196-衆-内閣委員会農林水産委員会連合審査会-1号 平成30年05月18日 TPP11 国内農業に打撃 審査会で田村氏

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
TPP関連法案について質問をします。
まず、国内農業への影響についてです。
農水省は、TPP11の影響額は九百億円から一千五百億円だとしています。しかし、カナダ政府は、対日輸出が八・六%、一千四百四十九億円ふえると予想しており、カナダ一国で農水省の試算額とほぼ同額に達する状況であります。
カナダの試算と日本の試算との違いはどこにあるんでしょうか。
〔山際委員長退席、伊東委員長着席〕


○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
カナダ政府が本年二月十六日にTPP11の経済効果分析を公表したということは承知しておりますけれども、どのような前提を置いているかなど、試算の根拠が明らかではないこともございます。農林水産省として、本分析にコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 危機感が余りないようですね。
カナダ政府は対日輸出が伸びると予想しているんですけれども、そうしたら、日本はカナダを含めて輸入はふえないと見ているのですか。これはイエスかノーかで答えていただきたいと思います。


○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
カナダ政府が本年二月に公表いたしておりますTPP11の経済効果でありますけれども、カナダからいたしますと、TPP12からアメリカが脱退したことを踏まえて、アメリカの分のパイが拡大したということで試算をしているというふうに考えております。


○田村(貴)委員 カナダも含めて日本の輸入はふえないと見ているのか、見ていないのか、イエスかノーかで答えていただきたいと言っているんです。


○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
TPP交渉におきましては、農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割当てやセーフガードなどの措置を獲得したところでございます。
それでもなお残る農林漁業者の不安を受けとめて、安心して再生産に取り組んでいただくよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて、体質強化策、経営安定対策の両面で万全の対策を講じていくこととしておるところでございます。
例えばお米については、豪州向けの新たな関税割当て枠で入ってくるお米について、その輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れることにより、国産の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断するということでございます。
牛肉、豚肉につきましては、省力化機械の導入、規模拡大のための畜舎整備などの体質強化策を講ずるということでございますし、牛・豚マルキンの補填率を九割に引き上げるということでございます。
このような個別品目ごとの……(田村(貴)委員「委員長、答えていない」と呼ぶ)


○伊東委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。


○天羽政府参考人 はい、わかりました。
国内対策によりまして、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量は維持されるものというふうに見込んだものでございます。


○田村(貴)委員 長々長々答弁されて困るんですけれども。
結局、ふえるともふえないとも、明確な答弁はない。ふえないと見ているんですか。だとしたら、本当に危機感がないと言わざるを得ませんよ。
それは、カナダにしても、ほかの国にしても、対日輸出がふえなかったら、何のためにTPPに入ったんですか。そういうことになるじゃないですか。日本政府の試算は余りにも非現実的であります。
カナダの食肉協会も、牛肉だけで対日輸出を年二億ドルふやせると小躍りしていますよ。豚肉は、カナダ一国で、農水省の生産減少見込み額の二倍、牛肉も一国でほぼ同額に匹敵します。これにオーストラリア、ニュージーランドも加われば、とても政府試算の範囲内におさまるとは思えません。日本の影響は、この九百から一千五百億、もっと大きな影響になると私は考えますけれども、農家の多くもそう思っていますけれども、農水省、いかがですか。


○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
先ほども御説明いただきましたけれども、カナダ政府の試算でございますが、TPP12からアメリカが抜けた分のパイをカナダがとりに行くという観点で試算をしておるというものだと承知をしてございます。
次いで、日本の国内生産でございますけれども、先ほど申し上げた体質強化策、経営安定対策の両面で対策をしっかり講ずることによりまして、国内生産量は維持されるというふうに見込んだところでございます。


○田村(貴)委員 影響は大きくなっていく、明確に否定はされませんでしたね。
体質強化とか経営コストの削減とか、それから経営安定対策とか、いろいろいろいろ対策は講じているから大丈夫なんだというふうに言われるんですけれども、本当に大丈夫なんですか。一つ一つ見ていきたいと思いますけれども。
例えば牛肉であります。昨日、五党と一会派で、野党で、マルキンの生産費の補填をする重要な制度を拡充させる法案も、法制化する提案をしたところです。
そのマルキンも、補填割合は引き上げられたとはいえ、現状では九割で、全額の補償とはなりません。しかも、四分の一は農家の負担であります。輸入増で価格が下がれば下がるほど、農家の負担はふえて、経営は苦しくなってまいります。
畜産農家です。肉牛の畜産農家は、大体みんな十頭ぐらいで、小さな規模で牛を育てています。繁殖させています。
農水省は、多くの繁殖農家が、こうした機械化や合理化で対策はできると思っておられるんでしょうか。答弁願います。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘いただきましたとおり、我が国の畜産、法人経営だけではなくて、中小規模の家族経営も重要な位置づけを有してございます。
そういうことも踏まえまして、例えば畜産クラスター事業では、クラスター計画において中核的な役割を果たしている家族経営も含めて、規模の拡大を支援するとともに、キャトル・ブリーディング・ステーションですとかコントラクターといった外部支援組織、そういうものの充実を支援することで、そういう組織を活用する小規模な肉用牛の繁殖農家を含む、地域ぐるみでの体質強化、こういうことを支援しているところでございます。
また、大規模経営向けの機械導入を支援するだけではなくて、例えば哺乳ロボットですとか発情発見装置の導入など、中小規模の家族経営も含めて、労働負荷の軽減ですとか繁殖率が向上するそのような機械に対しても、きめ細やかに支援をしているところでございます。
農林省といたしましては、引き続き、中小規模の肉用牛繁殖農家が畜産クラスター事業等によりまして成果を上げている事例も紹介しながら、地域における畜産経営の発展に向けた取組を支援してまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 それが小規模農家、繁殖農家にマッチングしているのかという問題がありますよね。
この間、国会内で、農家の方と農水省の方と交渉しました。御存じだと思うんですけれども。そのときに、農水省の回答で、飼料をつくったり子牛の世話をすることはアウトソーシングなんかしたらどうかと言ったら、専門家、農家の方はみんな、失笑が起こりましたよ。荒唐無稽なことが、今、本当に政策としてあって、現場ではマッチングしていない。
北海道のある農家は、畜産クラスターは規模拡大要件があって利用できない、むしろ、規模拡大にちゅうちょする農家を離農に向かわせている、そういうことで、何とかしてくれという要求が上がってまいりました。
今、繁殖農家が続々と離農をしている。そして、子牛が足らずに、価格が高どまりしています。これでTPPによって子牛の価格が下がれば、今度は肥育農家が打撃を受けるのではありませんか。政府の試算は全く実情を反映していないと言わざるを得ません。
茂木大臣にお伺いします。
アメリカがTPPに復帰しなかった場合、輸入枠やセーフガードの発動基準は、必ず米国分を差し引くことになるんでしょうか、それは確実なことなんでしょうか。米国との交渉で、TPP以上の上乗せを受け入れることはないと言い切れますか。お答えいただきたいと思います。


○茂木国務大臣 従前から答弁をさせていただいておりますとおり、我が国としては、いかなる国、米国も含めてですね、いかなる国とも国益に反するような合意をするつもりはございません。
その上で、TPP11、この協定の第六条は、「TPPの効力発生が差し迫っている場合又はTPPが効力を生ずる見込みがない場合には、いずれかの締約国の要請に応じ、この協定の改正及び関係する事項を検討するため、この協定の運用を見直す。」旨を規定をいたしております。
TPP11の交渉過程におきまして、各国に対しては、個別のさまざまな話合い、協議の中で、乳製品等のTPPワイドで設定されている関税割当ての枠数量及び牛肉等のセーフガード発動基準数量について、我が国としては見直しの対象とする旨を参加国に明確に伝え理解を得た上で、閣僚会議の場でも私から念のため各国大臣に日本の考え方を伝え、特段の異論もなかったところでありまして、こういった一連のプロセスを通じて、十分各国の理解を得ている、このように考えております。


○田村(貴)委員 国益を守ると言われながら、どうしてTPPの交渉で農水分野の関税措置の削減や凍結について提起しなかったんですか。牛肉、豚肉、乳製品、米、麦、果物、日本の農産物に大きな、甚大な影響が出るにもかかわらず、日本側は、削除や凍結、再交渉も何も要求しなかったのであります。
齋藤大臣、TPPの審議で一番農業に影響が出ると言われていますので、たくさんの農家の声が私の方にも寄せられています。
根室の酪農家は、日本の自動車を売り込むために畜産をいけにえに出し、それをカバーするために規模拡大を押しつけ高い機械を買わせるようなやり方はもうやめてくれと訴えています。長野の果樹農家も山梨のブドウ農家さんも、関税がゼロになって更に加工品が流入してくればやっていけなくなると言っています。埼玉の野菜農家は、米や畜産がだめになれば野菜に変える人もふえてくる、一%収穫がふえれば一〇%価格が下がる野菜の現状では、野菜農家は潰れてしまうと言っています。
協定が発効していないにもかかわらず、先行して対策予算がこれまで三兆円支出されてきました。にもかかわらず、離農は相次ぎ、地域の農村は疲弊しています。これらの声を、齋藤大臣、いかに受けとめておられますか。


○齋藤国務大臣 関税が下がるということ、その一点をもって、農家の皆さんは、どうなるんだろうかという不安をお持ちになる、それは大変私もよく理解できますし、私にも、今、田村委員がお聞きになっている声はたくさん届いております。
ただ、今回の件は、ただ下がるだけではございませんで、まず、関税削減までの期間を長期間設けているですとか、それから、いざとなったらセーフガードが発動されるですとか、それから、先ほど来から申し上げておりますように、体質を強化して競争力をつけるための予算、政策というものは既に実行に移しているとか、そういうことを丁寧にお話をしながら、皆さん方の不安を払拭をしながら前へ進んでいく、そういうことが大事だなと思っております。


○田村(貴)委員 マインドの問題として、輸入農産物がふえていくと将来が見通せない、それで離農に向かわざるを得ないという状況は現にあるわけなんですよね。そこはしっかりと見ていく必要があると思います。
輸入自由化で第一次産業を犠牲にして、そして無理な規模拡大、夢物語のような効率化でカバーしようとする安倍政権による農政は、もはや限界に達しているんだ、それが今私が紹介した農家の切実な声であると思います。
時間が参りました。いろいろお聞きしても、一番まともなことを答えていただけないということで、徹底審議、いよいよ必要になってくるのではないかというふうに思います。審議打切りなど言語道断ですよ。徹底審議を要求して、きょうの質問を終わります。