまして、そういう方々の希望が実現されるような状況をつくっていくことによって流れを変えていくことができるのではないか、こう考えております。
 東京一極集中を是正するため、地方における若い世代にとって魅力ある仕事の創出、企業の本社機能移転、政府関係機関の移転を進めていきます。
 具体的には、今年度より、企業の東京からの移転を税制措置により促進するとともに、移住先の生活に関する情報をワンストップで提供する窓口を開設しました。昨年末には、まち・ひと・しごと創生総合戦略を改定し、地方の自主的かつ先駆的取り組みを支援する新型交付金や企業版のふるさと納税制度などの財政支援、そして情報支援、人的支援等を盛り込んだところでございます。
 各自治体は、国の総合戦略を勘案しながら、みずからの人口動態を分析し、将来展望を示す地方人口ビジョンと、これを踏まえた今後五カ年の目標や施策等を提示する地方版総合戦略を策定しています。
 これらは、人が生きがいを持って生活し、この地域に住んでよかったと実感できる地域社会を示し、都市部の人々を引きつけることで、国の施策と相まって、東京一極集中の是正を目指すものであります。


 

○田村(貴)委員 総理、私の質問は、二〇二〇年に均衡をとるというのは難しいんじゃないんですかと言ったんですけれども、お答えがありませんでした。
 全国の地方自治体においては、人口ビジョン、地方版総合戦略を今年度中に策定するということで、既に都道府県の計画はそろっています。都道府県の人口ビジョンを見ますと、いずれも政府の手引どおりにつくっているので、大体似たような傾向となっています。
東京を除く各道府県が立てた人口ビジョン、これは、東京一極集中の是正が大前提となっています。つまり、安倍内閣が目標としたこの二〇二〇年までに東京圏と地方の転出入について均衡を図らなければ、各道府県のビジョンやあるいは戦略についても、これは達成できないということになってしまうんです。
 総理は、そのように認識されておられるでしょうか。
 もう一つ。
 政府が地方に対して総合戦略をつくれ、あるいは人口ビジョンを示せと言っても、この東京一極集中が進むもとでは、実現可能な計画とはなり得ないのであります。
 東京圏への流入がとまり、地方への流出がふえる、それを可能とする具体的な根拠はどこにあるんですか。いろいろな施策は先ほどお述べになられたからいいです。具体的な根拠はどこにあるんでしょうか。


 

○安倍内閣総理大臣 各自治体は、国の総合戦略を勘案しながら、みずからの人口動態を分析して、将来展望を示す地方人口ビジョンと、これを踏まえた今後五カ年の目標や施策等を提示する地方版総合戦略を策定しているわけでございますが、委員がおっしゃったように、東京一極集中を前提としてということではなくて、この流れをまさに変えていく上において、地方がしっかりと地方版総合戦略を策定していくことが求められている、このように思うわけでございます。
 今後、先ほど私が申し上げましたように、しっかりと地方の意欲を酌み取りながら、地方がみずから描く未来を実現できるように国が支援をしていくという新しい地方創生をしっかりと進めていきたい。そのことによって、東京への一極集中の流れを反転させていきたいと考えております。


 

○田村(貴)委員 地方自治体に対して、政府は、人口ビジョンを実現する事業ごとにKPI、重要業績評価指標、これを求めています。例えば、移住の促進を進めるとして、専門相談員を配置するならば、その移住者を何名と見ているのか、事業ごとに細かくKPIをちゃんと持ちなさい、記しなさいと言っているんです。
 ところが、東京圏の一極集中、この是正に向けたKPIはないわけなんです。政府としてKPIを持ったらどうかと私は思うんですけれども、総理、いかがですか。


 

○安倍内閣総理大臣 今の御質問について、事前に通告がございませんでしたので、私もその数値についてつまびらかに承知をしていないところでございますが、いずれにいたしましても、基本的にKPIを重視しているわけでございまして、各地域がそうした数値目標をしっかりと設定しながら、それに向けて結果を出していくことが求められている、このように思うところでございます。


 

○田村(貴)委員 昨年、我が党の議員が衆議院の委員会で次のような質問をしました。
 東京で相次いで計画されている再開発について取り上げたんです。ビル群をつくれば昼間人口はふえるのだから流入人口もふえるのではないかと問いましたら、石破大臣が、普通に考えればそういうことになろうかと思いますとお答えになりました。そして、国土交通省は、再開発による人口転出入の予想はしていないと答弁されたわけなんですね。
 これからの大規模工事、それから再開発、またインフラ整備が人口の転出入にどのように反映していくのか、こういう数量は具体的に試算されておられるのか。東京一極集中問題を考えるときの大事なことだと私は思うんですけれども、こうしたことは試算されているのかどうか、お伺いしたいと思います。


 

○安倍内閣総理大臣 グローバルな都市間競争が激化する中で、海外から人材や投資を呼び込み、我が国経済を牽引していく上で、再開発などにより都心などの国際競争力を強化していくことは大変重要な課題だと考えています。
 一方、地方部を含めた全国の都市においても、その再生を図るため、再開発も含め、まちづくりに資するプロジェクトに対し財政金融支援などを講じており、数多くの地方都市で取り組みが進められています。
 都市政策は、東京等の大都市のみを対象として行っているものではなく、引き続き、大都市、地方都市双方について、必要な都市機能の維持強化に向けてしっかりと支援をしていきたいと思います。
 大規模な再開発については人口の転出入について数字を試算していくべきではないかという趣旨の御質問をいただきましたが、都市の再開発は、個々のプロジェクトにおける需要効果や、目指すべきまちづくりとの整合性を考慮して実施されるべきものであり、民間の都市開発において、都市全体の人口の転出まで試算することは現実的ではないと考えております。


 

○田村(貴)委員 人口転出入の計画すらない開発、これがどんどん首都圏中心に進んでいくわけなんです。そして、天井知らずの企業群の集積。そういうやり方をやはり変えていかないと、この一極集中の問題は解決しないというふうに思います。
 総理が掲げる世界で一番企業が活動しやすい国というのと、東京一極集中の是正が両立するのか。人も金も、そして物も注げば、巨大都市はさらに膨張し続けていくというふうに思うわけであります。
 こうしたやり方をやはり思い切って見直していくときに来ているんじゃないか、見直さないとこのカーブはいつまでたっても上昇を続けていくというふうに私は考えますけれども、総理、いかがでしょうか。


 

○安倍内閣総理大臣 例えば、国際都市である東京と地方とを対立概念として考えるのではなく、車の両輪として考えなければならないと思っています。
 まず、東京は世界の都市間競争に勝ち抜いていく都市でなければならない、そういう条件を整えていく必要はあるんだろう、こう考えています。
 と同時に、まさに地域は国土形成において極めて重要な役割を担っているわけであります。環境、そして文化、伝統の維持、そして住みやすい国をつくっていく上においても、美しい景観を維持していく上においても、地方の存在というのは絶対的に不可欠であろう、こう思っております。
 地方と東京圏がパイを奪い合うゼロサムではなく、地方と東京圏がそれぞれの強みを生かして日本全体を引っ張っていくプラスサムでなければならないと考えておりまして、それが目指すべき将来の方向である、このように考えております。


 

○田村(貴)委員 やはり一極集中を是正させる具体的な施策を真剣に検討していかなければ、この問題は解決いたしません。
 したがって、今申しましたように、人口転出入の計画すらない巨大開発、それから、今、総理は国際競争力というふうに言われましたけれども、世界じゅうの企業を東京に集中させていく、この天井知らずのビル群をつくっていく、こうしたことがやはり地域と東京圏との差につながっていく。ここに仕事がある、ここに行ったら稼げる、この流れがずっと続いているわけなんですよ。
 資料2というのをお配りさせていただいています。これは、高度成長期以降の東京圏における二〇二〇年時点での転出、転入の均衡予測であります。
 ごらんになっていただくとわかりますけれども、転入超過数がゼロを下回るときというのはわずか一時点であります。そして、ずっと転入超過数はプラスであります。
 全体で、転出入の中で、転入増から転出に変わる時期があります。グラフの下がり坂のところなんですけれども、これは、大きくいろいろな事件がありました。例えば石油ショックのとき、あるいはバブル崩壊のとき、あるいはリーマン・ショックのとき、いろいろあったんですけれども、経済政策が大きく崩れたときにこういう状況になります。
 換言すれば、よほどのことがない限り東京の超過数というのはプラス、そしてこの流れは変わらないということなんです。だから、総理、私は、今までの、言葉はあれですけれども、開発至上主義、こうしたところは大きく見直していく必要があるんじゃないかというふうにお尋ねしたわけであります。
私は、今のこの問題を解決するときに、いろいろな大事なポイントがあるというふうに思います。
 一つは、やはり地域の力をしっかりつけていくということであります。
 それは、何といっても、地場産業を温め、そして地方の主力である中小企業に厚い支援を送っていくということであります。しかし、中小企業対策費、これは二〇一二年以降マイナスではないでしょうか。それから、日本の中小企業対策予算は米軍の思いやり予算よりも下回っている、こういうお寒い状況であります。
 ここを改善して、やはり地域の主力をしっかりと応援していく、この流れをつくっていくことが雇用を生み出し、そして安定して人口減少対策に地方自治体が取り組めていくのではないかというふうにも思います。
 もう一つは、雇用の創出と安定であります。
 安倍政権は、格差是正、それから同一労働同一賃金なども今度掲げておられます。私、一つ提案したいと思うんですけれども、やはり最低賃金の改善、これは大事ではないかというふうに思うわけです。
 私は福岡なんですけれども、福岡が、これは上がったとしても七百四十三円。これでも全国平均より下回っているんですね。東京の九百七円より百六十四円安い。九州は、福岡以外の県はさらに低くて、東京との差は二百十四円という差になります。これだったら、外に出ていこうかな、にぎわいのあるところ、都会に行ってみようかなと人が流れていくのも当然な流れなんですね。
 より高いところへ、より仕事があるところに行こうとするその流れを変えるんだったら、私は、今度の委員会で我が党の議員も主張しましたけれども、全国一律の最低賃金、これを実行していただきたいというふうに思います。
 それから、地方自治体への対応であります。
 人口ビジョン策定の手引という、こういう手引があるんですけれども、手引に基づいて各自治体に人口推計をやりなさい、人口ビジョンを示しなさいというふうに今やっています。
 それから、国が認めた取り組みについて金をつけるというやり方、いわゆる傾斜配分、こうしたやり方が拡大しています。
 交付税についても同じことが言えるんです。私は、予算委員会で高市大臣にも要求しました。トップランナー方式のことであります。道路維持や学校給食などについて、業務委託の内容を民間委託だけに限ってしまう、そして経費を節減したところを標準として交付税を算定していくというやり方です。
 もう一つ尋ねました。人口減少等特別対策事業であります。取り組みの必要度というのはわからぬでもないです。しかし、取り組みの成果分というのがあるんですね。こちらの傾斜をこれから大きくしていこうというんです。いわゆる行革の努力に応じて交付税をふやしていくというやり方が安倍内閣のもとで導入されています。
 トップランナー方式については、全国知事会、それから地方六団体、これは反発していますね。総理も御存じだと思います。
 そこでお伺いしたいのは、総理、地方の固有財源である地方交付税のこの姿を変質させてはいけません。そして、地方交付税を政策誘導に使うべきではないというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。


 

○安倍内閣総理大臣 平成二十八年度から、自治体が民間委託等の業務改革を行う場合は、その経費水準を交付税の積算基礎とするトップランナー方式を導入するとともに、引き続き地方財政計画にまち・ひと・しごと創生事業費一兆円を計上し、その一部について、地方創生に向けた取り組みの成果に応じて配分することとしています。
 これは、地方財政が依然として厳しい状況にある中で、地方団体においても、引き続き行政の効率化を進めつつ、地方創生に積極的に取り組んでもらうことが重要であるとの観点から行うものであり、必要な取り組みと考えています。
 来年度の地方財政計画においては、地方団体が安定的な財政運営を行えるよう、前年度を〇・一兆円上回る一般財源総額を確保し、地方交付税についても前年度とほぼ同程度の額を確保しているところでありまして、御懸念は当たらない、このように考えております。


 

○田村(貴)委員 懸念は深まるばかりであります。
 政府がそういうことを持ち出してくるのは、やはり交付税そのものを減らしたいのではないだろうかというように全国知事会の会長もおっしゃっています。
 こういう、例えばお金も出し、努力もし、そして一生懸命人口減少対策をやったんだけれども、成果が出なかったら交付税を減らすというやり方は、これはやはり地方交付税の本旨にもとるやり方です。やってはいけませんよ。そのことを重ねて要求したいと思います。
 きょうの質疑で、東京一極集中について、その是正を、実効ある提案としては総理の方からは聞かれませんでした。
 大企業が潤って、そして地方がかれるアベノミクス、これをやはり改めて、そして地方再生の取り組みを抜本的に強めること、そのことを心からお願いして、質問を終わります。