193-衆-総務委員会 NHK予算案承認 全会一致 田村・梅村氏が質問 衆院総務委

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 三年ぶりにNHK新会長のもとでの予算審議であります。国民・視聴者の関心も高いものがあるかと思われます。
 NHK予算は、三年連続で全会一致の承認とは至りませんでした。上田新会長もこの三年間は本委員会に何度も呼ばれましたように、籾井前会長の言動をめぐっては、国民・視聴者から大きな不信と抗議の声が上がりました。そして、NHK経営委員会は、三度にわたって前会長を厳重注意しました。
 NHKの最高意思決定機関がNHKのトップを叱責したというのは、どういうことだったのか。この間の何が問題で、今何が大事であると上田新会長はお考えでしょうか。


上田参考人 お答えいたします。
 御指摘の前会長に対する三度の注意とは、一つ、就任会見の発言に対する注意、二つ、経営委員会での発言に対する注意、三つ、ハイヤー利用をめぐる経理処理に対する注意であったと承知いたしております。
 その理由について、経営委員会は当時、会長というみずからの置かれた立場に対する理解が不十分であったことや、ハイヤーの経理処理について、支払いに関する注意喚起や適切な指示を怠った責任があるということを指摘いたしております。経営委員だった私もそのように考えております。
 大事なことは、公共放送のトップである会長には高い倫理観と説明責任が求められるということであり、この点をよく自覚し、みずからも厳しく律して行動してまいりたいと考えております。


田村(貴)委員 石原経営委員長にお伺いします。
経営委員会は、昨年十月、次期会長指名に当たり、五つの資格要件を挙げました。その資格要件の一、NHKの公共放送としての使命を十分に理解している、二、政治的に中立であること、この二要件は基本的重要事項として、本人の資質に関する要件、ほかの三件よりも最初に置くというふうに議論があったというふうにも伺っております。
この経緯と意味について御説明をいただけないでしょうか。


石原参考人 お答えいたします。
 資格要件につきましては、項目を整理し、六項目から五項目にして並びかえたわけでございます。
 具体的には、旧資格要件の六番目にありました、業務遂行力があり、説明力があるについて、NHKの会長が広く国民から信頼を得られるのは大変重要なことであり、そのために必要なことが皆様に対してきちんと説明する力であるという議論があったことを踏まえて、この二つの要素を一つにまとめたわけでございます。
 また、業務遂行能力が重要なことは言わずもがなではありますが、構想力、リーダーシップを豊かに業務遂行する力は重要なことなので、これを一文にまとめました。
 その上で、旧資格要件の三番目にあった政治的に中立であるを二番目にしました。
 各項目の並び順につきましては、重要性の順という意味を持たせることもありますが、最初の二つの項目を大前提となる基本的な重要項目として、あとの三つの項目を専ら本人の資質に関する要素として並べかえたわけでございます。
 政治的中立は基本事項の一つであり、極めて大事なことでもありますので、順番を変えたわけでございます。


田村(貴)委員 政治的中立が極めて重要であるというような御答弁でありました。
 そこで、上田新会長に改めてお伺いいたします。
 会長の就任に当たりまして、政治権力との距離を置く、このことが、メディアから、そして国民から注文が寄せられています。
 放送法の原点である放送による表現の自由を確保すること、そのためには、放送事業者にとっての原点は、不偏不党、真実及び自律を保障することであります。会長としての姿勢が今問われています。
 政治との距離をしっかり保つということにおいて、改めて会長の所見を伺いたいと思います。


上田参考人 お答えいたします。
 NHKのよって立つところは、視聴者・国民の皆様の信頼であります。これが何よりも重要であると考えております。この信頼を得るためには、報道機関として、自主自律、不偏不党の立場を守り、公平公正を貫くことが公共放送の生命線であることを認識し、会長の職責をしっかりと果たしてまいりたいと考えております。


田村(貴)委員 今の話をまとめていきますと、あえて確認はしませんけれども、政府が右と言うものを左と言うわけにはいかないであるとか、原発の報道においては公式発表をもとにするとか、そういうことにはならない、当てはまらないということになります。うなずいておられているので、そういうことだと思います。念を押しておきたいというふうに思います。
 放送法の歴史についてお伺いしたいと思います。
 日本とアジアのあまたの命を奪ったさきの大戦、侵略戦争に、NHKは、政府の統制下に置かれ、そして戦争遂行の宣伝機関の役割を担ってまいりました。人々の考え方やあるいは信条に強い強い影響を与えました。この痛苦の反省の上に立って立てられたのが放送法であります。
 放送法第一条、放送の目的について。放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること、放送が健全な民主主義の発展に資するようにするとしています。私は、この意味は非常に大きいものがあるというふうに思います。上田会長の認識をお伺いいたします。


上田参考人 お答えいたします。
 御指摘の放送法一条は、放送法の目的を定めたもので、昭和二十五年に制定された放送法の根幹ともいうべき重要な規定であると私も認識いたしております。
 公共放送NHKには、この規定の意義を十分に踏まえ、広く視聴者・国民の皆様の負託に応え、放送の自主自律、公平公正、不偏不党を堅持して放送を行うことが求められているものと認識いたしております。


田村(貴)委員 放送法の原点に絶えず立ち返る、そして、恒久平和の憲法上の要請からあった、この   放送法が成り立ってきた経緯にまた立ち返るべきだというふうに私は考えます。
こうした原点に基づいて、社会生活の基本となる確かな情報を国民・視聴者に提供していく、そして、放送を通じて民主主義の健全な発展に資する、こうした番組づくりに取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、スーパーハイビジョン、4K、8K放送について質問をします。
 NHKや民放を初め多くの放送事業者が、二〇一八年十二月ごろから4Kの実用放送を行うというふうに伺っております。しかし、今の2Kのハイビジョン放送が自動的に4Kの高精細の画面になるだろうというふうに思っている国民の方も多いのではないか。実は、私もそうでありました。
 そこで、総務省にお伺いします。
今販売されている4Kテレビを買ったとして、来年、二〇一八年の4K実用放送をそのまま視聴することはできるんでしょうか。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 現在市販されております4Kテレビと申しますのは、2Kの映像をアップコンバートして高精細に表示できる機能だとかはございますけれども、来年十二月から開始されますBSの右旋、左旋、あるいは百十度CSの左旋といった4K、8Kの新しい実用放送の受信機能は搭載してございませんので、そのままでは視聴することはできません。


田村(貴)委員 そうなんです。いろいろと装置が必要になってくるわけなんです。4K、8Kのスーパー ハイビジョンの映像を国民が視聴するに当たっては、放送事業者ごとに割り当てられた電波、周波数によって、アンテナ、チューナー、それからテレビ等々の設備が必要になってまいります。
ここでは、NHKの4K実用放送を見るには何が必要なのかということについて述べていきたいと思います。
資料をお配りしています。
 今の2Kテレビで4K放送を見ようとした場合、例えば、現在、地デジとBSを視聴している方、もちろん4Kテレビが必要となります。そして、チューナーが今の4Kテレビには内蔵されていないので、新たにチューナーを買い加える必要があります。そして、今、地デジの放送のみを見ている、BSアンテナをつけておられない御家庭にとって、4K視聴をするときには、テレビが要る、そしてチューナーが要る、新たにBSアンテナが必要になってくるということです。
 4K放送を視聴するに当たっては、これらの機材が必要になってくるということでよろしいでしょうか、総務省。

 

(配布資料はこちら)


南政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、来年十二月から始まる新しい4K、8K実用放送を視聴するためには、現在発売されている4Kテレビに加えて、新たに外づけのチューナーが必要になってまいります。
 また、この4K、8K実用放送の中には、左旋偏波という新しい電波を使う場合もございますので、この電波を受信するためには、アンテナやブースターの一部機器を取りかえることが必要になってくる場合もございます。
 また、ケーブルテレビで放送をごらんになっていらっしゃる御世帯につきましては、放送提供時にセットトップボックスの新しいタイプの準備が必要になってくるというように考えてございます。


田村(貴)委員 電波、周波数によっては左旋回の新しいアンテナも必要になってくるということで、負担を伴うことには間違いがありません。
 それで、高市大臣、私、家電量販店にこの間ちょっと行ってきたんですけれども、テレビ売り場というのは、東京オリパラを見るために4Kテレビだというふうに大きな宣伝がされているわけです。そして、各メーカーのテレビのパンフレットを見ましたら、この重要事項がなかなか読みづらいですよね。総務省も努力はされていると思うんですけれども、そのパンフレットには、本当に小さい字で、そして隅の方に、4K、8K放送の受信機能は搭載されていません、4K放送を受信するには別にチューナーが必要です、これは本当に小さい字で書かれているわけであります。
 今この瞬間にも、楽しみにされて、テレビを買われている方がおられるわけですよね。しかし、その専用のチューナーはまだ市販されていません。混乱を招かぬように、こうしたところの周知を徹底すべきではないかなと思いますけれども、大臣、局長でもいいですけれども、御答弁いただけるでしょうか。


高市国務大臣 私も、以前より、まず、家電量販店のPOPなどでもう4K対応テレビと書いてあって、それにプラス外づけのチューナーが必要だということがわかりにくくなっていたり書いていないケース、それから、やはりテレビを 新しく購入されようとする方がごらんになるパンフレットにも、物すごく小さな字であったり書き方がわかりにくいということについて、強い問題意識を持っておりました。
 これは、家電メーカーの御協力も必要でございますけれども、新たな4K、8K実用放送の受信に必要な機器ですとか視聴方法について、十分な周知、広報を行っていくということが不可欠ですので、総務省で、現在も関係者と連携して、視聴者への周知広報活動を実施している最中でございます。


田村(貴)委員 地上アナログ放送から地上デジタル放送に完全移行して五年半余りであります。薄型のハイビジョンテレビを奮発して購入された世帯の多くは、まだ買いかえの時期には至っていないというふうに考えます。
 そして、今、4Kテレビを買ったけれども、何だ、チューナーがついていなかったのか、そのチューナーを買うには幾らかかるんだ。今、発売予定の業者さんの宣伝によりますと、二万円以下を目指すということでありますので、大きな買い物になるということであります。
 政府と民間企業も、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、4K、8Kテレビ、4K、8K放送の普及を掲げています。その目標としている数値があるというふうに聞いていますけれども、教えてください。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年六月に閣議決定をいたしました日本再興戦略二〇一六の中で、「二〇二〇年に全国の世帯の約五〇%で視聴されることを目指し、二〇一八年の衛星放送における実用放送開始など4K・8Kを推進する。」というふうに明記をさせていただいているところでございます。


田村(貴)委員 4Kテレビが今どれほど普及しているのか、それから、今御答弁あったように、どのように普及させていくのか。
 お配りしている資料をごらんいただきたいと思います。
 現在、二百十六万台であります。そして、この再興戦略の目標に照らして、二〇二〇年に世帯過半数を目指す、その予測値は二千六百三十三万台であります。これは、四年間で十二倍にふやそうという、言ってみれば国策であります。
 私は、技術の発展とかスーパーハイビジョンの導入及びその普及について異議を唱えることはいたしません。しかし、この4K放送を選択する、4Kテレビを購入することを選択するのは、あくまでも視聴者であります。その時期をいつにするかというのも、これは視聴者の判断、決めることであります。家庭への普及というのは市場が決めることであります。ですから、国が押しつけてはいけないと私は思うんですけれども、高市大臣、いかがでしょうか。


高市国務大臣 御指摘のとおり、これは視聴者が選択されることでございます。
 来年十二月に放送が開始されます衛星での4K、8K放送は、視聴を希望される方が、視聴に必要な設備を設置するなど、それぞれの御負担で視聴をしていただくことが基本でございます。
 一方で、来年十二月以降も現在の放送は引き続き継続されますので、現在の放送の視聴を希望されるという方はそのまま視聴していただくことができます。
 先ほど上がりました目標値でございますけれども、これは二〇一五年七月に取りまとめられた第二次中間報告で、シンクタンクの協力を得て、二〇二〇年における4Kテレビの国内での普及を予測したものでございます。


田村(貴)委員 そうはいっても、政府が、再興戦略、いわゆる安倍政権の成長戦略で、全国の世帯の約半分、五〇%で視聴するという目標があると、これはやはり国民・視聴者は踊らされていくのではないかなというふうに思います。 4Kチューナーのついていない高価なテレビを買え、買えと。買ったはいいけれどもチューナーがついていない、また買うと。
私は、国民に対して、特定の家電製品の購入に対して政府が目標値を持つというのは、これはちょっとおかしいのではないかなというふうに考える次第です。
 そこで、振り返ってみたい文書がございます。放送事業と産業振興との関係で振り返ってみたい文書。「公共放送NHKに何を望むか 再生と次代への展望」と題された、デジタル時代のNHK懇話会報告書という文書であります。これは二〇〇六年、平成十八年の六月十九日に出されています。放送事業と産業振興との関係で何と述べられていますか。御紹介いただきたいと思います。


坂本参考人 お答え申し上げます。
 デジタル時代のNHK懇談会報告書、二カ所にあります。
まず初めの「はじめに」ですけれども、「NHKを含めた放送事業はそれ自体が多様な文化を創造し、行き交わせる社会的装置であり、民主主義社会を豊かに育むために不可欠なインフラストラクチャーでもあって、これを安直な利潤追求のための道具や産業振興策の手段として使ってはならない、ということである。放送と通信がめまぐるしい競合・融合・連携を試行錯誤するなかでこそ、放送の理念、とりわけNHKの公共性の理念の再認識が求められている。」
 それから、もう一カ所ですけれども、「懇談会の基本的立場 公共放送はどうあるべきか」というところで、「公共的性格を持つ放送は、産業振興策の道具などではなく、ましてや政争の具などに利用してはならない、ということである。このことはとりわけNHKと民放の当事者、また放送事業に関与する立法・行政当局者の見識としなければならない。」
 以上であります。


田村(貴)委員 これは非常に重要な指摘だというふうに、私も改めて読んで理解をしたところであります。
 デジタル時代の公共放送を安直な利潤追求のための道具や産業振興策の手段として使ってはならない、このデジタル懇の指摘を、NHK会長、上田会長、重要だと考えておられますか。


上田参考人 お答えいたします。
 デジタル時代のNHK懇談会報告書は、デジタル時代のNHKのあるべき姿を視聴者の視点から捉えたもので、公共放送に対する信頼を確立するためのさまざまな御指摘をいただいたものと認識いたしております。
 この御指摘は、放送と通信の融合時代に、目まぐるしくメディア環境が変化することを見据え、公共放送NHKの理念と役割を見誤らないように再認識させてくれるものと考えております。
 NHKがこれからも信頼される情報の社会的基盤としての役割を果たしていくために、しっかりとかじ取りをしてまいりたいと考えております。


田村(貴)委員 このデジタル懇の報告書は、「放送事業に関与する立法・行政当局者の見識としなければならない。」と、政府に対してもその言葉が向けられています。
 高市大臣、この指摘は大事であろうかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。


高市国務大臣 今紹介がありましたデジタル時代のNHK懇談会報告書ですけれども、十年以上前にこの懇談会は当時の会長の諮問機関として設置された懇談会でございます。総務省は参加をいたしておりません。
 特に、この報告書に対して、総務省としてコメントすることはございません。


田村(貴)委員 この指摘は政府に対しても向けられていることを指摘したいと思います。
 4Kテレビを買って、またチューナーも買って、それで納得ずくの上で4K放送を楽しまれる方は、それでいいわけであります。そして、現行の2Kのハイビジョンテレビでこのまま東京五輪を見たいという方も、それはそれでいいわけなんです。これはやはり視聴者の判断なんです。
 先ほど述べましたように、地デジに移行してまだ間がありません。そして、スーパーハイビジョンの導入は、国民・視聴者がみずから判断すべきものであります。これは無理強いしてはなりません。放送事業者も政府もそうです。市場において無理強いをすることがないように、国民合意を基本として進めていっていただきたいと思います。
 そして、2K放送が、現行地デジ放送が制約されることがないように、私はしっかりと要求したいというふうに思います。視聴者が決して、この新しい技術のもとで、4K放送のもとで置き去りにされてはいけない。
最後に、上田会長、いかがでしょうか。


上田参考人 お答えいたします。
 4K、8K放送につきましては、現在の2K放送と併存することを前提に、視聴者のニーズに応じて無理のない形で円滑な普及を図るもので、全ての視聴者に新たなテレビやチューナー、パラボラアンテナなどの買いかえをお願いするものではありません。
 このことを前提に、NHKといたしましては、国や関係事業者、団体などと連携して、視聴者の皆様にわかりやすく周知、広報していくことが重要だと考えております。


田村(貴)委員 わかりました。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。