政府が、佐賀空港西側に開設した陸上自衛隊佐賀駐屯地にV22オスプレイ配備を強行する最大の目的は、陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に所在する水陸機動団を戦地に迅速に輸送するためです。同部隊は海から陸に侵攻する強襲上陸作戦を専門とする“殴り込み”部隊。中国を念頭においた南西諸島での自衛隊強化の一環で、有事には攻撃対象となることは避けられません。
日本共産党の田村貴昭衆院議員の質問主意書に対する政府答弁書(6月27日)で、V22の低空飛行訓練区域が、現在の九州4カ所から85カ所に広がる可能性があると明らかにしました。福岡県で福岡、小倉、久留米や、大分県で別府、熊本県では健軍の各駐屯地など、近隣に住宅地が多い区域が含まれています。夜間訓練や低空飛行訓練で、騒音被害や事故のリスクが高まるのは明らかです。近年、米軍機による民間空港の利用が常態化しており、米軍オスプレイが佐賀駐屯地を利用する恐れもあります。
オスプレイを巡って近年事故が相次ぎ、危険性が浮き彫りになっています。2023年11月には鹿児島・屋久島沖で米空軍のCV22オスプレイが墜落し、8人が死亡。ギアの破損など事故の根本的な原因は特定されていません。昨年10月にはV22も沖縄・与那国駐屯地で離陸時にバランスを崩し、地面と接触する事故を起こしましたが、この事故を巡っても事故調査報告書は公表されていません。
配備を巡っては、米軍新基地建設に反対する沖縄県民の民意が踏みにじられたのと同様に、民主主義・地方自治がゆがめられました。佐賀空港開設にあたり、県と地権者の地元漁協は「自衛隊と共用しない」ことを明記した協定をかわしており、そもそもオスプレイ配備は不可能でした。しかし、防衛省はカネを流し込んで切り崩し、協定を修正させたうえで、漁協を用地買収に導きました。これを不服とした地権者が土地の所有権などで、市民原告245人が人格権の侵害などで裁判を起こし、国と争っています。
また、有事に住民が巻き込まれるのではないか、オスプレイの事故で豊かなノリ漁場が汚染されるのではないかといった地元住民の不安も消えていません。一方で防衛省は、住民が求める説明会の開催を拒否。住民を軽視しています。
日米同盟強化・大軍拡を「国策」として押しつけ、地域をゆがめる―。こうした政治を根本から変えていく必要があります。(しんぶん赤旗 2025年7月10日)