196-衆-農林水産委員会-19号 平成30年05月31日 ネオニコ農薬制限を 田村衆院議員がミツバチ被害を追及

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 農薬取締法の改正案について質問します。
 最初に、大臣にお尋ねしますけれども、二〇〇六年に、超党派による議員立法、有機農業の推進に関する法律が成立しています。化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本とする有機農業を推進する、そういう法律であります。
 しかし、農地面積当たりの農薬使用量は、二〇〇九年、一ヘクタール当たり十三・二キログラムであり、欧州各国よりも約三倍から六倍日本は農薬を使用しています。有機農業の取組面積は二万四千ヘクタールで、耕地面積の〇・五%にとどまっています。農水省の目標は今年度一・〇%でありますから、まだ半分、ほど遠いという状況にあるわけであります。
 そこで、消費者団体を始め、農薬使用に危惧を抱く少なくない人たちから、やはり農薬は減らしていくべきではないかという声が上がっています。
 今度の法改正に当たって、農薬の使用を減らすための取組を推進していくべきではないかと思いますけれども、大臣の御所見を伺います。
〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕


○齋藤国務大臣 基本的に、同じ考え方で進めていきたいと思っています。
 ただ、外国との比較がありましたけれども、我が国の場合は、温暖湿潤で病害虫の被害を受けやすいという我が国の特徴がありますので、やむを得ない面があるわけでありますが、ただ、必要な範囲内で農薬を適切に使用するということは不可欠だろうと思っております。
 農薬を使用する上では、人の健康や環境に対する安全を確保することが基本でありますので、農薬登録制度によりまして、安全と認められる農薬だけを製造、販売、使用できるようにするとともに、遵守すべき使用方法などを定めて、農薬の適正使用というものを進めているところであります。
 農薬の使用に当たりましては、安全を確保するため定められた使用方法を守ることはもちろんのことですけれども、農薬だけでなくてさまざまな方法を組み合わせた総合的な病害虫防除の推進ですとか、それから、発生前の、予防的に農薬を散布するという防除、これはスケジュール防除といいますけれども、そういう防除から発生予察情報に基づく適時適切な防除への転換、こうすると農薬使用量を減らすことができるということですので、そういったことも推進をして、防除に必要な量だけを的確なタイミングで使用するように、より一層取り組んでいきたいと考えております。


○田村(貴)委員 大臣、有機農業についてはいかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 有機農業につきましては、消費者の高度化し多様化する農産物に対する需要に対応するものでありまして、農業生産に伴う環境への負荷を低減もしますし、農産物の有利販売にもつながるということであります。
 御指摘のように、欧米諸国では有機食品市場が急拡大をしている中で、有機茶を始め、我が国で生産された有機農産物やその加工品の輸出拡大も期待をされています。
 農林水産省では、今御指摘ありました有機農業の推進に関する法律第六条に基づく国の基本方針におきまして、御指摘のように、我が国の耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を倍増させるということを目標として取り組んでいるわけでありますが、まだ達成できるかなというところまでは至っていないのが現実だろうと思います。
 この目標の実現に向けて、自然環境の保全に資する農業生産活動を支援する環境保全型農業直接支払いですとか、有機農産物の販売先を確保するためのマッチングフェアの開催ですとか、それから輸出拡大に向けた有機JASの認証取得支援などによりまして有機農業を推進しているところでありますが、今年度は、実は、新たに有機農業者のネットワークの構築による産地化を支援するほか、販売戦略を企画、提案するオーガニックプロデューサーの派遣等を支援するということを新たに始めようと考えておりまして、これらによりまして、有機農業の目標に向けて努力をしていきたいと考えております。


○田村(貴)委員 環境省にお伺いします。
 今度は、法改正で、環境の影響調査、影響評価の対象を拡大するというふうに聞いております。
 これまでの水産動植物に加えて、陸生生物を加えるとしていますけれども、どういったものが対象になるんでしょうか。この中にはトンボ類は含まれるんでしょうか。


○早水政府参考人 お答えします。
 トンボ類も概念上は生活環境動植物に該当し得ると考えておりますけれども、具体的に、新たに評価対象に追加する動植物、評価対象とする動植物につきましては、今後、陸域の動植物も含めて、改正法案の成立後に、国際標準との調和、あるいはこれまでの科学的知見などを勘案して、中央環境審議会において審議いただいた上で選定したいと考えております。


○田村(貴)委員 ちょっと時間がないので次へ行きたいと思うんですけれども、これまで登録されている農薬についても、環境への影響評価というのは、新たに追加された陸生生物も加えていくということでしょうか。この一点だけ答えてください。


○早水政府参考人 お答えします。
 既に登録されている農薬につきましても、再評価制度が導入されますので、再評価の際に、新たに生活環境動植物に係る試験生物等の提出を求めて評価を行うこととしております。
〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕


○田村(貴)委員 それでは、ネオニコチノイド系の農薬について質問したいと思います。
 欧米では、ミツバチの大量失踪が問題となっている。きょうも議論がありましたように、日本でも、ある日突然ミツバチが巣箱から消えてしまっていく、こういう報道も、私も見ました。
 ネオニコチノイド系の農薬に疑いがあるとして、EUでは、一部の農薬の使用を暫定的に制限しています。アメリカでは、原因が不明として、従来どおりの使用は認めるものの、新規使用及び適用拡大に係る登録を停止し、それぞれ蜂類の再評価を実施中であるというふうに聞いています。
 そこで、まず農水省にお伺いしますけれども、農水省のミツバチ被害事例調査について、被害の原因について説明をしていただけるでしょうか。


○池田政府参考人 お答えします。
 ミツバチの減少の原因といたしましては、ダニなどの寄生虫や害虫、病気、栄養不足、農薬などがございますが、農林水産省は、ミツバチが減少する事例の発生と農薬との関係把握などを目的といたしまして、平成二十五年度から三年間、農薬が原因と疑われるミツバチの被害事例について調査をいたしました。
 この調査の結果、被害の原因については、被害の発生が水稲のカメムシ防除をする時期に多く、巣箱の前から採取した死虫からは水稲のカメムシ防除に使用可能な殺虫剤が検出されたことから、被害の原因は水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤をミツバチが直接浴びたことである可能性が高いと考えられたが、検出された各種の殺虫剤の被害への影響の程度は特定できなかったということでございます。


○田村(貴)委員 カメムシ防除の殺虫剤というのはまさにネオニコチノイド系の農薬であるということで、ここに直接暴露したことが原因であるというふうにされているわけです。
 次に、環境省に伺います。
 環境省も、ネオニコチノイド系の農薬の、トンボやあるいはハナバチ類への影響調査をされています。それらの調査を検討したのが農薬の昆虫類への影響に関する検討会報告書というふうに伺っておりますけれども、トンボ類への影響についての評価について教えてください。


○早水政府参考人 お答えします。
 御指摘の報告書でございますが、その概要を平成二十九年十二月の中央環境審議会土壌農薬部会に報告しておりまして、その中で、トンボ類へのネオニコチノイド系農薬の影響の総合評価につきまして、次のように取りまとめております。
 一九九〇年代から一部のトンボ類の顕著な減少傾向を示すデータはあるが、環境の変化が主要因である可能性もあることから、ネオニコチノイド系農薬等の使用がトンボ類の減少要因であるかどうかは明らかではない。それから、トンボの幼虫に対し、ネオニコチノイド系農薬に比べ、フィプロニルや従来型のフェニトロチオン等で高い毒性が示され、また、ユスリカ幼虫の方が感受性が高い。ネオニコチノイド系農薬等が水田周辺の水中でトンボ類の生息に影響を及ぼし得ることを示す明確な知見はない。底質での生息が長いトンボの幼虫への影響を見るには、慢性的な長期暴露による影響評価の検討が必要。
以上でございます。
 環境省といたしましては、引き続き、トンボ類に関する調査研究を推進して、知見の集積に努めてまいります。


○田村(貴)委員 もし重複されたんだったら整理してもらいたいんですけれども、もう一つ、農薬の環境影響調査業務、この報告書のうち、ネオニコチノイド系の農薬についての結果、考察というのがあります。これについても御紹介いただけますか。


○早水政府参考人 お答えします。
 御指摘の調査報告書につきましては、その概要を平成二十九年七月の中央環境審議会農薬小委員会において報告しておりまして、その中で、アキアカネ及びアオモンイトトンボのヤゴと、試験生物として国際的に用いられている水生昆虫のユスリカ幼虫について、ネオニコチノイド系の農薬等による毒性調査の結果と考察を示しております。
 具体的には、「水生昆虫であるアキアカネ及びアオモンイトトンボのヤゴとユスリカ幼虫で農薬による急性影響を比べた場合、ネオニコチノイド系等の農薬について、ユスリカ幼虫の方の感受性が高い傾向にあり、試験方法も確立していることから、水生昆虫への急性影響を評価するには、ユスリカ幼虫がより適していると考えられる。」と取りまとめております。


○田村(貴)委員 まとめて言いますと、少なくとも、ユスリカ幼虫については影響があるというふうに結果があって、考察がされています。
 そこで、資料をお配りしています。
 今答弁があったところの資料なんですけれども、ユスリカの四十八時間EC五〇というところを見ますと、例えば、ネオニコチノイド系の農薬、イミダクロプリドは一リットル中に十九・七マイクログラムで、また、ニテンピラムでは百十マイクログラムで、ユスリカ、個体の半数が泳ぐことができなかったというような結果であります。
 今、農水省と環境省のこれまでの調査結果、考察等をまとめると、ネオニコチノイド系の農薬というのは、水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤にミツバチが直接暴露したことが原因である可能性が高い。トンボについては明確な知見はないけれども、ユスリカは感受性が高い傾向にあり、微量でも影響が出ているということであります。
 そこで、先ほどもお尋ねしましたけれども、影響評価の対象というのは固定的にせず、ここではトンボが対象となりました、トンボも今後対象に加えていくことも含めて、研究調査の充実が私は重要ではないかなというふうに思います。固定的に対象生物を見ないことが大事ではないかなと思いますけれども、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるでしょうか。


○早水政府参考人 お答えいたします。
 さまざまな生物に対して、生物によって感受性が異なるということでございますので、農薬によって試験対象生物を、感受性の高いものについて一部の農薬について行う、対象とするというようなことは可能かと思います。
 評価生物につきましては、いろいろな科学的知見を踏まえて、審議会での審議を踏まえて決定していきたいと考えております。


○田村(貴)委員 少なくとも、農水省の二〇一六年七月の、ミツバチが直接暴露したことが原因である可能性が高い、高い可能性がある、この時点で、やはりEUなどと同様の措置をとるべきではなかったかなという思いもしております。
 最後に、大臣にお伺いします。
 ことしの四月に閣議決定された環境基本計画、今回の法案は環境省との共管事項であります、環境影響が懸念される問題については、科学的に不確実であることをもって対策をおくらせる理由とはせず、科学的知見の 充実に努めながら、予防的な取組方法の考え方に基づいて対策を講じていくべきであるというふうにしています。いわゆる予防原則の考え方というのを閣議決定して規定したわけであります。
 農業においてもこの予防原則の考え方というのは大事ではないか、これを取り入れていく必要が、これから必要ではないかというふうに思いますけれども、御所見を伺います。


○齋藤国務大臣 現行の農薬取締法におきましても、人の健康や環境への影響を評価して、被害が生じるおそれがあると認められた場合には、科学的根拠が十分ではない場合であっても、入手可能な適切な情報に基づき、暫定的なリスク管理措置を行うことは可能となっています。
 この場合のリスク管理措置といいますのは、使用上の注意のようなものから、最も厳しいものでは販売、使用禁止まで、リスクの程度に応じて講じ、また、科学的知見のさらなる収集を行った上で見直すということにしているわけでありますが、今般の改正法案では、さらに、定期的な再評価を行うとともに、農薬の安全性に関する継続的なモニタリングを行い、新たな知見が明らかになった場合には、再評価を待たずにいつでも評価を行うことで、登録の見直しなど、リスクに応じた必要な措置をより適切かつ迅速に講ずることができる仕組みを整備することとしているわけであります。
 今後とも、最新の科学的知見に基づいて、必要なリスク管理措置というものをきちんと講じてまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 時間が参りました。
 以上で質問を終わります。