197-衆-農林水産委員会-3号 平成30年11月14日 日米貿易協定について質問 田村貴昭

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に、日米貿易協定について質問をします。
トランプ大統領と安倍首相は、九月に、日米物品貿易協定交渉を新たに開始すると合意しました。
そこで、外務省にお尋ねしますけれども、この協定は、ガット、関税及び貿易に関する一般協定の上ではどういう扱いになるのでしょうか。ガット協定一条では、ある国に与えた関税を下げるなどの有利な待遇はほかの全ての国にも適用されるという最恵国待遇の原則が定められています。ガット協定一条の例外を定めた二十四条に適合させるということでしょうか。


○林政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガットの第二十四条8は、関税同盟及び自由貿易地域の定義を規定してございます。自由貿易地域については、実質上全ての貿易について関税その他の制限的通商規則が廃止されている関税地域の集団をいうと規定してございます。
このガット第二十四条8に規定する実質上全ての貿易の要件を満たすかどうかという具体的な判断基準は確立しておりませんけれども、これまで、我が国としては、第一に、貿易量において実質上全ての関税その他の制限的通商規則が廃止されなければならないという量的基準、第二に、主要分野が自由貿易地域内の自由化の対象から外されてはならないという質的基準の両方を満たす必要があると考えてございます。
なお、量的基準については、貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安としてございます。


○田村(貴)委員 そうしたら、そのガット協定二十四条8の(b)、ここに書いてある自由貿易地域というのがあるんですけれども、日米間での貿易協定は、この自由貿易地域というものを目指して今から話し合っていくということでよろしいんですね。


○大角政府参考人 TAGにつきましては、基本的に物品を対象とするものでございまして、これまで我が国が多数結んでまいりましたFTAとは異なりまして、包括的なFTAではございません。
我が国はこれまで、特定の国や……(田村(貴)委員「そんなことは聞いていないよ。聞いていない。質問を聞いていましたか」と呼ぶ)はい。もちろん、聞いております。物品貿易及びサービス貿易全般の自由化を目的とする協定という意味で、FTAという用語を用いてきております。
この交渉は、基本的に物品を対象としておりまして、サービスを含みます他の重要な分野で早期に結果が生じるものにつきましても交渉するとして合意したものでございます。これまで我が国が多数結んできたFTAとは異なるものでございます。
交渉はまさにこれからでございます。現時点で交渉の具体的な結果を予見することは困難でございますけれども、いずれにしても、交渉結果につきましては、我が国として、いかなる貿易協定もWTO協定と整合的である、こういう必要があると考えております。


○田村(貴)委員 その後の質問でそういう答えならばいいんですけれども、何を先走ってお答えになっているんでしょうか。
制度上のことを聞いているんですよ。国と国が貿易協定をするときに、ガット加盟国は、この二十四条の8(b)しかないじゃないかと。そうですよね。そこを聞いているんですよ。それしかないんですよ。
それで、このガット二十四条についての外務省の説明はどうなっているのか。ホームページを探しました。今もアップされているので紹介したいと思いますけれども、「日本のFTA戦略」というのが外務省に載っています。何と書かれているのか。「自由貿易協定(FTA) 物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とするGATT第二十四条及びGATS(サービス貿易に関する一般協定)第五条にて定義される協定。」と、しっかり説明しているじゃないですか。
ある国同士の貿易協定の例外を、ガットはこの二十四条で定めているんですよ。その二十四条について、外務省はFTAだと言葉の説明で書いているじゃないですか。日本政府が言っている、先ほど先回りしたお答えにあったTAGというのは、外務省が言うように、FTAにほかならないのではありませんか。ちゃんと答えてください。答えられませんか。


○林政府参考人 お答えいたします。
先ほども申し上げましたとおり、そもそもFTAについては国際的に確立した定義があるわけではございませんけれども、委員御指摘のガット二十四条の自由貿易地域について定められているものと整合的なものというふうに考えてございます。
そのガット二十四条への適合性と、それからその協定をどう呼ぶかということについては、直接的には関係がないものでございます。


○田村(貴)委員 いろいろいろいろ、そのごまかしが、農政モニターにもあらわれるように、私も後で指摘しますけれども、不信、そして不満と怒りを買っている状況にあるわけですね。
日本政府が幾らごまかしをもってしても、アメリカ側はどう言っているのか。相次いでFTAと発言しているじゃないですか。報道も相次いでいます。昨日来日したペンス副大統領は、その訪日に向けてツイッターでこう述べています。FTA、自由貿易協定の交渉について安倍首相と協議をすると。御自身がツイッターで、自国民、世界じゅうに向けて発信しているんです。
少なくともアメリカの認識はFTAではありませんか。大臣、そう思われませんか。アメリカ側はFTAという認識じゃないんですか。


○吉川国務大臣 ペンス副大統領の発言につきましては、私はコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
いずれにいたしましても、日米間の交渉につきましては、九月の日米共同声明に従って行うことで一致をしておると存じておりまして、この点について日米間に認識のそごはないと承知はいたしております。


○田村(貴)委員 吉川大臣、ここは物すごく大事なところです。
貿易協定というのは、まず第一に、農産物への影響なんですよね。TPPだってEPAだってそうですよね。
そこで、吉川大臣に答えていただきたいということで、大臣の今後の交渉のカウンターパートナーとなるパーデュー・アメリカ農務長官は何と発言しているか。四日、日本との農産品をめぐる通商交渉、ここで、日本がEUと結んだEPAやTPP、これについて、これらを上回る水準や関税引下げを求めて、述べているではありませんか。
日欧EPAやTPPを上回る水準となれば、米、牛肉を始め農産物の輸入自由化、これは際限なく拡大されることになりますよね。日本の農林水産業は壊滅的な打撃を受ける、こういう流れに今あるんですよ。アメリカの農務長官がそういうふうに言明しているんですよ。
さて、農林水産省、安倍政権としてこれに対抗できるんでしょうか。大臣、しかとお答えいただきたいと思います。


○吉川国務大臣 日米物品貿易協定につきましては、日米の共同声明におきまして、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるとの大前提について米国と合意をしていると思っております。
ただいま御指摘をいただきましたパーデュー農務長官等米国要人の発言に対してコメントをいたしますことは差し控えたいと思います。日米共同声明は、日米首脳間で文書により確認したものでありますので、私は非常に重たいものと認識をいたしております。
農林水産省といたしましては、この日米共同声明を踏まえて、農林水産業の維持発展を旨として、関係府省と連携して交渉に臨んでいくという思いでもあります。


○田村(貴)委員 大臣の今の御答弁を生産者の方が聞いたら、やはり弱腰だなと思われるんじゃないですか。どこまでアメリカの主張に日本は納得していくんだろうか、そういうふうに受けとめてしまいます。
出されたので私も言いたいと思うんですけれども、首脳会談の合意事項の中で、日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるということの文章は書かれています、私も知っています。その意味は重たい、文章に書かれたから重たいと言っているんですけれども、この共同声明というのは、尊重すると述べているにすぎないんですよ。尊重すると述べているにすぎないんです。
外務省、一言で言ってください。尊重すると述べているにすぎないんですよね。TPP水準を超えないと確約したものなのか。確約した文章なんですか。お答えください。


○大角政府参考人 内閣官房の方からお答えさせていただきます。
共同声明の中では、「日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。」ということで、日本として農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であることについて尊重するとなっております。
これは、通常の交渉の中では、認識するとかというような言葉がよく使われている中で、ここで尊重するという言葉になったことの意味は大きなものがあるかと考えております。


○田村(貴)委員 尊重するということで、確約したものではないということであります。
そこで、もう一つ聞きますけれども、二十四条8(b)の自由貿易地域というのは、これは国同士、実質の貿易について関税その他の制限的通商規則を廃止するという条項になっているんですけれども、自由貿易地域を構成する上で、日本政府としては関税撤廃率をどのように捉えていますか。今までされてきた説明でいいですので、数字を出してお答えください。


○林政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、ガット二十四条8に規定する実質上の全ての貿易の要件を満たすかどうかの具体的判断基準は確立してございません。
ただ、先ほど申し上げた量的基準、質的基準のうち、量的基準については、我が国としては貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安としてきているところでございます。


○田村(貴)委員 とんでもない話ですよね。日米で自由貿易地域をつくって、九割以上の米国産の産品が無関税で自由に入ってくる、ここに踏み出すということですよ。WTO、ガットの仕組みの中ではこれしかないんですよ。こういう方向に今進んでいるのに、尊重している、信頼している、それでは責任ある立場とは言えませんよ。
TPPだってそうじゃないですか。断固反対がTPP参加、そして主要五品目についても国会決議に違反して対象とし、FTAを避けるためとしてTPP11を進めて、結局はFTA交渉に入っていっている。これ、現実ですよ。これは生産者と国民をまただますことになりかねないと、私は強い懸念を覚えるものであります。こうしたやり方はだめです。直ちに日米貿易協定は打ち切る、こういうことを求めたいと思います。
そこで、先ほど金子議員からも出されましたけれども、この輸入農産物の制限なき拡大、大規模営農の推進化等に生産者は大変な怒りと不安を抱えています。
資料をお配りしています。十月二十四日付の日本農業新聞の一面に「農政 評価しない七三%」の大きな見出しが躍っております。
裏面に農業に関するところの世論調査の結果が出されていますけれども、米の生産調整廃止にしても、農協改革にしても、日米貿易交渉入りにしても、所得増大政策についても、このモニターでは、評価しないが多数の声であります。
その評価について、先ほど吉川大臣は、どういう人がモニターなのかといったところで、コメントは差し控えたいと言われたけれども、これは日本農業新聞社に対してそういう答弁は失礼じゃないかなと思いますよ。やはり歴史があって、伝統があってこういうモニターをされているわけですからね。謙虚に受けとめるというのが大臣の一番の使命じゃないですか。
同じ質問ですけれども、一番最後に私は注目したんですよ。問いの二十、「安倍内閣では、規制改革推進会議などの諮問機関の発言力が強く、官邸主導で農政改革を進めています。いまの政策決定についてどう思いますか。」。アンサー、この2です。「生産現場の実態と乖離しており、農家の声を十分に反映していないため評価できない」、実に八一・五%。質問も具体的ならば、回答も具体的。ですから、生産者の思いというのは非常にリアルなものがあるというふうに思います。
官邸農政、官邸主導という言葉がこの委員会でもたびたび取り上げられてきたわけであります。こうしたやり方について、生産者は、現場と乖離している、私たちの声をもっと聞いてほしいと言っていることについて、大臣、もう一度お答えいただきたいと思います。これまでのやり方を改めて、そして農家の声に謙虚に耳を傾けるべきではありませんか。いかがですか。


○吉川国務大臣 先ほどの金子委員に対しましての答弁と同じ思いでありまするけれども、御指摘の報道は承知をいたしております。今も、資料で拝見もさせていただきました。しかしながら、先ほど申し上げましたように、どのような方がモニターになっているかなど、具体的な調査方法を私自身承知をしておりませんので、この報道機関が独自に行った調査であり、コメントをすることは差し控えたいと申し上げさせていただきました。
その上で、先ほども申し上げましたけれども、繰り返しになり大変失礼かと存じまするけれども、我が国の農業は、人口減少に伴うマーケットの縮小ですとか高齢化の進行、耕作放棄地の増加など大きな曲がり角に立っておりまして、その活性化は待ったなしの課題だと私どもは認識をいたしております。
この認識のもとに、農政全般にわたる改革を行ってまいりました。その結果、生産農業所得が過去十八年で最高となり、四十代以下の新規就農者が四年連続で二万人を超えるなど、着実に私は成果があらわれてきていると思っております。
引き続き、農業者の皆様と真摯に向き合います。さらに、改革の内容も丁寧に説明をいたしたいと存じますし、この農政改革を推進するとともに、より農業の成長産業化の実現に向けてしっかりと取り組んでいく姿勢には変わりはございません。


○田村(貴)委員 謙虚に耳を傾けていくとおっしゃるならば、こうしたモニターや世論調査の結果は謙虚に受けとめるという一言でいいんじゃないでしょうか。世論調査が誰がお答えになったかわからないと言ってしまったら、これは民主主義は深まりませんよ。
生産者の声に真摯に耳を傾けない官邸サイドから、また新たな提案が出てまいりました。漁業法の大改悪であります。
最初に、苦言を呈しておきたいと思います。
この漁業法の改定は、なぜ行う必要があるんでしょうか。立法事実を示す資料を、六日の閣議決定、私たち会派でレクチャーを受けました、そのときに資料を求めたにもかかわらず、まともな資料が今をもってしても提出されていません。そもそも、法案の農水委員への配付は三日後の八日でありました。法案が出れば通常は配付される調査部、調査部も大変苦労されていると思いますよ、こういう提案で。今も未定稿のままであります。まだ法案提出の段階に来ていないんじゃないですか。入管法改正案と同じく、生煮えの状態で出してきたんじゃないですか。
与党は、伺えば、あしたの本会議に漁業法をかけたいというようなことも聞いておりますけれども、余りにも拙速です。この短い会期中の間に漁業のあり方を全面的に変える、こういうやり方は断じて認められません。
一点、伺います。
生産者の理解は得られているんでしょうか。漁民の声を聞け、漁協の役割を潰してくれるな、こういう声を私はあちこちでいっぱい聞いてまいりました。区画漁業への民間参入とか漁業の優先順位の廃止であるとか、こうしたことについて漁協、漁民の理解は得られていると思っておられますか。その一点だけお答えいただきたいと思います。それは大臣に対してお願いしたいと思います。説明会じゃないから。大臣です。


○武藤委員長 申合せの時間が経過しておりますので、大臣、簡潔にお願いいたします。


○吉川国務大臣 漁業法の改正案の取りまとめに当たりましては、これまで、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者との意見交換を行ってきております。その法案の内容につきましても、全国漁業協同組合連合会や大日本水産会等の全国団体の理解もいただいていると承知をいたしております。


○田村(貴)委員 そのことは、はっきりさせていきたいと思います。
時間が来たので終わります。ありがとうございました。