198-衆-本会議-21号 2019年4月25日 国土の荒廃まねく 国有林野管理経営法改定案

○田村貴昭君 日本共産党の田村貴昭です。

私は、日本共産党を代表して、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)
本法案の目的は、昨年の通常国会で成立した森林経営管理法の、意欲と能力のある伐採業者の育成にあります。
昨年の審議の際、農林水産省は、全国の森林所有者へのアンケート結果として、森林所有者の八四%が経営意欲が低いとする資料を提出しました。しかし、実際には、森を頑張って守っていきたいと考える所有者が八六%に上っていたことが明らかになり、資料の捏造を認め、撤回しました。全国の森林所有者を経営の意欲が低いと決めつけたことを反省すべきであります。改めて農林水産大臣の認識を伺います。
森林経営管理法は、森林所有者に経営の意欲がないと認定すれば、その同意なしに森林の経営管理権を取り上げて伐採業者に手渡し、大規模に伐採させてしまうものです。本法案は、そうした伐採業者に対し、国有林の樹木採取権、すなわち伐採権を与えることで経営を支援しようとするものであります。
重大なことは、最長五十年間に及ぶ排他的な伐採権を与えることです。しかも、広範囲に樹木を皆伐することが前提となっています。さらに、伐採業者には、伐採権だけを与え、伐採後の植林と森林の再生を義務づけていません。申し入れるとしているだけです。なぜ、伐採業者に森林の再生を義務づけないのですか。これでは対象となる国有林がはげ山になってしまうのではありませんか。
大規模な皆伐が何をもたらすのか。高性能林業機械により効率的に伐採を行うには、大きな林道を造成することが必要となります。大きな林道は、土砂崩れや雨による表土の流出を引き起こし、川底の上昇を招いて河川の氾濫につながり、国土の荒廃を招くのではありませんか。
そもそも、戦後の大規模伐採による森林資源の枯渇と輸入自由化の推進が林業の衰退と山村の過疎を招きました。大規模伐採で使える木材がなくなってから五十年余りを経た今、ようやく森林が回復し、良質の木材が供給できるようになってきたのです。
五十年で皆伐を行う、短伐期皆伐施業を繰り返せば、再び森林資源を枯渇させることになります。戦後の林政の失敗から学ぶべきであり、同じことを繰り返してはなりません。
本法案で伐採権者になれるのは、事実上、短伐期皆伐施業の業者に限定されてしまいます。しかし、全国には、間伐を繰り返しながら、百年、二百年かけて価値の高い森をつくり、持続可能な林業を目指す自伐林家の方々がたくさんおられます。こうした長伐期多間伐の施業にこそ光を当てるべきであり、地元に根差して頑張っている自伐林家や国有林を専門に仕事をしてきた小規模の事業者などに国有林の仕事を任せていくべきではありませんか。
最後に、国有林は、水源を涵養し、土砂災害を防ぎ、生物多様性を守り、二酸化炭素を吸収して気候温暖化を防止し、国民の健康と文化に寄与するという、公益的機能を有しています。この機能を守るためにも、短伐期皆伐施業に偏重する森林政策を改め、持続可能な林業を目指すべきであることを強調し、質問を終わります。(拍手)


〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

○国務大臣(吉川貴盛君) 田村議員の御質問にお答えいたします。
昨年の森林経営管理法案の審議の際の説明資料の修正についてのお尋ねがありました。
森林経営管理法案の審議の際の説明資料の修正については、資料のもととなった調査結果のデータそのものを修正したものではなく、その整理の仕方について正確性を期したものでございます。
したがって、我が国の森林の適切な管理を図るためには、現に経営管理が不十分な森林について経営管理の集積、集約化を図ることが課題であり、その実現のためには、これらの森林を、経営規模の拡大を志向する者を中心とした担い手につなぐという必要性が変わるものではないと考えております。
植栽についてのお尋ねがありました。
樹木採取権は、事業者が一定の期間、公益的機能の確保等の観点から国が定めるルールにのっとり樹木を伐採する権利であり、伐採後の植栽は国が責任を持って行うことにより、その樹木は国有林として管理することとしております。
他方、伐採後の植栽を低コストで効率的に実施するためには、樹木採取権者が伐採と一貫して植栽作業を行うことが望ましいと考えております。
したがって、本法案における、「植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」との規定に基づき、国が樹木採取権者を公募する際に、樹木採取権者が植栽の作業を行う旨申し入れることとしております。
国は、この申入れに応じ、申請した者の中から樹木採取権者を選定することとなることから、樹木採取権者により確実に植栽が行われることとなります。
林道についてのお尋ねがありました。
林業の成長産業化を実現するためには、高性能林業機械の導入と林道等の路網の整備を進め、木材生産や造林コストの削減を図ることが重要です。また、森林資源の適切な管理のためにも、路網が不可欠です。
林道の整備に当たっては、地形に沿った線形にするとともに、必要最小限の道幅とするなど、崩れにくく、丈夫で簡易なものとなるよう努めているところでございます。
農林水産省としては、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するため、引き続き適切な林道の整備を推進してまいります。
森林資源の管理についてのお尋ねがありました。
我が国の森林は、戦後の荒廃林地への復旧造林、戦後の復興や高度経済成長を支える木材を供給するための拡大造林などの後、数十年の歳月を経て、資源が充実し、主伐期を迎えつつあります。
この豊富な森林資源は、若い林が非常に少なく資源構成に偏りがあることから、伐期が到来した資源を適時に伐採し、その後、再造林を行うことにより、切って、使って、植えるといった循環利用を進めていく必要があります。
また、自然的条件などによっては、長伐期による森林経営が適している場合もあり、一律に五十年での皆伐のみを進めるのではなく、地域の実情に応じた適切な資源管理を図ることが重要と考えています。
国有林専門の小規模事業者などに国有林の仕事を任せていくべきとのお尋ねがありました。
今回の新たな仕組みについては、現行の入札による方式を引き続き基本とした上で、今後供給量の増加が見込まれる国有林材の一部について導入することとしております。
また、樹木採取権者の選定に当たっては、樹木料の高低だけではなく、地域への貢献度合いなどを総合的に評価するとともに、複数の中小事業者が協同組合等として申請することも可能としています。
このように、今回の仕組みは、中小規模を含めた地域の林業経営者の育成に貢献する措置であると考えております。
国有林の皆伐施業についてのお尋ねがありました。
国有林野事業においては、公益的機能の維持増進を図るとともに、林産物を持続的かつ計画的に供給するという目標のもと、個々の国有林において、水源涵養や山地災害防止等、重視すべき機能に応じて、皆伐施業だけでなく、長伐期化や複層林化、針広混交林化など、多様な森づくりに取り組んでいるところでございます。(拍手)