気象庁は13日、火山噴火や大雨などに関する特別警報の緊急速報メールの配信を26日に停止すると発表しました。活火山がある自治体などの反対を押し切っての強行。一方的な決定に、多方面から困惑と怒りの声が上がっています。
26日終了
気象庁は、特別警報が発表された場合に、携帯電話を通じて強制受信の緊急速報メールを配信しています。このうち地震・大津波を除く火山噴火や大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪に関する特別警報について、26日午後2時に配信を終了すると発表しました。
合理的理由なく経費削減が目的
日本共産党の田村貴昭議員は11月15日の衆院災害特別委員会でこの問題を取り上げました。田村氏は「廃止する合理的理由はなく、経費削減が目的だ」と指摘。実際、年間約1200万円、システム更新に約3億円かかる大雨・噴火速報メールは廃止となり、経費がかからない地震・大津波速報メールは継続されます。(質問動画はコチラ)
気象庁は廃止の理由について、「市町村単位となっている配信を、さらに地域を絞るため」と答弁。実際は自治体任せにすることになり、▽即時性が損なわれて住民の避難が遅れる▽代替措置が間に合わない▽登録が必要になる―などの懸念が出ています。
ことし7月の桜島の爆発的噴火の際には、この速報メールが多くの住民の命を救ったばかりです。日本共産党の持留良一・垂水市議は「住民はメールを見て準備を始め、いち早く避難することができた。廃止は困る」と不安を漏らします。
全国167自治体で構成する火山防災強化市町村ネットワーク(会長=鹿児島市長)は要望書を提出。「第一報として即時性の高い情報伝達手段であり、配信終了は住民への影響が大きい」(要望書)と配信継続を訴えています。
自治体から異論 担当相に伝えず
田村氏の調査では、気象庁が自治体から異論が出ていることを谷公一防災担当相に報告していなかったことも明らかに。また、廃止を決める前の2022年予算の段階で、配信システムの保守点検費用を丸ごとカットしていたこともわかりました。
田村氏は「廃止ありきの進め方は異常。自治体と向き合い、運用を継続すべきだ」と主張しました。
廃止より改善を
井口正人・京都大学防災研究所付属火山活動研究センター教授の話 気象と火山の速報メールをやめるというが、火山は気象と比べ他の伝達ツールが整備されていない。火山現象は複雑で、ゆっくり動くこともあるが、特別警報の対象となる噴火警戒レベル4や5はかなり差し迫った段階。いち早く伝えないといけない。
むしろ速報メールに警戒を要する範囲を書き込むなど改善すべきなのに、逆に廃止するとは。災害情報を国民にあまねく届けるという意味で、国の防災機関としての役割を果たしてもらいたい。(しんぶん赤旗 2022年12月18日)