196-衆-本会議-24号 平成30年05月10日 公正な価格形成損なう 卸売市場法改定案 田村衆院議員が批判

○田村貴昭君 日本共産党の田村貴昭です。
 私は、日本共産党を代表して、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)
 まず、この法案は誰の要望なのでしょうか。市場関係者ですか。生産者ですか。それとも消費者ですか。
 卸売市場では、生産者の立場に立って少しでも高く売りたい卸売業者と、消費者の立場に立って品質、鮮度のいいものを少しでも安く買いたい仲卸業者の明確な役割分担のもと、競りを原則とした公正な価格形成が行われています。
 そこでは、売り手と買い手の力関係や投機的要素は介在せず、純粋に需要と供給の中での商品価値のみが評価されています。こうして決まった価格の適正さに対する信頼は、相対や直接販売がふえた今なお、揺らいでいません。関係者から高く評価されるこの仕組みを大きく変える必要がどこにあるのでしょうか。
 にもかかわらず、市場の関係者や専門家が一人もいない規制改革推進会議が、この仕組みを全てなくす案を突然持ち出しました。これは一体誰の要求ですか。明確な答弁を求めます。
卸売市場には、第三者販売の禁止という重要な原則があります。これは、卸売業者と仲卸業者を正面から向き合わせて適正な価格形成をするため、卸売業者が仲卸業者以外の者と取引することを禁止するものです。法案は、この原則をなくそうとしています。
 そうなれば、大手スーパーが都合のいいものを買い占め、仲卸と小売業者は残りを買うしかなくなるのではありませんか。また、卸売業者の第三者販売が進めば、品質と需給だけではなく、仕入れ力、販売力の高い大手との力関係で価格が決まります。特売日などに合わせた買いたたきで、生産者が被害を受けるのではありませんか。
 政府は、規制改革推進会議が持ち出した、現行の原則やルールを全廃する案を取り下げ、受託拒否の禁止、差別的取扱いの禁止の原則は残したから大丈夫だと説明しています。しかし、資本力に物を言わせた恣意的取引を厳密に規制するルールを廃止しておきながら、どうして大丈夫と言えるのですか。
 また、法案は、卸売市場の整備計画に関する規定を全て削除しています。これは、全国に市場を配置していく国の責任を放棄するものではありませんか。
 認可、許可制を認定制に格下げすることは、卸売市場への国や自治体の公的関与を後退させます。これでは、市場会計の赤字を抱える自治体で、地方市場の外部化や閉鎖が進むのではありませんか。
 ある卸売会社の社長は、農水大臣の認可は金看板です、なくなると困るとおっしゃいました。認定制により開設者からの使用許可にしてしまう本法案では、卸売業者のブランドに対する生産者の信頼を損なうのではありませんか。
 その上、これまで自治体が担ってきた卸売市場を、民間企業にも開設できるとしています。これまで条例に基づき自治体が行ってきた指導、検査、監督などの権限を民間企業に投げ渡して、どうして公正公平さが担保されるというのですか。大ロットの生産者、小売だけを優遇することになるのではありませんか。
 私たちは、季節ごと、地域ごとに鮮度の高い多様な食材を、毎日買物に行って食べています。この食文化を支えてきたのが、多様な生産者から供給されるさまざまな生鮮食料品を多様な志向を持つ消費者とマッチングさせる卸売市場なのであります。
 この機能を縮小し、公正な値決めを担ってきた競りと仲卸業者を駆逐するなら、規格化された大量の商品を消費地に流すだけの、市場とは似ても似つかぬ物流センターになってしまうではありませんか。
卸売市場は、家族経営の小規模な生産者でも荷を受け入れ、仲卸業者の鋭い目ききで公正な価格を提示し、大小問わず、さまざまな小売、消費者の要求に応えてきました。日本の食文化の多様性を支えるこの機能は、維持し、発展させることこそ必要だと主張し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇〕


○国務大臣(齋藤健君) 田村議員の御質問にお答えをいたします。
 競り売りによる売買取引と規制改革推進会議の提言についてのお尋ねがございました。
 卸売市場法における売買取引の方法につきましては、昭和四十六年の卸売市場法の制定当初、競り売り、入札の方法によらなければならないとしておりましたが、平成十一年の法改正により、競り売り、入札と相対取引とを選択できることとしており、本法案でも、この考え方を踏襲しております。
 規制改革推進会議の提言の経緯につきましては、農林水産省としてお答えする立場にはありませんが、関係者の意見を聞いた上で取りまとめられたと承知をしております。
第三者販売の原則禁止の緩和による影響についてのお尋ねがありました。
 仲卸業者からは、卸売業者による第三者販売の原則禁止が緩和された場合、仲卸業者の取引先である大手の小売業者等へ直接販売したり、大手の小売業者ばかり優遇されるのではないかといった懸念の声を伺っています。
 このため、本法案では、卸売業者、仲卸業者等の関係者の意見を十分に聞いて、卸売市場がおのおのの実情に即して柔軟に取引ルールを設定できることとするとともに、特定の買受人を卸売業者が不当に差別的に取り扱うことを禁止し、公正な取引を確保することとしております。
 また、買いたたき等に対する懸念につきましても、公正な取引環境を確保するため、農林水産大臣が、食品等の取引状況の調査を行い、事業者に対し指導助言等を行うとともに、不公正な取引方法に該当する事実があると思料するときは、公正取引委員会に通知することとしております。
 卸売市場の取引ルールの見直しについてのお尋ねがありました。
 本法案では、受託拒否の禁止や差別的取扱いの禁止など、公正な取引の場として必要な取引ルールを確保しつつ、第三者販売の禁止や商物一致の原則など、その他の取引ルールは、単に廃止するのではなく、取引市場ごとの実態に合わせて柔軟に設定できるよう改正しております。
 また、開設者が卸売業者等に公正な取引の場として必要な取引ルールを遵守させ、厳格な監督を行うとともに、農林水産大臣が開設者に指導監督することにより、卸売市場の高い公共性を確保することとしております。
 卸売市場の整備計画や許認可制の見直しについてのお尋ねがありました。
 卸売市場の整備計画につきましては、卸売市場の計画的な整備を進めてきた結果、全国に整備が行き渡ってきた状況を踏まえ、その仕組みは今回廃止をすることとしております。
 卸売市場の許認可制から認定制への見直しにつきましては、現行法では、農林水産大臣や都道府県知事の許認可を受けなければ卸売市場の開設が認められませんが、本法案では、許認可を受けずとも卸売市場を開設することができることとする一方で、生鮮品の公正な取引の場としての要件を満たす卸売市場を農林水産大臣が認定をし、中央卸売市場、地方卸売市場の名称を使用させ、施設整備への助成を行う等により、その振興を図ることとしたところであります。
 認定制のもとでも、開設者が卸売業者等に公正な取引の場として必要な取引ルールを遵守させ、厳格な監督を行うとともに、農林水産大臣が開設者に指導監督することにより、卸売市場の高い公共性を確保することとしております。
 民間企業が卸売市場の開設者となった場合についてのお尋ねがございました。
 卸売市場の開設主体のあり方につきましては、現行法のもとでも、中央卸売市場から地方卸売市場への転換を通じて民営化する事例が出てきていることも踏まえ、本法案では、中央卸売市場についても開設者は地方公共団体に限定しないこととする一方、開設者が卸売業者等に公正な取引の場として必要な取引ルールを遵守させるとともに、厳格な監督を行うこととしております。
また、開設者が、卸売業者等に対する指導、検査、監督を怠ったり、特定の出荷者や買受人を差別的に取り扱う、こういった場合には、農林水産大臣が、措置命令を発出して是正を求めるほか、命令に従わないときには 認定を取り消し、公共性を確保することとしております。
 卸売市場が有する機能についてのお尋ねがございました。
 卸売市場は、生産者から農林水産物を集めて小売店等に小分けして供給し、需給に応じた価格形成を行うなどの機能を果たしており、今後も食品流通の核として堅持すべきと考えております。
このため、本法案では、公正な取引の場としての要件を満たす卸売市場を農林水産大臣等が認定して振興するとともに、仲卸業者等の取引参加者の意見を十分に聞いて、卸売市場がおのおのの実情に即して柔軟に取引ルールを設定できることとしており、一層、生産者、消費者のニーズに応じた事業展開を行うことを可能としております。(拍手)


○議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。
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