193-衆-総務委員会  監査基準変更強いる 田村氏反対 地方自治法改定案可決

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 地方自治法改正案のうち、きょうは、監査について質問をします。
 改正案の百九十八条四、五項は、総務大臣は、普通地方公共団体に対し、監査基準の策定または変更について、指針を示すとともに、必要な助言を行うものとすることとあります。
 総務大臣が示す監査基準の策定または変更というのは、自治体の監査基準の変更を強いるものなんでしょうか。従来の監査基準はどうなるんでしょうか。お答えください。


安田政府参考人 お答えいたします。
 総務大臣が示す指針あるいは助言には、法的拘束力はないものでございます。
 既に自主的に監査基準を定めている地方公共団体におきましては、この指針や助言、それから他の地方公共団体の取り組みなどを踏まえつつ、改めて監査基準のあり方について議論をしていただきたいというふうに考えているものではございますけれども、もとより、その結果、既存の監査基準を維持することも差し支えないものでございます。


田村(貴)委員 総務省の調査、二〇一五年四月一日現在によりますと、都道府県の九七・九%で監査基準が策定されています。指定都市では八〇%、その他の市では五六・二%、町村においては四六・五%。監査基準がない団体においても、都市監査基準準則等の参考基準があります。つまり、基準がないわけではないわけであります。
 地方自治体は、基準を持って監査に当たってまいりました。そのあり方が間違いだったというのでしょうか、不十分だったということなんでしょうか。お答えください。


安田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘ございましたように、これまでも、個々の地方公共団体の任意の取り組みとして、監査に関する具体的な基準を定めている例が見られるということは承知しております。
 この中でも、挙がっておりました都市監査基準といったようなもの、これは、全国都市監査委員会に加盟する約八百の都市に共通の規範性を持った基準を設けようとするものでございまして、内容といたしましても、内部統制との連携を盛り込むなど、先進的な取り組みだ、このように考えているところでございます。
 今回の法改正でございますが、全体として監査の質の向上を目指すという考え方でございます。このため、指針を総務大臣が策定して、助言をしていくということを考えているわけでございますけれども、この指針の策定に当たりましては、こうしたことから、監査実務者の参加を求めまして、この都市監査基準を初めといたしまして、これまでの先進的な取り組みを反映させるとともに、監査の専門家などからも意見を聞くということを想定しておりまして、こういう場を通じまして、質の向上に資するものをつくっていきたいというふうに考えている次第でございます。


田村(貴)委員 自治体にはどういったことを求めていかれるんでしょうか。監査基準の策定それから変更についての指針については、どういう内容を検討されていますか。


○安田政府参考人 お答えいたします。
 総務大臣が定める指針の内容でございますけれども、これは、各地方公共団体が監査基準を策定する際に参考となります、監査を行うに当たっての必要な基本原則といったようなものを定めることを想定しております。
 例えば、監査の目的ですとか監査委員の役割、責任、監査の実施に当たってどういう点を重視すべきか、監査結果の報告に当たってどういう点を記述すべきかといったような内容でございます。


田村(貴)委員 高市総務大臣に伺います。
 この条項なんですけれども、行うことができるではなくて、行うものとすることと、いわゆる義務づけ規定になっております。
国の地方自治体への関与を強めることになりはしませんか。地方自治体の自主性、自立性との関係で、この条項はどう捉えたらいいんでしょうか。


高市国務大臣 現行制度におきましても、技術的な助言というものは各大臣が任意で行うことができることとされておりますが、今回の改正案では、監査の質を高めること、住民の監査に対する信頼向上を図るため、総務大臣の責務として、監査に関する考え方を指針として示し、これに関連した必要な助言を行うということにしています。
 この指針や助言には法的拘束力というものはありませんので、各地方公共団体の監査委員の方々は、この指針や助言を踏まえつつ、地域の実情に応じた監査基準を定めていただくということが可能でございます。
 むしろ大臣に対して責務を課したものであり、大臣による関与が強まるというものではなく、また、地域の自主性、自立性を損なうものとは考えておりません。


田村(貴)委員 大臣、確認ですけれども、そうしたら、地方が統一監査基準をつくっていいんでしょうか。
 地制調の答申では、統一的な監査基準は、地方分権の観点から、国が決めるのではなく、地方公共団体が共同して定めることが適当であるというふうにしたわけなんですね。地方が合い議して統一監査基準をつくったら、これはいけないわけなんでしょうか。どうなんですか。


安田政府参考人 三十一次地制調答申では、委員御指摘ございましたように、統一的な監査基準を地方が共同してつくるという考え方が示されていたわけでございます。
 ただ、この考え方につきましては、私ども、これを法案化するに当たりまして、都道府県の監査委員の協議会、都市の監査委員協議会、町村の監査委員協議会等と議論させていただきましたけれども、特に、地方で共同して法人をつくって、その法人が統一監査基準をつくるということをイメージしていたのでございますけれども、その必要は必ずしもないのではないかという御指摘がございまして、今のような形になったということでございます。
 もちろん、今回の枠組みの中でも、各都市なり町村なりが共同してベースのようなものをつくろうということであれば、それは差し支えないものというふうに考えている次第でございます。


田村(貴)委員 ベースのようなものをつくればそれはいいということですね。確認しました。
 日本弁護士連合会の意見書が出されていますけれども、地方公共団体の自主性及び自立性を損ない、地方分権の流れに逆行するものであるとともに、監査執行上の裁量を損ない地方の実情を反映しない画一的な監査を強いるおそれがあり、この条項は削除すべきであると。これは重要な指摘であるというふうに思います。
 続いて、議会選出の監査委員について質問します。
 第百九十六条一項、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとすることとしてあります。義務づけを緩和する目的は何でしょうか。


安田政府参考人 お答えいたします。
 議選監査委員でございますけれども、監査委員と議会の議員としての地位をあわせ持つ者でございます。現行制度では、全ての地方公共団体において議選監査委員を選任するということが必要とされているものでございます。
 監査委員と議会は、地方公共団体の執行機関をチェックする役割は共通するものではございますけれども、監査委員は、財務管理とか経営管理などの専門的な見地から、長の執行した事業などについて事後的にチェックする機能が求められる一方で、議会は、地方公共団体の行政全般にわたって幅広い見地から執行機関をチェックする機能、これが求められるわけでございます。
 こうしたことを踏まえて、監査委員と議会のチェック機能における役割分担の純化も地方公共団体のガバナンスのあり方としてあり得るために、改正法案において、地方公共団体の判断によりまして議選監査委員を選任しないことも選択肢として認めることにしたわけでございます。
 あくまで、これは選択肢として認めるということでございまして、従来どおり議選監査委員を置いておいても、それはもちろん差し支えないわけでございます。
〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕


田村(貴)委員 例えば、二人監査の自治体があります。そして議選監査委員がなくなるとします。そうしたら、もう一人の監査委員はいわゆる識見委員ですよね。往々にして、自治体のOB職員の方、OBの方が就任されることが多いと思うんですけれども、そうすれば、もといた自治体ですから業務に精通している。つまり、監査の中立性が低減する、OBの権限が高まっていくのではないか、そういう懸念があるわけですけれども、いかがですか。


安田政府参考人 お答えいたします。
 監査委員は独任制の機関として役割が与えられておりまして、他の合議制の行政機関と異なりまして、個々の監査委員が単独で職務権限を行使することができるものでございます。
 議選監査委員を置かないこととした場合に、その後任には識見を有する者が任命されまして、その専門的な立場で、当該自治体とのしがらみなく監査を行うことができることになるものでございまして、自治体OB選出監査委員が置かれている場合であっても、監査の専門性や独立性の確保に影響が出ない人材を選出することは十分可能であるというふうに考えております。
 また、自治体OBが監査委員になっている割合でございますけれども、おおむね、全体で一一・八%という数字でございます。


田村(貴)委員 この総務委員会の審議の中でも、議選監査委員は名誉職ではないか、必要あるのかという議論もあったんですけれども、私は、ちょっと一例を出したいと思います。大臣も政務官もぜひ聞いていただきたいと思います。
 私の知り合いの地方議員が、今、監査委員を務めておられます。お話をお伺いしますと、なかなかいい活動をされているなと思ったんです。
 自分は議会から選出された監査委員だから、その監査で知り得たこと、そして、その結果についてはやはり議会に還元しようという活動をされています。監査結果について公表します。同時に、議長や副議長のところにも報告に行かれる。そして、全員協議会があったときには、議選監査委員として、一緒に監査のメンバーとして監査した結果をその協議会に報告するといったことをされているというんです。そうしたら、議員が定例会等議会の中でその監査の結果のことについてまたそれを議論する、そして政策立案につながっていくというお話を聞きました。
 これはなかなかいい活動だなというふうに思いますけれども、受けとめはいかがですか。
 町内会の監査業務をされたというんです。その結果を校区の代表者に集まってもらって報告したら、ああ、会計管理システムというのはこういうふうにするのかといったことで、勉強になった、そういう、好評であったということも私は伺いました。
 この議員さんは、名誉職だなんて思ったことはただの一回もないということで、監査に邁進されているということであります。
議選監査委員もしっかりと役割を果たして頑張っておられます。議選監査委員がこれまで果たしてきた役割や業績を否定したり過小評価してはいけないというふうに考えるものであります。
 お尋ねしますけれども、議選監査委員を置かないことができるとする規定を、置かないようにしようというような風評が広がってはいけないと思いますけれども、大臣、政務官、どちらがお答えになりますか、お聞かせいただきたいと思います。


冨樫大臣政務官 お答えいたします。
 私自身も議選監査委員を務めたことがあります。そういう意味では、役割あるいは業績は理解をしております。
 それをもって、第三十一次地方制度調査会でも、議選監査委員は実効性ある監査を行うために導入されたものであり、そうした役割を担うことについて評価する意見があったところであります。
 こうした中で、今回の法案では、監査委員と議会のチェック機能における役割分担の純化を地方公共団体の判断で可能とするため、条例で定めることにより、議選監査委員を選任しないことを可能とすることにしております。
 各自治体におかれては、監査委員の役割等について地方公共団体内でよく御議論をいただき、こうした条例を置くことが適当かどうか御検討いただきたいと考えております。
以上です。


田村(貴)委員 それでは、民進党提出の修正案についてお伺いをしたいと思います。ちょっと順番を変えますけれども。
 修正案は、議会議決による長などの損害賠償請求権の放棄をやむを得ない場合を除き禁止するものとしています。一方で、地方自治法第九十六条十号は、議会の議決事件として権利の放棄を定めており、これが損害賠償請求権等の議会議決による放棄の根拠ともなっているわけであります。
 議会の権限を制限することについてのバランスについて、どのように提案者はお考えになっておられますか。


奥野(総)委員 御指摘のとおり、地方自治法九十六条第一項第十号におきましては、普通地方公共団体が権利を放棄する場合には、原則として議会の議決が必要となるという手続的規定、手続的根拠を定めた規定というものが置かれています。
 一方、修正案については、住民訴訟の対象となる職員等に対する損害賠償請求等の放棄を実体的側面から制限するものでありまして、住民訴訟の対象となる職員等に対する損害賠償請求権等について、御指摘のように、やむを得ない事情によるものと認められる場合等以外は、議会の議決によっても放棄することはできないと定めているものであります。
 ですから、地方自治法の規定は手続規定、我々の規定は実体的側面から定めた規定でありまして、修正案の方は、議会の権限を過度に損ねることがないように、原則は放棄できないとしつつも、やむを得ない事由の場合には放棄できることとして、議会の権限を過度に損ねることなく、住民訴訟制度の実効性を担保しようとするものでありまして、我々としては妥当なものと考えているところでございます。


田村(貴)委員 よくわかりました。
 やむを得ない事情によるものであると認められる場合の、そのやむを得ない事情というのは、具体的にはどのようなことを想定されておられるんでしょうか。お伺いします。


奥野(総)委員 今回の修正案によりまして、損害賠償請求権等の放棄については原則禁止としていますが、今申し上げたように、その例外として、御指摘のように、「法律若しくはこれに基づく政令に特別の定めがある場合又は当該行為若しくは怠る事実が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであると認められる場合」を規定させていただいています。
 前段の「法律若しくはこれに基づく政令に特別の定めがある場合」ということについては、例えば、地方自治法及び同法施行令の規定によって、債務者が無資力等の状態にある場合に一定の条件のもとで債務を免除することができることなどが挙げられます。
 そして、御指摘のその他やむを得ない事情と認められる場合ということについては、例えば、上司の業務命令などに基づいて違法に公金の支出や財産の処分を行ってしまった、そしてこれによって地方公共団体に対して損害を与えた場合であって、こうした違法な公金の支出や財産の処分が避けることのできない事故、ちょっと繰り返しになりますが、その他やむを得ない事情だったと情状酌量の余地があるような場合、こういうものを想定させていただいています。
 いずれにしても、放棄できるかどうかということは、基本的には議会の裁量に委ねられている現行制度よりも相当程度厳しくなるということで考えております。


田村(貴)委員 提案者に政府原案に対する御見解もお伺いしたかったところなんですけれども、時間が参りました。
 以上できょうの質問を終わります。ありがとうございました。