○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
まず最初に、今国会重大問題となっている公文書の改ざん事件についてであります。
公文書の改ざんは、これは重大な犯罪であります。文書を改ざんし、国会に提出する、そしてそれに基づいて答弁が行われる。これは、行政府が立法府を欺くというゆゆしき事態であります。権力の分立、そして議院内閣制というこの国の統治機構の根幹を揺るがす事態であります。
大臣にはこの認識がおありでしょうか。先ほどの御答弁で、公文書は国民共有の知的財産等々の答弁はそのとおりだと思いますし、伺いました。
私は、内閣は、やはり憲法上、あらゆる行政権の行使について国会に対する連帯責任を負っているというふうに考えます。この事態に対して、大臣ですので内閣の一員でありますので、国会に対する責任をどのようにお考えになっておられるでしょうか。
○中川国務大臣 公文書は、今先生も御指摘いただきましたが、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものでありまして、行政機関としてその管理の適正を確保することが重要と考えております。
「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」という憲法の規定がございます。この規定は、内閣は、総理大臣のもとに一体となって政治を行う原則に立ち、その責任も一体として負う、そういう趣旨であるというふうに解されるわけでございまして、公文書管理のあり方につきましても、昨年末、内閣総理大臣決定により、行政文書の管理に関するガイドラインが改正されました。環境省としても、その内容を省内に周知するとともに、環境省行政文書管理規則等の改正作業を進めているところでございます。
また、内閣法第三条により、環境行政等を分担管理する責務を有する環境大臣として、みずからの担当している行政分野において適正な公文書管理が行われるよう、厳正な取組を更に進めてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 今度の改ざん文書の問題は、国民は安倍政権全体の問題として捉えております。それはもう内閣の支持率にもあらわれているところであります。
大臣は、責任者の一人として、今、国民が、国会が求めている真相解明に向けて、まずは証人喚問、関係者の証人喚問を行うように、この場で強く求めておきたいというふうに思います。
それでは、法案について質問に入ります。
公害健康被害補償法に基づく大気汚染患者の救済は、一九八八年に新規認定が打ち切られ、そして、その理由として、国は、大気汚染が収束したというからであります。
しかし、大気汚染はなくなったのでしょうか。一九九〇年代に入っても、今日に至るまで、ぜんそく等に苦しむ患者は数多く出現しています。お配りした資料の一は文部科学省の調査です。子供のぜんそく患者さんがふえています。もう一つは厚生労働省の調査です。ぜんそく患者は、減るどころかふえ続けています。
国として大気汚染被害者の救済措置がないもとで、今、環境省はこの状況をどう見ておられますか。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、厚生労働省の患者調査の結果によると、近年、ぜんそくの総患者数は増加傾向にあると考えられます。
ぜんそくはさまざまな原因により発生する非特異的疾患であり、環境省として患者数の増加の理由についてお答えをすることは困難ですが、科学的に十分解明されていないものの、原因としては、アトピーなどアレルギー素因者の増加、都市的生活様式の拡大による食生活や住環境等の変化、そして高齢化の進展など、さまざまな要因があるという指摘があると認識をしております。
○田村(貴)委員 大気汚染も、この呼吸器系疾患の要因であることは間違いないと思います。NO2やSPM、この濃度というのは改善されていっています。しかし、それは近年になってからの話でありまして、PM二・五等の汚染は深刻な状況にあります。
環境省の二〇一五年度の調査によっても、都道府県のPM二・五の測定状況では、一般局、自動車排出局における結果は、環境基準非達成が大都市を中心にまだまだ多いという状況であります。
つまり、八八年以降も、大気汚染によるぜんそく患者さんはその後も出現し、子供の患者は全年代でふえているわけであります。自治体の医療費助成制度がないところでは、何の救済もない状況に置かれているわけであります。
中川大臣にお伺いします。この状況、よしとされているんでしょうか。
○中川国務大臣 ぜんそくは、大気汚染のみならず、今部長から答弁いたしましたが、さまざまな原因により発生する疾患でございます。環境省としては、環境保健行政を実施する立場から、環境汚染に起因する健康影響について対処しております。
大気汚染につきましては、窒素酸化物や浮遊粒子状物質等の濃度に低下傾向が見られておりまして、また、環境保健サーベイランス調査において、大気汚染とぜんそくの関連性について一定の傾向として捉えられる状況にはないと有識者検討会において評価されているところでございます。
このような状況を踏まえますと、ぜんそく患者に対する医療費助成については、環境保健行政の観点からの課題として捉えるべきものではないのではないかというように考えております。
○田村(貴)委員 患者、患者団体は、やはり全国的な救済制度を求めているわけであります。
救済に道を開かない国の姿勢は、この間、裁判によって次々と断罪されてきたのであります。全国各地で道路公害裁判が起こり、九五年の西淀川公害裁判の第二次から第四次訴訟判決を皮切りに、川崎、尼崎、名古屋南部、東京と、被害者、原告が五連勝しています。公害認定されていない未救済患者への損害賠償が司直の判断によって認められたところであります。
そして、東京大気汚染公害訴訟の和解の流れの中で、国が環境再生保全機構に指示して、公害健康被害予防基金から東京都が実施する予防事業に充てるために六十億円が拠出され、東京都は、二〇〇八年八月に東京都公害健康被害予防基金を設置したのであります。
画期的な東京の和解から、画期的な都の大気汚染医療費助成制度が二〇〇八年の八月に創設されました。六百人余りの原告が起こした裁判は、二〇一五年、九万人の都民が医療費助成を受けるまでに至りました。
そこでお伺いします。
国は、この東京都のぜんそく患者さんを救済してきた制度を評価しておられるのでしょうか。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
御指摘の東京都の医療費助成制度は、昭和四十七年に十五歳未満の小児患者を対象として独自に開始された制度であり、東京大気汚染訴訟の和解に基づき、平成二十年に対象が全年齢に拡大され、その後、平成二十六年に、五年後の見直し期限を踏まえた制度の改正が行われております。
このとおり、東京都において、その時々の状況を踏まえて評価、見直しがされているものというふうに認識しております。
○田村(貴)委員 東京都の評価じゃなくて、国はどう評価しているんですかと聞いているんです。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
これは、東京の大気汚染訴訟の和解に基づきということで、東京都が行うこととして設置、創設されたという制度でございます。また、それを東京都として評価、見直しをして実行されているというふうに認識しております。
○田村(貴)委員 六十億円拠出して、何か冷たいですね。
その東京都の医療助成制度も、基金の枯渇によって維持ができなくなってきています。二〇一五年からは新規患者の受入れをなくし、二〇一八年四月、つまり来月からは、月額六千円を超える医療費だけが助成されるようになるわけであります。
お尋ねしますけれども、ぜんそく患者さんの医療費がどのぐらいになっているか、そういう調査はございますか。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
公健法における被認定者につきましては、ぜんそく等の指定疾病に関する医療費は公健法において全額手当てをしておりますので、患者負担は発生しません。
一方で、環境省では、毎年度、公健法により医療機関等に支払った公害診療報酬等の調査を行っております。平成二十八年度の一カ月分の医療費につきましては、入院外の公害診療報酬で平均約二万五千円、公害調剤報酬で平均約一万九千円でございました。
また、平成二十八年度の療養の給付及び療養費の総額を被認定者数で除した額を見ますと、年額で約三十八万円、月額で約三万二千円でございました。
○田村(貴)委員 患者さんにとって、受診とそれからお薬は非常に大事だということであります。
でも、環境省としては、公健法の被認定者しか資料がないということですね。八八年以降の患者さんのこういう医療費についてはわからないということですね。
そこで、資料二をお配りしています。大気汚染、公害患者の会連合会が全国の調査の結果をやりました。大変苦労されたんですけれども、自己負担のリアルな状況が読み取れます。
全体平均でも月に七千四百三十二円。この一年に入院があった七十歳未満の人ならば一万三千四百九十三円という状況であります。これを東京都で見るならば、新しい年度から、多くの患者さんにおいて自己負担が生じると推察されます。加えて、どんなに症状が深刻でも新規認定は認められない。それは基金が枯渇したからであります。東京都は、制度を存続させたいとして、国とメーカー等への拠出を求めています。
和解によってつくられた医療費助成制度を東京だけに負担させていいとお考えになっているんでしょうか。予防事業の必要性はもうなくなった、そういう認識に今立っているんでしょうか。答えていただきたいと思います。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
東京都が行う予防事業、これにつきましては、環境省は、平成十九年の東京大気汚染訴訟の和解条項に基づき六十億円を拠出しております。これは、都が実施されました医療費助成制度とはまた別の、こちらは都の方の和解条項に基づき都としてやっておられるもので、環境省としては、都が行う予防事業に対して六十億円を拠出させていただいているところでございます。
この東京都が実施する予防事業につきましては、毎年度の事業の状況の報告を東京都からいただいております。平成二十八年度は、道路沿道における大気汚染対策として沿道の植樹や低公害車の導入支援等の事業に基金を活用し、約二十七億円の残額があると聞いております。
また、東京都からは、この基金を活用して、今後も大気汚染対策を中心に予防事業を進めていくこととしていると聞いております。
○田村(貴)委員 ちょっと確認しますけれども、国が出した六十億円ですよ、そして都が予防事業をやっている。それは意義のあることとして受けとめているのか、和解だから仕方がなくお金を出したのか、どちらなんですか。
○梅田政府参考人 お答えいたします。
東京大気汚染訴訟の和解条項に基づいて、環境省、六十億円を都が行う予防事業に拠出をさせていただいて……(田村(貴)委員「予防事業の評価を聞いているんです」と呼ぶ)はい。
これにつきましては、東京都と協力をして一層の大気汚染対策を推進、ぜんそく予防対策の充実に取り組んでいこうということで、そのように進めさせていただいているところでございます。
○田村(貴)委員 意義あることですよね、予防事業は。そうですね。それをおっしゃっていただきたいんですよ。
ぜんそくのコントロールは、早期の受診と適時適切な治療が必要とされています。近年、気管支の炎症を抑える吸入薬が開発されて効果を上げています。しかし、その薬価が高額のために患者さんは我慢してしまうとお医者さんがおっしゃっています。
資料の三は、東京保険医協会の患者さんへのアンケートであります。東京都の医療費助成制度で症状が改善したとの回答は五二%にも上り、これは毎回の調査でも過半数を超える結果となっています。先ほどの質疑の中でも、公健法の患者さんの中でも、治癒等によって離脱したという方がこの間でも二、三割おられると。ちゃんと治療を受ければ症状は改善していく。ぜんそく病の患者さんはなくなっていくことも可能であるというふうにも今言われているところなのであります。
現に、一九八五年以降、ぜんそく死、亡くなる方が最も多かったのは九五年の七千人だったんですけれども、七千人以上だったものが、二〇一〇年には約二千人まで減少しているところであります。
東京都の世田谷に暮らすぜんそく病患者さん、七十歳代の方からお話を聞いたんですけれども、十年前に都の医療費助成制度ができて安心して病院に行けるようになった、そして症状も落ちついている、しかし四月からは自己負担が生じるので不安でしようがないというふうに語っていただきました。
大臣に改めてお伺いしたいと思いますけれども、この東京都の制度を維持をさせて、そして医療費助成制度を全国にやはり広げていくならば、ぜんそく患者さんの症状は劇的に改善されてきます。これは、ひいては医療費の削減にも大いに期待できるところであります。
救済制度は全国の患者さんの減少に大きな役割を果たします。都の十年の取組がこれを実証しています。患者団体が切望している新たな救済制度、これを立ち上げる必要があると考えますけれども、大臣、改めていかがでしょうか。
○中川国務大臣 ぜんそくは、大気汚染のみならず、さまざまな原因により発生する疾患でございます。環境省としては、環境保健行政を実施する立場から、環境汚染に起因する健康影響について対処いたしております。
大気汚染につきましては、窒素酸化物や浮遊粒子状物質等の濃度に低下傾向が見られておりまして、また、環境保健サーベイランス調査において、大気汚染とぜんそくの関連性について一定の傾向として捉えられる状況にはないと有識者検討会において評価されていることを踏まえますと、新たな医療費助成制度を創設するような状況にはないのではないかと考えております。
環境省といたしましては、引き続き、環境保健サーベイランス調査を行い、地域住民の健康状態と大気汚染との関係を注意深く観察してまいります。
そして、環境省としては、近年、ぜんそくの治療に関して、症状を悪化させる要因を取り除く自己管理の重要性が高まっていることを踏まえまして、予防事業について環境再生保全機構と協力して実施しているところでございまして、引き続き効果的な展開に努めてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 その大気汚染とぜんそく等の病気との因果関係なんですけれども、調査も行われていると。
そこで、環境再生保全機構がこう言っているんですね。現在の大気汚染の状況は、ぜんそく等の病気の主たる原因とは言えず、ここは言っているんですけれども、これらの病気に対して何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できません。
これらの病気に対して何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できていません、そういう見解で、環境省、よろしいんですね。わかりますか。
○梅田政府参考人 先ほども御答弁させていただきました、さまざまな要因が複雑に絡んでいるということで、科学的に必ずしも全てが解明されているわけではありませんが、さまざまな要因の一つとしてあろうかと思います。
○田村(貴)委員 可能性は否定できませんとなっている以上、やはりしっかり調査をしていく、そして、可能性が否定できていないんだったらば、対策とともに救済がやはり必要であります。
最後に、ぜんそくに苦しむ患者さん、その原因が自分にないとするならば、これは悲劇であります。救済制度を認めない理由はありません。やはり新たに制度を発足させるべきであります。新たな救済制度をつくるならばメーカーも負担に応じると原告や患者さんに語っているというふうにも伺っております。
新たな救済制度をつくる、そういう判断を行うことを強く求めて、きょうの質問を終わります。