196-衆-農林水産委員会-18号 平成30年05月30日 諫早湾干拓事業和解協議/国連「家族農業10年」 家族農業の再評価を 田村貴昭衆院議員

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
私の方からも、諫早湾干拓事業和解協議についての質問をさせていただきます。
一昨日の五月二十八日、福岡高裁の第二次和解勧告に対して、漁民原告代理人は出席しませんでした。その理由の一つは、何といっても、「確定判決に基づく開門請求権の一方的放棄を前提とするのは、司法制度の軽視であり、あまりにも偏波で不公平である」ということであります。当然のことであります。福岡高裁は国の言い分を追認することに終始して、そして、司法の役割を全く果たしていない。これは私だけが言っているんじゃないんですよね。もう多くの報道でもこういうふうに論じられているわけなんです。
時間がありませんので、一問お伺いします。
和解協議事項の百億円の基金というのは、運用は四県の行政と四県の漁協ですよね。これは、漁民原告が運用できるものではありませんよね。確認したいと思います。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
私ども、和解協議の中で百億円の基金の提案をさせていただいております。これにつきましては、先ほど大臣からもお話ございましたが、漁業団体なりの皆様方の御意見も反映をした形でやっていくということでございます。運営主体につきましては、一般社団のようなものをつくっていただきまして、漁業団体の方に入っていただくというような形を想定しているものでございます。

○田村(貴)委員 つまり、有明異変で甚大な被害をこうむった漁民、その原告は、この運用には携われないということなんですね。ですから、和解協議、この条項にはならないということなんですよ。そういう百億円の基金を使いたい、やるんだったら、それは農政行政としてやられたらどうですか。
さらに、この状況では、国の方は和解を最後まで、判決まで努力したいと言っていますけれども、テーブルに着くことができませんね。開門も含めた和解協議へのかじを切らない限り、和解は、テーブルに両者が着くことはできないということを改めてこの場で主張をさせていただきたいというふうに思います。考え方を変えていただきたいと思います。答弁は要りません。
きょうは、国際家族農業の十年について質問をします。
世界的に小規模家族農業に対する注目が集まっています。国連は、二〇一四年に続いて、二〇一九年から二〇二八年までの十年間を国際家族農業年とすることを決めました。昨年十二月の国連総会で、日本も賛成して、全会一致で採択されました。
最初に、齋藤大臣にお伺いします。
この国際家族農業の十年について、政府はどのように評価をされていますか。日本の農業政策に生かしていかれますか。


○齋藤国務大臣 昨年十二月二十日に、国連総会で、国連家族農業の十年に関する宣言が採択されておりまして、これは、御指摘のように、二〇一九年から二八年を家族農業の十年と定めて、各国が家族農業に関する施策を進めるとともにその経験を他国と共有すること、それから、FAO等の国際機関が実施可能な活動やプログラム等を展開すること等を求めたものであります。
同決議文の前文に記載されているとおり、農林水産省としても、家族農業が世界の食料安全保障の確保や貧困の撲滅等に役割を担っているという認識を持っております。
家族農業の十年を定め、家族農業の重要性について国際社会で認識を共有するということは、持続可能な開発目標、SDGsの目標の一つである飢餓撲滅の達成のためにも意義深いものであるというふうに考えているところであります。

○田村(貴)委員 国際社会は、これまで、農地を大規模に集積して企業経営化し、そして、機械、農薬、化学肥料などの科学技術を投入して国際的な競争を促せば、飢餓と貧困は解決できるとしてまいりました。しかし、市場原理主義や自由貿易の行き詰まりのもとで格差と貧困は広がり、飢餓は減るどころか拡大傾向にあります。環境汚染、化石燃料への依存と気候変動、食の安全性への危険などの弊害が次から次へと生まれているところであります。
この国際家族農業の十年で、国連は、地球上の飢餓を撲滅する上で、小規模家族農業のどんな性質に利点を見出したんでしょうか、そして評価をしているのでしょうか。教えていただきたいと思います。


○横山政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の、国連が、地球上の飢餓を撲滅する上で、小規模家族農業のどんな性質に利点を見出し評価したのかという点でございます。
今回の決議文の前文におきまして、その点に関しての記述がございます。
まず一点目が、世界で八億一千五百万人が依然として飢餓に苦しみ、幾つかの地域では依然として栄養不良が深刻であることを認識するとともに、世界の食料生産額の八割以上を占める家族農業が果たす役割の重要性を強調する。さらには、極端な貧困層の八割近くが農村地域で暮らし、農業に従事しており、農村地域の開発と持続可能な農業に対する資源の投入や、小規模農家、特に女性農家への支援が、とりわけ農民の生活を改善することによって全ての形態の貧困を終わらせる鍵となることを想起、こういったふうな規定がございます。
したがいまして、国連におきましては、実際に世界の食料生産の一定以上の部分を家族農業が担っているというようなこと、あとは、貧困層が実際に農村地域に居住をし、農業を営んでいるということ、そうしたことを踏まえて、小規模家族農業の重要性あるいはその取組の重要性についてこのような決議をしたというふうに理解をしておるところでございます。


○田村(貴)委員 土地生産性の高さ、そして労働インセンティブの高さ、たくさんのメリットがあるわけですね。そういう性質が評価されているわけであります。そうした多くのメリットがあって、世界的な見直しの機運が高まっています。
我が国における小規模家族農業の実態について伺います。
日本における小規模家族農業はどの程度でしょうか、次の数字を示していただきたいと思います。農業経営体数と家族経営体数、その割合について、そして、農地面積一ヘクタール未満、二ヘクタール未満の経営体数、全体に占める割合、数字だけで結構ですので、教えてください。


○大杉政府参考人 お答え申し上げます。
二〇一五年農林業センサスにおける農業経営体は約百三十八万経営体ございます。このうち家族経営体は約百三十四万経営体でございまして、農業経営体全体の九八%程度を占めていますけれども、これを経営耕地面積規模別に見ますと、一ヘクタール未満は約七十三万経営体で、家族経営体全体の約五四%を占め、一ヘクタール以上二ヘクタール未満は約三十三万経営体で、家族経営体全体の約二五%を占めているところでございます。


○田村(貴)委員 五ヘクタール未満で考えますと、実に九二・四%になってくるわけであります。小規模家族農業では、まさに日本においては主体であります。
しかし、今回答いただいた数字にあらわれない部分もあります。例えば、わかったら教えていただきたいんですけれども、中山間地で小規模家族農業はどのぐらいの割合を占めているのか。また、ホビーファーマーと言われる方が全国に数百万人いるとも言われているんですけれども、これは農業センサスにあらわれてこないと思います。こうした農産物を生産している方はどのぐらいおられるのか、わかるかわからないぐらいの答弁で結構ですので、お願いします。


○大杉政府参考人 お答え申し上げます。
まず、中山間地域の家族経営体のうち、小規模として経営耕地面積一ヘクタール未満をとってみますと、約三十四万経営体ございます。これは、中山間地域の家族経営体全体約五十七万経営体の六割程度を占めております。
次に、いわゆるホビーファーマーについてでございますが、農林業センサスの調査客体には、このいわゆるホビーファーマーは基本的に含まれていないと考えておりまして、農林業センサスにあらわれない農産物を生産している国民の数は把握していないところでございます。


○田村(貴)委員 小規模家族農業をこれから大事にしていこうと来年から十年の取組が待たれるわけでありますけれども、ならば、小規模家族農業のことを把握しなければなりません。今出てきましたホビーファーマーを含めて、農産物の生産に当たっている方々の状況について、やはり農業センサス二〇二〇に向けて調査範囲を広げるとか、そうした小規模家族農業の見える化が私は必要ではないかなというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 農業政策を検討する上で、小規模家族農業の状況を把握していかなくちゃいけないということは当然のことでありまして、先ほど来統計部の方から御説明しておりますように、この小規模家族農業の状況については既に把握をし、既に見える化を図っていると考えています。
あと、ホビーファーマー、これについては、現時点において、農政の展開上これを新たに見える化をしていく必要、そこまではないのではないかと考えているところでございます。


○田村(貴)委員 これから新たな対策、それから事業とかつくる中で、やはり把握しなければならないことについては統計資料にも反映されるようにぜひしていただきたいと思います。
そして、小規模家族農業の重要性を農業政策にいかに反映させていくのかということで、世界食料安全保障委員会の勧告があります。価格と小規模経営の所得を安定化させるためには、政府による介入が重要であるという指摘であります。
そこで、再度大臣に尋ねますけれども、日本においては米の直接支払交付金が廃止されました。生産調整にも国が直接責任を負わなくなっています。世界の流れから逆行しているのではないかと私は考えますけれども、いかがですか。


○齋藤国務大臣 米政策の転換についての御質問ですが、三十年産米から、米の直接支払交付金及び行政による生産数量目標の配分、これは廃止をいたしました。
このうち、米の直接支払交付金につきましては、全ての販売農家に対して一定額を一律に支援するということはさまざま問題が多いというふうに考えておりましたので、平成二十九年産までの時限措置といたしました。
また、行政による生産数量目標の配分につきましては、国内の主食用米の需要が大変残念ながら毎年八万トン程度減少している中、この手法をとり続けますと、配分する面積が減り続けて、いずれ行き詰まるなどの観点から、生産数量目標の配分を廃止させていただいたところであります。
一方、農林水産省としては、引き続き需要に応じた生産を促して、米の需給と価格の安定を図っていくことは重要であると認識しておりますので、三十年産以降も引き続き、麦、大豆、飼料用米等の主食用米以外の作物の生産を支援することによりまして水田をフルに活用していこう、それから、きめ細かい情報提供の継続ですとか、それから収入減少影響緩和対策、ナラシ対策や収入保険等のセーフティーネットの構築、こういったことをあわせて行っていくことによりまして、経営規模にかかわらず、農業者みずから需要に応じた生産に取り組んでいただける環境整備に努めて、米の需給及び価格の安定を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。


○田村(貴)委員 去年の十二月二十七日の日本農業新聞の論説、「国連家族農業十年 大きな役割 再評価の時」という論説があります。TPPやEPAといった「ハイレベルの自由貿易を進める日本は今、競争力強化の名の下で農業の規模拡大・効率化路線を強めている。だが、その単線だけで十分か。家族農業を営む生産者にも目を向けるべきだ。次代に持続可能な食と農を引き継ぐため、“懐の深い”農政が求められている。」こうした指摘はしっかりと受けとめるべきであります。
率直に言って、日本における小規模家族農業の位置づけは低いと言わなければなりません。今後、この重要性を農業政策にしっかり位置づけることを要求して、きょうの質問を終わります。