生活保護 基準引き上げを/全生連 厚労相に要望 最高裁判決踏まえ

 全国生活と健康を守る会連合会(全生連)は7月29日、国会内で、生活保護基準の大幅引き上げを求める厚生労働相宛ての要望書などを同省担当者に手渡しました。最高裁が6月27日に生活保護減額取り消し訴訟(いのちのとりで裁判)で原告勝訴判決を出したことを踏まえたものです。
 
 全生連の吉田松雄会長は、厚労相の保護基準引き下げ判断を「違法」とした最高裁判決の統一判断は画期的だと強調。国は原告に謝罪せず、さかのぼっての減額分を支給していないと批判し、「参院選では大企業優先、軍備拡張で人間らしく生きる喜びを奪ってきた自公政権に審判が下った。私たちの行動で国の前向きな変化をつくろう」と訴えました。
 
 日本共産党の田村貴昭衆院議員が行動に同席しました。
 
 田村氏は「皆さんは、いのちのとりでを守った」と激励し、厚労相は要望書に応えるべきだと指摘。排外主義に触れて「社会保障、生活保護への攻撃でもあると捉えるべきだ。セーフティーネットを守り、発展させていく」と語りました。
 
 全生連は要請後に国会内で記者会見し、神奈川原告の高橋史帆さん(42)は「電気代が怖くてエアコンの温度を下げられず熱中症になった」と告発。東京原告の小岩さんは「お米が買えない。わずかな生活扶助費から電気代もガス代も払っている」と述べ、神奈川原告の武田新吾さん(57)は「若年性リウマチにかかり、生活保護のおかげで生きてきた。国は判決の重みを理解して対応を」と求めました。埼玉原告の男性(50代)は「毎月末に現金がなくなり節約したくてもできない。体への負担から余計に病院にかかっている」と語りました。
 
 要望書は、長年にわたる生存権の侵害に対する真摯(しんし)な謝罪と、生存権の回復、保護基準引き下げの判断過程の検証と再発防止策を求めました。
 
 全生連によると、厚労省担当者は「専門家の審議する場を設け、速やかに対応を考えたい」と述べるにとどまりました。
 
国は「基本合意書」締結を
「いのちのとりで裁判」支援団体が声明
 
 生活保護基準の引き下げ処分取り消しを全国で求めた「いのちのとりで裁判」を支援する「いのちのとりで裁判全国アクション」「生活保護引き下げにNO!全国争訟ネット」は27日、声明を発表しました。
 
 声明は最高裁の違法判決から1カ月が経過しながらも、生活保護バッシングの中で立ち上がり、長年たたかった原告らに、判決後も向き合おうとしない厚労省の姿勢を「あまりにも不誠実」と批判しています。

 

声明は裁判の早期全面解決のため、(1)生活保護利用者への謝罪(2)事実経過の調査と説明(3)生活保護基準改定方法の適正化(4)「生活保障法」の制定を柱とする「基本合意書」の締結―を国に求めています。

 

さらに、裁判の全面解決は「市民の分断と対立をあおる社会でなく、すべての人が人間らしい生活をおくることができる社会に転換する契機となる」と主張。「国が姿勢を正すまで、粘り強く取り組みを強める決意」と結んでいます。(しんぶん赤旗 2025年7月30日)