197-衆-農林水産委員会-13号 平成30年12月11日 宮崎県の盗伐問題について 田村貴昭

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
私は、先月二十一日に宮崎県の盗伐問題を取り上げました。小里副大臣、早速宮崎の国富町に入っていただきまして、ありがとうございました。被害者の方は国の対応に大変期待を持っておられます。
ところが、副大臣、また盗伐事件発生であります。お配りしている資料1をごらんいただきたいと思うんですけれども、見渡すところ数百本、被害者は複数おられます。持っていかれています。無断伐採で持っていかれています。樹齢が五十年後の木もありました。もちろん、境界標もちゃんとあるところであります。
被害者の方は、親から受け継いで大事に育ててきた杉の木なのに、この杉の木が成長したら家を建てようと考えていたのにということで、その落胆と怒りは想像にかたくありません。
盗んでも捕まらないから盗伐がはびこる、後を絶たないのであります。国と行政の対応をあざ笑うかのようなこういう盗伐をやはり摘発し、そして撲滅させていく、まさに今、農水省と林野庁の本気度が問われているところだと思いますけれども、副大臣、決意を込めて、今後の対応についてお聞かせいただきたいと思います。


○小里副大臣 お話しのとおり、田村委員からの御指摘を踏まえまして、去る十一月三十日、私も宮崎県国富町の現場を視察してまいりました。
本当に、麓の、道路からすぐ見えるところが派手に伐採をされておりまして、また、地籍測量の跡というか、くいがしっかり打ち込まれている、そういうところも見てきたところでございます。それだけに、事態の深刻性というものを痛感いたしました。早速、県等に対して、再発防止に向けての強化策を指導をしたところ、要請をしたところでございます。
また、農水省としましては、警察庁に対しましても、無断伐採の発生について情報共有を図るとともに、森林・林業関係者、警察等が連携した、伐採現場の巡視パトロール等の実施について協力依頼を行う等の対応をしてきたところであります。
警察庁においても、各都道府県警察に対して通知をいただいたところであります。現に、これに基づいて、協定に基づいた合同のパトロールが行われておりますし、また、国富町におきましては警察による調査が行われていると聞いているところであります。
このような無断伐採事案は、委員がおっしゃいましたとおり、森林所有者が長年かけて、手塩にかけて森林を育ててきた、その御苦労を思いますときに、大変重大な問題であると改めて認識をしております。
農水省としましても、無断伐採の防止に向けまして、更に対策の強化をしっかり図ってまいります。


○田村(貴)委員 警察庁が通知も出して取り組んでいるといったことも、今わかりました。
林野庁にお伺いしますけれども、数万本の盗まれた木がビジネスとして成り立っているわけですよね。
私は、森林経営管理法の議論のときに、川下の利益ばかりを追求していったらモラルハザードが起きると。これは、盗伐という究極のモラルハザードが起こっているわけですよ。これで、林野庁、来年四月に森林経営管理法、施行できますか。できませんよね、こんな状態で。
盗伐ビジネス、これは調査を当然されていると思うんですけれども、いかがですか。


○牧元政府参考人 お答え申し上げます。
流通している木材が盗伐による木材かどうかということについてでございますけれども、そもそも、誤伐か盗伐かという判断、これがいつも問題になるわけでございまして、また、この伐採届等が真正なものであるかというような判断も必要ということでございます。
先ほど御指摘がありましたように、一部事案につきましては、したがいまして警察において捜査中ということでございます。なかなか、この強制力を伴う対応がないと難しいという面もあるということも事実だというふうに思っております。
一方、農林水産省といたしましても、いわゆるクリーンウッド法に基づきまして木材の合法性確認を進めているところでございますので、このような使える手段というものは最大限使いまして、合法伐採木材等の流通、利用の促進を図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 林野庁長官に聞かなかった方がよかったかなと、今思いましたね。副大臣の答弁を今聞かれておったでしょう。何ですか、その盗伐か誤伐かわからないって。これは犯罪行為そのものですよ。だから警察も動いているんじゃないですか。しっかりと認識していただきたいと思います。
時間がないので、きょうは乳価、畜産の価格の問題について議論をしていきたいというふうに思います。
酪農、畜産政策については、昨日、日本共産党国会議員団として、吉川農水大臣に申入れをさせていただきました。加工用原料乳生産者補給金を再生産可能な水準とするように引き上げること、それから生乳の需給調整について国が責任を果たす等々の申入れをさせていただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
お伺いしたいんですけれども、酪農家の戸数の減少、それから乳用牛の減少に歯どめがかかっていません。
資料2をごらんいただきたいと思います。
中央酪農会議の資料では、「一日に二戸が廃業!」と、驚くべき見出しも躍っているわけでありますけれども、右のグラフを見れば、北海道の酪農は、生乳生産量が増加傾向にありますので、大規模化が進んできたことがうかがえるところです。
畜産クラスター事業、きょうも議論があっているんですけれども、規模拡大や生産効率向上が要件となっています。
そこで、お伺いいたします。
酪農、畜産農家が利用できる支援制度で、現状維持や規模を縮小する場合でも使えるものがあるのか、これについて御答弁いただきたいと思います。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
現状の経営規模を維持する意向を有している小規模な酪農家の方に対しての支援策ということでございますが、例えば、畜産クラスターの事業のうち規模拡大要件がない機械導入への支援ですとか、あと、性判別精液の利用や育成牛の地域内流通等への支援、牛床マットや扇風機などの導入によります飼養環境の改善への支援、酪農ヘルパーや公共牧場等を活用した作業の外部化への支援等の施策が講じられているところでございます。


○田村(貴)委員 事前レクでもお伺いしましたけれども、ほぼ全ての事業は、経営規模の拡大それから生産性向上が条件となっているわけであります。楽酪事業についても、ミルキングパーラーは導入すると一千万円から一億円、それから搾乳ロボットは三千万円ぐらいかかるというふうに説明も受けました。多額の借金を抱えるわけであります。
そこで御紹介したいのは、十一月十四日付の日本農業新聞であります。「北海道 生乳基盤危機」「設備更新…迫る決断 負債か、離農か」、負債か離農か。「相次ぐ国内市場開放による将来不安や、高騰する設備更新費用などが引き金となり、苦渋の決断を強いられている。」、こういう記事でありました。
大臣にお伺いします。
設備投資には、特に酪農は莫大な負債を抱えることになります。それが離農を生む一つの大きな要因になっているとの御認識はございますか。


○吉川国務大臣 離農の要因につきましては、農林水産省の直近の調査によりますと、第一位が高齢化、後継者問題であります。第二位が経営者等の事故、病気、死亡となっております。これに加えまして、今、負債問題を理由とするケースも確認をいたしておりまして、酪農経営におきましては、収益に見合わない負債というのは離農の要因になり得ると認識をいたしております。


○田村(貴)委員 それで、大臣、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、生産規模の拡大に取り組む農家はおられます。私は否定しません。一方で、将来への不安から、現状の経営規模を維持したいという農家、規模を縮小せざるを得ない農家さんもおられるわけです。
大事なのは営農を続けていくということであろうかと思います。こうした農家にも、先ほど中央酪農会議のアンケートの結果、生産局長から答弁がありましたけれども、維持していく、減少が七割程度ですか、そういう状況にあるんだったら、こうした農家にも必要な支援が必要ではないか。
あわせてお伺いします。
そうした農家が今、牛舎の補修に差しかかっていて、これが差し迫った問題になっています。生産性拡大を条件とせず、こうした農家にこうした支援が必要であると思いますけれども、いかがでしょうか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
畜産クラスター事業の話だろうというふうに理解いたしておりますが、クラスター事業は畜産、酪農の体質強化を図るために、地域の関係者が連携をいたしまして、畜産経営の生産性や収益の向上を進めることが目的でございます。施設整備に対する支援を行う際には、原則として規模拡大を要件としておりまして、生産性の拡大を条件とせずに支援するということは適切でないというふうに考えてございます。
ただし、土地の制約などによりまして規模の拡大が困難な場合には、現状で地域の平均規模以上の経営であれば、生産効率の向上によりまして出荷量が増加する等の取組が支援対象とできる生産効率向上要件により、施設を整備することは可能でございます。
また、中山間地域におきます施設整備については、中山間地域優先枠を活用することによりまして、飼養規模が地域の平均規模に満たなくても支援することが可能であるという状況になってございます。
このように、畜産クラスター事業の実施に当たりましては、規模拡大を基本としつつも、現場の声を聞きながら、きめ細やかな対応を行ってまいりたい、そういうふうに考えております。


○吉川国務大臣 小規模で経営をされている方々に対しても、畜産クラスター事業のうち、規模拡大要件のない機械導入への支援ですとか、さらに、性判別精液の利用や育成牛の地域内流通等への支援ですとか、そしてまた、牛床マット、扇風機等の導入による飼養環境の改善への支援、そして、さらにまた、酪農ヘルパーですとか公共牧場等を活用した作業の外部化への支援ですとか、施策を講じているところでもございますので、これからも現場のさまざまな御意見をお聞きをしながら、この小規模家族経営も維持発展ができるように全力を挙げてまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 転換点に立っているというふうに思いますよ。与野党問わず、きょう、この問題が出ているわけですよ。そして、大規模化を要件とするから離農が続いているわけですよ。生産戸数が減っているわけじゃないですか、生産者が。ここが、今までの対策で反省点とすべきでありませんか。ここを変えないとだめですよ。一顧だにしないという考えですか。これから改善するんですか。局長、どうですか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明したように、中央酪農会議の調査では、規模を拡大したいという方が二六%、規模を維持若しくは縮小したいという方が七〇%、離農したいという方が二%という状況でございます。
先ほども御説明しましたとおり、確かに、クラスター事業の施設整備については規模拡大というのが要件になってございますけれども、今大臣からも御説明いたしました、クラスター事業の機械導入ですとか、あと楽酪ですとか性判別精液とか、そういうのは規模拡大ということを条件にしているわけではございません。現状維持の方でも対象になる事業でございます。
ただ、そこがうまく現場に伝わっていないというようなことだとか、そういうことは私どもも聞いてございますので、また、その事業の使い勝手の問題も聞いてございますので、そもそも、経営維持の方を対象にしていないということではなくて、その対象になっている事業は多々あるところ、いかにうまく使っていくかということも含めて、今後検討していきたいというふうに思ってございます。


○田村(貴)委員 酪農家の声、畜産家の声の将来への不安は、これは全然消えませんよ、そういう姿勢では。政策転換を強く求めたいと思います。
私も、北海道のいろいろな農家の方からお話を聞いてまいりました。規模拡大、効率化、利益、利益率引上げなど、小規模農家はやめろと言っているようにも聞こえる。そこに農家がいて農業をしているから、北海道の風景もつくって観光も成り立つし、地域を成り立たせている。
北海道に限った話ではないというふうに思います。日本の農業というのは、小規模家族農業であります。世界は、小規模家族農業に政治の光を当てるという流れになっています。こういう質問もしたかったんですけれども、きょうは時間がございません。
日本の農業の主役、小規模農業、家族農業の意向をしっかり酌み取って、そこに光を当てる農政への転換を強く求めて、きょうの質問を終わります。