196-衆-農林水産委員会-21号 平成30年06月07日 クロマグロ規制は死活問題 田村貴昭氏、漁業者の苦境示す 衆院農水委

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
クロマグロの資源管理と、それから小規模沿岸漁業について質問をします。
最初に、水産庁にお伺いします。
沿岸小型の漁業について、国連の持続可能な開発目標、それからWCPFC条約、FAOの責任ある漁業のための行動規範等々に定められた国際的な規定について、簡単に紹介していただけますか。


○長谷政府参考人 委員お尋ねの規定は、いずれも小規模漁業者への配慮の重要性を規定したものでございます。
具体的には、国連の持続可能な開発目標においては、小規模、沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供すると書かれております。WCPFC条約においては、条約区域における高度回遊性魚類資源を全体として保存し、及び管理するために、零細漁業者及び自給のための漁業者の利益を考慮に入れるとされております。また、FAOの行動規範においては、生存漁業、小規模漁業、沿岸小規模漁業に従事している人々の権利を適切に保護すべき、あるいは、生存漁業、小規模漁業及び沿岸小規模漁業を含む漁業者の利益が考慮されるとされております。
我が国は、これら規定について、いずれも合意した上で真摯に対応してきているところでありまして、責任ある漁業国として、資源管理を行うに当たって小規模漁業者への配慮を行うことは重要であると認識しております。


○田村(貴)委員 日本も同意してきた、その小規模沿岸漁業の権利を適切に保護していくといったところは非常に大事なところなんですけれども、これに反する事態というのが生まれているわけであります。それがクロマグロの漁獲規制であります。
七月からの第四管理期間の沿岸小型漁業の漁獲枠は、三十キロ未満が全国でわずか千三百十七トン、三十キロ以上については七百三十三トンで、これは下がる一方であります。
対馬の漁師さんはこう言っています、目の前にいるマグロがとれない、かわりに海洋ごみの回収をしていると。千葉県では、小型のマグロ船が廃船に追い込まれた、新規漁業就業者総合支援で後継者が新しく船をつくったにもかかわらず出漁できないという事態になっています。
大臣も御存じだと思うんですけれども、漁民は、クロマグロの資源の状況に対して危機感を持って、適切な資源管理を行うべきだと実践してきたわけですよね。賛成して、政府の提案の前からみずから取り組んで資源管理を行ってきた。しかし、この漁獲枠ではもう生活が成り立たないと言っている。この状況について、大臣、どう受けとめておられますか。


○齋藤国務大臣 七月から、沿岸漁業、これはTAC管理の開始に向けて、第四管理期間の漁獲枠の配分案を今公表させていただいているわけであります。
この配分案は、過去の漁獲実績、これを基本に算定をしているわけでありまして、こういった考え方は、過去三カ年の自主的取組においても同じ考え方で行ってきているわけであります。
中西部太平洋まぐろ類委員会における合意によりまして、特に小型魚につきましては、漁獲上限を二〇〇二年から二〇〇四年の平均漁獲実績から半減するという極めて厳しい状況となっておりまして、目の前にクロマグロがいるのにとれないという漁業者のお気持ちというものは十分に理解できるところではあります。
しかしながら、国際約束に基づく保存管理措置を遵守するということが、やはりクロマグロの最大の生産国であり消費国でもある我が国にとっては重大な責務でありまして、また、かつ、この履行をすることによって資源の早期回復が図られれば、漁獲の上限も拡大につながっていくということがありますので、今後とも、関係漁業者の理解が得られるようにさまざまな努力をしていきたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 それでは、やり方を考えなければいけませんね。ほかにやり方はないのかということであります。
一方で、大型、中型のまき網漁業の枠は、小型マグロが千五百トン、大型マグロが三千六十三トン。沿岸小型は、これに対して二万弱もの経営体があるんですけれども、まき網は、経営体数でいえば二十程度しかないわけであります。それに、クロマグロがとれなくても、まき網はほかの魚がとれるということであります。売上げが一兆円近くになるような企業もあって、体力もあるわけであります。
そこで、お伺いしますけれども、小型沿岸漁業の権利を守ろうとするこの国際的な取決めに反する事態が起こっているわけですから、漁獲規制というのは、資源に最も漁獲圧をかけるまき網漁から行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。


○長谷政府参考人 お答えいたします。
大臣の答弁にもありましたように、漁獲枠の配分につきましては、過去の漁獲実績を基本に算定しておりますけれども、御指摘にあったような関係者からの御意見も踏まえまして、二〇一五年の上限枠設定当初から、沿岸漁業に対して、より手厚い配分を行っているところでございます。
その上で、第三管理期間におきましては、さらに、大中型まき網漁業から留保として二百五十トンを水産庁が預かるとともに、期間中、さらなるとり控えに応じていただくなど、大中型まき網漁業者からも国全体の漁獲枠の遵守に向けて協力を得たところでございます。
資源状況が改善されていく中、WCPFCにおける合意の遵守が非常に厳しくなっておりますけれども、漁獲枠の遵守については、関係する漁業者に等しく努力を求めることが基本でありまして、関係漁業者の理解が更に得られるよう、できる限りの工夫をしてまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 死活問題なんですよね、小型船にとって、漁民にとっては。
私はたくさん声を聞いたんですけれども、一例を言うならば、先ほどの対馬のマグロ漁の漁師さんですけれども、マグロ漁はひき縄、一本釣りの漁業ですけれども、資源回復のために、産卵期は二カ月禁漁、そして一・五キロ以下はリリースするなど、ずっと厳しい自主規制を行ってきた、しかし、その間、どんなにやめてくれと訴えても、まき網は、抱卵、卵を抱えた親魚をとって、ごっそりとり続けて、資源は大きく減っていったと訴えておられます。厳しい枠を要求され、それでも枠を残して操業してきたのに、いきなりとるなと言われても困る、我慢にも限度があると言っています。
生活ができない、こういう事態になった以上、何らかのセーフティーネットが今発動されなければいけないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 クロマグロの漁獲制限というものが沿岸のクロマグロの漁業者の皆さんの経営に影響を与えかねないという声をいただいている、これは十分認識しております。
こうしたことを踏まえまして、本年一月から、生体放流など、太平洋クロマグロ小型魚漁獲量の大幅削減に取り組む沿岸漁業者を対象にいたしまして、漁業収入安定対策事業の特例といたしまして、基準収入が平成二十九年の水準から下回らないよう措置をしたところでありまして、この水準は高く設定されておりますので、現在、説明会を各浜で実施して、加入促進を図っているところであります。
また、漁業者の運転資金へのニーズに対応した日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金についても、今回、同公庫に対しまして、太平洋クロマグロ小型魚の漁獲自粛に取り組んだ漁業者からの同資金の借入れ相談に適切に対応するよう要請をいたしまして、現在、現場への周知を図っていただいているところであります。
とにかく、しっかり国際約束を守っていくということをしないと、将来の枠の増大というものは期待できませんので、引き続き、現場からの御要望を踏まえながら、適切な資源管理と漁業経営の安定というものを両立させていきたいと考えているところであります。


○田村(貴)委員 私の方からは、きょう提案もさせていただきました。そして、漁を諦める、そういう漁民が生まれないことを前提に対策を大いに進めていただきたいと思います。
時間がありませんので、次に移ります。
六月一日、農林水産業・地域の活力創造本部で決定された水産政策の改革、この提言について伺います。
漁業法の全面改定につながる安倍政権の提言に対して、この発表後、寝耳に水だ、何だこれはと、漁業者、漁協関係者、水産関連の研究者から驚きと戸惑いの声が上がっています。
新たな資源管理システム、またこの新たなシステムという言葉が出てきたんですけれども、この資源管理システムの構築では、まず、とっていい漁獲量の枠を船ごとに割り当てるIQ制度を漁獲量の八割に導入し、その枠を超えた場合に厳しいペナルティーを科すとしているところであります。
資源管理については、漁民はこれまで、浜ごとに、あるいは浜と浜でとれる量がどれだけなのか、これを自主的に話し合って決めてきたわけです。今度はもうトップダウンですよね。
資源管理システムについて、十一の項目で、これは子細に規則なるものを書いているんですけれども、漁業者の判断については一行も読み取れません。これは大変なことですよ。減船や休漁まで踏み込んで書かれています。これは漁業者の御意見無用ということでしょうか。答弁を聞かせてください。


○長谷政府参考人 御指摘のあった水産政策の改革につきましては、六月一日の農林水産業・地域の活力創造本部におきまして、農林水産業・地域の活力創造プランに位置づけられまして、今後、この内容に即して制度を構築していくということになります。
制度の構築に当たりまして、これまでも関係者とのさまざまな意見交換を踏まえながら検討を進めてきたわけでありますけれども、今後の作業につきましても、漁業者に丁寧に説明いたしまして、意見を伺いながら一つ一つ進めていきたいというふうに思っております。
今回の改革を、現場で実のある成果が上がり、漁業関係者の皆様がよくなったと実感できるようなものにすべく、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。


○田村(貴)委員 たくさん問題があるんですよね。
「養殖・沿岸漁業の発展に資する海面利用制度の見直し」というところでは、地元の漁協が担ってきた漁場管理を県の管理に今度移行するんですね。そして、養殖の区画漁業権については、新区画を積極的に設定する、区画漁業権を個別の経営者免許にして、個別漁業者が漁協に付与することを希望するときだけ漁協に付与してよいとしています。
この区画漁業権における個別漁業者というのは、これは企業のことですか。


○長谷政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの個別漁業者と申しますのは、みずから養殖業を営む個人及び法人ということでございます。法人の中には、漁業生産組合や企業なども含まれるということでございます。


○田村(貴)委員 営利を目的とする企業が入ってくるということがわかりました。そうしたら、小さい漁協ほど体力がどんどんそがれてしまうではありませんか。
さらに、いろいろあるんですけれども、この水産政策の改革について、先ほど長官は多方面から意見を聞きながらつくってきたと言われましたけれども、そうなんですか。多くの漁協や、それから漁民がびっくりしていますよ、初めて聞いたと。
六月二日の土曜日に、漁業経済学会が開かれました。この総会で、全漁連の理事の方が、全漁連が求めてきたことではないと言われているわけです。紛糾的に今大問題になっているわけですよ、これは。安倍政権の、官邸側からこういうようなのがまた出てきて。本当に漁民や漁協の言うことを聞いてきたのか、その上での提案かということです。
どうしたところの意見を聞いてきたのか、個別に言っていただけますか。


○長谷政府参考人 今般の水産政策の改革内容の具体化に当たりましては、漁業者団体の開催する会議など、さまざまな機会を通じまして、昨年十二月に改定された農林水産業・地域の活力創造プランに位置づけました「水産政策の改革の方向性」を示しながら、漁協や漁業者等と意見交換を行ってきたところでございます。その中には、審議会での審議ですとか、地方自治体での説明、漁業調整委員会等々ございます。
浜の期待に応えていけるように、今後も引き続き、漁業者を始めとする関係者に対し丁寧に説明を行いながら進めていきたいと考えているところでございます。


○伊東委員長 田村君、時間ですので。


○田村(貴)委員 はい。
丁寧な聞き取りをしない上での提案だということがわかりました。
今度の改革案なるものは、漁協を軸とした重層的な漁場利用、資源管理、漁業調整の枠組みを大きく崩すものであることを指摘して、きょうの質問を終わります。