193-衆-総務委員会 アスクル火災なぜ消火活動長期化/臨時教員待遇ただす/水道民営化中止求める

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 質問に入る前に、高市大臣、通告がなくてまことに申しわけないんですけれども、アスクルの火災の件について教えてください。
 アスクルの物流拠点の一つである埼玉県三芳町のアスクルロジパーク首都圏、きょうもお昼のニュースを見て、まだ鎮火をしていないという報道なんですけれども、出火原因、それから被害の詳細な状況について消防庁の方から何か連絡を受けておられるでしょうか、あるいは指示を出されておられるでしょうか。


○高市国務大臣 二月十六日に発生したこの倉庫火災なんですけれども、十六日は、県内の消防本部からの応援隊を含めて七十台の消防車両が出動して消火活動を行うといった継続的な活動を行い、二十日は二十七台の消防車両が出動、二十一日も同規模の体制で活動しているという状況です。
 この消火活動に長時間を要した理由としましては、火災初期段階から火の勢いがとても強くて、防火シャッターや棚などで複雑な構造となっていたことから、建物内部での継続的な消火活動が困難であったということ。それから、外壁には小さな開口部しかないことに加えて、建物が百メートル掛ける二百四十メートル、軒が二十二メートルという高さでとても大きくて、燃焼物に直接放水できないということ。それから、建物内が原則として千五百平方メートル以内に防火シャッターで区画されていたんですが、長時間火災にさらされたことで次第に延焼拡大してしまったということ。それから、十九日の〇時十二分ごろに二回の爆発が発生しましたほか、二十日の十二時四十五分ごろにも小さな爆発が発生して、このとき、一時退避が必要であったということが挙げられています。
 また、継続的な消火活動で火の勢いが一定程度おさまってきたことによりまして、二十日から消防隊員が建物内に進入しての消火活動を再開しております。
 火災が起きたとき、地震、風水害もそうですけれども、私のスマートフォンに消防庁から適時連絡が入ってまいりまして、状況の把握はいたしております。
 引き続き、安全管理をきっちり行いながら、着実に消火活動を進めていくという予定でございます。


○田村(貴)委員 火災現場付近では、避難勧告も出されて、避難生活、避難者の方もおられる。それから、煙、すす、におい等でやはり影響も出ています。五日たって建物火災が鎮火しないというのは非常に珍しいケースではないかなというふうに思います。
 消防行政も所管する総務委員会で審議が続いていますので、ぜひ総務省消防庁の方から情報を出していただきたいというふうに思います。

 
 それでは、質問に入らせていただきます。
 県費負担教職員の給与支払い権限が、政令指定都市に来年度から移行されます。この四月からもう始まるわけなんですけれども、手当や休暇などの待遇が、県から市に合わせることによって不利益が生じる。こうした問題について、私は、本委員会あるいは地方創生特別委員会などでも取り上げてまいりました。
 加えて、常勤講師の場合は、いわゆる任用の空白という問題が生じてまいります。政令市の教育現場に深刻な影響を与える懸念があります。
 きょうは、このことについて伺います。
 一部の政令市では、再度の任用の際に設けられる空白期間が一週間から二カ月とかなり長期間となっています。県費負担のときは一日でした。これがそのまま適用されれば、一定期間働くことができない先生を生み出し、産休や育休の代替などの必要な人員が確保できなくなってまいります。
 そこで、文部科学省にお尋ねします。
 この問題について、政令指定都市の対応を掌握されているでしょうか。


○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省といたしましては、都道府県から政令市への県費負担教職員の給与負担の権限移譲に伴いまして、政令市の他の職員との均衡の観点から、臨時的任用教員を再び任用するに際しての新たな任期と前の任期の間に一定の期間、いわゆる空白期間を設けることとしている事例があることは承知しているところでございます。
 臨時的任用教員の任期につきましては、各任命権者において業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に定めることが必要であり、文部科学省といたしましては、臨時的任用教員の任用等について適切な対応を図っていただくように、引き続き各教育委員会に指導していきたいと考えております。


○田村(貴)委員 そもそも空白が必要なのかというところの疑問を持ちます。
 そこで、総務省に伺います。
 臨時的任用における再度の任用の際に空白を設ける、あけるということは、これは法的な根拠があるんでしょうか。二〇一四年の七月四日の総務省通知ではどのように指摘されているのか、紹介をしていただきたいと思います。


○高原政府参考人 御答弁申し上げます。
 臨時的任用職員の任期の設定については各地方公共団体において判断されるべきものでありますが、再度の任用の際に、新たな任期と前の任期の間に一定の期間、いわゆる空白期間を置くことを直接求める規定は、地方公務員法を初めとした関係法令において存在しないところでございます。
 この旨は、平成二十六年七月の総務省通知においても、各地方公共団体に対し助言を行っております。
以上でございます。


○田村(貴)委員 法的な根拠は存在しない、ないということが確認できました。
 高原部長、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、この通知に基づくならば、担任等の恒常的な業務には、正規教員を任用することはもちろん、臨時の職でも、業務の遂行に必要な期間、先生としての仕事のある期間はきちんと任用するということ、そして無意味な空白を設定する必要はないというふうに私は受けとめているんですけれども、大要はそういうことでよろしいんでしょうか。


○高原政府参考人 御答弁申し上げます。
 今先生御指摘いただいた形で、私ども、地方公共団体に対し助言をしているつもりでございます。


○田村(貴)委員 確認できました。
 それで、この空白の問題が生じているある政令市で話を伺ってまいりました。空白の件と、それから、市に合わせる休暇の削減などの待遇によってダブルパンチとなっている。既に来年度を待たずして人材の流出が始まっているということについて紹介したいと思います。
 まず、常勤講師の先生方の声であります。きょう、別の自治体に履歴書を出してきました、あの条件で常勤と言われてもね。別の方は、市外に出ます、正規採用される可能性が高い大阪か東京へ行って試験を受けようと思っています。昨年病気で一週間入院した常勤講師の方が、今年度でよかったというふうに話しておられるそうです。今は療養休暇があって有給で休みがとれるけれども、来年度からは市の方に移るので制度がない、休めたとしても、その期間分の給与はカットされる、病気で休暇をとって給料が半分になったらもう暮らしていけないじゃないかという声があります。
 正規の先生方もこういう事態を心配して、また、学校長からも不安の声が上がっています。紹介します。同僚が十一月から産休に入ったのに代替が四月まで来ない、特別支援で二人担任のはずが二学期は一人で担任した、今でも常勤講師の未配置が四十校あるというのに、四月からどうなるのか。ある校長先生、来年大変だ、講師がいない、困っておられるということです。
 空白期間と労働条件の引き下げで、今いるベテランの常勤の講師の先生が政令市を離れるという事態に直面しているわけなんです。
文科省にお尋ねします。
 権限移譲の実施を前に、これだけ現場が混乱しています。四月の人員が確保できるかどうか、これは子供たちにとって大変な問題です。文科省はこの事態についてどう考えて、どう対応されているんでしょうか。


○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど総務省から答弁がありましたとおり、臨時的任用教員につきまして、いわゆる空白期間を置くことを直接求める規定は関係法令において存在していないところでございます。
 そのため、具体的な任期の設定に当たりましては、各自治体における人材確保の必要性等の観点も踏まえまして、それぞれの任命権者において、職員に従事させようとする業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に定める必要があると考えております。
これを踏まえまして、文部科学省といたしましては、必要に応じて、問題がある場合については助言等をしてまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 大いに助言をしていただきたいと思います。教育の現場において混乱と不安がこれだけ生じているのに文部科学省は何もしないのかと言われないように、人材の確保、空白問題の解決にやはり力を発揮していただきたいというふうに思います。
 質問を続けますけれども、この権限移譲によって学校の先生がいなくなってしまう、講師が確保されなくなる、こうなってしまっては元も子もないわけであります。
 そして、こうした政令市が特例措置をとっているということについても私は承知しております。しかし、これはずっと続くわけじゃないんですね。あくまでも特例ですから。そこで先生方がやはり不安になって、他都市に流出するという事態になっているわけであります。
 県費採用職員のときだって、正規の先生と同じ仕事をしながら、待遇に差別、差がありました。今度は権限移譲でさらに状況が悪くなっている。病気であっても休むことができない、政令市で働き続けることができないという声が出ているんです。
 こういう声が出るのは、改善がされていないから当然なんですよ。直ちに改善策を、文部科学省、イニシアチブをとってやっていただきたいというふうに思います。四月はもう目の前に迫っています。
 高市大臣にお伺いします。
 一昨年八月の総務委員会で、私、この権限移譲の、臨時職員の給料の問題を取り上げました。そのときに、大臣から次のような御答弁をいただきました。各職員の方々の具体的な職務内容に応じて、各地方公共団体の責任で適切に判断されるべきもの、教育水準の低下につながらないように、関係道府県、政令指定都市に設置されている協議会等でよく議論していただくことを期待しますというような回答でありました。
 今、教育水準の低下につながりかねない、こういう実態がある中で、地方公務員でもある学校の臨時教員の皆さんが人間らしく働く、不安なく働く、政令市の子供たちが安心して学び成長することができる、そういう環境が維持されることは非常に大事だというふうに思います。
総務省としても、任用空白の問題解消へ、先ほど制度の説明がありました、可能な限り関係機関に働きかけていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○高市国務大臣 一つは、指定都市において移譲された事務が円滑に執行できるように、普通交付税の算定上、事務の移譲に伴う標準的な経費というのは全額基準財政需要額に算入することとしております。
 県単加配など地域の実情に応じて実施されている施策に係る財源措置については、教育水準の低下につながらないように、これは関係道府県と指定都市に設置されている協議会でよく御議論いただきたいと思っております。
 それから、先ほど来委員がおっしゃっていた空白期間の問題でございますけれども、高原部長が答弁したとおり、臨時、非常勤職員の任期については各地方公共団体において適切に判断されるべきものでありますけれども、ただ、退職手当や社会保険料などの負担を回避するために空白期間を設けるということは絶対適切ではありません。それから、任用されていない者を事実上業務に従事させた場合に、公務上重大な問題を生じさせるおそれも懸念されます。
 このようなことがないように、任期については、先ほどの文部科学省の答弁と同じですが、職員に従事させようとする業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に定めることが必要であると考えております。平成二十六年通知でこの点について助言を行いましたし、そのほか全国の会議などでさらなる周知を図っています。また、平成二十八年十二月の総務省研究会の報告書においてもその旨の明確化を図り、全国に周知をしております。あれからも取り組みを続けてきております。
 今後とも、地方公共団体に対して適切な助言を続けてまいります。


○田村(貴)委員 先ほどは先生方の声を出しましたけれども、保護者や市民の方も大変関心を寄せられています。
 保護者の意見があります。一件だけ紹介します。教育は継続が大事である、特に小中学校では、子供の健康状態や家庭環境を知っている人でなければ務まらない、誰でもいいから欠員を埋めればいいというものではない。これは正論であります。
 町の未来を担う子供たちにかかわることであります。常勤講師の先生が働き続けられる勤務条件となるよう、政令指定都市も国も全力を尽くすことを強く強く求めておきたいというふうに思います。

 
 次の質問に移ります。
 先日の本会議でも取り上げましたけれども、水道行政の民営化、コンセッション方式についてきょうは伺います。
 政府は、日本再興戦略二〇一六や経済財政運営と改革の基本方針二〇一六に基づいて、水道分野におけるコンセッション方式の導入を促進しています。新水道プランにおいても、官民連携の推進、PPP、PFIの活用、検討を掲げています。
 最初に、厚労省にお伺いします。
 水道というのは、国民の命にかかわる、それから生活にかかわる大変大事なものであります。公共サービスをなぜ民営化するのですか。簡単に御説明いただきたいと思います。


○橋本政府参考人 お答えいたします。
 今、先生御指摘のように、水道というのは今普及率が九七・八%に達しまして、今や国民の生活の基盤として必要不可欠なものとなっている。その一方で、近年、施設の老朽化ですとか職員数の減少、あるいは人口の減少に伴う料金収入の減少、こういったさまざまな課題に直面しているところでございまして、水道事業の基盤強化というのが喫緊の課題になっているところでございます。
 このため、職員の確保あるいは経営面でのスケールメリットの創出ということにつながる広域連携を推進するということが一つでございますが、これにあわせて、民間事業者の技術あるいは経営ノウハウを活用する官民連携というのも基盤強化の有効な方策の一つとして、その多様化を図ることといたしております。
 具体的に申し上げれば、官民連携の選択肢をさらに広げる観点から、官民連携の形態の一つでございますコンセッション方式の導入ということが現実的な選択肢となり得るように法制的に必要な対応を行うこととしておりますが、その際には、住民の不安を招かないように、市町村が水道事業者等としての位置づけを維持しつつ、水道施設に関する公共施設等運営権を民間事業者に設定できる仕組み、こういったものを導入したいというふうに考えているところでございます。


○田村(貴)委員 基盤強化というのは当然のことであります。しかし、それがどうして官民連携なんでしょうか。そして、不採算なものを民間が担ったら解決できるというのは甚だ疑問であります。
 先ほど理由をいろいろおっしゃいましたけれども、職員数の減少があるということであります。職員数の減少は、これはどうして生じてきたというふうに認識されていますか。


○橋本政府参考人 お答えいたします。
 水道事業を支えます職員の数というのは、約三十年前となります昭和五十五年ごろがピークでございまして、その後減り続けてございまして、現時点ではピークから約三割程度減少しているところでございます。
 このように職員数が減少していることにつきましては、平成二十五年の三月に策定いたしました新水道ビジョンにおきましては、一つには、これまでの徹底した組織人員の削減ということに加えまして、二つ目には、団塊の世代と言われた職員の大量退職によるもの、このように分析しているところでございます。


○田村(貴)委員 資料をお配りしています。1(資料1)と書いているものが水道職員の推移であります。
 二〇〇〇年代に入ってからの三位一体の行財政改革、そして合併によって、自治体の職員は大きく減少しました。さらに、二〇〇五年から五カ年にわたる集中改革プランがさらに拍車をかけた。徹底した人員の削減というところが、先ほど答弁があったんですけれども、そういうふうな流れになっているわけであります。まさに、この人員削減、政府が音頭をとってきた、その結果のあらわれになっているというふうに指摘せざるを得ません。
 おめくりいただいて、資料の2に厚生労働省の資料をつけております。
 この右側の表で、私も見てびっくりしたんですけれども、人口三万人から五万人未満の事業体において技能職が一人もいない、ゼロになっていますね。技能職というのは、管路の漏水修繕やポンプ室の作業に当たる、現場で働く、水道事業の最前線で働く職員のことを指すわけなんですけれども、ゼロとなっています。

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きょうは、厚生労働大臣政務官、馬場政務官にもお越しいただきました。
 政務官、水道の事業が、現場が大変深刻な状況にあることを御認識されておられるでしょうか。


○馬場大臣政務官 お答えします。
 今、事務方からもお話ししましたけれども、職員数が不足していることについてのお尋ねだろうかというふうに思います。
 水道事業を支える職員数の減少につきましては、水道事業の基盤を揺るがしかねない重大な課題と認識しておるところであります。加えて、施設の老朽化の進行や料金収入の減少など、水道事業は深刻な課題に直面しており、水道事業の基盤強化が喫緊の課題となっております。
 このため、厚生労働省では、職員確保やスケールメリットの創出につながる広域連携の推進や、民間事業の技術等を活用する官民連携の多様化などを内容とした改正案を今国会に提出することとしております。まずは、水道法の改正に全力で取り組んでまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 今答弁があったように、徹底した人員削減によって、今政務官がお答えになった深刻な事態をもたらしたわけなんですよ。
 そうすると、民間導入といっても、あした、あさってできる話ではないんですね。後でまた説明しますけれども。
 深刻な状況を招いて、重大な課題と認識されるのであったら、今、やはり技術吏員を確保すべきではありませんか。水道職員だけでも、わけても若い水道吏員、技術吏員を確保しないと、事業の継承はできませんよ。
 私は、水道事業の現場における継承のためにも、こういう深刻な例がありますので、直ちに若い技術吏員を採用していく、そして事業を継承していくことが何より求められると思うんですけれども、その点についての認識はいかがでしょうか。


○馬場大臣政務官 お答えします。
 御指摘のとおり、将来に向けて水道事業を盤石なものとするためには、若手技術職員の確保が重要と考えております。
 人口減少社会において人材そのものが不足する中で、水道事業の持続可能性を高めるためには、職員の確保も含め、広域連携の推進等により水道事業の基盤強化を図る必要があると認識しております。
 そういった中で、まずは基盤強化を目的とした水道法の改正に全力で取り組んでまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 内閣府にお尋ねします。
 公共施設の運営権を民間事業者に委ねるコンセッション方式について、目標をどのように設定されているのでしょうか。PPP/PFI推進アクションプランの集中強化期間、重点分野というのがありますけれども、これについて説明をしてください。


○木下政府参考人 お答えいたします。
 コンセッション事業等の重点分野の目標につきましては、昨年五月に決定したPPP/PFI推進アクションプログラムにおいて定められておりまして、平成二十六年度から二十八年度までを集中強化期間とする重点分野として、空港六件、水道六件、下水道六件、道路一件とされております。また、平成二十八年度から三十年度までを集中強化期間とする重点分野として、文教施設三件、公営住宅六件とされております。


○田村(貴)委員 今お答えのあった平成二十六年度から二十八年度の重点分野について、現状はどうあっていますか。


○木下政府参考人 お答えいたします。
 平成二十六年度から二十八年度までを集中強化期間とする重点分野についての現時点での進捗状況といたしましては、空港七件、水道二件、下水道四件、道路一件と承知しております。


○田村(貴)委員 空港は七件ということで、超過達成しているということです。いただいた資料でも、下水道は浜松市が募集要項を公表するという段階であります。
 しかし、水道については、これはまだ実現に入っていませんよね。二つの自治体が手を挙げられているということでありますけれども、一つは大阪市であります。
 大阪市の議論というのは、もう何年にもなります。二〇一三年に民営化検討の素案が出されて、翌年に基本方針案が出されて、一五年に条例案が出されたんだけれども否決された。そして、翌年にまた条例案が出されたんだけれども継続審議に至っているという状況です。
大阪市の水道というのは、経営的にも非常に安定していて、料金も安く会計も黒字であるということで、去年の秋の参議院の総務委員会でも、高市大臣は、大阪市の水道事業に対して、経常経費の削減や経営努力によって黒字を計上しておられると承知していますとの認識を示されました。うまいこといっているわけですね。
 もう一つ。奈良市なんですけれども、二〇一六年の三月定例議会で条例提案しました。中心地から離れた山間部の都祁地区、月ケ瀬地区と東部地区の水道事業に十五年間契約のコンセッション方式を導入するとした条例案でありました。しかし、反対多数で否決となっています。
そもそもこの奈良市の計画は、赤字だった地域の事業をわざわざ切り出して、そしてコンセッションの導入を図るものであります。
 内閣府に伺いますけれども、昨年十二月に内閣府により公表された上下水道コンセッション事業の推進に資する支援措置、この第一次分で奈良市がまた支給対象として決定されているわけなんですね。これは、奈良市が行うコンセッション事業導入の検討に要する調査委託費の全額を助成するという理解でよろしいんでしょうか。十分の十を助成するという理解でよろしいんでしょうか。


○木下政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の調査費につきましては、募集要領に基づきまして、適切な額につきまして、十分の十、全額を助成しております。


○田村(貴)委員 議会で条例案が否決されたばかりじゃないですか。それでまたこの調査費の助成をつけるんですか。
 内閣府の総額は十三億九千二百万円だというふうに伺っています。恐らく、奈良市に対しても数千万円規模の助成額になるのではないかなというふうに思うわけであります。
 しかも、市は、条例案否決の理由としてこう言っています。地元への理解が得られていない、市民が民間で経営を担うことへの不安を感じている。つまり、議会も住民も、認めて、納得していないのにかかわらず、調査費を国がぽんとつけてあげる。これは私は非常に違和感を感じますね。まさにコンセッション推進一辺倒であると言わざるを得ないというふうに思います。
 PPP/PFI推進アクションプランでは、鳴り物入りで、先ほど御答弁あったんだけれども、集中強化期間というのをつくったんですね、集中強化期間。そこで、重点分野の一つに水道事業を掲げ、六件を目標としたんです。二件手を挙げたけれども、否決と継続審議となっているわけなんですよ。結果がこういう状況ですから、結論は出たんじゃないですか。
 内閣府にお尋ねします。
 水道事業というのは、PPP、PFI、コンセッション方式になじまないということではありませんか。いかがですか。


○木下政府参考人 お答えいたします。
 コンセッション事業といいますのは、利用料金の徴収を行う公共施設について、所有権を公共主体が有したまま民間事業者に当該施設の経営を委ねる事業でございます。
 そのことによりまして、公共主体によりましては、財政健全化に資する、それから、利用者にとりましては、民間の創意工夫を生かして良好なサービスを享受できる、そして、地域経済にとっては、新たな民間の事業機会の創出にもつながるといった効果が期待できますので、これは水道に限らず、ほかのものにつきましても、私どもとしてはコンセッションの進捗を図ってまいりたいと考えてございます。


○田村(貴)委員 奈良市のことなので、高市大臣御承知のことかもわからないんですけれども、奈良市の企業局が出したコンセッションの資料の中に、私、見て、思わずちょっと苦笑してしまったんですけれども、官民連携事業のデメリットというのを挙げているわけです。
 そのデメリットの中に、災害時に県や市町村から十分な応援人員が派遣されない可能性があるとして、災害時におけるリスクを挙げています。また、役所みずからが経営しているわけではないので、放漫経営のリスクがあるというふうにされているんです。民間コンセッション方式、こういうデメリットを市がみずから挙げているわけなんですよ。わかっているじゃないですか。
 そこで、今度は、厚労省の馬場政務官にも同じ質問なんですけれども、災害リスクが民間事業者によって生じてしまう、これはあってはならないことですよね。民営化で放漫経営になってしまったら、これは大変なことになってしまいます。あってはなりません。
 水道というのは、これは全ての自治体、全ての住民にかかわることであります。住民の生活を支える水道というのはそもそも民営化になじまないのではないか、コンセッション方式になじまないのではないかなというふうに私は確信するものですけれども、いかがでしょうか。


○馬場大臣政務官 お答えします。
 コンセッション方式を導入するに当たりましては、さまざまな懸念が寄せられていることは承知しておるところであります。
 コンセッション方式の導入は、そういう中で多様な官民連携の選択肢を広げるものと考えておるわけでありますが、具体的には、コンセッション方式の導入が現実的な選択肢となり得るよう、法制的に必要な対応を行うこととしております。
 その際、住民の不安を招かないよう、市町村が水道事業者としての位置づけを維持しつつ、議会のかかわりでありますとか、また市町村の責任でありますとか、そういったものも含めまして、水道施設に関する公共施設等運営権を民間事業者に設定できる仕組みを導入したいと考えておるところであります。


○田村(貴)委員 笛吹けど踊らずと言わざるを得ないと思います。実態がこうなんですからね。
 これは、空港施設とかほかの事業対象と違うんですよ、水道なんですよ。
 一番最初に、水道事業をめぐる問題点について説明がありましたけれども、水需要が少なくなっている、それから施設が老朽化している、採算割れもある、職員が減少している。そうした基盤強化を、公共サービスを貫くという観点でやはりやるべきですよ。その視点を持たないと、これはやはり現場に混乱を与え続けます。そして、抜本的な改善になりません。そうした努力を、ぜひ厚生労働省、水道課を挙げてやっていただきたいというふうに指摘しておきたいと思います。
 その民営化の流れと再公営化の経過について、昨年十一月二十二日、参議院総務委員会で我が党の山下芳生議員が質問をしましたけれども、海外での再公営化の経緯について、簡単に説明していただけるでしょうか。


○橋本政府参考人 お答えいたします。
 昨年の十一月の山下議員の方からの御質問の際の件でございますが、世界で民営化された水道が再公営化されているケースもあるということでございまして、その中においては、民営の水道事業者が水を供給しておりました二億五百万人のうち四千五百万人分が再公営化というふうな形に変わっている、そういった御指摘、やりとりがあったわけでございます。
 これにつきましては、世界銀行において二〇〇九年にまとめられた途上国等における調査報告に基づくものでございます。


○田村(貴)委員 フランス・パリ市の事例を述べたいと思います。世界的水メジャー二社と公設民営で一九八四年に契約したものの、水道料金が何と二・二五倍になった。財務の不透明さなどに市民の批判が高まり、二〇一〇年に再公営化して八%値下げになったという状況です。
 こんな例が、厚生労働省も調査して把握されていますよね。件数で、二〇〇〇年から二〇一五年にかけて、再公営化は世界で二百三十五件であります。まさに世界の流れも、民営化になったんだけれども、これでは料金が生じた、そして会計が不透明であるということで、国民、市民の反発を招いて、再公営化になっている。これは世界の流れであります。
 さらに、民営化とそれからコンセッションのやり方の中で、やはりいろいろ問題が出てまいります。
 もう時間がなくなってきましたので多くを述べることはできないんですけれども、例えば、水道料金の算定の仕組みの中で、これを民間事業者がやった場合に、民間のいわゆる料金積算の根拠に、株主への配当、つまり事業報酬、これを原価として加えることは可能なんでしょうか。


○橋本政府参考人 お答えいたします。
 昨年十一月に取りまとめていただきました厚生科学審議会の水道事業の維持・向上に関する専門委員会の報告書がございますが、この中におきましては、「民間企業が水道事業の運営に関わることを前提にした料金原価の算定方法については、公営企業の場合と同様に総括原価主義とするとともに、総括原価に法人税や配当金などを含めることができることを明確にすべきである。」というふうに提言されております。
 厚生労働省といたしましては、この提言に沿って詳細の制度設計に取り組んでまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 配当も含まれる、それから法人税等の税金も、総括原価方式の中で料金収入の中に位置づけていくわけなんですよ。我が自治体の水道事業者が民間に移って、そこまで考えて料金を設定したらどうなるか。ほとんど値上げとなってまいりますよ。こういう事態が海外で示されているわけですね。これはやはりやってはだめです。
 私、せっかくきょう政務官にお越しいただいたので、水道法に基づく水道事業の原点について確認させていただきたいと思います。
 水というものは、生物が生きていくためには欠かせぬものであります。基本的人権であります。憲法二十五条に基づく基本的人権、生存権に基づく権利であります。そして、公共財であります。
 この視点に立つことが何よりも大事だというふうに思いますけれども、厚生労働省は、水道法に照らして、この水道事業の原点をどのように考えておられるのでしょうか。


○馬場大臣政務官 水道法は、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的といたしております。
 今や国民生活や産業活動にとって必要不可欠な存在となった水道について、今後もその持続性を確保することは非常に重要だと認識しております。
 したがって、こうした基本となる目的を堅持しつつ、直面するさまざまな課題に対応するため、まずは、今般の水道法の改正に全力で取り組んでまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 もうちょっと足元を見た方がいいんじゃないかなというふうに思います。
 きょうは、国内と世界の水道の流れを見てきましたけれども、水道事業の民営化は、制度的にも、それから、笛吹けど踊らず、実態的にもなじまないことがはっきりいたしました。
 水道というのは、憲法二十五条に基づく国民の生存権であります。そして、国民の命と生活に欠かせぬサービスであります。非営利の公共サービスを営利の経済活動にしてはならないのであります。
 時代逆行の水道事業の民営化はやめるべきである、このことを強く申し上げて、きょうの質問を終わらせていただきます。
終わります。ありがとうございます。