196-衆-農林水産委員会-9号 平成30年04月12日 参考人質疑

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
四人の参考人の皆さん、きょうはどうもありがとうございます。
泉参考人に何点かお尋ねしたいと思います。
農水省の説明によれば、山林所有者の八四%が経営意識が低いとしています。私は、昨日の委員会で、その数字は恣意的につくられたものであるというふうにただしたところであります。
しかしながら、山元立木価格が低下の一途の中で、山林所有者にとっては経営展望がなかなか持てないというのも事実であります。そうならしめた要因を先生はいかが捉えておられるでしょうか。


○泉参考人 今の御質問に答える前に、私は七十を過ぎましたけれども、森林と我々のかかわり方ということはどれが理想的なのかということを近年考え始めています。
それで、結論を申し上げますと、どうもピラミッド形組織が森林経営なり管理なりということはできない。一番典型的な事例は国有林、これも経営破綻している。それから、ピラミッド形組織ではどうして森林にかかわるときに無理なのかというような形は、やはり、森林が余りに個別分散なんです。そこに本当に原理的に適しているのは、これはやはり、私が先ほど申し上げました農家林業。個別の人が、日本の場合には、江戸時代以来、なでなでしながらその森林を育て管理する。なでなでしながら、それで、申しわけないと言いながらそれを切っていく、間伐する。それは、だけれども、その後でやっていけるという。
それで、そういうことがあるべし、今後もむしろ日本の森林政策は、そういう担い手をつくっていくしかない。一人の人の中に全て、技術もあれば経営もできるし、歴史もわかるしというような人たちをつくっていって、そういう人たちが担い手として育てていくということが最も日本の森林をよくしていくことであるというように私は今考えております。
そういうような中で、八四%の方が意欲を失っている、恐らく、これは議員の方から昨日質問されたように、これには実はいろいろ問題がある。ただし、現実に、八四か九〇か七〇かわかりませんけれども、意欲を失っているのは事実です。
これは私どう考えるのかというと、これはこういう形に持ってきた政策の失敗である。その根拠に、政策は林野庁が悪いわけじゃない、林野庁は森林・林業基本法と森林法という法律を執行するということだ。それで、森林・林業基本法とか森林法ということの枠組みでやればこういうことになってしまうという、政策選択の結果。ですから、私が申し上げますように、本来の日本の森林を守り育てるあり方、人と森林とのかかわり、先ほど申し上げたようなことであって、それをしっかりと支えるような法制が必要である、それは地域政策である、産業政策では無理だというのが私の、その点で。
ですから、八四%というのは日本の六十年間の、本当に林野庁さん、頑張ってこられた、ただし、結局こうなっちゃっているということを今回冷静に見詰める必要がある、戦後林政を一度本当に総括する必要があるということでございます。


○田村(貴)委員 もう一つお尋ねします。
今度は、素材生産業者についてであります。
極めて手厚い措置がされている一方、それほど甘い状況ではないと先生はおっしゃいました。そして、造林、保育費用を残すために、必然的に荒い施業となる可能性があるとおっしゃいました。その荒い施業、具体的にはどうした懸念が想定されるでしょうか。


○泉参考人 今回の森林経営管理法案のバックとなる、今後の日本の森林をどう持っていくのかという考え方の中に、林野庁さんは長伐期多間伐施業でも構いませんよというような形で、各地で説明されると思いますけれども、これはもう明確に、五十年前後で皆伐するということが、一本きちっと筋が通っております。この施業でしか素材生産業者は食いつけません。だから、従来型の間伐でと、もし間伐でやる場合は、やはり非常に過度の、荒い間伐にならざるを得ないというようなことで、今非常に私が恐れておりますのは、やはり、産業でもうかる、成長産業化と言う限り、結果的に、加工業者であり流通業者はもうかるかもしれませんけれども、そこのしわ寄せが全て山側に行く。しかも、山からかなり大量の木材が出てくる仕組みを今回つくるわけですから、そうすると、木材価格は更に安くなります。
要するに、今価格が安過ぎるから輸出ができるようになった、輸出ができるということを果たして喜んでいいのかというような形のところで、むしろ、そういう形でのやり方の結局行き着くところはそこまでひどくなってしまうというようなことで、私は、素材生産業者の方々も気の毒ですし、それから、そういったところではなかなか業者さんも、五年間だけ管理経営義務を負わされたらこれは喜んでやられると思いますけれども、十五年までになってしまう。しかも、非常に危惧するわけですから、結局、山主は立木をとられただけの結果に終わってしまうということを危惧しておる。
繰り返しになりました、どうも。


○田村(貴)委員 それでは、自治体のところの問題点で、尾崎参考人とそれから青木参考人の方にお尋ねしたいと思います。
市町村が森林経営管理事業を行うに当たって、森林行政に精通した職員がいないところは大変ではないかという話をあちこちで聞いてまいりました。知事の御説明の中にもあったというふうに思います。
経営管理が適切に行われているかどうかの判断は市町村に委ねられます。そうすると、今その基準は、法案の現時点では出されていませんので、この先どうなっていくのだろうか、市町村によってはばらつきが出てくるのだろうかというような心配は、私は持っております。
これから、森林経営管理に当たって、市町村の業務に照らして想定される課題、あるいは御懸念がありましたら、知事と村長、お答えいただきたいというふうに思います。


○尾崎参考人 確かに、小規模自治体ですと、本当に専任職員がいない、そういう場合があるわけでありまして、これは、林政アドバイザーを雇っていくという取組、さらには、市町村の代替執行ということでしっかり補っていこうという制度になろうとしているということかと思いますが、市町村の取組に加えて、県の役割というのは極めて大きいものがあるだろう、そういうふうに思っています。
そういうことで、森林環境税の導入の議論の中でも、私ども都道府県、全国知事会といたしましても、さまざまに議論していく中で、県がバックアップしていかないといけないのだから、やはり都道府県に対しても一定財源をという議論も展開をさせていただいてまいりました。
今そういう方向に議論が展開をされていることは歓迎させていただきたいと思いますが、実際執行するに当たって、しっかりと都道府県が役割を果たさなければなりませんし、また御指摘のように、市町村によってむらができるようなことのないように、県としてトータルでのマネジメントといいますか総合調整ということを意識するということは極めて大事なことだろう、そのように思います。


○青木参考人 市町村として、要するに、山林林野に対する考え方、そういったものは非常に大きく影響するというふうに思います。先ほども県知事のお話にもありましたけれども、市町村でそういう専門の人員がいないという場合は、やはり県とか国に御支援を願うというようなことだというふうに理解をしております。
もう一方、私ちょっと懸念があるのは、先ほどのどなたかの答弁にも言いましたけれども、実施権というものを、やはり市町村、トータルで青写真を描ける、そういったところにも実施権を残さないと、個別の業者さんに実施権を全部与えてしまって、その計画で実施するということになると、非常に虫食い状態が起こる懸念があります。そういうところを非常に懸念しております、ちょっと違う話になりましたけれども。


○田村(貴)委員 ありがとうございます。
それでは、前田参考人にお尋ねします。
主伐期の時期のことについてであります。
十一齢級以上の木は押しなべて主伐期にあるというふうに、これは断定していいものなのでしょうか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。


○前田参考人 お答えします。
これは多分、先ほども私言いました、全国各地区の林業の形態は違うわけでございまして、私どもの考え方が正しいかどうかわかりませんけれども、たまたま私の組合では、現在、鹿が本当に非常に多くおりまして、とても主伐をして木を植えるという状態には、ネットをすれば植えられますけれども、かなりの費用がかかるというようなことで、私どもの組合は、現状においては長伐期で向かおうということで、長伐期でいきますと、先ほど言いましたオーストリア林業でいけば、径が太れば非常に生産性が高まるんです。ですから、収入期は減りますけれども、要は所有者の方に返す金もふえるというようなこともございますので、私どものところは、主伐というのはモデル的に行う程度でございます。
以上でございます。


○田村(貴)委員 それでは、泉参考人にお尋ねします。
私、九州の選出であります。おととしの熊本地震、去年の九州北部水害、そしてたくさんの台風、そしてまた、きのうは大分県耶馬溪で突然の山崩れと、いろいろな災害が起こっているわけであります。そういったときに、山腹崩壊とか、おびただしい流木等々の被害を目の当たりにしてきたところであります。
気候変動でこれらの災害被害はこれからも予想されるわけでありますけれども、伐採と植林を始めとする森林政策において、何が足りないで、何が重要であるというふうにお考えでしょうか。


○泉参考人 この点については、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり余りに科学的知見が弱過ぎる。線状降雨帯であったり、新しい現象というものがこの温暖化に伴って起きてきておりますけれども、各省庁それぞれ研究部門を持っているわけですけれども、なかなかそのあたりのところがしっかりといっていない。
私は、とにかく森林に関してはもっともっと研究費を投入していただきたい。そういうことにおいて、やっとそのあたりのところの解答が出てくるのではないか。
ですから、現状では、森林をこう扱ったから災害が防止できます、そういうことは全く言えないというふうに私は思っておるところでございます。


○田村(貴)委員 ありがとうございました。
最後に、森林作業の担い手、森林労働者の育成についてお伺いします。
なかなか大変な課題であると思いますけれども、次世代につながる山の働き手を育てていくには何が一番大事だというふうに、御説明の中にもありましたけれども、また御教示いただければというふうに思います。
時間の関係で、お一人ずつお尋ねして、時間が来たら終わりたいというふうに思いますけれども、前田参考人、いかがでしょうか。


○伊東委員長 前田参考人、簡潔に御答弁をお願いします。


○前田参考人 はい。
私、森林作業員の確保につきましては、森林組合を魅力ある職場にすることに尽きるというふうに思っております。


○尾崎参考人 林業が産業として成り立つ、暮らせるということだと思います。
実際、魅力が増してきておる、そういう中で、高知県でも小規模林業促進協議会というのをつくっておりますが、現在、四百六十八名の会員の皆さんが参加をされるようになりました。事業体のみならず、そういう小規模でも取り組もうという方もふえてきている。私は、いい傾向ではないか、そう思っています。


○青木参考人 もう間違いなく、山を動かすということにほかならないというふうに思います。
私の村では、基本的に、この十年で、山関係で住民が約百五十名、つまり一割弱、外来の皆さんが入ってこられて、十年前ですと山関係の売上げもゼロだったものが、昨今では毎年十億円というようなことで、山を動かすことによってそういった関連の産業まで動き出すということでありますから、非常に、山を動かすということが一番大事であるというふうに考えております。


○泉参考人 林業の若手育成ということでは、緑の雇用制度というもの、これは、私、先ほど申し上げました、やはりピラミッド形である。それに対して、市町村で地域おこし協力隊で自伐型林業者を養成しようという動きがあります。これは幾つか実例がございますけれども、私はこの動きを非常に注目しております。
以上でございます。


○田村(貴)委員 大変勉強になりました。
時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。