197-衆-農林水産委員会-5号 平成30年11月20日 GI法について質問 田村貴昭

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
GI法について質問します。
GI、農林水産物の地理的表示については、ブランド力が上がり、生産者にとって利益となります。また、模倣品を排除できるから、こういう点でも賛成であります。
そこで、きょうは生産行程管理業務について伺います。
日本では、GIの生産者団体がみずから生産行程を管理することになっています。しかし、二〇一七年度には、六十五団体中四十六団体に、農水省が業務規程に基づいて立入検査をしています。登録者みずからが品質管理の責務を負う仕組みに無理があるのではないかと私は思うわけです。
一方、EUでは、国や第三者機関が行う仕組みになっています。そういう方向に変えた方がいいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。


○吉川国務大臣 GIの登録を受けました産品ですけれども、長年の伝統に基づきましてその生産方法や特性が産地と結びついていることから、最も知見を有する生産者団体みずからが行うのが適当との考え方から、EUのような第三者機関が品質管理を行う仕組みを採用しなかったところでございます。
委員御指摘のいわゆる立入検査につきましてですけれども、登録後一年を経過し、実績報告書を提出した産品全てに実施しているものであり、生産行程管理に問題がないよう国がしっかり確認をしているところであると承知もいたしております。
現時点でのこの品質管理の仕組みに問題はないと考えておりまするけれども、今後、現場の状況を踏まえつつ、必要があれば改善をしてまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 知見を有していると言われているんですけれども、二〇一六年度では、登録三十三団体のうち二十三団体、七割が立入検査を受けているわけですね。そして、二〇一七年度の数字も先ほど紹介しましたけれども、理由の筆頭に、GI登録団体が生産地の確認、出荷基準の確認等を行っていない部分がある、そういうケースがある。これはもう基本的なところじゃないですか。イロハのイのところに問題があるんじゃないですか。
ですから、やはり第三者的な機関がチェックをすべきだというふうに申し上げているところです。これはぜひ検討していただきたいというふうに思います。
そこで、日・EU・EPAについて質問をします。
日・EU・EPAについて、大変大きな、日本の農林水産業に対する影響が指摘されています。
政府は、生産額への影響が百三十四億円から二百三億円と試算していますけれども、対策をすれば生産量は減らないとしています。本当でしょうか。
体質強化対策、経営安定対策をすれば欧州乳製品の輸入が増大しても影響はないとする。どんな対策を講じようとしているんですか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
日・EU・EPAの合意結果でございますけれども、チーズは、ソフト系は横断的な関税割当てとし、ハード系は長期の関税撤廃期間を確保、また、バター、脱脂粉乳等は国家貿易制度を維持して関税割当てを設定、ホエーは関税削減にとどめるということでございまして、このため、当面、輸入の急増は見込みがたく、乳製品全体の国内需給への悪影響は回避できるというふうに考えてございます。
他方、長期的には競合いたします国産の脱脂粉乳ですとかチーズの価格下落等によりまして生産額の減少が見込まれますので、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、畜産クラスター事業等の体質強化対策、また、生クリーム等を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加するなどの充実した経営安定対策、さらに、特にチーズについてのさまざまな対策、こういう万全の対策を講ずることで引き続き国内生産は維持される、このように考えているところでございます。


○田村(貴)委員 生産額への影響については、具体的にキログラム当たりの単価では何円になるんでしょうか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
乳製品につきましては、その種類ごとに、取引されている乳価、また合意結果による影響も異なりますので、影響試算におきまして、乳製品の種類ごとに減少額を示してございます。
例えば、ソフト系チーズと競合いたします国産チーズ向けの生乳価格についてはキログラム当たり四から八円下落、輸入ホエーと競合いたします国産の脱脂粉乳また脱脂濃縮乳向けの生乳価格につきましては、脱脂粉乳向けの生乳価格で三から五円、キログラム当たりでございますが、脱脂濃縮乳向け生乳価格については一から三円下落するなど、影響試算の公表資料で種類ごとに記載してございます。


○田村(貴)委員 チーズだけで見ると、何とキログラム当たり十七・七円から二十円下がります。
乳製品向けの生乳三百三十一万トンで割ったら、生産額への影響は百三十四億円から約二百三億円でありますから、キログラム当たり四円から六円下がるということになります。これはもう計算ですから、こうですよね。
そこで伺いますけれども、これは六円も下がっていくとなると大変な話になってまいります。
先日、私、北海道の方に酪農家のお話を伺いに行ってまいりました。標茶町のある酪農家にお話を聞くと、乳価が百円になってようやく一息ついたというふうに話されている。しかし、経営規模の拡大はもう限界にある。相当な合理化で御苦労されて、設備投資されて運営されている。しかし、もうこれ以上の規模拡大はできません、そして、先行き不安だから、息子がいるけれども継げとは言えないというふうにおっしゃっておられました。
この上に、輸入品がふえるからコストカットする、六円の切り詰めというのは、これは余りにも酷な話になるんじゃありませんか。
農業新聞のモニター調査、前回の委員会でも紹介しましたけれども、政府の食料自給率の向上の政策に七六・八%の人が評価しないと言っているじゃないですか。やはりやり方を改めなければいけないんじゃないですか。
加工乳製品の輸入品がふえれば、北海道の生乳は余ることになりはしないか。飲用としてほかの都府県に移出されることも考えられるのではないでしょうか。しかし、政府の試算にはこうした影響は加味されていません。ここをどう考えておられますか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
私どもの影響試算でございますけれども、ホエー、チーズの関税削減とか関税撤廃等によりまして、長期的に乳製品向けの乳価の下落が懸念されるというふうにしてございますけれども、御指摘ございましたとおり、乳製品向けの生乳の約九割は北海道でございますので、北海道への影響は大きいんだろうというふうに認識をしてございます。
このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、先ほど申し上げました収益力、生産基盤の強化ですとか、経営安定対策の充実ですとか、特にチーズについての原料乳の高品質化、チーズ工房等の施設整備等々、万全の対策を講じてございます。
これによりまして、影響試算におきましては、乳製品向け生乳の生産量は維持されるというふうに見込んでございますので、北海道の乳製品向けの生乳が行き場を失うということはないというふうに考えてございます。


○田村(貴)委員 説得力がなくて、そして非常に甘いと言わざるを得ません。
欧州産の乳製品というのは、人気も高くて、関税撤廃によって安くなる、これは事実ですよね。そして輸入量はふえるとお認めになっている。だったら、京都府とかJA滋賀とか熊本県が独自に試算している、こういう方向をぜひ参考にすべきではありませんか。
畜産経営安定法の改正によって、北海道から都府県に飲用乳が流れる道筋ももう既にでき上がってしまっています。影響のシナリオというのをしっかり想定すべきということを申し上げておきたいと思います。
林産物についての影響についてもお伺いします。
EPAによって、構造用集成材の生産額は百八十六億円から三百七十一億円減少すると政府は試算しています。この対策と予算について簡単に説明していただけますか。


○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
この日・EU・EPAにつきまして、御指摘いただきました構造用集成材等についてでございますけれども、即時関税撤廃を回避いたしまして、七年の段階的削減を経て八年目に撤廃という一定の関税撤廃期間を確保したところでございます。
他方、長期的には関税引下げの影響によります国産材の価格低下が懸念をされるということでございます。このため、一つには、木材加工施設の生産性向上対策、競争力のある品目への転換支援、また、原木の低コスト生産のための路網整備でございますとか、高性能林業機械の導入等の集中的な実施、さらには、木材製品の国内外での消費拡大対策等の国内対策を講じていくこととしているところでございます。
このための予算といたしましては、平成二十九年度補正予算におきまして四百億円の予算を計上しているところでございます。


○田村(貴)委員 三百七十一億円、構造用集成材が減少すると政府が試算して、そして、二十九年度補正予算で四百億円の合板、製材、集成の強化対策を組んでいると。
これ、大臣、矛盾を感じませんか。こういうことで対策を打つならば、なぜ木材製品の輸入にかじを切るんですか。なぜ輸入拡大に歯どめをかけられないんですか。この十年間、木材の自給率は向上してきました。林産物の輸入拡大というのは、この流れに逆行するんじゃありませんか。大臣、いかがですか。


○吉川国務大臣 今御指摘いただきましたように、木材の自給率は、最低でありました平成十四年一八・八%から、ただいま上昇傾向でございまして、平成二十九年には三六・一%まで回復をいたしております。
日・EU・EPAにおきましては、長期的には関税引下げの影響による国産品の価格下落が懸念されることから、木材製品の国際競争力の強化を図るために、川上から川下に至る総合的な体質強化対策というものを講じていくことといたしております。それによりまして、引き続き生産や生産者所得が確保され、国内生産量は維持されると考えているところでもございます。


○田村(貴)委員 政府は、木材製品の消費拡大対策として、直交集成板、CLTの普及、実証の取組を支援すると、予算もつけています。
このCLTのEUと日本との価格差は幾らですか。きのうお伺いしたら、二倍の差があるということであります。二倍の開きがある。
大量のCLTがEUから入ってくることになります。これでは、林業の成長産業化の切り札とすると言っていますけれども、そうはならないのではありませんか。いかがですか。


○牧元政府参考人 お答え申し上げます。
日・EU・EPAの国境措置では、このCLTにつきましては、即時関税撤廃を回避いたしまして、七年の段階的削減を経まして八年目に撤廃という一定の関税撤廃期間を確保したところでございます。
他方、長期的には関税引下げの影響によります国産品の価格下落あるいは外国産品への置きかえが懸念されることから、CLTの需要拡大を図りまして、生産コストの削減等を図っていくことが重要であると考えております。このため、CLT製造施設の整備への支援を通じました効率的な量産体制の構築、また、CLT製造コストの低減等に向けました研究開発、さらには、CLT需要の掘り起こしを通じました生産ロットの増大等に取り組んでいるところでございます。
今後とも、CLTを始めといたしました木材需要の創出、拡大に向けた取組を進めまして、森林資源の循環利用の促進を通じまして、林業の成長産業化を図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 時間が来ました。
そうしたやり方では、川上の立木価格は下がるままであります。また同じ歴史、過ちを繰り返すのかと私は言いたくなります。
日・EU・EPAは、日本の農業に大打撃であります。とても承認などはできません。農水委員会と外務委員会との連合審査が必要であるというふうに思います。そのことを求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。