193-衆-総務委員会 「自治体専門職員育たない」 田村貴昭氏に総務相 衆院総務委

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 きょうは、トップランナー方式と地方交付税のあり方について質問をします。
 安倍内閣は、今年度からトップランナー方式を導入しました。民間委託等の業務改革を実施している地方自治体の経費水準を地方交付税の基準財政需要額の算定に反映するこのトップランナー方式の問題点については、私は本委員会で、また本会議質問において、ただしてきたところであります。
 お手元に、昨年十一月二十五日に開かれた経済財政諮問会議への高市議員提出資料をお配りしています。

(配布資料はコチラ)

 そこで、お伺いしたいのですけれども、トップランナー方式導入による基準財政需要額の減少額について示していただけるでしょうか。二〇一六年度における減少額、二〇一七年度の減少額の見込み、それから集中改革期間三年間の累計減少額の見込みについて教えてください。


○黒田政府参考人 お答えいたします。
 トップランナー方式の導入によります基準財政需要額の算定につきましては、基本的に、個々の項目につきまして、三年または五年をかけて導入することとしております。
 そのことから、二〇一六年度の減少額は四百四十一億円。二〇一七年度の、この前年度からのさらなる減少見込み額となりますが、これは、二〇一六年度業務分に二〇一七年度導入業務分約三十億円を合わせまして、四百七十億円。それから、二〇一八年度の前年度からの減少見込み額につきましては、二〇一八年度が対象業務が変わらないとした場合になりますが、その場合であれば、同様に四百七十億円となります。
 これら二〇一六年度から二〇一八年度における累計の減少額は、約千三百八十億円となる見込みでございます。


○田村(貴)委員 トップランナー方式の導入によって、二〇一六年度でも四百四十一億円、集中改革期間の三年間では、基準財政需要額は累計約一千三百八十億円減少するということが見込まれます。地方の固有財源である地方交付税の削減を行うものであると指摘せざるを得ません。財源保障機能を適切に働かせ、住民生活の安心、安全を確保することを前提にと言われましても、現実に基準財政需要額がこれだけ削減されるわけなんですね。
 トップランナー方式の導入というのは、地方自治体に一層のアウトソーシングを押しつけるために、地方交付税の算定を通じて、政策誘導を図るものであります。小規模自治体などに配慮するといっても、その政府の判断に頼るしかありません。その点でも、問題は非常に大きいと言わざるを得ません。
 次に、トップランナー方式の、次年度、平成二十九年度、二〇一七年度の取り組みについてお伺いをします。
 青少年教育施設管理や公立大学運営の追加導入を打ち出していることは、これは非常に重大であります。
また、配付資料二枚目でありますけれども、検討対象業務のうち窓口業務については、「平成二十九年度の導入を見送り、引き続き検討する。」とされています。一方で、図書館管理、博物館管理、公民館管理、児童館管理の四業務については、年度の条件は付さず、「地方団体の意見等を踏まえ、トップランナー方式の導入を見送る」と明記されています。
 そこで、高市大臣にお伺いします。
 総務省としては、図書館管理、博物館管理、公民館管理、児童館管理については、トップランナー方式の対象から外すということでよろしいのでしょうか。


○高市国務大臣 図書館、博物館、公民館、児童館等管理の四業務につきましては、業務の性格として、既にトップランナー方式を導入した庁舎管理などの定型的業務とは異なり、教育、調査研究、子育て支援といった政策的な役割を有していること、このため、地方団体からは、司書や学芸員などの専門性の高い職員を長期的に育成、確保する観点から、指定管理者制度を導入していないという御意見が多いこと、また、実態としても指定管理者制度の導入が進んでいないことなどを踏まえまして、トップランナー方式の導入を見送ることといたしました。
 今後につきましては、今申し上げましたようなことを踏まえますと、トップランナー方式をすぐに導入できる状況にはないと考えております。
 まずは、各地方団体の指定管理者制度導入などの状況を見える化、比較可能な形で公表するということとともに、毎年度、ヒアリングなどを行う中で、地方団体の取り組みの状況を見てまいりたいと思います。


○田村(貴)委員 図書館、博物館、公民館、児童館、この管理についての四業務についてはトップランナー方式の導入をしないと。総務省の立場を今確認させていただきました。
 配付資料の「今後の方針」の欄には、「以下の地方団体の意見等を踏まえ、」とあります。地方団体、関係省庁の意見、日本図書館協会などの関係団体、二〇〇八年五月における社会教育法改正における附帯決議など、実に多方面の状況を見ての判断、結論に至ったのではないかなというふうに思うわけであります。
 経済財政会議のもとにある第十三回制度・地方行財政ワーキング・グループの昨年九月二十三日の議事要旨を拝見させていただきました。トップランナー方式を一分野でも前進させることを主張する出席委員に対して、関係省庁の方から以下のように回答されています。読み上げます。
 地方団体から聞いているのは、専門的な職種の人材を長期的に育成していかなければならない。自分たちのところで採用して育成する方が安定的だという意見がある。関係府省でもいろいろな懸念があり、図書館協会を初め関係団体も指定管理の導入について慎重な意見も多く、全体としては、指定管理者制度について全体が前向きに推進している状況ではないのだろうと思うと。業務そのものの問題なので、総務省が指導することに対しての反発も大きく、これまでのものとは少しステージが違うという印象を我々も持っているという記述があります。
 確認しますけれども、このやりとりは総務省のものでしょうか。


○黒田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の第十三回制度・地方行財政ワーキング・グループの議事要旨におきまして、トップランナー方式について地方団体の意見に言及している部分がございますが、これは総務省の出席者が、地方団体からのヒアリング等を踏まえて、地方団体の意見を紹介する発言をしているものでございます。


○田村(貴)委員 要するに、全体として、図書館や公民館管理への指定管理者導入の歩みというのはつくれていないということだというふうに思うわけであります。
 日本図書館協会は、昨年九月六日付で、「図書館に係る地方交付税算定におけるトップランナー方式導入に強く反対します」との理事長名の見解、意見、要望を出しています。 配付資料の三枚目にこの部分を持ってまいりました。その中の一部を紹介させていただきます。
 事業者の利益が全く生まれない構造により、民間事業の活性化につながらないばかりか、地方公共団体のサービスの低下を招いている。競争入札による指定管理者制度の導入により、事業者は人件費を切り詰め、専門職員である司書たちは日給月給制の低賃金で雇用され、また、指定管理者制度は五年間程度の期間限定があるため、被雇用者は五年で雇用が打ち切られ、おびただしい非正規職員を新たに生み出す要因となっています。文部科学省の調査では、今や、図書館員の六割が非正規職員との統計もあり、文化国家として世界に顔向けのできない現実を生み出していますと述べているわけであります。
 また、二〇〇八年五月における社会教育法改正における附帯決議、これは二〇〇八年五月二十三日の衆議院文部科学委員会で全会一致した附帯決議でありますけれども、この附帯決議の中では、国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びそのあり方についても十分配慮し、検討することとあるわけであります。
 そこで、文部科学省にお尋ねします。
 この附帯決議を受けて、文科省はどのような対策をとられたんでしょうか。
 また、図書館管理、博物館管理、公民館管理に対するトップランナー方式の導入に対して、文部科学省はどのような意見をお持ちでしょうか。


○神山政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、第一点目、御指摘のございました平成二十年の社会教育法等の一部改正法の附帯決議に基づく対応でございますが、私ども、図書館法、博物館法等に基づきます、その設置及び運営上の望ましい基準という文部科学省の告示がございます。これを改正いたしまして、指定管理者制度を導入する場合の留意点として、施設の事業の継続的かつ安定的な事業の確保、事業の水準の維持向上、専門職員の確保及び資質、能力の向上等を規定し、各教育委員会に対し周知を図っているところでございます。
 また、トップランナー方式に対する私どもの懸念、意見といたしましては、図書館、博物館、公民館につきましては、それぞれの法律の規定に基づき、司書、学芸員等の専門職員が地域や住民の多様なニーズに応じて教育活動を提供しているところ、これらの役割を担える適当な指定管理者を得ることができない等の理由により、指定管理者制度を導入していない自治体が多くございます。こういった中で、同制度を標準とするトップランナー方式を導入した場合、施設の機能が十分に果たせなくなるとの懸念を伝達したところでございます。


○田村(貴)委員 このように、トップランナー方式を掲げて、いろいろな団体、いろいろな機関が、混乱と不安を招いてきたということだというふうに思います。
 最後に、高市大臣にお伺いします。
 昨年十二月十四日に開かれた地方財政審議会の答申、「今後目指すべき地方財政の姿と平成二十九年度の地方財政への対応についての意見」というところで、トップランナー方式について言及されています。読み上げます。「業務の性格として、これまでトップランナー方式として導入された定型的業務と異なり、教育、調査研究、子育て支援といった政策的な役割を有しており、民間委託等の業務改革が進んでいないものについては、トップランナー方式を導入するのは適当ではない。」というふうに記されております。
 この地方財政審議会の答申を大臣はどのように受けとめておられるでしょうか。


○高市国務大臣 地方財政審議会からいただきました意見書は、平成二十九年度の地方財政への対応について取りまとめられたものでございますので、トップランナー方式に係る平成二十九年度の取り組みにつきましては、この意見書を踏まえて適切に対応いたしました。図書館管理など五業務以外の青少年教育施設管理と公立大学運営の二業務について、新たにトップランナー方式を導入することとしました。


○田村(貴)委員 図書館、博物館、公民館、それから児童館等の施設は、これは単なる公の施設ではありません。日本国憲法と教育基本法、そして社会教育法、図書館法、博物館法などに基づく、国民の学習権の保障を柱にした社会教育施設であります。住民の主体的な学びを通して、地域に自治を構築していく拠点施設であります。このことを強く指摘しておきます。
 最後に、地方自治体にアウトソーシングを押しつけて地方公務員の非正規化につながるトップランナー方式については撤回すべきであることを申し上げて、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。