193-衆-本会議 国家戦略特区法等改定案を可決 首相に行政私物化疑惑 田村貴議員批判

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、国家戦略特区法等の改正案に対する反対討論を行います。(拍手)
 本法案は、五月十六日に地方創生特別委員会で採決を行いながら、二週間にわたって本会議に上程されずに来たものであります。
 かつてない、この異常な事態を生んだ要因は、加計学園問題にあります。
 安倍総理の腹心の友が理事長を務める加計学園が、国家戦略特区で愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画に、安倍総理の働きかけがあったのではないかという重大な疑惑であります。
 これまで、安倍総理は一貫して関与を否定しています。しかし、総理の御意向だとする一連の政府内の文書が明らかになり、文部科学省の前川喜平前事務次官は、こうした文書が、いずれも真正なもの、本物であると認め、公平公正であるべき行政がゆがめられたと明言したのであります。
 この真相究明は国会の責任であります。前川氏の証人喚問を行い、一連の内部文書の提出を求め、予算委員会で集中審議を行うことを強く要求するものであります。
 そもそも、国家戦略特区は、岩盤規制への挑戦と声高に叫んで、第二次安倍内閣が鳴り物入りで導入したものであります。
徹底した総理主導のもと、財界の求める規制緩和を国家意思として上から一方的に押しつける仕組みであります。総理がメンバーを任命する国家戦略特区諮問会議に極めて強い権限を与え、トップダウンで規制緩和を推進し、国民の声を一切遮断し、所管大臣さえも意思決定から排除される、この仕組みの重大さを、私たちは当初から厳しく批判してきました。
 この特区を、事もあろうに総理の腹心の友が経営する加計学園のために利用したのではないかという疑惑が、今問われているのであります。
獣医学部が五十二年間新設されてこなかった事情を一切無視し、広域的に獣医師養成大学等の存在しない地域に限りとの条件をつけることで、今治市に計画している加計学園だけに獣医学部新設を認める道を開いたのであります。
文部科学省や農林水産省の意見を聞かず、獣医師の需給状況も把握せず、獣医師会の主張にも耳を傾けなかったのであります。 まさに、国家行政の私物化以外の何物でもないではありませんか。
 総理が岩盤規制と言えば行政の公平公正など無視しても構わないなどという国家戦略特区は、直ちに廃止すべきであります。
 本法案は、この国家戦略特区で農業支援外国人の受け入れを行うものです。しかも、重大なことは、派遣労働のスキームを使おうとしていることであります。
 派遣労働は、雇用主と使用者が分離した間接雇用です。使用者責任が曖昧にされ、労働者の保護がないがしろにされるなど、既に多くの問題が生じています。
 言語が異なり、コミュニケーションに多大な困難を抱える外国人に派遣労働を適用すれば、無権利の労働者を生み出すことは明らかではありませんか。
 農業支援の受け入れで想定されているのは、技能実習制度で既に農業に従事している中国、ベトナムなどからの外国人労働者です。技能実習制度では、監理団体や実習実施機関による賃金の不払い、暴行、脅迫、監禁、パスポートや在留カードの取り上げなど、実習生の人権を著しく侵害する不正行為が繰り返されてきました。
 しかし、本法案では、外国人労働者の相談窓口への通訳配置すら義務づけられておらず、技能実習制度の反省は全く生かされていません。派遣元、派遣先への巡回指導や現地調査に必要な人員配置についても、具体的な増員は検討されていません。
 国内でも重大な問題を抱える派遣労働を外国人労働者の受け入れに使い、国境を越えて無権利な労働を強いることは到底許されるものではありません。
 以上で反対討論を終わります。(拍手)