192-衆-決算行政監視委員会第三分科会 諫早開門調査求める 衆院委 田村氏 和解待たず対策を

○田村(貴)分科員 日本共産党の田村貴昭です。
 諫早湾干拓事業をめぐって、開門差しとめ訴訟の和解協議がこの間行われています。長崎地方裁判所は、年内もしくは来年の期日までに国が成案をまとめるようにと区切りをつけています。次回の和解協議は来月、十二月十二日、間近に迫っています。非常に重要な局面だと考えます。
 そこで、きょうは、有明海再生と和解協議について質問します。
 きょうは、山本大臣が、TPPの参議院の委員会のために本分科会に出席されておられません。非常に残念ですけれども、礒崎副大臣、大臣の名代としてぜひ責任ある答弁をお願いします。
 福岡高等裁判所の開門の確定判決から、やがて八年がたとうとしています。国は確定判決に従わず、そのために、漁民原告に間接強制金を支払い続けています。その間接強制金のこれまでの額と経緯について、簡単に説明してください。


○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 開門に係る間接強制金につきましては、四十五名の債権者の方に対しまして、平成二十六年六月十二日以降、一日当たり一万円、総額四十五万円でございます。平成二十七年三月二十五日以降は、一日当たり二倍の二万円、総額九十万円、この支払いを実施しているところでございます。
 これまでの支払い額につきましては、本年の十月三十一日まで、六億五千七百万円となっております。


○田村(貴)分科員 副大臣にお尋ねします。
 間接強制金を、これは原資は国民の税金です、国民の税金で毎日、今九十万円、今日まで六億円も支出してきたことについて、どう受けとめておられますか。


○礒崎副大臣 これはもう委員も御承知のとおり、長い経緯のある話でございますが、特に、裁判において開門義務と開門禁止義務の相反する二つの法的義務を負っている、そういう状況にあるわけでございます。
 こうした中で、開門義務に係る間接強制のための強制金の支払いを、裁判の中では国の主張が認められずに、間接強制金を支払わざるを得ない状況になっているということは、私にとっても非常に残念なことと考えております。


○田村(貴)分科員 確定判決は開門の一つだけであります。それは残念という言葉では済まされないというふうに思います。
 十四年間に六つの裁判があっています。そして、国としては、いつまでも裁判を続けていくつもりなんでしょうか。それとも、長崎地裁や福岡高裁における和解協議で解決しようとしているのか。その方向性について御説明いただきたいと思います。副大臣、いかがですか。


○佐藤政府参考人 この諫早湾干拓の開門問題につきましては、委員御指摘のとおり、本年一月、長崎地裁から和解勧告文書が発出されまして、開門によることなく有明海全体の漁業環境を改善する方策を検討し、全体の解決を図る和解の協議を勧告する旨が示されたところでございます。
 国といたしましては、裁判所のこの和解勧告及びそれを踏まえました訴訟指揮に従いつつ、問題の解決に向けて真摯に努力しているところでございます。


○田村(貴)分科員 副大臣も、恐らく大臣も同じ考えだと思いますけれども、確認です。和解協議の中で解決をまず図っていきたいと。
 そして、その解決のために今から何が必要なのか。農水省に対しては何が求められているというふうに、どういうふうに思っておられるでしょうか。
 副大臣じゃないんですか。基本的な方針です。


○礒崎副大臣 一番大事なことは、やはり関係の団体の皆様の理解を得られることだと思っています。四県にわたっておりますから、四県のそれぞれの漁業者の皆様、あるいは県の関係者の皆様、こういう皆様とこれから和解のための合意ができることが一番大事だと考えております。


○田村(貴)分科員 長崎地裁が出した開門にかわる抜本的再生策という和解方針に対して、国は、従来型の再生事業の延長線上にすぎない提案をしました。したがって、原告漁民も、熊本、福岡、そして佐賀の三漁業者の賛同は得られていないというわけであります。
 やはり開門を前提にしなければだめじゃないんですか。開門を前提にしない和解協議は成り立ちませんよ。
 この和解協議に際して、農水省は、有明海振興基金を今創設しようとしています。この基金というのは一体何のためにつくるのでしょうか。その基金の額と規模について教えていただきたいと思います。


○佐藤政府参考人 国は、長崎地裁の和解協議におきまして、この地裁の和解勧告に基づきまして、開門にかわる特別な措置ということで、有明海における水産資源の回復ですとか漁業経営の発展に向けた基金を提案しているところでございます。
 この基金を有明海沿岸の四県及び四県の漁業団体等で構成します組織を設立して運営を図ることによりまして、沿岸域が一体となった主体的かつ弾力的な取り組みの推進が可能となるものと考えております。
 この基金案の内容でございますが、これまでの四県及び四県の漁業団体からの御意見、御要望ですとか、本件をめぐる訴訟当事者の方々の御意見等を踏まえまして、事業内容等の検討を進める中で、必要な基金の規模を検討しているところでございます。


○田村(貴)分科員 いま一度、この基金は一体何のためにつくるのか。例えば、有明海の資源の回復なのか、それから漁業経営の発展なのか、いろいろ言われていますけれども、私が今言ったことで正しいのでしょうか。


○佐藤政府参考人 基金の目的は、水産資源の回復と漁業経営の発展ということと考えております。


○田村(貴)分科員 有明海の水産資源の回復と、そして漁業経営の発展というのであれば、まさに、潮受け堤防を開門すれば、そして開門調査をすれば済む話ではないかと思うわけであります。
 この有明海振興基金について、裁判所からは期日が迫っている、そして漁業者の信頼と同意も得なければならないといった中で、額については今精査中だという話だったんですけれども、農水省、来年度予算に向けての概算要求はしたんでしょうか。


○佐藤政府参考人 この和解協議につきましては、関係当事者間の合意に至っておりません。国が提案している基金案に係る予算につきましては、本年八月三十一日に提出をいたしました平成二十九年度予算概算要求には盛り込んでいないところでございます。


○田村(貴)分科員 一番かなめとなる、農水省側からいったら一番核となっていく有明海振興基金について、その規模、それから額についても今示していないという状況であります。
 これで、もう来月十二日に行われる和解協議で前進できるとお考えですか。漁業関係者の理解は得られると思っておられますか。漁業関係者の理解は得られずとも、長崎地裁に農水省は案を提案するんでしょうか。お答えいただきたいと思います。


○礒崎副大臣 お答えいたします。
 長崎地裁の和解協議におきまして国が基金案を提出している一方で、佐賀、福岡、熊本の三県の漁業団体からは、有明海の再生に向けて機動的に執行することができる基金的予算の要望をいただいているところでございます。
 このようなことから、沿岸四県及び四県の漁業団体から成る協議会において、国と漁業者それぞれの立場の違いはありますが、有明海の再生という目標とする到達点は同じであると考えておりまして、開門そのものの議論は行わないまでも、基金案の事業内容等について整理、検討を進めております。
 現在、四県の漁業団体の御理解が得られるまでには至っておりませんが、次の和解協議の期日までには御理解が得られるよう、全力で努力してまいりたいと思います。


○田村(貴)分科員 漁業関係者の理解は得られなくても裁判所に提出するのですかという問いであります。お答えいただきたいと思います。


○礒崎副大臣 仮定の質問にはお答えできません。
 それはできるだけ和解まで努力いたしますが、ただ、裁判所からの指示もございますので、最終というわけでは必ずしもないと思います、そこは一定の、今までより充実した内容の具体的な話は出していく必要があると思っております。


○田村(貴)分科員 佐藤農村振興局長は事務方ですけれども、十二月の和解協議までにこの国の考える基金案については漁業関係者の同意は得られる、その見込みはあるというふうに踏んでおられますか。


○佐藤政府参考人 まさに今現在、鋭意知恵を絞って一生懸命検討しているところでございますが、副大臣から御答弁申し上げましたとおり、次回の和解協議の期日、十二月十二日でございますが、これに向けて漁業団体等の御理解が得られるよう、国として全力で努力してまいりたいというふうに考えてございます。


○田村(貴)分科員 この基金でありますけれども、その性質についてもう少し聞かせていただきたいと思います。
 この有明海振興基金というのは、先ほど御答弁ありましたように、水産資源の回復、それから漁業経営の発展ということがあるんですけれども、どうも金で解決するのではないかといううわさもあります。
 そういうことは私は絶対想定してはならないというふうに思うんですけれども、この基金というのは、生活保障やあるいは漁業不振への補償に使っていいものなのか、和解金の性格を持つものなのかどうかについて教えていただきたいと思います。


○佐藤政府参考人 和解金でございますが、和解金という言葉は法令上定められた用語ではないというふうに理解しておりますし、またその意味も必ずしも明らかではございませんが、国が提案しております基金、これは、本年一月の長崎地裁が発出した和解勧告に基づきまして、開門にかわる漁業環境改善のための措置ということで提案したものでございます。その効果は、訴訟当事者だけではなくて、広く有明海の漁業関係者に利益が及ぶものであるというふうに考えてございます。
 なお、この基金の内容につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、現在、漁業団体等と中身について話し合いを行っているところでございます。


○田村(貴)分科員 開門はしないという前提の上に立っての和解協議で、有明海振興基金であります。漁業不振を招いたことに対する、漁業関係者に対するいわゆる金銭賠償的な性格は持ち合わせないという理解でよろしいですか。


○佐藤政府参考人 何度も繰り返しで恐縮でございますが、和解金の意味するところが明らかではございません。和解に係る金銭的な支出というようなものを意味するのであれば、その意味におきましては、基金も同じく和解に係る金銭的な支出の一つであるというふうに考えてございます。


○田村(貴)分科員 質問をかえます。基金と和解との関係についてお尋ねします。
 和解協議が成立すれば基金をスタートさせる、和解協議が成立しなければ基金はない、そういう立場なんでしょうか。そうだとするならば、その理由について教えていただきたいと思います。


○佐藤政府参考人 国が長崎地裁の和解協議において提案しております基金案につきましては、あくまでも、この長崎地裁の和解勧告に応えるものということでございます。
 基金方式につきましては、普通ですと、その必要性を厳格に政府内で検討し、極めて限定的にしか用いられておりませんが、今回の基金につきましては、和解に必要な例外的な措置でございます。仮に和解協議で成案とならなければ、基金の造成は難しいというふうに考えております。


○田村(貴)分科員 その理屈でいうならば、先ほど答弁があった、何のための基金なのか。有明海の資源の回復と漁業経営の発展、これは和解が成立しなければやらないということになるじゃないですか。それはおかしい話であります。
 有明海の資源の回復と漁業経営の発展への取り組みというのは和解協議と切り離して論じられていくべきだと私は考えますけれども、農水省、いかがですか。


○佐藤政府参考人 これまでも、有明海特措法に基づきまして、関係省庁や関係県と連携しながら、漁業者等の御意見も聞きながら、有明海の再生に向けた取り組みを推進してきているところでございます。このことにつきましては、今後も変わりはございません。
 また、長崎地裁の和解勧告でも、開門にかわる漁業環境の改善のための措置は、これまでの取り組みに加えて実施されるものというふうにされております。
国といたしましても、和解の成立に向けて真摯に努力しているところでございます。


○田村(貴)分科員 しかし、四県漁民、漁連と漁協は基金案の実現を願っているんです。それにもかかわらず、和解協議とこの基金をてんびんにかけることに、幻となるかもしれない懸念を表明されています。
 ここはやはり、有明海の水産資源の回復、そして漁業経営の発展というのは、裁判があろうが、和解協議があろうが、基金があろうが、これは切り離して考えていくべきだというふうに私は思います。
 これまでやってきた有明海再生対策事業と有明海振興基金との関係については、どう見ていったらいいんでしょうか。


○佐藤政府参考人 これまで、有明海再生対策でございますが、本年度十八億円の予算で進めております。この有明海再生対策につきましては、有明海の再生に向けた調査や技術開発などを実施しているものでございます。
 他方、現在国が提案しております基金案につきましては、有明海再生対策で得られた技術的な知見や成果を生かしまして、タイラギですとかアサリなどの新たな技術の導入に合わせた施設の整備、あるいは母貝団地の造成ですとか適切な漁場管理など、漁業の現場における実践や定着を促していく、そういうものと考えてございます。


○田村(貴)分科員 有明海再生対策事業は、一言で言うならば調査活動、そして技術開発、有明海振興基金は事業となっていくというような御説明だったというふうに思います。
 これは、裁判がどういう推移に流れていこうが、和解協議がどういう形になろうが、有明海再生のためには、調査活動も、それから技術開発も、また対策事業も必要だというふうに考えます。抜本的な有明海の水産資源の環境が改善されていないからであります。このどれもが今必要ではないでしょうか。これは裁判があろうが、和解協議があろうが、やはり技術開発、そして調査活動、さらには事業、この三つは必要であると私は考えますけれども、いかがでしょうか。


○佐藤政府参考人 現在、有明海特措法に関連して行われてきました調査ですとか研究といった取り組みは、必要に応じて、今後とも引き続き行っていくべきものというふうに考えてございます。


○田村(貴)分科員 必要だということでありました。
 それでは、有明海再生対策事業、四県協調事業の取り組みについてお伺いします。
 平成二十七年度から平成二十九年度までのサンセット事業だというふうに伺っております。それぞれの年の予算額、そして二十九年度の概算要求額、これについて御説明いただきたいと思います。


○佐藤政府参考人 有明海再生対策の予算額でございますが、平成二十七年度及び本年度につきましては、それぞれ約十八億円でございます。
 また、平成二十九年度概算要求におきましては、本年度と同額の約十八億円を要求しているところでございます。


○田村(貴)分科員 二十七年度、二十八年度、二十九年度の事業でありますけれども、平成三十年度以降は事業はやらないんですか。教えてください。


○佐藤政府参考人 国としては、引き続き、有明海特措法に基づきまして、関係省庁、関係県と連携しつつ、漁業者等の御意見も聞きながら有明海の再生に向けた取り組みを推進してまいりたいと先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
 今後の有明海再生対策につきましては、これまでの取り組みの成果等を踏まえ検討していく必要があると考えております。実施しないというふうに決めているわけではございません。


○田村(貴)分科員 実施しないと限定しているわけではないという回答でありました。
 四県漁連は、基金案の動向と関係なく、平成三十年度以降の再生対策事業の予算化を求めておられます。同時に、基金案の実行も求めておられます。これはやはり、漁場、資源を回復してほしい、そして何とか生活を楽にしたい、そして豊穣の海と言われた有明海を再生してほしい、もう心の奥からの叫びだと思うんですよ。
 再生事業も基金もやはり進めていただきたい、これは最低限の要求ではないかと思うんですけれども、この漁連、漁協、そして原告漁民の人たちの思いについて、思いは共有できるでしょうか、礒崎副大臣。


○礒崎副大臣 有明海の現状は、平成二十七年度の乾ノリの共販金額が二十六年に次ぎまして過去十年で高い水準にあるなどの面もあります。ノリ養殖は順調でありますが、赤潮や貧酸素水塊の発生等が漁業に大きな影響を与え、二枚貝類等の漁業は依然として厳しい状況にあります。
 一方で、昨年から、有明海沿岸においてアサリの稚貝が多く発生しているという明るい兆しも見えております。
 そのような状況を、漁場の環境を改善したいという漁業者の思いを、私たちもよく承知しているところでございます。
 国としては、引き続き、平成十四年に制定された有明海特措法に基づき、関係省庁及び関係県とも連携し、漁業者の御意見もよく聞きながら、有明海の再生に向けた取り組みを推進してまいりたいと思います。


○田村(貴)分科員 局長、ちょっと通告になかったんですけれども、三県の漁連、漁協は、来年度の予算編成に当たって、稚貝育成などの緊急的予算を別枠として上乗せすることを文書でも要望されているんですけれども、この点について、見込みはいかがでしょうか。


○佐藤政府参考人 そのような要望が三県漁連の方から農水省に寄せられているところでございます。これにつきましては、今鋭意検討中でございます。近々一定の結論を出すべく、今検討をしているところでございます。


○田村(貴)分科員 四県漁連からの要望書の中には、有明海再生事業は漁業者が実感できるような効果は確認できなかったというのがあります。前進している面もあるかもわからないけれども、基本的に実感できていないと。だとするならば、平成三十年以降もこの事業の継続がぜひ必要だということを指摘しておきたいと思います。
 次に、熊本県、福岡県、佐賀県の三県漁連、漁協が八月二十六日に農水大臣に提出した要望書について質問をします。
 この要望書の中にはこういうくだりがあります。
 先般、長崎地裁の和解協議に伴い、国が開門調査にかわる基金案を説明する中で、和解協議が不成立の場合、基金ばかりでなく有明海再生に係る予算もなくなるか、減額されるとし、私たちに基金案の受諾を求めています。
 また、次のくだりがあります。
 裁判の当事者でない四県有明沿岸漁業者に基金案の受諾を求め、混乱する裁判の決着を図ろうとする手法に違和感を覚えるとともに、私たちをないがしろにする不合理な提案は、到底容認できるものではありません。
 大変怒りの要望書になっていると思います。
 この和解協議が不成立の場合に、先ほども言いました、基金ばかりでなく有明海再生に係る予算もなくなるんですか、減額されるんでしょうか。そういう説明をされてきたんでしょうか。
 この要望書に対して、山本農水大臣は答えておられます。副大臣、大臣は何というふうにお答えされたんでしょうか。


○礒崎副大臣 八月二十六日に佐賀県下で三県漁連、漁協の関係者と会ったときに、山本大臣の発言でございますが、基金案は、和解協議という特別な事情を背景に、国として知恵を絞り、有明海の漁業振興や再生を進める上で最良の仕組みと考えて提案したものです、和解協議は全ての関係者がウイン・ウインの関係、お互いの利益になるというチャンスと考えている、そうした担当者の思いがあふれる余り、皆様方の感情を害することになることもあったように伺っているが、それは大臣としては本意ではない、改めて虚心坦懐、謙虚にこの御提案をさせていただくと回答いたしております。


○田村(貴)分科員 大臣は、農水省側の漁連や漁協に対するこれまでの主張については、本意ではなかったというふうに否定、打ち消されているわけであります。
 要望書にありますように、やはり当事者、そして和解協議とは直接関係ない四県の漁業関係者が、団体がそういう理解になったということは、これは本当にびっくりです。和解に従わなければ有明海再生の事業のお金はつけない、言語道断だというふうに思います。
 私は、三県の県の水産課の行政当局の方にも私たちの地方議員を介して聞いてもらったんですけれども、和解協議に応じなければ、さもなくばという言葉で、再生対策事業の減額、そして取り消しなどがやはり言われたと言っているんですよ。行政当局者もそういうふうに言われていたということなので、まさに農水省側は和解勧告に従え従えというふうに言ってきたということが言えると思います。
 これは真摯な反省が求められるんじゃないでしょうか。大臣が本意ではなかったというふうに否定されたんだったら、やはり農水省の方は今までの接し方について反省が求められると思いますけれども、いかがでしょうか。


○佐藤政府参考人 この基金方式につきまして、我々の説明の中で、通常はその必要性を厳格に検討して極めて限定的に用いられている、今回の基金は和解に必要な例外的な措置です、有明海の漁業振興や再生を進める上で最良の仕組みである、こういった御説明を漁連に申し上げたところでございます。
 そのような意味におきまして、和解協議は、全ての関係者がウイン・ウインの関係となるチャンスと考えております。そうした思いがあふれる余りの言葉でございまして、その言葉は農林水産省としての本意でございません。
 引き続き、よい決着が図られるように、国として知恵を絞り、関係者、漁連の方々の知恵もおかりしながら、基金をつくり上げていきたいというふうに考えてございます。


○田村(貴)分科員 和解案を漁民側がのまなければ不利益をこうむる、そういうことは絶対ないですね。この際、しかとお答えいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。


○礒崎副大臣 基金の提案については、開門にかわる措置という訴訟指揮の中で出されたものではありますけれども、少なくとも、それ以外の予算措置は削減するというようなことは絶対あってはならぬことだと考えます。


○田村(貴)分科員 今度の和解協議の中で、もし裁判所の方から開門を前提にした和解案が提示されたら、これは国として受け入れますか。受け入れるべきだと思いますけれども、いかがですか。


○礒崎副大臣 恐縮でございますけれども、仮定の質問にはお答えできませんので、それはそのときにまた考えさせていただきたいと思います。


○田村(貴)分科員 可能性もないわけではありませんよ。だって、開門を前提としない和解協議がこの時点でまとまっていないんですよ。次の和解協議は来月、十二月十二日ですよ。そうしたら、この膠着を打開するためには別の方法を考えていかなくちゃいけない。そういうことも想定して仕事に当たっていただきたいし、政治判断もしなければならないと思います。
 干拓という国がみずから行った公共事業が、世界に誇れる豊穣の海を汚してしまいました。被害を招いて、六つの裁判を引き起こして、そして二十年近くも係争となってきています。全てが、国の行為とその判断の誤りによって導かれてきた問題であります。無用の争いと、地域における分断をつくり出しました。副大臣も大分御出身ですから、よく御存じのことだと思います。
 何よりも、漁業者の生活の糧が奪われました。貝が立たない、ノリが育たない、魚がとれない。これは本当に悲劇であります。塗炭の苦しみを味わって、長い長い闘いと、そして取り組みが続いてまいりました。
 確定判決に従って、やはり国は開門調査を行うべきであります。そして、開門による被害を、農業の被害を食いとめるために万全を尽くして、まさに農漁共存ですよ、これが農林水産省のあるべき責任の果たし方だというふうに思います。
 国は開門義務を果たすべきだと思いますけれども、副大臣、いかがでしょうか。


○礒崎副大臣 最初に申し上げましたように、二つの法的、開門と開門禁止義務と二つ負っているわけでございまして、そうした中で、今回、長崎地裁から開門によることのない改善方策を提出するようにということで、出しておるわけでございます。
 現在、和解協議は重要な局面にあると受けとめており、基金案について引き続き合意が得られるよう話を進め、その他のことについても、問題の解決に至れるよう一生懸命知恵を絞ってまいりたいと思います。


○田村(貴)分科員 開門を前提にする選択肢を農水省は持たなければいけません。唯一の確定判決は開門なんですよ。
 副大臣、ちょっとお聞きしたいんですけれども、毎年のように大臣が交代しています。私、もうこの問題は三回ほど国会でやっているんですけれども、そのときの大臣がかわってきているわけなんですよね。やはり政府それから政府三役が、この問題に責任を持って、そして漁民を初めとする関係者に真摯に向き合って、継続的に働いていただきたいというふうに思っております。
 礒崎副大臣は大分、九州の御出身でございますけれども、副大臣に就任されてから、諫早湾の干拓、有明海の漁場を調査に行かれたとか、関係者と懇談されたとか、そういうことはございますか。


○礒崎副大臣 諫早の方には大臣が行きましたので私は行っておりませんが、熊本地震の災害視察では有明海をちょっと見させていただきました。


○田村(貴)分科員 世界に誇り得る豊穣の海が二十年近く危機に瀕している大問題であります。ぜひ副大臣も、大臣同様に現地に行っていただきたい。そして、やはり開門に反対されている長崎県側に対して、確定判決は一つです、そして、農漁共存の場合、できますよ、開門、あけてもちゃんと対策を打っていったら共存できますということをしっかりと説明していただきたい、私はそういうふうに心から思うわけであります。
 ここはやはり、副大臣、もう政治家が前に出ていかなければ解決できないところに来ているというふうに思います。開門をした方がいいと思います。開門しなければこの問題は解決しません。大臣も副大臣も、ぜひ、関係者の意見をしっかり聞いて、汗を流していただきたい。心からお願いして、きょうの私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 終わります。