196-衆-農林水産委員会-7号 平成30年04月05日 諫早干拓 農・漁共存目指せ 田村衆院議員が非開門前提の国批判

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
諫早湾干拓事業と和解協議のことについて質問をします。
私は、三月二十日の大臣所信質疑、そして二十八日の一般質問と、諫早湾干拓事業について質問をしてまいりました。
この間、潮受け堤防の開門をめぐっての状況が大きく変わりました。それは何かといいますと、干拓地で長年農業に従事してきた農業生産法人二社が開門差止めの訴えを取り下げて、開門を裁判で主張していくということになってきたからであります。
なぜ農業者が立場を変えて裁判に訴えるまでに至ったのか。有明海異変を引き起こした堤防締切りが干拓地にも大きな影響を与えているからであります。農水省、大臣、いよいよ開門調査が必要になってきたのではありませんか。
最初に、和解協議について尋ねます。
昨日四日は、福岡高裁の和解勧告に対する当事者の回答期限でありました。しかし、開門を前提としない基金での和解提案に、漁民原告は三月十九日に受け入れられないとの回答をしています。
齋藤大臣に伺います。
基金による解決案は、長崎地裁で一年二カ月にわたって協議がされ、決裂されたものであります。和解に至らないことが試され済みの提案に、やり方になぜ農水省はここまでこだわるのでしょうか。答弁をお願いします。


○齋藤国務大臣 三月十九日に、開門を求める方々が、開門しないことを前提とした和解の方向性は受け入れないとされて、開門も含めた和解協議を求める旨の回答を福岡高裁に提出したことはもちろん承知をしておりますが、一方で、三月五日の福岡高裁の和解勧告は、本件をめぐるさまざまな御意見や長年にわたる経緯がある中で、開門しないことを前提に開門にかわる基金等の方策による解決を図ることが、現在の混迷、膠着した状況を打開する唯一の現実的な方策という御判断をいただいているところであり、これは重く受けとめるべきなんじゃないでしょうか。
その後の経緯といたしまして、三月十四日には、佐賀県有明海漁協において、国が提案した開門によらない基金案とともに、三つの要望事項についてぜひ実現してほしいとの表明をしていただいたところであり、これは、福岡高裁の和解勧告を踏まえ、漁協として苦渋の決断をしていただいた、これも真摯に受けとめるべきではないでしょうか。
加えて、三月二十八日には、この漁協の方針を佐賀県も支持するとの考えを、佐賀県の山口知事御自身が直接私に伝えにわざわざ上京をされました。
これらのことも踏まえて、国としては、福岡高裁の請求異議訴訟で行われている和解協議において、同高裁の和解勧告に沿った和解の成立を図っていくことが適当と考えまして、国においては、関係機関との相談をした結果、昨日、四月四日に、福岡高裁の和解勧告において示された和解の方向性について受け入れるという旨の回答書を福岡高裁に提出させていただいたというところであります。


○田村(貴)委員 佐賀県とか佐賀県の漁協のことを言われましたけれども、訴訟の当事者は漁民ですよ、漁民原告ですよ。和解の協議のテーブルに着くことができない、入り口に立とうとすることができないんですよ。
そういう状況をつくっていて、前回聞いたときに、裁判か和解かどちらで解決するんだと言ったら、和解と言われたでしょう。和解にならないじゃないですか。だから、どうするんですかと聞いているんですよ。漁民原告を和解の入り口につけない状況をつくっておいて、どうやって和解するんですかと聞いているんです。
いま一度答えていただきたいと思います。


○齋藤国務大臣 私は、福岡高裁の和解勧告における御判断ですとか漁業団体の苦渋の決断は、全ての関係者において重く受けとめる必要があると考えています。
国としては、福岡高裁の請求異議訴訟で行われている和解協議において、開門によらない基金による和解に至れるよう、引き続き真摯に対応していくことに尽きます。


○田村(貴)委員 「この勧告では解決しない」、長崎新聞の三月七日付の論説記事の見出しであります。この記事を紹介します。
「和解の道を探るための勧告だとは到底思えない。」との書き出しで始まり、「国は、和解が決裂した場合は百億円の基金がなくなることをちらつかせており、「開門もしない、基金もない」状況に陥ることも予想される。そうなった場合、開門派原告のみならず、基金に理解を示した福岡などの漁業者が再び開門に向けて強硬姿勢にならないとも限らない。」大変踏み込んだ記事であります。
百億円の基金がなくなることもちらつかせており、もしこんな圧力があったとするならば、これはゆゆしき事態ですよ。そうなれば、ここは福岡の漁業者というふうに書いているけれども、佐賀の人だってどう考えるかわかりませんよ。
もはや、私は二度目の決裂というのは絶対あってはならないと思うんですけれども、農水省はどう考えていますか。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
今ほど先生からございました百億円の基金の話につきましては、これまでの有明海の環境変化に対します特措法に基づくいろいろな取組がございましたけれども、それを更に加速化するという観点で提案をさせていただいたものでございます。
この提案に当たりましては、四県の漁業団体の方々から具体的な御意見や御提案をいただきまして、有明海の振興、再生に必要な取組内容を盛り込んで提案をしておりますので、これを実現できる仕組みというふうに考えておるところでございます。
それから、和解協議につきましては、今ほど大臣からも答弁ございましたが、長い経緯がある中で、福岡高裁からの和解勧告がございました。それをめぐって、いろいろな方がいろいろなことを御検討されておるわけでございますけれども、やはりこの和解勧告を全ての関係者が重く受けとめていただく必要があるのではないかと考えておるところでございまして、私どもといたしましては、開門を求める方々におきましても、これらの事情を重く受けとめていただいて、ぜひとも福岡高裁の和解勧告に示された和解の方向性を受け入れていただけるよう御理解をいただきたいと思っておるところでございます。


○田村(貴)委員 私の質問にお答えになっていないと思うんですけれども、また決裂を想定されて和解の協議に当たるんですか。二度目の決裂は私はあってはならないと思っているんですけれども、そこを聞いているんです。端的にお答えください。


○荒川政府参考人 繰り返しになって恐縮でございます。

私ども、昨日も福岡高裁の和解勧告において示された方向性を受け入れるというふうに回答させていただいたところでございまして、これから福岡高裁の請求異議訴訟で行われます和解協議の中で、しっかりと和解協議に対応してまいりたいと思っております。


○田村(貴)委員 この問題に、ずっと見続けてきたいろいろな方面からの指摘があります。紹介します。
一昨日、四月三日の日経新聞、諫早干拓、見えぬ解決策の大見出しであります。識者の声が新聞でも報じられています。成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授は、解決には政策判断が必要で、法的判断の場である裁判所が解決策を示すことには限界がある、国は双方が歩み寄れる別の解決案を示す責任があると述べておられます。
三月六日の朝日新聞では、国は裁判を超えて解決姿勢をとの記事を出していて、ここまで問題をこじらせてきたのは、かたくなに開門を拒む国の姿勢と言えると指摘しています。横浜国立大学の宮沢俊昭教授は、この裁判の帰趨にかかわらず紛争は続く、公益を代表する国は、あるべき有明海の姿を裁判の外で示す必要がある、こういうふうに指摘されているわけです。
大臣、非開門、基金による解決が唯一の解決策だとする、そうしたコメント、論評というのは見当たりません。こうした声をどのように受けとめておられますか。


○齋藤国務大臣 本当に、本件は、いろいろな考え、いろいろな思いの方がおられる中で、しかも、経緯も、さまざまな経緯が積み重なってきてまいりまして、私どもも申し上げたいことは一々あるわけでありますけれども、事ここに至って、福岡高裁の、先ほど申し上げましたような、現在の混迷、膠着した状況を打開する唯一の現実的な方策だ、高裁もそういう理解でいるということが解決に向けてのやはり方向性なのではないかなというふうに思っているところでございまして、この福岡高裁のさまざまな御意見、思い、経緯を踏まえた上での和解勧告に示された和解の方向性、これをぜひ受け入れていただくよう、再考を何とかお願いしたいと考えています。


○田村(貴)委員 そうした姿勢では、現在の混迷、膠着した状況は一層悪化していくと言わざるを得ません。

干拓地のことについてお伺いします。
前の委員会で、カモの食害について取り上げました。干拓地ではこのほかにいろいろな問題がありまして、冬の寒さ、夏の暑さが問題になっています。
冬は冷害に遭っている、レタスが凍りつく。凍ったレタスは、プロの目でもなかなか判断できなくて、出荷されて、お客さんのもとに着いたときに真っ黒になっている。そういう、いわゆる凍傷による被害があっているということです。夏は暑過ぎて、シソしかつくることができない。だから、海水を何とか調整池に入れて、作物被害を防ぐ対策をつくってほしい、こういう声が営農者の間から上がっています。
こういう状況に営農者たちはどういうふうに向き合っていったらいいんでしょうか。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
諫早湾干拓地回りの環境関係につきましては、私ども、平成元年から潮受け堤防の締切り前後を通じまして、周辺地域の四地点での気温の観測、こういったものを続けてきております。また、事業完了後におきましても観測を継続している地点のデータもございますけれども、そういったデータと、長崎県の方で調査されておられます中央干拓地において観測された気温とを比較いたしましても、締切りの前後で先生が御指摘になったような顕著な気温の変化といったものが見受けられるというふうには認識をしておらないところでございます。
一方で、いろいろな営農上の課題というのはあるわけでございまして、この干拓地につきましては、干拓の造成が終わった後、長崎県の農業公社が国から配分を受けて農業者へリースをされておられますので、一義的には造成農地で営農される農業者の方と長崎県の農業公社でお話合いをされるべきだと考えておりますが、国としても、いろいろな立場で御要請、御要望があれば、対応してまいりたいと思っております。


○田村(貴)委員 対応してください。
そして、荒川局長、認識を変えていただきたい。まず現地に行ってみてくださいよ。ハウスが建っているんですよ、あの広大な干拓営農地に対してハウスが建っている。その前はトンネルで霜よけをやってきた、それではもう間に合わない、今度はハウスをつくり出した。もともとそういうことを想定している干拓営農地じゃないじゃないですか。そういう営農者の苦労があることを、今直ちに認識を変えていただいて、対策を打っていただきたいというふうに思うわけでありますし、必要な調査は行っていただきたいというふうに思います。
改めて齋藤大臣にお伺いしますけれども、開門絶対反対だった営農者の方々が開門を要求せざるを得ないといういわゆる有明海異変というのは、営農地に対しても危害を及ぼしているわけであります。この間言ったカモの食害、調整池で食べるものがなくなったカモたちが陸に上がってきておいしい野菜をついばんでいる、これは大きな被害になっている。それから、今言った冷害、排水不良の問題もある、農業用水が汚くてなかなか農水に適していない。こうした問題も多々あるわけなんです。
営農者が訴訟で開門を求めるというのは初めてのことなんですよね。もう調整池は要らない、本明川からの水を干拓地のどこかにため池としてつくって、ろ過して、それを使った方がよほどいい、調整池の水はあんなにたくさん要らないというふうにおっしゃっているわけですよ。これはやはり一聴に値するのではないかなというふうに私は思うわけです。
この状況をどういうふうに受けておられるでしょうか。干拓地営農のこうした問題を引き起こしているのではないのか、潮受け堤防、調整池、干拓地のあり方、ここが農政の面でも問われている。この御認識を伺いたいと思います。


○齋藤国務大臣 個々の問題については、それぞれ対応を考えてしていくと局長からも答弁いたしましたが、開門反対の方だった営農者が開門を主張し始めているという点につきまして、長崎県農業振興公社から干拓農地の利用権設定の更新が認められなくて、土地の明渡しを求められている二名の方が、国、長崎県等を被告として、調整池を基地とする野鳥による食害の損害賠償と排水門の開門を求める訴えを提起し、現在、長崎地裁において係争中であります。
個別の訴訟における国の考え方等については、それぞれの訴訟の現場においてお示しをしていくこととしたいと思っております。
今後の本件に係る裁判の進行に応じて、関係省庁と連携して、具体的な対応を図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 時間が来ました。
農漁共存の立場をぜひとっていただきたいと思います。鳴り物入りでつくった諫早湾干拓農地、そして潮受け堤防、有明海異変を起こし、今、干拓農地でこれだけの問題になってきているわけなんですよね。このシビアな現実をやはり直視する必要があると思います。
漁場も、そして営農地も、しっかりと安心して第一次産業が成り立っていくためには、農水省は今の考え方を変えるべきであります。非開門にこだわった和解協議の提案は、漁民原告は受け入れられないと言っている。決裂させてしまうだけならだめですよ。
ですから、ここは、いま一度考え直していただいて、そして誰もが歩み寄れるテーブルと環境をつくっていただく、ここを強く要求して、きょうの質問を終わります。
終わります。