200-衆-環境委員会-2号 2019年11月12日 チッソ子会社の従業員全員解雇中止 働きかけよ(水俣病)/異常気象 温暖化の影響大きい石炭火発の新増設中止を

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

小泉大臣は、所信の挨拶の中で、水俣病について述べました。「環境行政の原点を忘れることなく職務に取り組んでまいります。」と決意を述べられました。
私は、最初に、今、水俣市で起こっている、この環境行政の原点、加害企業の問題について質問をしたいと思います。
本年八月八日、水俣病の加害企業であるチッソの事業会社、JNC株式会社取締役会は、同社の電子部品事業からの撤退と、その生産を担っているサン・エレクトロニクス、これは水俣市にあるんですけれども、この工場閉鎖にあわせて、同工場の従業員百十四人全員の解雇を行うことを決定しました。
水俣病による深刻な健康被害を引き起こし、地域の環境と経済に大きな痛手を与えたチッソは、被害者への補償と救済、地域の振興と雇用の確保を行う義務があります。この件に関しては、我が党の国会議員団水俣病問題対策委員会として、十月十八日に大臣に申入れを行ったところであります。
人口二万四千人の水俣市で百十四人の全員解雇、工場閉鎖が起こったら、地域経済は大打撃であります。改めて、大臣の受けとめについてお聞かせください。


○小泉国務大臣 田村先生には、水俣問題ということで、私が所信を、環境省の原点は水俣にあると申し上げたことも触れていただきました。
私も慰霊式に出席をさせていただき、語り部の皆さんとの対話、産業界の皆さんとの対話、さまざまな対話も通じて、実際に行くことで、環境行政が始まったこの原点の責任の重みを痛感をしています。語り部の会長からいただいた、埋立てをされた、そこで食事をされて、その木でつくられたこけし、これが今でも環境大臣室に、私の机に飾ってあります。忘れずに取り組んでいきたいと思います。
今受けとめをという御質問でありましたが、チッソが経営をしっかりと行うことにより、患者補償等を継続して確実に行うことがまずもって重要であると考えています。
今回の電子部品事業からの撤退は、事業の再構築を行い、業績の向上を図るためのものであるとの説明を受けています。
また、水俣病患者への補償金支払いを確実に遂行することを確認しておりまして、環境省としても、引き続き経営状況を注視するとともに、一層の経営努力を期待をしています。
さらに、チッソからは、再就職の支援等の措置をしっかりと講じていく旨の説明を受けています。今後とも、チッソの取組状況等の動向を注視してまいりたいと考えています。


○田村(貴)委員 企業の業績向上のその先に、経済が沈下してしまう、そして、大量解雇があって再就職ができないという事態になったら、これはもう話にならないわけであります。
そこで、具体的に聞いてまいります。
水俣病特措法第九条において、特定事業者、チッソですね、特定事業者から分社化した事業会社、これはJNCです、この事業計画はどのように規定されているのでしょうか。特措法九条及び九条二の二の部分で説明をしていただけるでしょうか。


○中井政府参考人 お答え申し上げます。
水俣病特措法第九条では、特定事業者たるチッソは、事業再編計画を作成し、環境大臣の認可を申請しなければならないとされておりまして、その事業再編計画におきまして、事業会社となるJNCについては、チッソの個別補償協定に係る債務等を除き、その事業を譲渡すること、チッソが、事業譲渡の対価として事業会社が新たに発行する株式を引き受けることを記載するなどと規定されております。
この規定を受けまして、平成二十二年十二月十五日に環境大臣の認可を受けました実際のチッソの事業再編計画におきましても、JNCは、その前文におきまして、事業体制を抜本的に再構築し、経営の効率化を一層高め、さらなる収益力の強化を図り、事業価値を向上することが必須であるという記載のもとに、事業会社であるJNCを設立し、同社が設立に際して発行する株式の総数を引き受けること、チッソの営んでいる事業に係る財産をJNCに譲渡することなどとされているものと承知してございます。


○田村(貴)委員 九条の二の二の部分には、「事業会社の事業計画が特定事業者の事業所が所在する地域における事業の継続等により当該地域の経済の振興及び雇用の確保に資するものであること。」この部分はありますね。(中井政府参考人「はい」と呼ぶ)ありますね。はい、結構です、確認しました。
ということで、やはり、当該地域の経済の振興及び雇用の確保に資するものであること、これが、チッソが分社化したJNC及びそのJNCの事業計画に規定されている項目なんですよ。サンエレを傘下に置くJNCの事業計画は、当該地域の経済の振興及び雇用の確保に資するものであるとされているんですよね。そこを紹介してほしかったんだけれども。大臣の認可をこれで受けたんですよね。
そうしたら、そのJNCが地域の経済の振興及び雇用の確保に反する計画を打ち出したというのは、これは重大なことではありませんか、特措法に照らして。いかがですか。


○中井政府参考人 お答え申し上げます。
チッソの事業再編計画、特措法九条の二項、先ほど委員御指摘のとおりの項目がございます。
その前提といたしまして、まず、この二項の一号の方におきまして、「個別補償協定の将来にわたる履行及び公的支援に係る借入金債務の返済に、救済措置の開始の時点及び救済措置の対象者の確定の時点において支障が生じない」と。被災者への補償をしっかりとやっていくということが、まずは大前提になっているところでございます。(田村(貴)委員「それは当然」と呼ぶ)はい。
今回、チッソからのサン・エレクトロニクスの工場封鎖の話につきましては、先ほど大臣から御答弁もさせていただきましたとおり、このチッソにおきまして、今回のサン・エレクトロニクスの電子部品事業からの撤退は、事業の再構築を行い、業績の向上を資し、そして水俣病患者への補償金支払いを確実に遂行するというためであるというふうな説明を受けております。そしてまた、今回の再就職支援等、しっかりと措置を講じておくということを今回説明を受けております。


○田村(貴)委員 傍観者的になってはいけませんよ。だめですよ。後で言いますけれども、チッソは加害企業なんですよ。とんでもない発言もされてきているんですよ。
政府は水俣の地域振興に責任を負っているのではありませんか。特措法、今度は三十五条を紹介していただきたいと思います。大臣もお聞きになっていただきたいと思います、三十五条。


○中井政府参考人 お答え申し上げます。
水俣病特措法第三十五条におきましては、「政府及び関係地方公共団体は、必要に応じ、特定事業者の事業所が所在する地域において事業会社が事業を継続すること等により地域の振興及び雇用の確保が図られるよう努めるもの」と規定されてございます。
この条文におきまして、特定事業者とはチッソ株式会社でありますし、事業会社とはJNCでございます。


○田村(貴)委員 極めて明確に政府の責務がここに定められているところであります。
それで、小泉大臣、業績向上を前提とするとか、それから、再編について政府として注視するということなんだけれども、私はそれではやはり間に合わない、いけないというふうに思います。
再雇用云々と言われました。再雇用支援、当然すべきですよ。だけれども、解雇される百十四人というのはどこにお住まいなのか。ほとんど水俣市内にお住まいなんですよ。水俣市内にお住まいの方が工場で働いておられる。全員解雇、じゃ、どこに再就職するか。人口二万四千人の水俣市において、その地で再就職するということはもうほとんど不可能というふうに言われていますよ。
ですから、これは雇用と経済に大打撃がもたらされるものということで、私はやはり、中止を働きかけるべき、そして見直しを政府の方から求めていくということが問われると思います。
大臣は、私たちが申入れしたとき、水俣の代表も大臣に会っていただきましたけれども、マグニチュードの大きさというふうに表現されて、そして理解を示されたではありませんか。
地域の経済、雇用に責任を負わないJNCは、やはり、特措法、この規定に基づいて違反されている。許されることではない。
国は本当に何もしないという立場なんですか。大臣、お答えいただきたいと思います。


○小泉国務大臣 今回、私が水俣に伺いまして、今まで歴代の大臣が行ったことに加えまして、初めて取り組んだことの一つが、まずは、語り部の皆さんとお会いをするだけではなく、お昼御飯を一緒に食べる、そういった中での意見交換を行う。そういったことに加えまして、初めて水俣の産業界の皆さんとの意見交換会も開催をしました。そこは、地元の皆さんから、今どのような町づくりをやっているのかということを大臣に知ってもらいたいと。そういった中で、例えば、観光業をやられている方、そして農業をやっている方、そして水産業の方、さまざまな方々、中には水俣市に移住をしてきた方も参加をされました。
私は、環境省として、水俣の今行っている環境の回復に加えまして、こういう町づくりをどのように後押しをするかということも非常に大切だと思いますので、そこも含めて環境省の務めを果たしていきたいと思います。


○田村(貴)委員 大臣が今言われたことは否定しません。しかし、それは本筋から離れていることですよ。語り部の会の方と交流した、お昼御飯を食べた、それじゃないんですよ。私が聞いているのは、この町で百十四人、一気に解雇してしまったら経済がもたないじゃないかという話をしているんです。そして、政府は、そういうことが起きないようにちゃんと力を尽くさなければいけないと特措法に書いているわけなんですよ。ですから、責任を果たしてくださいということを申し上げているわけであります。
加害企業チッソが水俣病患者さんに対する補償を完遂するために、公金が長年にわたって投入されてきました。
大臣、聞いてください。これは、一自治体、一地域で起こっている、一企業の事業の問題じゃないんですよ。公金が入っているんです、チッソに対して。熊本県がチッソに貸し付ける原資を国が支出してきたんです。地方交付税の交付措置で見ると言ってきたやり方がとられてきたんです。それは、被害者に対して救済のための補償を完遂させる、それが滞ってはいけない、逃げてはいけないというために国が支援してきたんでしょう。
国は幾ら支出してきたんですか。そして、その債務残高は幾らになっていますか。お答えください。


○中井政府参考人 お答え申し上げます。
公的支援による債務の元金及び既発生分の利子の合計、平成三十一年三月末時点におきまして約三千五百五十七億円となってございます。
平成三十一年三月末現在におきまして、これまでのチッソの償還額を差し引きますと、公的支援による債務残高は約千九百七十五億円となってございます。


○田村(貴)委員 改めて額の大きさにびっくりすることですよね。チッソに対してこれだけの公的資金を入れてきたということですよ。だから、このチッソが国と熊本県の支援を受けて経営が成り立っているということは明白なんです。そして、国がチッソの事業継続に対して責任を持つのは当然のことなんですよ。
だから、地元で、企業の経営再構築だとか、合理化だとか、リストラだとか、こういう形で何の罪もない従業員がある日突然解雇されてしまう、でも、それは事業再編の中であるというふうに政府が認めてしまったら、これは大変なことになってしまいますよ。
一般企業の話をしているわけではありません。三千五百五十七億円の公費があの加害企業に注がれて、そして、政府が、まだ債務残高が千九百七十五億円残っているという状況なんです。傍観者ではいられないというふうに思います。
日本の公害の原点と言われた水俣病で水銀中毒を引き起こし、数え切れない犠牲者を出して、今なおも苦しみの中にいる方々への補償を将来にわたり完遂させるための措置として公金があてがわれてきたのであります。国がチッソの事業継続に対して責任を持つのは当然のことであります。
この計画の見直しを、やはり政府は会社に対して物言うべきではありませんか。いかがですか、大臣。


○小泉国務大臣 まず、チッソが経営をしっかり行うことによりまして、患者補償等を継続して確実に行っていくことが大事だ、重要であると考えています。
できるだけ水俣地区において雇用を継続することが重要と考えられますが、それにより、水俣病患者への補償金支払いに支障が生じることがあってはならないと思います。
一方、個別事業の内容については、チッソが主体的に市場情報等に精通した関係金融機関等に助言や指導を受けながら判断していくべきものと認識をしています。


○田村(貴)委員 大臣、どちらも大事なんですよ。被害者の補償も大事、それから地域の振興及び雇用の確保、これは法に書いているんですから、どちらも大事なんですよ。片方だけということじゃないんですよね。法に書いていることはちゃんと守ろうじゃないですか。
私がなぜこの工場閉鎖の問題をここまで重視するかといいますと、チッソの社長さんは、大臣は慰霊式典に行かれた、私も一緒に行きました、前回も行きました、その前も行きました、去年の慰霊式の後に記者団に対してこう言われたんです、水俣病特措法の救済は終了したと。当時の社長が終了したと言ったんですよ。それから、企業間競争に勝っていく上で、手かせ足かせをできるだけ早く取り除くことが必要と。この救済、補償、この手かせ足かせという言葉で、同列でこういう認識を示したんですよ。
こうした被害者への求償に責任を負わないとするチッソの企業体質、こういうものが内外に明らかにされているだけに、地域経済に対する固有の責任も放棄してしまうのではないか、地元ではこういう声が上がっているんです。現に、サンエレの社員の方や水俣経済界、大臣も経済関係者の方と懇談されたと言ったんですけれども、経済界の中からは、今後もっと事業を縮小していくのではないか、こういう臆測も飛び交っているというふうに私はお伺いしてまいりました。
時間がありませんけれども、環境省は、チッソ、加害企業の果たす使命についてしっかり責任を負うこと、私のこの質問を受けて、環境省はチッソに正面から向き合っていただきたい。このことを強く要望しておきたいというふうに思います。
次に、地球温暖化対策について質問をします。
気象庁のホームページに、一時間降水量及び日降水量のランキングというのがあります。二十位までのランキング。最大一時間降水量歴代二十位の中で、二〇〇〇年代に入ってからの記録が何と二十の中で九つ占めています。日降水量二十位の中では、十二も二〇〇〇年代に入ってから入っているわけです。台風十九号で日降水量九百二十二・五ミリを記録した箱根は、このランキングの一位になっています。
異常ともいうべき大雨、そして暴風雨によって甚大な被害が起きて、その度合いが年々激しくなっているように見受けられます。
温暖化と異常気象との関係について、気象庁、説明していただけますか。


○大林政府参考人 お答えいたします。
近年、豪雨災害をもたらすような短時間強雨や大雨発生回数は、委員御指摘のとおり増加しております。気象庁では、地球温暖化の進行に伴い、大雨の発生頻度は今後更に増加すると予測しており、豪雨災害の拡大が懸念されるところです。
台風につきましては、気候変動に関する政府間パネル、IPCCの報告書によると、地球温暖化の進行に伴い、台風など熱帯低気圧の強さが増す可能性が指摘されております。我が国においても、台風災害の激甚化に対して警戒を強めていく必要があると考えております。
気象庁では、今後とも、地球温暖化の対策に資する気候変動の監視、予測情報の充実強化を行い、その情報発信に努めてまいります。


○田村(貴)委員 そのIPCCの報告によれば、二十世紀半ば以降の地球温暖化の主な原因は、人為的な影響である可能性が極めて高いと。人為的な影響が極めて高いと言われているのであれば、その人為的な要因を取り除かなければいけない、温室効果ガスを急いで削減していかなければならない、これは論をまたないところであります。
来年からパリ協定が実質的にスタートをします。しかし、現在出されている各国の削減目標を足し合わせても、気温上昇を二度未満に抑えることはおろか、さらなる気温上昇は防げないと指摘されているわけであります。この十年、いや、五年の間にどれだけ温室効果ガスの排出量を削減できるかにかかっています。CO2を始めとする温室効果ガスの大幅な削減に早急に取り組む必要があると思います。
そこで、大臣にお尋ねします。
ことし開かれた気候行動サミット、大臣も行かれましたけれども、グテーレス国連事務総長が、一・五度特別報告を受けて、パリ協定本格実施を前にして、削減目標、NDCの目標引上げを提起されました。日本政府として、削減目標は提示されますか、削減目標を更新して提出されますか、お答えください。


○近藤政府参考人 申し上げます。
パリ協定におけます国が決定する貢献、NDCでございますけれども、これにつきましては、目標だけでなく、その実施方法等も含まれてございます。
NDCにつきましては、パリ協定に基づく定時の更新に加え、随時適切に更新、提出することができるようになっておりますが、その中で、COP21決定におきまして、二〇二〇年COPの九から十二月前に提出、更新が求められております。
これに向けまして、目標の議論ばかりではなく、削減目標の達成に向けた対策のさらなる具体化について関係省庁とも議論を進めまして、期限までにNDCを提出するべく作業を進めてまいります。


○田村(貴)委員 それで、どれだけの削減目標を持つかということなんですけれども、グテーレス事務総長は、二〇三〇年までに温室効果ガスを四五%削減、きょう議論もされていますけれども、五〇年までの実質排出ゼロ、今世紀末までの気温上昇を一・五度までに抑えること、これが未来を救うための方法だというふうに述べておられます。IPCC、国連気候変動に関する政府間パネルの一・五度特別報告書に基づくものであります。
この提起を受けとめて計画を策定するということでしょうか。いかがですか。事務総長の提起について、日本政府はどう受けとめていますか。


○小泉国務大臣 グテーレス国連事務総長の提起、これにつきましては、代表的なものとして、田村先生がおっしゃった、二〇三〇年四五%、二〇五〇年の排出量実質ゼロというものも言われておりますが、そのグテーレス事務総長が呼びかけをした中には、例えば、都市や地方のアクション、そして金融等の分野においてこれらのプランを実行するための行動、そして、若者、ユースといいますけれども、ユース等を巻き込むこと、こういったことも書かれております。
そういった中で、例えば、都市や地方のアクション、こういったことにおいては、先ほど、東京、横浜、京都など、既に、二〇五〇年ネットゼロ、これを宣言している地方の都市の取組を紹介しましたが、これを更にふやしていきたいというふうに考えておりますし、金融等の分野、ESGを含めて、非常に強力な脱炭素化に向けたドライバーとなりつつあると思います。
実は、先月、大臣としてというか日本としては初めてESGファイナンス・アワードというものを立ち上げまして、今募集をしています。来年二月、環境大臣表彰も含めて表彰したいと思っていますので、多くの企業に参加をしてもらいたいと思います。
また、若者を巻き込むという話がありましたが、ニューヨークで、日本から気候変動サミットの方に参加をしている若者たちとも会いました。その若者たちの提言の中に、クリーン・エア・イニシアチブという、これは大気汚染を防止するための世界の取組、イニシアチブ、これに日本が参加すべきだという提言が書いてありました。私は、その提言を受けて、クリーン・エア・イニシアチブの参加表明をニューヨークでしました。
そして、そのことを、その後に、ニューヨークで日本から来られた若者たちと会って、みんなの提言を見て、これは参加できないのかと環境省に確認をして、これは大丈夫ですという確認がとれたので表明に至りましたが、まさに、これこそ象徴的な、若者の提言を政府の具体的な実行につなげていくということだと思いますので、グテーレス事務総長の提起、このことについて、日本のコミットメントは揺るぎなく脱炭素社会に向けてつなげていくということをこれからも発信をしていきたいと思います。


○田村(貴)委員 じゃ、その提起を受けて揺るぎなく発信していくというのであれば、大臣、いろいろちょっと横道にそれた話が多いんですけれども、正面から行ったら、二〇三〇年二六%、二〇五〇年八〇%の削減目標はやめるということでよろしいんですか。
資料をお配りしています。温室効果ガスの排出量の推移です。赤の点線が、現状の削減幅のまま推移していったらとても追いつかない。政府目標も達成できない。しかし、事務総長がおっしゃるように、今、世界が二〇三〇年四五%削減、二〇五〇年ネットゼロ、ここに近づくためには目標を変えなければいけないじゃないですかと言っているんですよ。あれこれの対策とか取組を否定するものではありませんけれども、ここに真正面から行かないと、日本はそれは世界からごうごうたる非難を受けることになるのであります。このままいけば大変なことになります。
大臣は、引き続きパリ協定の締約国として、COPの場を含め、世界の気候変動対策を牽引すると述べられました。二〇三〇年二六%、二〇五〇年八〇%、さっき二〇五一年とかいう話も出たけれども、こういう目標というのはきっぱり捨てて、一・五度特別報告書、ここに従って頑張っていく決意を語っていただけないでしょうか。


○小泉国務大臣 目標の一日も早い実現、脱炭素社会の実現に向けて歩みを加速をするというのは、田村先生がおっしゃったこと、そのとおりだと思います。
しかし、この気候変動の取組というのは環境省だけではできません。そして日本だけでもできません。世界全体をどのように巻き込んでいくかという点において、例えば最大の排出国でもある中国も含めて、いかにこの取組に参加をすることが利益となるのか、そういったことを深く共有をすることが不可欠だと思います。
ですので、これから日本としてできることは具体的に進めていきますし、私も、環境大臣になって、環境省の持っている権限とそして力、その限界と可能性をしっかりと見きわめながら、まずは、環境省だけでもできることは可能な限り進めていきたいと思いますし、関係省庁の協力が必要なところは、まさに多くの方々の御協力のもとに理解を得ていきたいと思いますし、政府全体として少しでも前向きな取組が加速していくように全力を尽くしてまいります。


○田村(貴)委員 全力を尽くしていただきたいのは、石炭火力発電所をもう認めない、新増設は認めない、これをやめていくこと、これが一番の削減効果が出てくる話なんです。
大臣は、所信挨拶、たくさん述べられましたけれども、なぜ石炭火力の削減に一言も触れなかったんですか。それを私、不思議に思ったんですけれども、教えていただけますか。


○小泉国務大臣 所信もできる限り簡潔に要にしてということを心がけたつもりなんですが、あれでも結構長くなりましたね。なので、全部触れることははなから私は考えておりませんでした。
環境省所管業務は本当に多岐にわたります。きょうどなたからも質問がありませんでしたが、ヒアリなど、いろいろなことも今状況があります。そういった中で、一つのことを触れなかったからといって、そのことを私は脇に置いているわけではありません。
そして、石炭のことが日本の気候変動の取組の中で批判的にとられている現実、このことも承知をしています。だからこそ、その中でいかに一歩でも前に進めるかという、制約の中での可能性の追求ということは、これはそう容易なことではありませんが、少しでも日本の前向きな取組が国内でも国際社会でも届いていくためのさまざまな工夫、そして知恵を働かせていきたいと思います。


○田村(貴)委員 やはり大臣所信で語らなければいけなかったですよ。
驚くべき数字を見ました。電力広域的運営推進機関が電気事業者から集計した結果では、二〇二八年の電源構成において、石炭火力発電の占める割合は三七%になっておるんですよ、今集計したら。第五次エネルギー基本計画の電源構成を大きく上回っているし、二〇一六年の経産大臣と環境大臣の二月合意にすら反している状況になっているわけです。
これはもう、稼働の停止、新増設の中止を求めなければいけませんけれども、大臣のお膝元、地元で、横須賀で、また石炭火力がスタートしているんでしょう。こんなんでいいんですか。
私は、きょう大臣のお話を聞いておって、やはり、グレタさんが本当に納得されるかなというように感じるわけです。安倍改造内閣は安定と挑戦の内閣だというふうに標榜されているではありませんか。安心の点ではきょうは語りませんけれども、挑戦となっているのであれば、大臣、期待の声がこの委員会でも結構あったわけですから、やはり、世界の水準に合わせて削減計画を持つ、そして、石炭火力は将来的にはなくす、新増設は一切認めない。これは原田大臣もおっしゃっていたんですから、それはちゃんとやっていただきたい。
そのことを強く申し上げて、きょうの質問を終わります。