198-衆-農林水産委員会-4号 2019年3月20日 農業ため池の決壊・損壊について

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

ため池法案について質問します。
豪雨、地震などで、ため池の決壊、事故が相次いでいます。一昨年の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市のため池四十八カ所で決壊、損傷がありましたが、防災重点ため池はわずか一つでありました。昨年の西日本豪雨で決壊した三十二のため池のうち、防災重点ため池は三つにすぎませんでした。
そこでお伺いしますけれども、なぜ、決壊のおそれがあるため池の改修がこれまで十分に進んでこなかったのでしょうか。


○室本政府参考人 まず、対策を必要とするため池が膨大な数に上るという点がございます。それ以外には、規模の大きい工事となることから、十分な調査と設計などの期間、これがかなりの期間を要するということ、それから、権利者間の世代交代、これが進みまして権利関係が不明確かつ複雑になっていること、こういったことを要因として、御指摘のとおり、十分な進捗が図られていないといった状況になっております。
こうしたことを受けまして、三十一年度予算では、農村地域防災減災事業について六百三十八億円という国費を計上しておりますし、また、補助事業制度も大幅に三十一年度から拡充することになっておりまして、加えて、今回の法律によりまして、所有者不明の場合で合意形成が困難な場合、この場合にも代執行による迅速な防災工事等が可能となるよう措置をするということでございまして、こういった措置によって、これまで以上にため池の耐震対策、豪雨対策の進捗を図ってまいりたい、このように考えております。


○田村(貴)委員 膨大な数があり、たくさんの改修工事が必要である、そして、たくさんの費用がかかるわけですよね。
私は、地元の負担の問題について質問をしたいというふうに思います。
総務省の中国四国管区行政評価局が行った、ため池の管理に関する行政評価・監視というのがあります。
広島県内の調査対象四市において、耐震診断をしたため池で、健全度がやや低い、健全度が低いと判定された四十八の防災重点ため池のうち、対策工事を実施せずソフト対策を行うとしたのが、四十八カ所のうち三十九カ所でありました。
なぜソフト対策を選択するのか、その理由について調査したところ、工事の期間中、休耕しなければならないがトップで四七・五%。農業を休まなければいけない。次いで、対策工事費の受益者等の負担があるためとするのが二七・五%あったわけなんですね。
行政評価局の所見では、速やかな対策工事の実施に努めることとしたわけなんです。まずやはり工事をしなければいけないとしたわけなんですね。
実際、その対策工事なんですけれども、地震や豪雨による決壊防止のための工事は、地元の負担はゼロであります。きょうの委員会でもこの論議がされています。
しかし、老朽化等による一般整備というのは、負担の割合の指針が示されていまして、地元には最大七%の負担が示されているところであります。
そこで、一般的な整備、改修というのは、決壊を防ぐ上でも大変重要であると考えます。地元負担がネックになっていれば、必要な工事が進んでいかない可能性も生じるのではないかなと思いますけれども、大臣、いかがですか、地元負担率をなくしていく、引き下げていくということも視野に入れて検討されるべきではありませんかね。いかがでしょうか。


○室本政府参考人 委員が御指摘のとおり、地震と豪雨対策というのは農家負担がゼロである。これはガイドライン上そうなっておりまして、地元負担がかからない、そういう位置づけになっておりますが、これはどういう考え方かといいますと、やはり防災上のリスクの低減というところが非常に大きゅうございます。耐震、豪雨対策というのは、どちらかというと工事規模も結構大きなものになりまして、こういうことにさせていただいているということでございます。
一方、老朽化対策というのは、営農を継続するということで、受益者がそこから、改修をすることによって利益を生むということから、基本七%、中山間地域では二%というふうな負担率にさせていただいていますが、これは、ほかの、ため池以外の水利施設に比べまして、非常に率としては低いということであります。それはなぜかというと、やはり防災の観点があるから低く設定している、そういうことでございます。
一方で、先ほど来申し上げています、非公共の、ため池の監視とか、あるいは、例えば住民でパトロールをするといったようなときには、定額の助成が三十一年度からできるようになりましたし、いろいろな、ソフト対策については総合的にやることにより、結果として、仮にハードで地元負担がかかっても、維持管理面等で農家さんの持ち出しがないようにということで、その辺を考えながら取り組んでいきたいと考えております。


○田村(貴)委員 一般的な整備、老朽化対策も、ここをおろそかにすると、やはり事を重大化してしまう。これはつながってまいりますよね。そして、財政的な負担が心配だという声も地元にはある。これもわかりますよね。ですから、ここはやはり、しっかりと検討の余地を残していかなければいけないというふうに指摘させていただきたいと思います。
次いで、農業用として使われていないため池の扱いについて質問させていただきたいと思います。
吉川大臣、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、私の地元の北九州市の小倉北区に、大谷池というため池があります。農業用としての供給はもうされていません。周辺はもう住宅化されています。ため池の所有者は個人であるんですけれども、連絡がつかない状況になっています。決壊すれば住宅への被害が及ぶかもしれないし、昨年七月の豪雨の際に、周辺住民からは、大雨で池から水があふれるのではないかという不安が大きく広がりました。私もこの後、見に行ったんですけれども、こうしたため池は全国各地にいっぱいあると思うんです。
こうしたため池は今度の新法、法案の対象となるんでしょうか。農水省、いかがでしょうか。


○室本政府参考人 この法律案の第二条の第一項におきまして、農業用ため池の定義、これがございますが、それに即して解釈しますと、かつて農業用に利用されていたため池が現に利用されていない場合であっても、仮に将来利用し得る状態にある場合は、遊休施設として本法案の対象になるというふうに考えてございます。
これは、こうしたため池の周辺に家屋や公共施設等が存在し、仮に特定農業用ため池の指定要件、これを満たす場合には、この法律案に基づく防災工事に関する措置、これを適用していくことが可能だというふうに考えてございます。
ただし、委員御指摘のような、農業用としての用途を終えて、将来的にも農業用に使う見込みが全くないという場合、これは、廃止工事を行うのか、あるいはその用途を変えて、例えば治水用に用途を変えて転用していくのかということは、地域の関係者において速やかにお決めいただいた上で、どういった事業制度を活用するかというのを検討していただくというのがよろしいのではないかと考えております。


○田村(貴)委員 ちょっと確認なんですけれども、今後の用途については未確定であるといった場合は、今度のため池新法に基づいて登録をしていくという対象でよろしいわけですよね。


○室本政府参考人 これもなかなか難しいところなんですが、全く今後の対応が決まっていない、農業を継続したい方もおられるし、もう離農したいという方もいて、どういう目的で整備するかというのが決まっていないということであれば、現に農業用に利用されておれば、それは特定農業用ため池として指定可能だと考えております。
ただし、あらかじめ、別のところでそういう、転用しようという合意があった上で、しばらくそれは表に出さずにみたいなことだと、なかなかそれは、法律に従う措置なものですから、難しいのではないか、こういうことでございます。


○田村(貴)委員 それで、大臣、要するに、農業用としてのため池の使命が終わったとして、今度、新法に基づく施策というのは廃止ぐらいしかないわけなんですよね。私は、廃止という選択肢もあるんだけれども、廃止ありきで考えてもいけないというふうに思うわけです。
これは、農水省自身が言っているんですね。「平成三十年七月豪雨等を踏まえた今後のため池対策の進め方」というのが出されています。この中で、ため池の廃止の検討をする際は、ため池が洪水を一次貯留するなど、下流域への被害を軽減することもあることを踏まえ、防災・減災施設としてのストックの有効活用について検討されることが望まれると。これは事実ですね。これを出したのは、農村振興局整備部であります。
農水省が、廃止ありきじゃないよ、防災のために、防災・減災施設としてのストックとしての有効活用も踏まえなければならないと言ったところで、やはりこれは支援策が必要なんですよ、大臣。
それで、保全の必要があるとするため池については、やはり支援をしていくことが基本になってくると思います。これは、新たな新法ではその区切りは出てくるかもわからないけれども、だからこそ、提案者として、政府に省庁横断的な対策を求めたいと思います。
だから、この新法でくくれるところとくくれないところがいずれ出てくるんですよ。そうしたときに、せっかくこうした新法を出したんだったら、ここから漏れるため池、かつては農業用ため池として十分役割を果たしてきたんだから、そこはちゃんと責任を持って対策を講じていく、横断的な対策が求められると思いますけれども、そういう検討をしていただけますか、大臣。


○吉川国務大臣 横断的な対応ということでございますので、どのような対応が必要なのかということは、これからしっかりと詰めをやっていきたい、こう思っております。
また事務方の方から必要な答弁をさせたいと思いまするけれども、しっかり対応していくつもりでもございます。


○室本政府参考人 確かに、委員おっしゃるように、農業用で利用されていて、大雨が来るというので水位を下げて、治水用、暫定的に治水用で使うような、そういう運用を治水部局と農水部局が協調してやっているような事例も、最近は非常に多く見られます。
そういうことから考えてみましても、例えば、農業用で使っている、現に使っているため池が親子であって、ただ、もう十分な量が要らないから、上のため池を廃止して下だけ使いましょうというようなケースにおいては、これは、水に色はついていないものですから、上から下に流れてくるものですから、これは今のこの法律でも対応できるかなというような感じは持っていますが、今農業用で使われているにもかかわらず全て治水に転用するんだということになれば、これは治水部局で活用できる補助事業とか交付金制度がございますので、私ども農水部局も中に入って、そういう交付金で、例えば市が、市町村が事業実施主体で、交付税措置を受けながら事業ができるように積極的に調整をしていく、こういう横断的な連携というのは十分可能でございまして、そういった方向で検討させていただければと思います。


○田村(貴)委員 防災重点ため池の再選定に当たって、これから事業を進める中で、そういうやはり連携とか、それから、何としてでも、やはり防災につながる一番のメリットはこういうやり方なんだということを自治体とか住民に示していただければというふうに思っております。
時間が参りましたけれども、農家がため池の管理、保全に草刈りなどで大変御苦労されています。多面的機能支払交付金、これを使ってやられている農家の方のお話も、私たち香川県に行って聞いてきたんですけれども、これは質問通告していたんですけれども、委託は認められますよね。(室本政府参考人「はい」と呼ぶ)はい。確認しました。
それで、例えば、委託も含めて多面的機能支払交付金を使っても、なかなかやはり費用が足りない。委託にすればかなりお金がかかるという話なので、ため池の草刈りなどの維持管理について、地元への支援、これを大きく広げていく、これがやはり必要ではないかなというふうに考えますけれども、最後、それを質問させていただきたいと思います。


○室本政府参考人 先ほどお答えしたとおり、外部委託、これは可能でございまして、現にやっている地域、全国で、非常に多うございます。そういったことからも、こういったことを積極的に、外部組織に作業を委託するということを進めていただけるよう、これは農政局経由でもしっかり周知を図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 ほかの支援も含めて、よろしくお願いします。
以上で質問を終わります。