○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に、林野庁にお伺いしたいことがあります。人や国や自治体の森林を無断で伐採する、盗伐の問題について伺いたいと思います。
宮崎県で盗伐の被害が相次いでいます。県警によれば、二〇一二年からことし十月末までの相談件数は百二十六件にも上っていますが、ほとんどが被害届の受理がされていません。大規模な違法伐採による荒れた山肌、そして無数のわだち、この姿を見て、私も驚いて、胸を痛めております。
無断伐採を放置すれば、森林資源の枯渇を生みます。そして、放置された盗木は、災害等の被害を発生させてまいります。
そもそも、盗伐の被害そのものが特定されていません。宮崎市では、被害者の会が結成されました。三十世帯を超えていると伺っております。犯人を逮捕してほしい、そして、被害が怖くて植林するのにちゅうちょがある等々の声も伺っております。
そこで、林野庁に伺います。
盗伐、盗木と被害の実態について掌握されているでしょうか。
〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕
○沖政府参考人 お答えいたします。
宮崎県内におきまして、仲介業者が伐採届の偽造を行った上で無断で伐採を行い、十月五日、有印私文書偽造及び行使、それから森林法違反の疑いで宮崎市の仲介業者が逮捕されたという報告を宮崎県から受けているところでございます。
この事態を受けまして、農林水産省におきましては、十月から十一月の都道府県担当者の会議でこうした事案を周知するとともに、森林の管理の観点から、類似の事案の有無の確認依頼をしているところでございます。
○田村(貴)委員 そこで、ぜひ動いていただきたいんですけれども、十月二十六日、宮崎市の山林から杉の木を盗んだという疑いで三人が逮捕されました。しかし、これは摘発の一例にすぎないわけなんです。被害者が幾ら被害届を出しても受理されない、泣き寝入りをせざるを得ないような状況に遭っています。
悪質ブローカーの手口、聞いてびっくりしたんですけれども、伐採届を出した、そこを伐採して、それ以外のところも伐採する。過って切ったというふうに言い逃れをする。つまり、過失で済まされているという現状があるわけなんです。こんな理不尽なことはないと思います。
盗伐というのは、これは犯罪であります。地籍調査が進まない、境界がわからないという問題もあります。また、自治体の職員の手が足らずに、伐採届を十分に審査ができないという問題も上がっております。盗伐は全国各地で問題となっておりますけれども、犯罪と森林破壊を放置してはならない、この立場に立って国に動いていただきたいと思います。
まず、実態把握に国が直接乗り出していただきたい。そして、被害届の速やかな受理と盗伐犯の摘発へ今対策が求められると思いますけれども、齋藤大臣、御所見いかがでしょうか。
○齋藤国務大臣 いろいろなケースがあろうかと思いますが、宮崎県における盗伐は、虚偽の届け出を出して、森林所有者に無断で伐採する、こういう悪質な行為、こういうものは許しがたいと思っております。
本件についても、警察、市町村等と連携して当該事案に対応するとともに、県内の市町村に対して、届け出の際にしっかりその所有者を確認するということを徹底するというのが農水省がやらなくちゃいけないことだろうと思っていますので、これはきちんと徹底させたいというふうに思っております。
あと、個々の事案については、それは違法性のあるものについてはきちんと対応していくということに尽きるのではないかと思っております。
〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕
○田村(貴)委員 実態把握に努めていただきたいし、そして、自治体の職員が伐採届に対して数百担っているという状況があるので、やはりここはフォローしていただきたいということを重ねて要求させていただきたいと思います。
きのう、日本共産党国会議員団として、酪農、畜産に関する申し入れを農水相に対して行いました。齋藤大臣、受け入れていただきまして本当にありがとうございました。
全国の肉用牛の飼育戸数は、二〇〇八年から十年間で、八万四百戸から五万百戸まで、三万三百戸も減っております。畜産の盛んな宮崎県の都城市、ここをちょっと調べてみますと、二〇一三年から二〇一七年の五カ年間に、農家は、一千七百五十五戸から二百二十五戸も減ってしまいました。飼育頭数は、肉用牛全体で六万二千五百頭あったんですけれども、この間、四千七百九十頭も減少してしまいました。
一方で、牛枝肉卸売価格は上昇傾向にもあります。消費が減っているわけでもありません。生産すれば売れる状況にあるにもかかわらず、なぜ畜産業を営む人がこんなにも減っているのか、御説明いただきたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
最近の肉用牛経営の動向でございますけれども、御指摘のように、高齢化等に伴いまして飼養戸数は減少傾向にございますが、一戸当たりの飼養頭数は増加しておりまして、平成二十九年におきましては、飼養頭数は前年を上回ったところでございます。
また、肉用牛の繁殖基盤の方で申し上げますと、昨年、繁殖雌牛が六年ぶりに増加に転じまして、ことしも前年から八千頭増の五十九万七千頭と増加傾向が継続するなど、回復の傾向にある、そんな状況でございます。
○田村(貴)委員 微増ですよね。全体から見たらそうじゃないですね。
酪農でも同じことが起きています。生乳生産量は、ここ数年は微増傾向であります。微増なんですよ。しかし、一九九六年の八百六十五万七千トンから二〇一六年の七百三十九万四千トンに、一五%、百万トン以上も減少しているのであります。戸数は、この十年間で八千戸も減少した。もう残るは一万六千四百戸しかありません。
生産基盤の危機的な状況等によって、乳製品の不足が頻発しています。乳価は上向き、子牛の販売価格も上昇しているにもかかわらず、家族経営の酪農家が次々廃業をしている。なぜ廃業が後を絶たないのか、御説明いただけますか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
最近の酪農経営の動向でございますが、飼養戸数、また乳用牛の飼養頭数及び生乳生産量とも若干減少傾向、特に生乳生産量は若干の減少傾向というふうに承知をしてございます。
これは、高齢化、また後継者不足等によりまして、離農した酪農家の方々が持っていらっしゃった乳牛の頭数を、昔は残った酪農家でカバーできておりましたが、そういうカバーができなくなったこと、また、交雑種生産の増加等によりまして、乳用後継牛の生産が減少していることなどが主な要因ではないかというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 なぜ担い手が不足しているのか、高齢化に伴ってこれが深刻に陥っているのか、やはりその根本的な要因をよく知らないと、検討を進めていかなければならない、ここが一番大事なところだというふうに私は思うわけであります。
都城市の畜産農家の声を聞きました。牛は確かに今高いんだけれども、子供にはこの家業を引き継がせたくない、農機具の負担が余りにも重過ぎる、国保税と消費税を納めるために何か牛を売っているようなものであると。また、もし農協がなくなったら俺たちは一体どうしたらいいのかといったような声も出てまいります。
そして、底辺に重くのしかかっているのが自由貿易協定、経済連携協定なんですよね。TPPなんかどうなっていくのか、今度は欧州かという声がやはり基本にあるわけなんです。
酪農でも都城と同じであります。中央酪農会議が行った全国酪農基礎調査、生乳生産増加に向けた阻害要因として、北海道の酪農経営者の二八%がこう言っています、酪農政策が今後不透明。政策上の問題で先行きが見えないから、やはり生乳生産増加に阻害の要因があっている、こういうことも明らかになっているわけであります。肉牛でも酪農でも高額の投資が必要になってきているし、これからもそういう傾向にあるわけなんです。
私、先月、北海道の帯広の酪農家を調査させていただきました。老朽化した牛舎の改築だけで一億円、それから給餌、餌をやる機械の投資に一億円投じて、合計二億円。今後は、また日欧のEPAの脅威がやってくるので、さらに乳量を引き上げるための効率化、機械化が叫ばれていくだろうという話であります。
日欧EPAで、ハード系のチーズ、それから脱脂粉乳、バターというのはどういうふうな合意になったんでしょうか。端的にお答えください。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
日・EU・EPAの乳製品の合意内容のうち、お尋ねございました、まずハード系チーズにつきましては、関税撤廃はするものの、十六年目での撤廃という長期の撤廃期間を確保いたしました。あと、脱脂粉乳、バターでございますけれども、国家貿易制度を維持した上で、最近の追加輸入数量を大きく下回る一・五万トン、これは最終年度の六年目ベースの数字でございますが、の関税割り当てを設定し、枠外の二次税率は現行の高水準を維持したところでございます。
○田村(貴)委員 関税撤廃なんてとんでもないことですよ。
既に、日本とスイスの間のEPAそれから日豪EPAでは畜産に大きな影響を与えてきましたけれども、日欧EPAはそれをはるかに上回ります。こういう将来不安があるから廃業が相次いでいるんじゃありませんか。その不安を導いているのはまさに政府の責任だと私は思うわけであります。
伺います。
乳製品の輸入がふえていけば、追い詰められた北海道の酪農家は、共販外販売を通じて、都府県に無秩序に飲用向け牛乳を出すようになっていくのではありませんか。その懸念があるのではありませんか。それは生産基盤を変えてしまうことになるんですけれども、そうした可能性を農水省として想定はされていますか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のとおり、我が国の酪農は、北海道が乳製品向け中心、都府県が飲用向け中心である生産構造となっております。
委員御指摘のような御懸念、声はあるかもしれませんけれども、そのような事態となりませんよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、生産コスト削減等の体質強化対策を進めますとともに、生乳につきましては、加工原料乳生産者補給金制度につきまして、その対象に生クリーム等を追加し、単価を一本化するなど、経営対策を講じているところでございます。
さらに、日・EU・EPAにより必要となるチーズを中心とする乳製品対策につきましては、チーズ向け生乳の新たな品質向上促進特別対策及び生産性の向上対策等を講ずることで、北海道を中心とした乳製品向けの生乳生産の国際競争力の強化を図ることとしているところでございます。
○田村(貴)委員 そんなにうまいこといくんでしょうかね。
今でも、例えばオランダ産のゴーダチーズは、国産物、日本物と価格は同程度であります。関税ゼロになったら完全に勝ってしまいますよ。これがすごい規模で今からふえていく。年間計画があるから、補給金があるから、まあ対策は打っていきますということになるのでありますけれども、実際の需給というのは計画を超えていくだろう、こういう指摘をする識者の方もおられるわけであります。
そして、これを可能とするのが畜産経営安定法の改正でありました。農家の方は、大変、将来不安に今陥っています。
十勝の酪農経営の方が言っておられました。頭数をふやして機械を導入しないと補助が出ない、確かに一頭当たりの乳量はふえた、しかし、牛に無理ばかりさせている、本当は牛は牛らしく飼いたいんだけれどもと。そういう言葉が、私、耳を離れません。
将来にわたって安心して生産ができるように、自由貿易、経済連携協定とは決別すべきであるというふうに強く申したいと思います。
そして、所得を安定させ、後継者が育つ政策転換を速やかに行うことを求めるものでありますけれども、今、酪農でも畜産でも、農家の方の将来不安の根底には、外国産がいっぱい入ってきて、自分は国内の供給に頑張っていきたいんだけれども、そういうところで頑張れと言われても、それはわからないし先行き不安だという声はやはり受けとめるべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
○齋藤国務大臣 TPPもございますし、日・EUもございますし、酪農家あるいは肉用牛の皆さんが不安になるのもよくわかります。
だけれども、私どもも、関連政策大綱でその一つ一つにしっかり応えられるように対策を講じていきたいと考えておりますし、それから、合意内容それから対策の内容について皆さん方にしっかりと理解していただく、そういう努力も積み重ねていきたいと思っていますし、それでもなお足りない部分があればまた考えるということで、しっかり日本の酪農、畜産の基盤を守っていきたいと思っております。
○田村(貴)委員 種子法の廃止に伴う運用規則、これが十一月十五日付の事務次官通知で出てまいりました。このことをしたかったんですけれども、きょうは時間がございません。
この事務次官通達の中に、これまで実施してきた稲、麦、大豆の種子に関する業務の全てを直ちに取りやめることを求めるものではないと。種子法を廃止して、直ちに取りやめるものではない、これは自治体と関係者に対して惑わすものではありませんか。
こうした問題は、きょうは時間がないので残念ですけれども、次の通常国会でまた論議をさせていただきたいというふうに思います。
きょうの質問は以上で終わります。