193-衆-総務委員会 電子委任状強制だめ 田村氏 改定普及促進法で主張 衆院総務委

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 電子委任状の普及の促進に関する法律案について質問します。
 電子委任状が位置づけられますと、法人においては、通常の電子文書のやりとりで認定認証事業者に登録をする、そして今度、契約締結等で電子委任状の取扱事業者の登録もすることになっていく、そういう法人もこれから出てくるだろうというふうに思われます。
 では、なぜ、電子署名法の改正で属性認証ができないのでしょうか。お答えいただけますか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、電子署名法の改正による対応も、確かに選択肢の一つではあったところでございます。
 しかしながら、電子署名法における特定認証業務が個人の本人性を証明するものであるのに対しまして、本法案における電子委任状取扱業務は役職や権限といった個人の属性の証明にかかわるものであり、その性質が異なるということ、また、電子署名法における電子証明書が認証事業者によって作成されるものであるのに対しまして、本法案における電子委任状はあくまで法人代表者などが自分で作成するものであり、その位置づけが異なることから、法制上の整理として、電子署名法とは別の法律により対応を図ることとしたものでございます。
〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕


○田村(貴)委員 これまでの電子署名による取引で、属性認証に法的な担保がないもとで、何らかのトラブルがあったのでしょうか。また、裁判になった事例というのはあったのでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 電子署名法に属性認証に関する法的な担保がないことで裁判になった事例があるとは承知をしておりません。
 しかしながら、現在の電子署名法における認証業務の範囲が、専ら署名者の本人性の認証に関する業務に限られていることから、署名者の属性の認証を行う業務を法的に位置づけることへの要望が、認証業務を提供している事業者からかねてより寄せられてきたところでございます。
 こうした要望を踏まえまして、総務省におきまして、総務大臣が主宰する懇談会のもとにワーキンググループを設置しまして、検討を重ねてきた結果、今般、この法案の提出に至ったという次第でございます。


○田村(貴)委員 トラブルや裁判による係争はなかったということは確認しました。
 高市大臣にお伺いします。
 大臣の提案趣旨説明の中で、当該手続を行おうとする者が正当な権限を有しているかどうかの確認手段の確保が課題とされているという説明でありました。どのような課題があるのでしょうか。そして、今度の電子委任状の導入によって、その課題というのは解決されるのでしょうか。


○高市国務大臣 企業が紙の契約書や証明書を発行する場合には、社員が代表者の印鑑を押すことで、その書類が作成責任者によって作成された正式なものであることを証明できます。これに対しまして、企業が電子的な契約書や証明書を発行する場合には、社員が電子的に署名しただけでは、その電子書類が作成責任者によって作成されたものかどうかがわかりません。
 そこで、企業の社員が、代表者から書類の作成に必要な権限を委任されているということを電子的に証明する電子委任状を円滑に利用できる環境を整備する必要があるということから、本法律案を提出させていただきました。
 この法案に基づいて、主務大臣、具体的には総務大臣及び経済産業大臣になりますけれども、主務大臣の認定を受けた事業者を介して、信頼性の高い電子委任状が流通するようになりましたら、電子書類に電子的に署名した社員の権限を簡易かつ確実に証明することが可能となりますので、さまざまな手続がオンラインで完結するということが期待できます。


○田村(貴)委員 それでは、電子委任状の目標、数値目標等について伺っていきたいと思います。
 法案第三条第一項、「主務大臣は、電子委任状の普及を促進するための基本的な指針を定めるもの」とし、第二項では基本方針において定める事項を挙げ、その第一号では「電子委任状の普及の意義及び目標に関する事項」とあります。この目標というのは、数値的な形で設定するのでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 普及目標の具体的な内容につきましては、本法案をお認めいただいた後、有識者や外部の関係者の意見も伺いながら、基本指針の中で定めていくこととなります。
 目標の明確性の観点からは、数値目標を定めるということも考えられるわけでございますけれども、他方、電子委任状の普及は企業の自主的な取り組みにより進むものであることから、いわば定性的な目標設定を行うこともあり得ると現時点においては考えているところでございます。


○田村(貴)委員 それでは、民間における電子証明書を使った電子商取引の普及状況についてはデータがあるでしょうか。直近の数字でいいので、お示しいただければと思います。
〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、電子署名を行うための主な手段といたしましては、マイナンバーカード搭載の署名用電子証明書を用いる方法、また、電子署名法に基づく認定認証事業者が発行する電子証明書を用いる方法、さらに、商業登記制度に基づき法務省が発行する電子証明書を用いる方法が考えられるところでございます。
 それぞれの普及状況でございますけれども、マイナンバーカード搭載の署名用電子証明書の発行枚数は、平成二十八年末時点の累計で約千百八十七万枚、次に、電子署名法に基づく認定認証事業者が発行する電子証明書の発行枚数は、平成二十七年度末時点の累計で約百三十万枚、商業登記制度に基づき法務省が発行する電子証明書の発行枚数は、平成二十八年度末時点の累計で約八十五万枚となっているところでございます。


○田村(貴)委員 経済産業省が本年四月にまとめた報告書があります。「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」という報告書によりますと、企業間の電子商取引、電子データ交換、EDIと呼ぶそうでありますけれども、この市場規模が実に二百九十一兆円に達しているという報告であります。
 電子商取引はこのように大量に行われているんですけれども、電子データ交換における電子署名や電子委任状というのは存在しないということであります。こうした状況があるわけなんですね。電子委任状が今度法的に位置づけられても、このやりとりについては影響を及ぼさないだろうというふうにも言われているわけであります。そうした経済活動の一つの流れがあるわけであります。
 先ほどの答弁の中では、今の電子商取引の中において、トラブルが起こっているわけでもなく、訴訟もないということであります。民間の中においては、電子署名を必要としないシステムも含めて商取引が行われていることは現実であります。
 そこで、やはり重要なのは、これは押しつけてはいけない、電子委任状を押しつけてはいけないというふうに思うわけであります。
 本法案の説明資料を読ませていただきました。「本法案による電子委任状は、民間の発意によって活用されるものである(何らかの強制を伴うものではない)。」というふうにされているわけであります。
 この強制を伴うものでないとするところは、本法案のどこかに担保されているのでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 本法案は、主務大臣による基本指針の策定と、電子委任状取扱業務に対する主務大臣による任意の認定制度をその内容とするものでございます。本法案には、事業者や利用者に対して、電子委任状の利用について何らかの義務を課すような趣旨の規定は一切置かれていないところでございます。
 法案の概要につきまして事前にお示しをした説明資料における「本法案による電子委任状は、民間の発意によって活用される」という表現は、まさにこの趣旨を確認したものでございます。


○田村(貴)委員 義務を課すものではないといったところは確認しておきたいというふうに思います。
 続いて、官庁との取引、調達などの電子取引についてお伺いします。
 国とか地方自治体の政府調達については、ある程度の目標設定を念頭に置かれているようであります。法案第四条三項では、「国及び地方公共団体は、自らが一方の当事者となる電子契約において他方の当事者となる事業者の電子委任状の利用を促進するために必要な施策の推進に努めなければならない。」と国等の責務を規定しているわけであります。
 お伺いしますけれども、この国等の責務規定が入ったのは、官民データ活用推進基本法第十条を踏まえたものなのでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 本法案は、今委員御指摘の官民データ活用推進基本法の第十条第三項におきまして、「国は、法人の代表者から委任を受けた者が専ら電子情報処理組織を用いて契約の申込みその他の手続を行うことができるよう、法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」と規定していることを受けまして、提出をさせていただいているものでございます。
 本法案の第四条第三項は、その一環として、国及び地方公共団体に対しまして、調達手続において電子委任状の利用を促進するための施策を講ずる努力義務を課すこととしているものでございます。


○田村(貴)委員 先ほど、民間の電子証明書を使った電子商取引の普及状況について回答があったわけなんですけれども、有効な電子署名が付されている電子証明書、これは総務省から資料をもらったんですけれども、二〇一五年で三十三万八千枚というように記録されているんですが、これは間違いありませんか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおりでございます。


○田村(貴)委員 今度は電子入札の方の統計ですけれども、先ほど答弁がありました応札率四七%の部分であります。
 この数字をお伺いします。
 電子入札が可能な案件数はどうだったのか、実際に電子応札が行われた件数はどうだったのか、教えてください。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十八年度における政府調達の電子応札率は約四七%となっております。これは、電子入札が可能な件数、具体的には二万九千六百二十件の中で、実際に電子応札が行われた件数が一万三千九百六十四件ということでございますので、電子応札率は四七・一%という数値になるところでございます。


○田村(貴)委員 確認しました。
 それでは、政府は、電子応札率の目標というのを持っておられるんでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 政府調達につきましては、電子応札率を平成三十年度中に六〇%まで引き上げることを目標としているところでございます。


○田村(貴)委員 重ねてお尋ねします。
 六割に引き上げたいとの回答でありましたけれども、地方自治体には、電子入札の応札率、こういう目標を持たせるという考えにあるんでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、政府におきまして、地方自治体について今のような電子応札率の目標というものは定めていないところでございます。


○田村(貴)委員 この点も確認しました。
 私が申し上げたいのは、特に官庁との取引において、中小企業であるとか中小零細業者であるとか、電子証明書、電子委任状、なかなかここまではいかないよといったところの考えはいつも持ち合わせてもらわなければいけないというふうに思うわけであります。小さな事業所にとってみたら、電子証明書、認定認証事業者への登録とか、それから、今度の電子委任状は、取扱事業者への登録というのはこれはお金を要します。負担はかかってくるわけであります。
 そこで、高市大臣に確認の質問をしますけれども、政府調達の一方の相手方となる民間事業者に対する強制はあってはならないというふうに思います。特に、地方自治体におけるこれまでの商取引、慣習、それから事業等の状況を考慮していくことがやはり大事であるというふうに考えます。電子委任状を使った電子調達に対応できないという業者がおられるとしたら、その理由をもって調達から排除される、各種の契約から除外される、こうしたことは絶対にあってはならないというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○金子大臣政務官 先ほど来の答弁からございますように、本法律案は、電子委任状の普及を通じて、契約や手続に必要な書類の電子化を促進することを目的とするものであります。
 国の調達に電子的な手続で参加を希望する企業が、電子委任状の活用によって、より効率的に必要書類を電子化して提出できる選択肢を提供するものであります。
 ですので、委員御懸念のような強制によるものではございませんで、こうした選択肢を活用するか否かは、あくまで調達に参加する個々の企業の判断によるものと考えております。


○田村(貴)委員 政務官がそうおっしゃるのであれば、紙媒体による調達もある、契約もある、対面がある、そして書面によるそういう調達もあるんですよということをやはり周知していく必要があると思うんですけれども、総務省としてはどう考えておられますか。


○金子大臣政務官 先ほど私申し上げましたように、電子調達に参加する新たな選択肢が加わることによって、調達に参加する企業が増加することが期待されるのでありますけれども、そういう意味で、本法案を活用した調達手続について幅広く周知していきたいと考えておりますが、あわせて、書面による手続など他の選択肢についても、従前のとおりであるとの周知を図ってまいりたいと思います。


○田村(貴)委員 それでは、電子商取引、電子委任状の安全性について質問をします。
 取扱業者の安全性の確保が重要であると思いますけれども、法案では、三年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければならないというふうに定められております。なぜ三年なのでしょうか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 本法における基本指針は、認証技術やセキュリティー技術などの関連分野の技術進歩や、電子委任状に係る国際的な動向の変化を踏まえて定期的に見直しをしていくこととしております。
 このため、認定の効果を永続的なものとしてしまいますと、基本指針が規定する望ましい電子委任状取扱業務の内容と認定電子委任状取扱事業者の実際の業務内容とが次第に乖離をし、認定制度の趣旨が没却されるおそれがあるため、技術進歩などを踏まえた電子委任状取扱業務の適正な運営が継続して維持されるよう、定期的に認定の更新を求めることとしております。
 更新が必要となる期間につきましては、三年を下らない範囲において政令で定めることとしておりますけれども、これは、認証技術やセキュリティー技術の動向、電子委任状取扱業務に用いるソフトウエアや設備の標準的な更新期間などを考慮したものでございます。


○田村(貴)委員 新たなウイルスとか、それから新たなサイバー攻撃というのが目立っております。こうした最新の対応というのは求められるところですけれども、いかがお考えですか。


○谷脇政府参考人 お答え申し上げます。
 電子委任状取扱事業者は、企業の代表者が作成した電子委任状を自社のサーバー上に保管することから、保管中の電子委任状については、電子委任状の改ざん、漏えい、あるいは滅失といったリスクが存在いたします。こうしたリスクに備えるため、電子委任状取扱事業者のセキュリティー水準を確保することが極めて重要だと考えております。
 このため、電子委任状取扱事業者の認定に当たりましては、認定の要件として、一定水準以上のセキュリティー対策を講ずることを求める予定としております。
 具体的な対策の内容は基本指針の中で定めることとなりますが、例えば、通信回線経由での不正アクセスの防止、権限を有しない者による操作の防止、システムの動作記録の取得、責任体制の明確化と規程類の整備といったような点につきまして、所要の対策を講ずることを求めてまいりたいと思っております。
 また、その上で、こうしたセキュリティー対策が実際に行われていることをチェックするため、認定要件の一つとして、定期的に外部機関の監査を受けることを求めることを想定しているところでございます。


○田村(貴)委員 質問は以上でありますけれども、高市大臣、ちょっと通告はしておりませんけれども、我が党の政令市二十市の共産党市会議員団としんぶん赤旗の集計と調査結果が明らかになりました。
 マイナンバーカードを活用した質問については、この後、梅村議員の方から行いますけれども、マイナンバー制度の実施に伴う政令市の支出が二年間で三百十六億円。とにかくお金がかかっています。そして、そのうち、システム改修費用が二百六億円。大半がシステム改修費用で、このうち八割がマイナンバー設計制度に携わった大手四社に発注されている、NEC六十五億円、富士通五十五億円初め。こういう状態が明らかになっています。
 偏った発注、受注というのはお手盛りとなりかねないという、構造的な問題があるというふうな指摘もありますし、この巨額なマイナンバー制度に伴う費用というのは、国民や住民の理解を果たして得られるだろうかといったところの疑念も生じてくるわけであります。
 この点について、私は、総務省として検証を求めたいというふうに思いますけれども、高市大臣、何かありますか。


○高市国務大臣 総務省には行政評価局もございます。総務省が行っている施策についても、第三者的にかなり厳しい評価を受けることとなります。国が出すお金でしたら、これは会計検査院の調査もございます。地方自治体に関しましても監査のシステムがございますし、また、それぞれの地方自治体の判断で、十分に能力のあるところを選んで発注されているものと存じます。
 マイナンバーカードというものが普及して、さまざまなサービスに使えるようになっていけば、より便利なカードになっていけば、これは行政の効率性にも、そしてまた国民の皆様の負担軽減にもつながってまいります。かなりの効率化が期待できるものだと考えております。


○田村(貴)委員 その点についてはまた議論したいと思います。
終わります。