―種苗法「改正」で、誰が利益を得ますか?
世界的にみると、多国籍の農業関連企業(アグリビジネス)による種子の支配が広がり、バイエル(モンサント)、シンジェンタなど上位4社が種苗市場6割超を占有しています。これらは化学企業であり、遺伝子組み換えやゲノム編集による種苗販売とセットで、除草剤などの化学薬品・化学肥料を販売しています。
今回の種苗法「改正」は、これらの多国籍大企業の市場参入を見越しています。
これは、消費者にとっても大問題です。日本ではすでに、遺伝子組み換え作物の栽培は140件も認可され、3年後には「遺伝子組み換え作物でない」という表示ができなくなります。ゲノム編集は表示の義務もありません。食の安全が脅かされる可能性があります。
世界的には、規制が強められる傾向にありますが、日本ではどんどん緩められているため、遺伝子組み換えやゲノム編集種子企業に狙われています。これらの企業は以前から自家増殖の禁止を求めていました。種苗法「改正」はまさに、それに応えるものです。
つまり、種は農家、あるいは人類のものなのか、それとも化学企業のものなのか。それが問われていると、私は思います。
「種は百姓の魂。他品種の栽培は不作のリスクに備えるためだ」という農家の声に、耳を傾けるべきでしょう。
推進派を包囲しよう
―種苗の開発・普及はだれが担い、どうあるべきでしょうか?
近年、登録品種の出願数が減少しています。公的研究機関や大学の予算が減らされているからです。国は公的種苗事業に十分な予算を確保して、引き続き地域に合った安全で良質な品種を安く生産者に提供できるようにすべきです。
主要農作物種子法(種子法)の廃止は、国民的議論も行われないまま、わずかな審議時間で強行採決されました。それに対する驚きと怒りが広がり、全 国の自治体で、公共の種子を守ろうという種子条例が制定される動きにつながりました。
国会でも2018年、野党が共同で種子法復活法案を提出し、与党もその審議に応じざるを得ませんでした。
今、種苗法「改正」に反対する市民の運動が全国で広がっています。反対の署名が続々と寄せられています。また、反対を表明するか、もしくは慎重審議を求める意見書は10月末時点で76自治体にのぼりました。
今、国会では、種苗法「改正」を推進しようとする自民党・公明党が多数を握っていますが、市民と野党の共同を広げれば、それをとめることも可能です。署名や地方議会からの意見書を集中し、ツイッターなどSNS(インターネット上の交流サービス)でも反対意見を拡散して、推進派を包囲していきましょう。(しんぶん赤旗 2020年11月7日)