石破茂首相が米国製の大型輸送機C17の購入に前のめりな姿勢を見せています。しかし、同機は旧防衛庁(現防衛省)が導入を検討したものの、要求性能を満たさないため見送った経緯があります。米国も既に生産を中止しており、今後の運用には困難が伴います。
離着陸に難点が
日本共産党の田村貴昭議員は4日の衆院予算委員会で、首相が2月7日の日米首脳会談でトランプ米大統領にC17の購入への意欲を伝えたとの報道について追及(質問動画はコチラ)。首相は「輸送機は遠くまで行ければ行けるほどいい。多くのものが積めれば積めるほどいい」と述べ、前のめりな姿勢を示しました。さらに3月5日の参院予算委員会での自民党議員への答弁でも、「陸上自衛隊のニーズから言っても導入を検討すべきだ」と「導入検討」を明言しました。
C17は大型ヘリや70トン近い戦車エイブラハムなどの空輸が可能で、イラク戦争では装甲車ストライカーなどを空輸。地球規模の派兵を担ってきました。
防衛庁は同機をC1輸送機の後継候補にしていましたが、2001年の政策評価では、(1)離着陸距離(2)最低安全巡航速度の2点で「不適」と評価。現在のC2輸送機の開発・配備を決定しました。
米空軍はC17について、「(滑走路長が)3500フィート(1064メートル)の飛行場で離着陸可能」と説明しています。ただ、同機の最大離陸重量は約260トンに達し、安全な離陸には3000メートル近い滑走路が必要とされています。
田村氏がこうした点をただしたのに対し、首相は「滑走路が脆弱(ぜいじゃく)だから降りないのは、理屈としては逆だ」と居直りました。
さらに、C17は生産を終えており、部品の枯渇などが予想されます。維持・整備費が高騰する危険は明らかです。
自発的対米従属
首相がなぜ、C17の購入に固執するのか。そもそも石破氏は強固なC17導入論者です。23年2月15日の衆院予算委員会で、当時の岸田文雄首相に対し、「C2は10式戦車が空輸できない」として、C17の導入を迫っています。トランプ氏から武器の大量購入が要求されると想定し、先回りして購入を表明したとも考えられます。まさに「自発的対米従属」です。
米国からの武器輸入をめぐっては、現場(防衛省・自衛隊)が難色を示したものの、政権の意向で押しつけてきた事例は少なくありません。22年から配備された無人機グローバルホーク(GH)をめぐって、防衛省は17年、部品の枯渇などで価格が上昇し、運用・維持費も高騰することから、「事業中止」を判断。ところが官邸との調整後、「GHは不可欠」と見解を百八十度転換しました。当時の安倍晋三首相が、武器爆買いを要求していた第1次トランプ政権の顔色をうかがったことが想像されます。
そのツケは、国民に押しつけられます。(しんぶん赤旗 2025年3月9日)