195-衆-農林水産委員会-3号 平成29年11月30日 貿易自由化交渉中止を/諫早干拓 国が開門義務果たせ 田村氏が迫る

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
農林水産委員会で初めて質問をします。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、自由貿易協定、経済連携協定についてお話しさせていただきたいと思います。
齋藤大臣は、所信表明で、食料自給率の向上を述べられました。しかし、日欧EPAでは、農林水産物ではソフトチーズに低関税枠を設定し、パスタ、ワイン、木材などで関税を撤廃するという、そして、品目の関税撤廃率は八二%であります。EUの試算では、対日加工食品の輸出額が百億ユーロ、一兆三千億円増加するとしています。日本の農林水産業、特に酪農など畜産への打撃ははかり知れないと考えます。
そこで、大臣、日・EU・EPAが実行された場合に、日本の食料自給率はさらに下がるのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 まず初めに、私の所信でも申し上げましたけれども、食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、私ども、国家の国民に対する最も基本的な責務の一つであると考えて、あらゆる政策に取り組んでいるということでございます。
それで、御指摘の日・EU・EPA交渉におきましては、まず、米は関税削減、撤廃等からの除外を確保いたしました。そのほか、麦、乳製品の国家貿易制度、砂糖の糖価調整制度、豚肉の差額関税制度といった基本制度の維持、その他の品目も関税割り当てやセーフガード等の有効な措置を獲得したところであります。大変厳しい交渉ですけれども、こういう成果も得ているところでございます。
また、十一月二十四日に改定されました総合的なTPP等関連政策大綱において、チーズの体質強化策など、日・EU・EPAにより必要となる施策が盛り込まれておりますし、これまで行われてきた国際競争力を強化して農林水産業を成長産業とするための体質強化策については、しっかり実績の検証等を踏まえて必要な見直しを行って、確実に実施していく、また、協定発効に合わせた経営安定対策も講じていく、そういう考えでございます。
このように、農林漁業者が安心して経営に取り組めるようにすることにより確実に再生産が可能となるよう、交渉で獲得した措置とあわせて、本大綱に基づいた万全の対策を講ずることとしております。
このような国内対策とあわせまして、引き続き、担い手への農地集積、集約化など、あるいは輸出の促進など、農政改革を着実に進めることによりまして、新たな国際環境のもとでも食料自給率を向上させていくことは可能であるものと考えております。


○田村(貴)委員 自給率は下がるんですかとお尋ねして、下がることはないというふうにはおっしゃらなかった。これはやはり問題だと思います。
自給率を上げるとしながら、輸入農産物をどんどんふやしてやっていく。これはやはり、言っていることとやっていることが矛盾していると言わざるを得ません。日本の農業生産力の脅威になることは間違いありません。
加えて、アメリカとの関係であります。
トランプ大統領は、繰り返し多国間協定を否定し、先日のAPEC関連会合では、あらゆる国と二国間貿易協定を結ぶつもりだとはっきり演説しています。
ペンス副大統領は、十七日の日米経済対話を、日本との間のFTAの土台を築くものと述べています。日米FTA交渉になれば、これは大変なことになりかねません。農家、国民の今重大な関心事でもあります。
大臣にしかと答えていただきたいと思います。日米FTA交渉に日本は応じるのでしょうか。


○齋藤国務大臣 日米FTAについて米国から交渉を求められたらどうするのかというのは、仮定の質問ですので、お答えは差し控えたいと思います。

○田村(貴)委員 TPP12のときは、アメリカは米の関税撤廃もしくは二十万トンの輸入増を要求してきました。牛肉、豚肉、乳製品を初め、農林水産物の九八・八%の関税撤廃をアメリカは要求してきました。FTAでアメリカがこういう要求をしてくる可能性は非常に高いというふうに思います。日本農業を破壊に導く日米FTAに断固拒否する立場を貫いていただきたいというふうに思います。
そこで、アメリカの参加するTPPと参加しないTPPでは影響に大きな差異があると考えますけれども、TPP11での影響試算というのは出されるのでしょうか。


○齋藤国務大臣 TPP11につきましては、十一月十日に大筋合意が確認をされまして、また、先ほどお話ししましたように、十一月二十四日には総合的なTPP関連政策大綱が改定をされたというところでございます。
現在、我が省におきましては、この合意内容やTPP等関連政策大綱等を踏まえ、品目ごとの分析作業を進めているところでございます。結果がまとまり次第、内閣官房において取りまとめられます経済効果分析とあわせて公表することを考えております。


○田村(貴)委員 その内閣官房の経済効果分析というのは、対策を前提とするものですよね。対策を前提とするものでは、正味の影響がわかりません。要は、対策をするから安心してください、大丈夫ですよと言いたいがための試算であるというふうに受け取っております。
十月二十六日に行われた二〇一七年度の国と地方の協議の場で、全国町村会の荒木会長は、TPP、日欧EPAで農林漁業者が影響を受けるとの認識に立って、将来にわたり希望を持って生産活動が続けられるよう、そういうふうに要望されました。
生産現場の方々を初めとして、国民はどんな影響がもたらされるのか、とにかく不安を抱いておられます。だから、TPP12のときは、全国で自治体やあるいは農業団体がそれぞれの独自の影響試算、調査を行わざるを得なかったということではありませんか。
対策を前提としない影響そのものを出さないと、その対策が有効なのかどうかも検証できません。そうじゃありませんかね。影響自体を明らかにすべきだと思いますけれども、齋藤大臣、いかがですか。


○齋藤国務大臣 TPP12のときもそうだったんですけれども、TPP11につきましても、農林水産分野の定量的な影響試算につきましては、現実に起こり得る影響を試算すべきものと考えておりまして、協定自体の発効による効果だけではなくて、国内対策の効果もあわせて考える必要があると思っております。
このため、TPP11協定とその対策を盛り込んだ総合的なTPP等関連政策大綱は不可分一体でありまして、農林水産分野への影響については、今回の政策大綱の改定を踏まえた上で、先ほど申し上げましたように、内閣官房において取りまとめられる経済効果分析とあわせて、わかりやすく提示したいと考えております。


○田村(貴)委員 そこが一番わかりにくくなっているということなんです。

一番知りたいという、農業関係者、そして国民が知りたい情報を隠すということではありませんか。そうした姿勢が、一層やはり不信を招いていると言わざるを得ません。
日本農業新聞、九月二十八日付に載った農政モニター調査では、安倍内閣の農業政策を評価しないが六八%、官邸主導の農政政策を評価しないが七九%、自給率向上政策を評価しないが七四%、日欧EPAを評価しないが六九%に及んでいます。御存じのことだと思います。不信が渦巻いているではありませんか。
TPP11、日欧EPA、日米FTAなどの自由化交渉は中止すべきであります。そして、国内に、国民に対して交渉内容と経過をやはり明らかにすべきだというふうに思います。
そもそも、輸入自由化を推し進めながら、他方で競争力、効率化だけを追求する、追い求めるそうしたやり方というのは、いつまでたっても自給率向上には向かいません。こうしたやり方はすぐに改めて、規模の大小にかかわらず、地域に根づいて国民の食料を生産する農家への支援を抜本的に強く求めるべきではないか、強く求めたいというふうに思います。
次に、諫早湾干拓事業と有明海再生について質問します。
長崎地方裁判所において四月十七日、諫早湾干拓の潮受け堤防排水門の開門差しとめを求めた訴訟において、開門差しとめの請求を認容する判決が出されました。
四月二十五日には、当時の山本大臣が談話を出し、「国として開門しないとの方針を明確にして臨む」としました。そして、齋藤大臣はこの方針を受け継ぐと言明されています。
国として開門をしないことを決めた、これはもうとんでもないことであります。長崎地方裁判所の判決というのは確定判決ですか。違うでしょう。確定判決であるはずの福岡高裁の開門命令には従わず、開門の義務があるにもかかわらず、控訴さえ行わなかった。そして、敗訴判決に従っている。これは、誰がどう考えてもおかしい話であります。
そこで、大臣にお尋ねしたいと思います。
確定判決に従わない、しかも、国家が、行政が確定判決履行を拒否するというのは、法治国家としては許されない事態だというふうに私は考えますけれども、大臣はいかがお考えですか。


○齋藤国務大臣 諫早湾干拓開門問題については、複数の訴訟が提起をされておりまして、開門と開門禁止といった裁判所の相反する判断が存在する現状となっております。
こうした膠着した状況を打開し、問題を解決していくというためには、まず、平成二十二年の開門を命ずる福岡高裁の判決が確定した後、私どもといたしましては、現場での工事着手を試みるなど国として開門義務の履行に向けて努力を重ねてまいりましたが、現実に開門することは著しく困難な状況にございます。また、同判決が確定した後は、開門しない方向での司法判断が重ねられてきているという現実もございます。
そういったことを総合的に考慮した結果、諫早湾周辺の農業者や地域の方々が抱える不安を払拭するとともに、漁業者の方々の思いである有明海の再生を速やかに進める、このために、開門しないという方針のもとで、基金による和解を目指すとの判断をしたところでございます。


○田村(貴)委員 いやいや、国は開門義務を負っているんですよ。開門義務を果たさないから、裁判所から間接強制金を支払えと命じられているじゃないですか。
二〇一四年六月十二日以降ことしの十月三十日まで、幾ら間接強制金を払ってきましたか。原資は税金ですよ。漁民原告に対して、十月三十日までに何と九億八千五百五十万円。一日当たり、きのうもきょうもあしたも九十万円ずつ払っていく。それは、開門義務を果たさない、政府が約束を守らないからじゃないですか。
そうした強制金を払っていること自体が開門義務を負っていると言わざるを得ないんですけれども、開門義務を政府は今負っていないんですか。しかと答えていただきたいと思います。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。

今ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、本件につきましては、確定判決を受けて、私ども工事着手をやってきたわけでございますが、現実にはなかなか難しいという中で、その後の確定判決後に司法判断が重ねられている中で、開門してはならないという判決も出ておる、また、それらについても、あけた場合には間接強制金がかかるといったような状況で、まさに、その開門と開門禁止といった裁判所の相反する判断が現在あるわけでございます。
そういう中で、私どもとして、開門と開門禁止の司法判断の中で膠着した状況を打開するために、和解により問題の解決を目指すということは、これは法治国家として許されないといったようなことではないというふうに考えております。


○田村(貴)委員 開門義務を負っているんですよ。そこをごまかしちゃだめですよ。
開門によらない漁業振興基金で和解を目指したいと言いますけれども、先ほど議論もありましたように、佐賀県は反対していますよね。そのほかのところでも、もろ手を挙げて賛成ではないというような状況もあります。
漁民は、有明再生に向けて潮受け堤防の開門を切望しています。
齋藤大臣も、今月十三日の佐賀県での現地視察で、赤潮が広がる海の状況をごらんになったと思います。そして、ノリの色落ち、魚介類の漁獲減の話を、説明を受けたというふうに思います。漁民の声も聞かれたと思います。大臣九人にお願いしたけれども何一つ変わっていない、この九人というのは歴代農水大臣のことであります、佐賀県有明海漁協鹿島市支所の役員の言葉が報じられているところであります。
この振興基金百億円で、これらの問題が、長年にわたるこの問題が解決できるというのでしょうか。できるというのならば、その根拠を示していただきたいと思います。いかがですか。大臣に聞いているんですよ、大臣に。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
先生御案内のとおり、有明海の状況をよくしていく、環境変化をよくしていくということについては、特措法がございまして、その中で、特措法に基づきまして、関係省庁とそれから関係県と連携をして総合的な取り組みをここ十数年続けてきておるところでございます。
それで、私ども今回提案しておりますこの基金といいますものは、このような特措法に基づく取り組みに加えまして、有明海におけます水産資源の回復と漁業経営の発展ということを目的として設定をしようというものでございまして、実際、この基金の検討に当たりましては、四県の漁業団体の皆様方からの御要請、御提案なども踏まえて盛り込ませていただいたところでございまして、これを実現できる仕組みということで考えたところでございます。


○田村(貴)委員 それは実現できません。だって、これまでどれだけの費用を投じてきましたか、有明海の環境改善に向けて。四百七十億円ですよ。投じてきたけれども、漁民にとってみたら何一つ変わっていないと。基金は積み増ししないというスキームでしょう。たった一回こっきりですよね。絶対解決しないんですよ。そして、みんなが賛成しているわけじゃないですよ。そうしたやり方は、やはり無責任だと言わざるを得ません。
農水省は、開門を行わないとの立場を撤回すべきであります。直ちに開門調査を行い、有明海の再生、農漁共存の打開策を講じるべきであります。
歴代農水大臣は、二〇一〇年の開門確定以降、視察時に勝訴原告やあるいは弁護団の意見を聞いてこられました。先ほども議論がありました。今回、齋藤大臣は、勝訴原告、そして弁護団の方とはお会いになりませんでした。事務方に聞けば、日程調整が折り合わなかったということでありますけれども、それならば、日程調整をつけて、開門を求める原告、そして弁護団の意見を聞くべきだと思います。
大臣、日程調整していただけませんか。


○齋藤国務大臣 十一月十三日の現地視察につきましては、本年八月二十八日に佐賀県知事から現地視察の要請があったことも踏まえて、限られた時間の中で、現場の視察を中心にお邪魔をさせていただいたものであります。
開門問題につきましては、国としては、開門によらない基金による和解を目指しているところでありまして、開門を求める原告、弁護団との意見交換につきましては、現在進められている裁判の状況を見ながら、慎重に検討してまいりたいと思っております。


○田村(貴)委員 和解というのは、利害関係者の意見を聞くということじゃないですか。
そして、確定判決で、勝訴原告の人たちの意見を聞かないというのは、これはもう公正な行政でないと私は思いますよ。こうしたやり方をどうしてやっているんですか。だめですよ。
ちゃんと時間をとって、大臣は、原告、そして漁民、弁護団に会っていただくように心から要請したいというふうに思います。
総工費、事業が二千五百三十億円、鳴り物入りで造成した国営干拓地、営農地の現状は、収益に結びついていません。そして、事業者が撤退しています。きょうはこの問題を取り上げたかったんだけれども、もう時間がありません。
潮受け堤防をつくったがために、有明海異変を生じさせて、水質改善事業は、巨費を投じたにもかかわらず、タイラギ漁は七年連続、漁もできない。ノリは色落ち、水産資源は、甚大な影響を与えて、漁民は塗炭の苦しみを長年にわたってあえいでいるわけであります。潮受け堤防を開門しなければ、この問題は解決できません。
そして、農漁共存です。農業用水や防災など、開門に伴う被害が生じないような万全な対策を施すこと、そのために国が責任を果たすこと、強く求めて、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。