宮崎・えびの 稲作再開へ行政動かす 田村貴昭衆院議員と保守系市議協力

えびの市 「来季も作付けできないのか」―。おいしいと評判のブランド米、宮崎県えびの産ヒノヒカリの生産農家が肩を落とします。2018年に起きた霧島連山・硫黄山(1317メートル)の噴火による水質悪化が今も続き、対策が遅れているからです。日本共産党の田村貴昭衆院議員が地元えびの市の保守系市議と連携して対策に乗り出し、解決に向けて動き出しました。
 
硫黄山噴火被害 3年作付けできず
 
 「地方の声を代弁して届けるのが地方から選出された国会議員なのに、選挙区の自民党議員は何もしてくれない。共産党の田村議員が現地にきて国会で質問していることをどう感じているのか」
 
 保守系無所属の田口正英市議(70)は怒りをあらわにします。田口市議は、作付けができない上浦地区(岡元小学校周辺)の議員です。
 
 噴火直後の泥水で火口付近の赤子川や、その下流の長江川、さらに下流の鹿児島県に通じる川内(せんだい)川が白濁し、環境基準を超えるヒ素が検出されました。その後、下流域では水質悪化時に水門が自動で閉まる装置の設置や代替水源の確保が進み、稲作が再開されました。
 
 しかし上流の赤子川から取水する上浦地区では水質が改善せず、農業用水に使えない状態が続いています。田口市議によると、3年連続で作付けできなかったのは60戸前後に及びます。
 
 イネの生育状況を見にきていた農家の男性(65)は0・7ヘクタールの4割の作付けをあきらめました。「早く今までと同じ量の水を流してほしい」と話します。
 
 田口市議は「硫黄山は国が管理する霧島錦江湾国立公園にあるのだから、国の責任で泥水を川に流さないようにすべきだ」と主張。この3年間、国に恒久対策を求める市の要望書や市議会の意見書を届けてきました。しかし、国立公園を管理している環境省、噴出口周辺の土地を所有している林野庁、農業用水の対策を担当する農林水産省が互いに責任を押し付け合って進みませんでした。
 
 市議会を挙げて国会に対策を陳情した際には、地元宮崎3区選出の自民党衆院議員が、「そんなことできるか」と拒否。怒った田口市議は、国会議員で最初に現地に入り、国会で取り上げた田村氏の控室を他の市議数人と訪ねました。
 
 訴えを受け止めた田村氏は何度も各省庁と折衝。7月にようやく農水省が責任を持ち、事業主体である県を支援することが決まりました。
 
 8月26日の県へのヒアリングには、田村氏と田口市議のほか、日本共産党の来住一人県議、西原政文市議、松本隆書記長(衆院宮崎3区候補)が参加。国、市と対策協議会をつくる県は、強い酸性の河川の水を石灰石で中和させる実証実験の施設を恒久的な施設に拡充させる考えだと述べました。
 
 田口市議は「田村議員が真剣に取り組んでくれたおかげで少しずつ前に進んでいることに感謝しています」と話します。
 
 ただ、水質改善施設がいつ恒久化され、国がいくら負担するのかはまだこれからです。
 
 「農家は稲刈りが終わればすぐ来季の事業計画を立てないといけない。私たちには限られた時間しかない。来季の作付けには間に合いますよという答えを待っている」(しんぶん赤旗 2020年10月4日)