193-衆-総務委員会 業務分断され非効率 参考人 窓口委託化に反対

竹内委員長 本日は、本案審査のため、参考人として、岡山県真庭市長太田昇君、中央大学名誉教授今村都南雄君及び日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長福島功君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。まず、各参考人からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず太田参考人、お願いいたします。


太田参考人 真庭市長の太田でございます。
 参考人として、私から、今回の地方自治法等の一部を改正する法律案について意見を申し述べたいと思います。
 まず一点目、内部統制についてでございます。
 どのような組織であっても、事務の適正性を確保する、そして効率的、効果的な業務を推進していく、そのためには、適切に情報が集められ、重要度に応じて各レベルでの判断をしなきゃならないというふうに思っております。これは地方自治体であろうと同じでございます。
 しかしながら、職員の異動ということがございます。そしてまた、新しい案件もあります。複雑な、各部局にまたがるようなものもございます。それから、真庭市が九カ町村合併ということで、そういうふうに合併をして、十年たっても一緒になってまだまだというところもございます。そういうようなところで、適切に情報が集められ、共有され、そしてレベルに応じた判断、これがなかなか難しいという現実もあります。
 そうしたいわゆるリスク、これを、事前にそういうものがあるものだというのを認識して体制を整えていく。そして、そういう中で一定の、過度の安心はしたらだめですけれども、安心感を持って首長が政策判断に集中していくということ、それが大事だと思っておりますから、民間でも進んでおりますが、こういう内部統制について進めていくというのは大事であり、その根拠というのは必要だろうというふうに思っております。
 次に、監査制度の充実強化についてでありますが、私は、従来から、地方自治体の監査機能をもっと充実させなきゃならないというふうに思っておりました。
 ある改革をした県の首長さんがおっしゃっていましたけれども、監査委員事務局にやり手の職員を持っていったんだということを言われていましたが、そういうことで、いい意味で強化をする必要があると思っております。先ほど述べました内部統制というのが一方ではある。一方では、監査についても、いい意味で強化していく必要があるというふうに思っております。
そういう中で、監査のあり方を徹底するということで、各自治体において監査基準をつくっていくということは大事だと思います。ただ、なかなか、真庭のように人口五万を切るようなところで、一からつくれと言われるよりは、少し参考になるものがあった方がありがたいと思っております。
 そういうことで、今回の改正については必要なものだというふうに思っております。ただ、それをうのみにするのではなくて、それぞれがまた監査基準をこなしていくということが大事だと思っています。
 その次に、首長等の損害賠償責任の見直しでございます。
 住民訴訟制度、これ自体は本当に必要な、緊張感を持つのに非常にいい制度だと私は思っております。ただ、いたずらに萎縮をするようなことがないことも大事だろうというふうに思っております。
 過去の経験から、そしてほかの事例から、国の方が法律の解釈誤りをして地方自治体が違法性を問われたとか、それから、相手方との交渉が必要な土地の購入で、過失がないのになと思うようなことで責任を問われるケースなどもありました。
 私は、京都府の職員をしておりました。そのころ、その中の京都市さんのことでありますけれども、京都市長さんに対して二十六億円余の損害賠償を認めた判決がなされました。
 つまびらかには存じませんけれども、住民ニーズに応えてゴルフ場開発を不許可にした、そしてその結果、開発業者から損害賠償を求められて用地を購入した、その価格決定が高過ぎたということで損害賠償を求められたものですけれども、この価格そのものは、民事調停において裁判所の判断に従った、そしてまた鑑定もし、議会の議決も得ているというものでありますが、住民訴訟では、裁判所が決定するときに異議を申し立てなかったことに首長、市長の過失があるというようなものでありました。
 こういうものについてまで、二十六億円という損害賠償は、結局、相続の方が限定相続したというようなことをお聞きしておりますけれども、こういうことについては、やはり少し制度として考えていただく必要があると常々から思っておりました。
 今回の改正は、条例によって、善意でかつ重過失がない場合に賠償責任の限度額を設けるというもので、これぐらいは、会社法でもあるように、していただかなければならないというふうに思っております。
 一方、損害賠償請求権の議会による放棄の議決ということもございますけれども、これについて、監査委員の意見聴取を義務づけるということでありまして、やはりこういうことは安易にすべきじゃないということもありますから、まさに、監査制度の強化とともに、監査委員の意見を義務づけるというのは必要なことだろうというふうに思っております。
 今回の改正で、首長や職員の個人責任のあり方について、自治体が条例によって事前にルールを決めた上で、事後的に請求権を放棄する際に監査委員の意見を聞く、先ほど申し上げましたけれども、そういうことで、これまで以上に、首長の方も議会に対して説明をする責任が強化されるというふうに思っております。
 次に、地方独立行政法人の業務への窓口関連業務等の追加についてでありますが、各自治体それぞれ、行政を経営するという観点から仕事をしていると思っております。
 市町村の、特に地域福祉関係の仕事とか、仕事量も権限も非常に増しております。そういう中で、市役所が担う業務、それを、行政サービスを提供して、市が何でもすればいいんだというのから、自治体が地域を経営して、そして市が経営責任を果たすとともに、住民との協働の中で一緒に仕事をしていくという住民参加という観点も必要だろうというふうに思っております。
そういうことで、真庭市でも、市がやるべきこと、できること、それは徹底的にしよう。しかし、協働すること。そして、一定、出せるものは出していく。全体として、行政が円滑に、そして行政サービスを上げていくということになることはやろうというふうにしております。
 その中で、民間委託もそうでありますけれども、中山間の地域では一人の職員が多くの仕事を抱えています。そういう中で、民間に委託することがなかなかできないような、そして、しようにも民間企業がないというようなこともあります。
そういう中で、民間企業ではなくて地方独立行政法人というような、行政にほぼ近い、また首長の関与もできるというような、そういうところに一定の業務を負わせるという方がかえっていいんじゃないかという思いを持っております。
 今回、地方独立行政法人に窓口業務を行わせるということで、いろいろな意見はあるかもしれませんけれども、みずからつくった法人でその一連の業務を、今の民間委託ならば受け付けと引き渡しという機械的なことしかできない、一定、定型的なものに限り全体を任せることができるということは、これはコスト削減にもつながりますし、そしてまた、一定の縛りを法律改正の中で関与してかけるということですから、これはこれでいいものだというふうに思っておりますし、そういう選択の余地を広げていくということが必要だろうと思っております。
 そういうことで、安易なアウトソーシングがいいとは言いませんけれども、先ほど申し上げましたように、まとめれば、行政の仕事が非常に多様化して多くなっている、その中で、安易に職員をふやすわけにもいかないという中で、公平性、公正性を担保しながら、地方独立行政法人の関与を強めながらそこに定型業務を出していくということは、私は、一つの選択、それができるようにしておくということが必要だろうというふうに思っております。
 以上、私の参考人としての考えを陳述させていただきました。御清聴ありがとうございました。(拍手)


竹内委員長 次に、今村参考人、お願いいたします。


今村参考人 一連の地方自治法本体の一部改正とあわせて、御承知のとおり、地方独立行政法人法、この改正が提案されております。
 私は、まずはこの冒頭陳述では、地方独立行政法人法の一部改正、この問題を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。
 申しおくれましたが、私の専攻は行政学でございまして、これまで、国の行政改革との関連では、かつて、ちょっと古い話になりますが、総理府に置かれておりました行政改革委員会の官民活動分担小委員会の参与として、いわゆる官民関係のあり方について調査審議する機会がございました。また、地方自治との関係では、小泉内閣時代に、地方制度調査会の委員を二十七次と二十八次、二期務めた経験がございます。
 さて、御承知のとおり、我が国の独立行政法人制度は、イギリスのエージェンシー、いわゆるエグゼクティブエージェンシー、これがモデルでございました。
 その導入、制度化に先駆けて、これまた古い話になりますが、ちょうど私が行革委員会の官民活動分担小委員会にかかわっていたころでございますが、当時の総務庁長官武藤嘉文国務大臣みずからがエージェンシーの調査のために英国に出かけられまして、その調査結果の概要を記したペーパーなどが資料として提供されたことがございます。
 ところが、その年、といいますのは一九九七年のことでございますが、その年の暮れ近くに、御承知のとおり、行政改革会議最終報告におきまして、日本版エージェンシー、独立行政法人制度の制度設計が出されたわけですけれども、これは率直に申し上げて、行政のスリム化を急ぐ余り、イギリスのエージェンシーとは似て非なるものになってしまいまして、いわばエージェンシー化の外国産モデルをつまみ食いするところにとどまってしまったのではないか、そういう印象を私は持ちました。
 その結果として、私見では、我が国の独立行政法人制度、これは一般国民にとって非常にわかりにくいものになっている。一部では、ぬえ的な存在になっている、正体不明だと。実は、そのことは、独立行政法人通則法及び地方独立行政法人法の定義規定、今度の法律案関係資料におきましても二条は参考の中に入っておりますけれども、見ましても、そもそものこととして、なぜ独立の法人格を有する独立行政法人なのか、そのことがすんなりと理解できないわけでございます。
 しかし、今さらながら恐縮でございますけれども、我が国の独立行政法人制度は、独立の法人格を有する独立行政法人、これを設立するところに最大の特徴があるわけでして、イギリスのようなエージェンシーではございません。だからこそ、制度の名称自体に、独立行政法人、この用語が用いられているわけでございますから、この点に鑑みましても、地方独立行政法人法に即して申し上げますと、地方独立行政法人とは何か、このことに関して、その設立の主体たる地方公共団体の方々も含めて、なぜ当該普通地方公共団体とは別個に独立の法人格を有する独立行政法人を設立する必要があるのかということを十分に自治体関係者に理解していただくことが出発点ではないか、そのことが肝要ではないか、このように考えるわけであります。
 このことと関連しまして、といいましても、定義規定の第二条、これは、この法律案関係資料では地方独立行政法人法第二条に関しましては四十一ページですかにございますので、それをごらんいただければと思いますが、この定義規定の第二条は改正の対象になっておりません。おりませんけれども、今度の一部改正で一つの焦点となる対象業務、すなわち窓口関連業務について、公権力の行使に係る事務も含めて、包括的に新設の申請等関係事務処理法人にその業務を行わせることの当否、これを取り上げさせていただきたいと思います。
 地方独立行政法人とは何か。このことに関する地方独立行政法人法第二条の定義規定との関連で見ますと、このたびの法改正、具体的には、別表、改正法律案の百十三ページ以下に一括して掲げられておりますが、この申請等関係事務について、それを地方独立行政法人の業務の範囲に新しく追加する、法の二十一条の第五号がそれでございますが、さらに、新設の、申請等関係事務処理法人に関する特例を定めた、これは第八章の二の諸規定、これに従って、同法人にその業務を行わせることとする。そうなりますと、法文上、それらの業務は、定義規定、二条で言うところの「地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、」そこに含められてしまうことになります。
 しかしながら、現時点でそうなることを前提にすることができない個別の地方公共団体におきましては、そうした窓口業務が果たして地方公共団体がみずから主体となって直接に実施する必要のないものなのかどうなのか、それを判断しなければなりません。
 ですから、本来でありますと、この第二条の条文につきましても、地方独立行政法人とは何かに関する定義規定でございますが、一部修正をすることがせめてものこととして必要ではないかと私は考えまして、地方公共団体がみずから主体となって直接に実施する必要のないものと認めることが、認めることができるもののうちぐらいですね、語を差し挟まないと、地方公共団体は、これは自分の問題として受けとめかねる問題ではないか、こういうふうに思うわけです。
 ここでは、その点、ひとまずおきますが、一体、このたびの改正が時宜を得た改正であるかどうか、この点を問題にさせていただきたいと思います。
 窓口業務の現場に行ってみれば一目瞭然のことでございますけれども、とりわけ基礎自治体の各部署で現に行われている窓口業務は、来庁した住民の求めに応じてぱっぱと処理できるような、単なる定型的な事務ばかりではございません。個別の申請をきっかけにして、定型的な事務処理にはなじまない住民側のさまざまな事情を察知して、各部署の協力を得ながら対処しなければならないことが少なくないわけであります。
 昨今では、このことをアウトリーチという片仮名用語で表現することが多くなっているようでございますが、元来それは、行政分野でいいますと、福祉行政の分野で、通例の業務範囲を超えてアウトリーチ、手を差し伸べることが必要になる場合にその言葉を使いますけれども、まさにそのアウトリーチが、昨今では福祉行政以外の他分野でも非常に多くなっております。
要は、自治体の窓口業務は、定型的な申請事務処理であっても、申し上げたアウトリーチの必要性を察知するアンテナ機能、これが殊のほか重要になっているわけです。したがって、定型的な申請事務処理を一括して外部委託するとか、あるいは申請等関係事務処理法人に委ねるとかいったことは、現場の実情を見ますと簡単にはまいりません。
 このようなことから、窓口業務に関するこのたびの法改正が果たして時宜にかなっているのかどうか、ましてや、人口減少社会における自治体間の連携強化、その連携強化の方策としてそれを役立てようとする狙いが戦略的に有効なものであるかどうか、これらの点について慎重に考える必要があるのではないかと思う次第でございます。最初の意見陳述は以上でございます。(拍手)


竹内委員長 次に、福島参考人、お願いいたします。


福島参考人 日本自治体労働組合総連合の福島といいます。
 本日は、参考人として意見陳述を御承認いただき、ありがとうございます。
 地方自治法等の一部を改正する法律案のうち、地方独立行政法人法の一部改正について意見を述べたいと思います。
結論的には、地方独立行政法人の業務に申請等関係事務を追加することは、窓口業務の行政サービス水準を低下させ、地方自治体の業務の集約そして統廃合を促進して地方自治体を空洞化させることにつながるものと考えており、反対であります。
窓口業務を地方独立行政法人に委託することは、以下の三つの点で重大な問題があるというふうに考えています。
 第一は、窓口業務を地方自治体の業務から切り離すことによって、住民の基本的人権を守る自治体の機能が損なわれることであります。
 自治体の窓口業務の役割は、出生から死亡まで、住民生活の権利取得にかかわる重要な場面において、憲法が保障する基本的人権を保障することにあると考えています。国民主権や地方自治に基づく主権者としての確認や証明、そして生存権や幸福追求権に基づく権利の保障としての各種保険、そして年金、生活保護、保育など、さらには、家庭生活における権利に基づく権利の保障としての戸籍や結婚、離婚、相続など、さらに納税の義務に基づく各種の業務などがあります。
 先ほどの今村先生が述べられたアウトリーチにかかわる問題でありますけれども、こういった業務がある上で、窓口に訪れる住民の方は、自分や家族の抱えている問題が十分に整理をされないまま役所を訪れる方が少なくありません。とりあえず訪れた窓口で、自分の抱えている問題や家族の状況を話してから用件に入る方もおられます。窓口業務にかかわる自治体職員は、住民の話を聞いて相談に応じ、さまざまな制度の窓口にもつなぎながら、その人の抱えている問題を解決していきます。
滞納している税金を納めに訪れた住民の生活の状態を聞いて、減免の要件に該当すると認められる場合については、減免申請ができることを説明したり、生活保護の窓口につなぐこともあります。
 また、税金のほかにも滞納している公共料金がないかを尋ね、国民健康保険料も滞納しているのであれば、保険証を取り上げられて病院に行けなくなる、こういうことがないように、生命や健康を優先する立場から、国保料をまず支払うよう助言することもあります。
 住民の基本的人権を保障する最善の対応ができるように、職員には深い専門的な知識が必要です。窓口に訪れた住民とコミュニケーションをとりながら、他の窓口の部署とも連携をして、住民の求める課題にきめ細かに対応できる総合的な判断力が求められます。
 窓口業務を定型的な業務とそうでない業務に切り分けて、定型的な業務とみなした業務を外部に委託すれば、本来は一体であるべき窓口業務が分断されることになります。自治体職員と地方独立行政法人の職員との間で業務について直接的なやりとりをすれば、それは偽装請負になってしまいます。
 結果、窓口業務を委託することで業務が非効率的になるとともに、自治体職員は窓口に訪れた住民の状況を直接に把握することもできず、関連する行政部門との連携にも支障が生じます。また、自治体職員の専門性やノウハウも失われることにつながりま す。
 第二の問題点は、住民の個人情報の管理や不正な請求などに対して、適正な対応ができなくなる、こういうおそれがあることであります。
 自治体が保有する個人の住民の情報は、常に外部からの窃盗や漏えいの危機にさらされています。窓口では、犯罪や不正な目的による申請が行われることが少なくありません。成り済ましによる虚偽の申請を見抜いたり、家庭内暴力や闇金融などの不正な請求から住民の安全、権利を守らなければなりません。
申請に訪れた方に対して、不審な点があれば質問をし、相手の挙動などを観察しながら虚偽を見抜く熟練した能力も求められます。
 窓口業務を担う職員には高い専門性が必要であり、業務に必要な専門性は、経験を積み重ねる、そういう中で養われるというふうに思います。専門性を育成、そして維持、継承するためには、地方公務員として安定した身分を保持し、安心して業務に従事できる賃金、労働条件を保障することが必要であります。
 一方、地方独立行政法人は、原則として企業会計原則によることとされ、毎年度の目標設定により、段階を追って経費削減などのリストラを推進することが求められており、住民の福祉の増進を図る役割を持つ地方自治体とは異なる運営が求められています。
 地方独立行政法人が業務の効率化を優先することにより、法人職員が低賃金で短期間雇用の非正規職員にされれば、業務についての専門性が蓄積されなくなります。短期間のうちに地方独立行政法人の職員が次々と入れかわることになれば、住民の個人情報の管理にも支障が生じてまいります。
 法案では、地方独立行政法人の業務の適正を確保するためとして、設立をした市町村から法人への立入検査や監督命令を行えるようにする、このようにしていますが、問題が発生してから事後的に対応を行うものでは、住民情報の漏えいなどで失われた損害は回復できないというふうに思います。
 第三番目は、複数の市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託するようにすることで、地方自治体の業務の集約、統廃合を加速させることにつながることであります。
 政府は、骨太方針の二〇一五の中で公的サービスの産業化を打ち出して、このように言っています。「市町村で取組が遅れている分野や窓口業務などの専門性は高いが定型的な業務の適正な民間委託の取組の加速をはじめ、公共サービスの広域化、共助社会づくりなど幅広い取組を自ら進める。その際、窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある先進的な改革に取り組む市町村数を二〇二〇年度までに倍増させる。」このように述べているわけであります。
窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託をすることで、地方自治体の空洞化が一層進められるおそれがあると思っています。
二〇一四年に東京都の足立区が戸籍業務を民間企業に委託したところ、戸籍法違反であるとかあるいは偽装請負の問題が発生して、住民からも批判を呼び、一部を直営に戻さざるを得なくなりました。
 今回の法案は、骨太方針の二〇一五に基づき、地方独立行政法人を突破口にして、窓口業務の包括的な委託を進められるようにする意図で提出されたものであるというふうに考えざるを得ません。
 自治体の窓口業務は、これまで述べてきましたように、住民の基本的人権にかかわる重要な業務を担っており、地方自治体がみずから主体となって、正規の自治体職員が直接担うことが必要であるというふうに考えています。したがって、今回の法改正に反対であることを改めて表明し、陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)


竹内委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。


田村(貴)委員 三人の参考人の皆さん、本日はどうもありがとうございます。
 日本共産党の田村貴昭です。どうぞよろしくお願いします。
 最初に、自治労連の福島参考人に何点かお尋ねしたいと思います。
 窓口業務は住民の権利に基づくものであり、そして、住民生活のさまざまな場面が窓口にあるとの御指摘でありました。
その窓口業務が委託されれば、申請に訪れた住民の状況を直接把握することはできず、関連する行政部門との連携にも支障を生じてまいります。同時にそれは、お尋ねしたいのは、自治体職員の専門性やノウハウも失われていくことになりはしないかと私は懸念するんですけれども、いかがでしょうか。


福島参考人 地方独法を設立したとしたら、定型的とはいえ、公権力の行使を含む業務をいきなりこなすレベルの職員というのは多分できないんだというふうに思います。そのためには、現に市町村で窓口業務につかれていた方を派遣するだとか、あるいは移行させる、こういった対応しかないというふうに思います。
 そうしたら、移行した段階で、いわゆる移行元の行政にとってはノウハウがなくなるわけでありますし、また、派遣をした人間が、行ってそこでノウハウが蓄積できて、戻ってきて異動してしまったら、やはりその職場にノウハウは蓄積されないということで、徐々にではあると思いますけれども、自治体職員の専門性やノウハウというのは薄れていくのではないかというふうに思います。


田村(貴)委員 その公権力の行使も含めた包括的な業務を地方独立行政法人に担わせようとしているわけであります。
 それは、自治体が直接強い関与をするから大丈夫だ、だから自治体が直接執行する理由はない、必要はないというふうな理由があるんですけれども、私としては釈然としないものがあります。御見解をお聞かせいただければと思います。


福島参考人 先ほども述べましたように、自治体職員の専門性やノウハウというのが徐々に失われていくということになります。そうなった場合に、法人職員がしている業務がわからないにもかかわらず、どんなときにどんな関与が必要なのか、その点も的確に判断ができるというふうには思いません。
 したがって、市町村が強く関与しようにも関与できない状況というのがつくられていくのではないかというふうに思っております。


田村(貴)委員 複数の市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託すれば、地方自治体の業務の集約、統廃合を加速させかねない旨の御意見だったというふうに思いますけれども、これはどういうことでしょうか。


福島参考人 今、総務省は連携中枢都市圏構想というのもやられております。住民にとっては行政サービスを受けるために必要なことかもしれませんけれども、中枢都市に対して業務をしてもらう、さらに、今回のように窓口業務も独立行政法人にしてもらう、このように次々と業務をアウトソーシングしていくというふうになれば、自治体業務そのものが空洞化をしていく。そのことが、ひいては、その後、市町村合併など、そういった問題に突き当たっていくのではないかというふうに考えているところです。


田村(貴)委員 ちょっと先ほどの質問にも戻るんですけれども、地方独立行政法人に自治体業務、窓口業務を委託していきますと、独法の形も公務員型、非公務員型とかいうふうにもあると思うんですけれども、それぞれの場合において、今の時点で福島さんが想定される懸念というものがあったらちょっと教えていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。


福島参考人 過去に独立行政法人になった例が、地方独法が生まれてからあるというふうに思いますけれども、やはり非公務員型というのは、それこそ我々職員もそうですが、やはり公務員として住民のためのサービスを行おうということで志を持って入った者が、制度が変わることによって公務員であることを奪われるわけでありますから、そういう点での身分保障などの問題というのが職員の側にとってはあるのではないかというふうに思っております。


田村(貴)委員 私は九州なんですけれども、福岡です。たくさんの自治体を回ってきましたけれども、小さな自治体、町、村に行けば行くほど、一人の職員の方が幾つもの業務をこなしておられます。窓口において、住民票と戸籍、あるいは年金と国民健康保険、そういう複数の業務をこなしておられます。
 そうした業務の中から、定型的業務を判断したり、権力行使を伴うものまで、切り出すといっても、なかなかそれは難しいことになるのではないかなと思いますけれども、福島参考人はいかが思われるでしょうか。


福島参考人 私も、京都府の職員のときに、統計課という、国の業務をいわゆる法定受託していることがありました。
 その際に、京都府の職員は八十人ほどその統計課にいまして、国勢調査や家計調査、さらには工業統計調査などさまざまな統計調査を行っていたんですけれども、それをさらに受ける市町村によっては、特に町村がそうなんですけれども、一人の職員で全ての統計業務を行うというふうなことがございました。
 さらに、その人がほかの業務まで持つということもありましたので、今回、先生御指摘のように、窓口業務においても、戸籍や住民票、さらには国民健康保険などを含めて、複数の業務を持っている方がおられるというふうに想定をされます。
 その際に、その業務を切り分けて、一人でやっている方の一部を、では、独立行政法人に預けようというようなことについては、私は効率化には決してつながるものではないというふうに思っております。


田村(貴)委員 次は、委託される業務と情報公開の関係についてお聞かせいただきたいと思うんです。
 窓口業務の一部を委託している自治体において、住民がその民間業者の業務報告を情報公開請求しました。しかし、出された文書は、いわゆる墨塗りの、一部非公開、一部公開の資料だったというふうに伺っております。
導入されようとしている地方独立行政法人は情報を積極的に公開するであろうかという私の懸念は、どのように受けとめておられるでしょうか。


福島参考人 今、先生が御指摘のところについては、東京の足立区のことではないかなというふうに思います。
 独立行政法人、国の行政法人については独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律というのがございますが、地方独立行政法人についてはございません。
 一方で、地方独立行政法人法については、二十五条の中期目標や、二十六条の中期計画、さらに二十七条の年度計画、二十八条の業務の実績に関する評価、さらに四十八条や五十六条で規定されている給与支給基準、こういったものについては公表の義務がありますけれども、業務状況を積極的に公表するというふうな規定はございません。恐らく、そのような中で、民間委託されなければ公の業務として開示をされる情報が開示をされなかったのではないかというふうに思っております。
 この状況は基本的に変わっていないというふうに思いますので、独立行政法人であっても、積極的に情報公開するということにはならないと考えます。結果、住民の代表である議員のチェックが入らない、このことについては問題だというふうに考えています。


田村(貴)委員 よくわかりました。
 続いて、今村先生にお伺いいたします。
 先ほどの先生の意見陳述の中で、アウトリーチ、手を差し伸べることが必要だ、そして、窓口業務というのは住民の求めに応じてぱっぱと処理できるものではないということで、アンテナを張る必要がある、たとえそれが定型的な業務であってもということで、私も大変共感をいたしました。
 しかしながら、自治体のアウトソーシングがすごい勢いで広がっております。そして、人員削減もこの間大きく進められてきました。
 そうした中で、外部委託、アウトソーシング、それそのものが評価をされる、政府からも評価をされるというような状況の中にあって、先生にお尋ねしたいのは、今、地方自治体に求めること、そして、政府に対して先生が意見を申し上げるとするならば、 どういった点にあるかということをお聞かせいただけるでしょうか。


今村参考人 細々したことではなしに申し上げますと、既に言ったとおりでありまして、アウトソーシングとアウトリーチだったらアウトリーチこそが大事だ、そういう状況認識を持っております。
 特に、先ほどのような、アウトソーシングという意味内容が大きく変わって、外部資源の活用よりも、従来の行政がやっていたサービスを民間に出していく、これだけで、経費の節減ということ、その効果をもってその正しいことを吹聴するというのは、私は間違っているのではないかと。
 特に、自治体の場合には、自治という観点をゆるがせにできないわけでありまして、この自治の観点からやはり考えていく必要がある。
 しかし、にもかかわらず、アウトソーシング全てを私は否定しないという意味は、ちょっと横にそれてしまうかもしれませんが、特に市民的活動の団体とかNPOとの連携というようなことを考えていく場合には、その部分は高く評価していく必要があるものも多い。
 社会全体の中で行政と市民活動とのそういうスクラムがますます必要になってきている、そういう状況認識を持っているために、その部分についてはその人々のまさに協力、力をかりる必要があるという、そこに考えがあります。
以上です。


田村(貴)委員 ありがとうございました。
 真庭市の太田市長にもお尋ねいたします。
 真庭市のホームページから、真庭市アウトソーシング基本方針というのが発表されていて、ちょっと目を通させていただきました。
 自治体の窓口業務の委託の案件が今審議されています。そこで、真庭市、御市におかれましては、アウトソーシングになじまない事務業務として、戸籍謄抄本、印鑑証明等の発行等市が直接行う事務業務、法令等の規定によるもの、それから許認可等の公権力の行使に当たるもの、例えば税の賦課とか税減免の決定であるとか、そういったことが書かれているわけです。一方では、アウトソーシングに適した業務として、例えば窓口業務では各種受け付け、証明書の発行といったものが書かれておられました。
 今後、地方独立行政法人というのは、この扱う業務というのがふえる方向にはある、必然的にふえていくのではないかなと私は思うんですけれども、地方独立行政法人においてもなじまない業務、そして委託してはならないといった窓口の業務は市長としてはどのようにお考えになっておられるか、教えていただければと思います。


太田参考人 私も、この改正には賛成ですけれども、危惧といいますか、そのこともよく理解はできるつもりであります。
 やはり行政として公平、公正、平等に判断をし、仕事をしなきゃならないということは必要でありますから、そういうことで、改正で書いてある定型的なそういうもの二十四項目、その中には、例えば申請の受理でも、生活保護の受給申請だとかそういうものは除かれている。現実に生活保護の申請を受理すれば、それをなかなか覆すのは難しいような、だから、同じ受理でも、かなり公権力というか法的効果の強いようなものとか、そういうものは除かれている。
 この二十四項目をずっと見ると、それは法律の別表ですから、ふやすときには法律をまたこういうことで改正しなきゃいけない、そういうことでやっていますから、私はいいんだろうと思っております。
 お尋ねの真庭市についても、一方では業務がふえる、本来、企画的なこととかしなきゃならないものがいっぱいある。その中で、人的資源についても、財政という財源資源についても、どこにどう配分するのが次の時代をつくっていく上でいいのかということを考えざるを得ない。そうすると、先ほど申し上げました行政の本来の公平、公正、平等とかに反しないというものについては外に出していく。
ただ、今村先生がおっしゃったように、それでは、安易な安上がりの労働力に頼るということもこれはまた考えなきゃならないと 思いますけれども、女性の人で、昼間のこの時間に働きたいというような方も結構いらっしゃいます。そういう方の力を機械的な労働については活用していくということもあり得るというふうに思います。
 そういう意味で、中央政府の方から、こう決めたからこうしろと言われる、それは困りますけれども、また、それはないと思いますが、選択の余地を広げていただいて、自治体が住民の意見も聞きながら、もちろん議会で決めていくわけですが、そういう形で、幅広い選択というのは私はいろいろな意味で必要だというふうに思っております。


田村(貴)委員 時間が来たので、これで質問を終わりたいと思います。
三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。