196-衆-農林水産委員会-17号 平成30年05月24日

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
卸売市場法の改正案について質問をします。
まず、許可、認定制についてです。
中央卸売市場において、農林水産大臣の許可制だったものを認定制に格下げをして、地方公共団体のみであった開設者を、規模要件などを課すだけで民間事業者も参入できるものへと、改正案ではそうなっています。
そこで伺いますけれども、改正案四条一項の、施設が一定規模以上というのは、敷地の面積を指すのでしょうか。農水省の定める基準とは何でしょうか。現行法上は、整備計画に沿って必要とされなければなりませんけれども、改正後は、要件を満たせば農水大臣の認定がおりることになるのでしょうか。


○井上政府参考人 お答え申し上げます。
改正法案四条一項は、中央卸売市場についての規模要件を定めているところでございますけれども、中央卸売市場につきましては、受託拒否の禁止の義務を負うため、相当程度の規模を有する、比較的大きな消費地への流通拠点に限定するという趣旨でこうした規定を設けているわけでございます。また、これに該当する中央卸売市場につきましては、高い公共性を有するということで、施設整備に対して、地方卸売市場等への予算補助よりもより高い補助率、十分の四以内の施設整備への補助を行うこととしてございます。
この四条一項の農林水産省令で定める基準におきましては、中央卸売市場の認定申請を行う卸売場、仲卸売場等の施設の面積が一定規模以上であること等を定めることを想定しております。
また、認定に当たりましては、市場の健全な運営がなされるということは認定の要件になっておりまして、その中で、資金の確保が確実になされることといったことでありまして、ある程度需要があって、卸売市場における取引がなされることによって施設の運営等を賄えるようなものになっているかといったところもチェックをするということにしております。


○田村(貴)委員 結局、整備計画に沿って必要とされるという判断が、今後は条件を満たせば認可されていくということになると思うんです。
これは、きのうの学識経験者の藤島先生、参考人がおっしゃっていたとおり、必要であっても開設されなかったり、あるいは競合が起きたりする可能性があるということをはらんだ法案であります。
次の質問です。
民間事業者が参入した場合、これまで条例に基づいて行ってきた買参人の許認可、市場施設の使用許可、それから施設使用料、指導、検査、監督の権限、行使の方法などの業務は誰が行い、規程は誰が策定していくことになるのでしょうか。これは結論だけでいいので端的にお答えいただきたいと思います。


○井上政府参考人 業務規程の作成主体でございますが、これは、現行法と同様、開設者でございます。
また、ただいま御指摘のございました市場施設の使用許可、施設使用料の徴収、卸売業者等の指導、検査、監督等は、一義的には開設者が行うこととなりまして、開設者が市場の運営として適切でないような場合には、農林水産大臣が命令等によって対応するということでございます。
○田村(貴)委員 開設者なんですね。非常に不安ですよね。公的責任のかかわり、指導、監督、権限、どこに行っちゃうんでしょうか。ここにも問題があります。
次に、第三者販売の禁止。
きのうも参考人質疑で、仲卸業者に対する大きな打撃が想定されるのではないかという問題があります。中央卸売市場における第三者販売の禁止の原則も削除されました。市場ごとに話し合ってルールをつくればいいというふうにおっしゃいますけれども、仲卸の中澤参考人は、今ですら卸と仲卸がお客さんをとり合っている状況があるというふうにきのう陳述されました。
卸の第三者販売を押しとどめてきた原則がなくなり、例外が例外でなくなったとしましたら、仲卸は仕事が減ってしまうのではありませんか。窮地に陥り、卸売市場の機能は形骸化されてしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか。


○井上政府参考人 仲卸業者の方々の中に、卸売業者による第三者販売の原則禁止が緩和された場合に、仲卸業者の取引先である大手の小売業者等への直接販売が行われたり、大手の小売業者ばかりが優遇されるのではないかといった懸念があることは承知をしております。
こうした点も踏まえまして、今回の法案におきましては、卸売市場において第三者販売等に関するルールについて独自に定める場合におきましても、卸売業者、仲卸業者等の関係者の意見を十分に聞き、また、そのルールの内容が差別的なものになっていないかといったことを認定の際の要件としているところでございます。


○田村(貴)委員 齋藤大臣にお伺いします。
やはり、審議を通じて、第三者販売の禁止の削除というのは一番の論点でありますし、一番の問題点であるというふうに考えます。
第三者販売の禁止を削除してしまえば、差別的取扱いのルールというのが力を持たなくなってしまう。つまり、例外が例外でなくなってしまったら、この第三者販売の禁止の原則、これが形骸化されてしまう。差別的取扱いのルールも力を持たなくなってしまうと思います。ですから、第三者販売の禁止の原則、この原則はやはりしっかり守るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 卸売業者が同一市場の仲卸業者等以外に販売する第三者販売、これを認めるルールを設定を、これは設定するかしないかはそれぞれ御判断いただくんですが、設定をしたとしても、通常の商慣行の範囲を超えて、卸売業者がいわゆる第三者に該当する特定の小売業者等にばかり優遇したり、あるいは極端な優遇をしたりすれば、これは共通の取引ルールとしての差別的取扱いの禁止に反する行為に当たりますので、このような場合には、開設者からまず指導等を行う、そして、改善されない場合には農林水産大臣から開設者に対して指導、命令等を行うということにより公正な取引を確保することとしています。
また、もう一つの流通構造改善促進法におきましても、我々が流通の実態の調査をして、必要があれば最終的には公取に通知をするという仕組みもあわせて講じることにしておりますので、公正な取引の確保、差別的取扱いの禁止ということについてもしっかり対応していけるものと思っております。


○田村(貴)委員 しっかり対応していけるものと思うと。
行政が、農水省が指導する、命令に至るまでのプロセスが私は非常に長くなるんじゃないかと思いますよ。やはり開設者が、市場関係者の意見は一応聞きましたと、そしてルールをつくったらできるんですから、これが。解禁できるんですから。それを問題だと農水省の方に認識してもらって動いてもらうにはなかなかの時間がかかると思うので、これはやはり大きな問題である。この法案は認めるべきではないというふうに思います。
一体誰のための改正なのかということでありますけれども、私は本会議質問でも尋ねました、誰の要求なのかと。大臣から明確な御答弁はありませんでした。きのうも質疑をしました。規制改革推進会議、未来投資会議、市場関係者のメンバーはいなかったということも明らかになりました。
参考人質疑で卸の川田参考人は、抜本的改正を要望したことはない、それから、卸売市場を抜本的に見直しするとかの話は寝耳に水だったというふうに明確にお答えになったわけであります。当事者である市場関係者が中心に座らないで議論をされてきたのがこの法案なんですよね。
藤島先生は、改正をせざるを得ないような喫緊の課題はないというふうにきのうお話しされました。生産者、消費者、市場関係者の誰も要望していない改正であることも明らかになったわけであります。
そこで、質問します。
農水省にお伺いしますけれども、今、卸売市場法を改正しなければ、卸売市場と経済にどんな支障が生じるんでしょうか。具体例を挙げて説明していただきたいと思います。


○井上政府参考人 お答え申し上げます。
食品流通の現状を見ますと、生鮮品のままでの需要が減少して、加工食品や外食での需要が拡大をしておりますとともに、価格面のみならず品質や衛生面等への関心が高まっているといったことがございます。また、流通面におきましては、流通ルートの多様化が進み、トラックドライバー不足による物流の確保にも支障が生じてきているというように、卸売市場法が制定された昭和四十年代と比べますと、状況は大きく変化をしてございます。
他方で、現行の卸売市場法におきましては、特に中央卸売市場については、取引の細部にわたり国が全国一律に規制をしておりまして、今申し上げましたような食品流通の状況の変化に対応できない面が大きくなってきているというふうに考えてございます。
例えばの例ということでございますけれども、産地から原則として全ての商品を一旦市場に持ち込んで取引しなければならない商物一致の原則によりまして、輸送の時間や物流のコストが大きくなっているといったことで、消費者にとってみれば、鮮度が高いままで生鮮品を入手できるということを阻害しているといったことが課題として挙げられると思います。


○田村(貴)委員 今おっしゃったことは、全部現行法で柔軟に対応されていますよね。市場関係者の皆さん、そう言っていますよ。今この法律を変えなければ、市場と経済に生じる支障が喫緊にあるのかということを聞いているわけです。
品質や衛生面での心配、だからこそですよ、この市場法が必要じゃないんですか。ここを骨抜きにする。少なくとも、今お話あったところで、第三者販売の禁止、これを削除する理由は見当たりませんよ。
加えて、きのうの参考人質疑で、もしかしたら民間事業者が開設者となってしまうのではないか、仲卸を越えて、もう大きなロットで卸から買ってしまうんじゃないか、こういう懸念が各委員から表明がありました。当のチェーンストア協会の井上参考人は、卸売市場に参入するとの声は会員企業からあってはいないと。では、どこから要望が上がっているかという話なんですよ。
もう一度、単刀直入に聞きます。これは誰のための法改正なんですか。生産者なんですか、市場関係者なんですか、消費者なんですか、それともそれ以外なんですか。お答えいただきたいと思います。


○井上政府参考人 今回の流通構造改革につきましては、生産者の所得の向上と消費者ニーズへの対応、こうしたことをより一層できるような流通構造を実現していくという見直し案を提案させていただいているものでございます。


○田村(貴)委員 説得力ないですね。初めから市場関係者の声は聞かない。規制改革と称して、一世紀近くにわたる日本の独自の経済民主主義の根幹を改悪することは、断じて許されるものではありません。
私は、きょうまで述べられてきた農水省の見解というのをいま一度市場の関係者の方に示して、また考え方をお伺いして、またこの委員会でも論議をさせていきたい、そういう思いに駆られています。
齋藤大臣にお伺いします。
大臣に紹介したい本がございます。この本は、魚の仲卸でずっと働いてきた職人さんの本であります。「魚仲卸を天職にした男」というタイトルで、京都市中央卸市場で仲卸一筋六十六年、全国水産物卸組合連合会最高顧問の池本周三さんの自伝的エッセーであります。私もこれを読んで大変感動いたしました。一文紹介させていただきたいと思います。
「卸売市場は不要なのか」「“市場不要論”が語られるようになって、もうだいぶんたつ。あるいは市場はあってもいいが、卸と仲卸、なぜ二段階の中間搾取が必要なのか、とね。」「詰まるところ、この答に行き着いた。 いのちの源である食の安全は非常に大切だからこそ、まったくの自由経済下に置かないで、国の管理の下の公設市場にするというわけだ。」「しかし、卸と仲卸、なぜ二段階が必要か」「卸も仲卸も民間企業ではあるが、公から認可を受けた企業である。そしてその目的は流通。生鮮食料品を産地から消費者へスムーズに流すことであり、より多く、より高い値段で販売することではない。」「卸は出荷者の味方、仲卸は消費者の味方。市場はその両者が相撲を取るための土俵」「この公設市場のしくみによって、消費者は守られていこそすれ、中間搾取されているとはいいがたい。」
大臣、いかがでしょうか。私は、卸売市場というのはこういうことだったのかと、まさに目からうろこが落ちる思いでありました。民間業者であるけれども、公的責任を負っているんだ、そして、そういう誇りと自覚を持って、日々、全国の市場において、たくさんの方が国民の生活と命を支えて働いておられるわけなんですよ。
卸と仲卸の明確な役割分担のもとで公正な価格形成が行われている、これは否定されないと思います。生産者は安心して生産に従事し、消費者もおいしくて安全な生鮮食料品を買うことがこの仕組みによってできるわけであります。この基本原則というのは絶対に壊してはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。
すなわち、卸売市場というのは、単に物流センターにしてはいけない、単に量販店だけのものにしてはいけないということであると思いますけれども、こうした公的責任、あるいは行政の関与というのをしっかり踏まえて今後も対応していかれるか、指導監督していかれるか。大臣の決意をお伺いしたいと思います。


○齋藤国務大臣 今、田村委員が御指摘された、卸売市場が果たしている機能、価格形成だけではなくて、集荷、分荷ですとか代金決済等、そういう重要な機能も果たしておりますので、累次答弁させていただいておりますように、今後も、食品流通の核として、この卸売市場というものは堅持すべきだと思っておりますし、今回の法改正の中でも、私どもの指導監督についてはむしろ強化をしていくという面もあるわけであります。
いずれにいたしましても、さはさりながら、新しい流通実態にも柔軟に対応していくということも一方で必要でありますので、今、田村委員の御指摘をしっかり踏まえながら運用していきたいと思っております。


○田村(貴)委員 もう一問、大臣にお伺いしたいと思います。
私は、去年の特別国会から農林水産委員会に所属するようになりました。差別的取扱いの禁止であるとか、第三者販売の禁止であるとか、商物一致の原則とか、たくさんのことをそのときから学びました。
ただ、農林水産委員会に所属しなかったら、正直な話、この卸売市場のことは知らないことだらけだったというふうに思うわけであります。それは、市場の関係者も同じことをおっしゃっておられる。この本を書かれた池本さんも、魚の仲卸六十六年だけれども、市場のことは、プロの世界だからなかなかわからないねと。多くの国民の方がわからないねというふうにおっしゃっている。大田市場に行っても築地に行ってもそういうことを伺いました。
私は、きのう中澤さんがおっしゃったんだけれども、近代の傑作と言われた卸売市場法、やはり、この基本原則、そしてメカニズム、この有意義な点であることは多くの国民の皆さんに発信する必要があるんじゃないかなというふうに思います。
改めて知ることもいっぱいありましたので、やはり、こういう情報、あるいは意義の解説を含めて、農林水産省から卸売市場のこの大事な点については大いに発信して語っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 私も、卸売市場の重要性というものは何度も答弁させていただいているとおりでありますし、このことについてはやはり多くの国民に知っていただくべき話だろうと思っておりますので、私なりに努力をしていきたいと思います。


○田村(貴)委員 残されたたくさんの問題点は、また機会があるごとに訴えさせていただきたいというふうに思います。
これで質問を終わります。