196-衆-農林水産委員会-3号 平成30年03月20日 赤字でも交付金廃止 「コメつぶし政策だ」/漁民納得の和解案を 諫早非開門前提の国を批判

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に、今国会、大問題となっている文書改ざん事件について、齋藤大臣の見解を伺います。
公文書の改ざんは重大な犯罪であります。改ざん文書を作成し、それに基づく答弁というのは、行政府が立法府を欺くことになります。権力の分立、そして議院内閣制という、この国の統治機構を揺るがす行為として、私は重大問題であると考えております。
午前中の質疑の中で、大臣は、政府全体の信頼を揺るがしかねないという発言がありました。まさに、内閣は、憲法上、全ての行政行為に対して、国会に対し連帯責任を負うというふうに定められています。
この事態に対して、大臣は安倍内閣のまさに一員であります。内閣の一員として、国会に対する責任をどのように考えておられるでしょうか。


○齋藤国務大臣 このたびの財務省における決裁文書の書きかえ、これは、総理も言及されたように、一財務省の信頼ということだけではなくて、行政全体の信頼を揺るがしかねない出来事であるというふうに思っております。

そして、我が省におきましては、行政文書の適正な管理は、行政の適正かつ効率的な運営を実現するとともに、国会を含めまして国民の皆様への説明責任を全うする上で極めて重要であると考えておりますものですから、三月十三日に、行政文書の適正な管理について、改めて私の方から省内に徹底をさせていただいたところでございます。
今後とも、まかり間違っても、書きかえが行われるような、そういう文書管理がなされないように、厳正に管理をしてまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 省内での努力についてはわかりました。
内閣全体の問題として、文書改ざんを国民は捉えているわけであります。ですから、今、この文書改ざんの真相究明に向けて政府一丸となって取り組んでいく、そして、誰もが今求めている関係者の証人喚問、ここから始めないとわからないわけですから、この実現に向けて力を尽くしていただくように強く要望させていただきたいと思います。
それでは、米政策について質問します。
米の直接支払交付金の廃止とともに、行政による米の生産数量目標の配分が廃止され、ことしから米政策が大きく変わります。しかし、米の需要が毎年八万トン減る中で、生産数量目標の配分をやめてしまったら、過剰作付によって米の価格がどんどん下がってしまうのではないか、この懸念があちこちに広がっています。
ことしの作付は前年並みとの報道でありますけれども、飼料用から主食用への戻りもありますし、SBS米も全量落札されて市中に出回ってまいります。備蓄米から主食用米販売に切りかえる、そういう動きもあると報道されています。これで二〇一八年度産米が豊作になったとしたら、価格の下落を招きかねません。
そうならないための手だては何を考えておられるんでしょうか。また、下落した場合の対策は何なんでしょうか。


○齋藤国務大臣 米政策につきましては、三十年産米から直接支払交付金及び行政による生産数量目標の配分を廃止する中、引き続き、需要に応じた生産を促して、米の需給及び価格の安定を図っていくことは重要であるというふうに、もちろん認識をしているところでございます。
このため、三十年産以降においても、引き続き、麦、大豆、飼料用米等の主食用米以外の作物の生産を支援することで水田のフル活用を進めるとともに、きめ細かい情報提供を継続することによりまして、農業者みずから需要に応じた生産に取り組んでいただける環境整備に努め、米の需給及び価格の安定を図っていく考えであります。
また、米価の下落に対しても御指摘がありました。これに対しましては、いわゆるナラシ対策、収入減少影響緩和対策ですけれども、このナラシ対策や収入保険等のセーフティーネットの構築をあわせて行っていくことによりまして、担い手の農業経営の安定を図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 今言われた収入保険、それからナラシですね。でも、これは過去五年間の収入の平均との差額の一部を補填するだけであります。継続して下がり続けるときには、補填もどんどん下がっていく。でも、そのやり方というのは、セーフティーネットとしては非常に不十分だと指摘せざるを得ません。
飼料用米についてもお尋ねしたいと思います。
この三年の生産数量目標超過達成には、飼料用米への転換も大きく貢献しています。二〇一八年度は水田活用の直接支払いに三千三百四億円を計上していますけれども、政府の方針に従って規模拡大を続けてきた集落営農などにとっては、これを将来にわたって安定的に措置していくことが特に重要だというふうに考えております。
この飼料用米、全国の農家に向かって約束できますでしょうか。


○齋藤国務大臣 我が国におきましては、主食用米の需要が毎年おおむね八万トンずつ減少しているという中で、食料自給率、自給力の向上を図るためには、飼料用米など主食用米以外の作物への転換によって、水田のフル活用を進めていくということが重要であると考えておりまして、御指摘の飼料用米につきましては、平成二十七年三月に閣議決定をされました食料・農業・農村基本計画におきまして、平成二十五年度で十一万トンの飼料用米の生産量を平成三十七年度には百十万トンとする生産努力目標を掲げ、この目標の確実な達成に向けて、不断に施策の点検を行いながら、生産拡大を図るというふうにしているところでございます。
こうした中、水田活用の直接支払交付金の三十年度予算につきましては、飼料用米などの戦略作物助成の現行単価を引き続き維持するとした上で、これらの生産拡大にもしっかりと対応できる額にする、それから、地域の裁量で活用可能な産地交付金についても、基本的な仕組みは維持した上で、転換作物の拡大に対する支援等に新たに取り組むことといたしまして、二十九年度当初予算額の百五十四億円増となります三千三百四億円を三十年度予算で計上しているところであります。
御指摘のように、この予算が崩れるようなことになりますと、飼料用米政策そのものが崩れるということになりますので、農林水産省といたしましては、今後とも、農業者の方々が、飼料用米など主食用米以外の作物への生産に引き続き安心して取り組むことができるよう、必要な予算をしっかり確保してまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 安心して取り組めるように予算も確保していくというのであれば、安心の制度にしていただきたいと思うんです。
では、何で飼料用米の交付金を収入保険の収入の対象としていないのか、この疑問が出ているわけであります。畑の作物やあるいは甘味資源作物の数量支払いは対象としている一方、この飼料米は収入の対象としていない。対象にして、そして安定的に措置すべきである、こういうことを要求させていただきたいというふうに思います。
全国の地方議会からは、責任ある需給対策と戸別所得補償の廃止反対若しくは復活を求める意見書がたくさん上がっています。岩手、山形、三重県議会を始め全国の市町村から続々と国会に届いており、二〇一四年から、これまで私が確認しただけでも百七十一本に上っています。
いずれの意見書も、そもそも米価は生産費を大きく下回っているとあり、このままでは経営が立ち行かないと訴え、農家の再生産と農村を支えてきた戸別所得補償を復活してほしいとこの意見書では要請されています。
二〇一五年産米は、全算入生産費六十キロ当たり一万五千三百九十円で、全銘柄の平均価格は一万三千百七十八円となっています。価格とコストの関係なんですけれども、この価格には出荷団体の保管、運送、手数料などの経費や消費税も乗っています。
そこでお尋ねします。
政府備蓄米の入札予定価格というのは、主食用米の農家手取りと遜色ない価格に設定されるというふうに伺っています。では、公開されている二〇一五年産の購入数量と契約金額の合計について示していただきたいと思います。


○柄澤政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの政府備蓄米の二〇一五年産、平成二十七年産の購入数量につきましては、落札実績ベースで合計二十五万トン、そして、契約金額については合計で四百三十四億円となっております。


○田村(貴)委員 そうすれば、六十キロ当たりの単価は平均一万四百十円ということになります。これが主食用米の農家手取りと遜色ない価格なんですね。全算入生産費と比べたら五千円違うわけなんです。こんな米価では、大規模経営だって赤字になりかねませんよ。
十アール七千五百円の戸別所得補償というのは、赤字を補填する確実な収入でありました。一七年産米では七百十四億円の予算が組まれましたけれども、これがそっくり失われる勘定になります。岩手県一関市の意見書では、市内の農家収入が合計で約三億円減少するとも言われています。
我が党が調査を行った福井県若狭町のかみなか農楽舎は、米を中心に四十ヘクタールを耕作する大きな農業生産法人であります。いろいろな努力をされて、ようやく、全体の売上げは七千百万円程度、一方、経費は六千九百六十六万円と、ぎりぎりな状況であります。この売上げには、米の直接支払交付金の約二百万円が含まれています。三十年産米、二〇一八年度産米、これが吹き飛ぶので、社長さんは、どうやってこの穴を埋めていくのか思案しかねているというふうに話しておられます。
大規模経営者でもこういう状況になるんですけれども、大臣、こういう農家は一体これからどうやっていったらいいんでしょうか。経営努力はもう十分やっていると思いますけれども、いかがでしょうか。


○齋藤国務大臣 今回の、米の直接支払交付金の見直しを行わせていただいたその背景には、いろいろな事情があるわけでありますけれども、全ての販売農家を対象に交付金を支払うということは農地の集積ペースをおくらせるなどの問題が多いですとか、一方で、強い農業の実現に向けて、先ほど来申し上げたフル活用政策などをあわせて講じているところであります。
それで、お米のこれからの政策につきましては、先ほど来申し上げておりますように、これからお米の需要がどんどん減っていく中で、やはり需要に応じた生産というものを目指していく以外に需給の安定を図ることはできない。一方で、水田のフル活用をすることによって、例えば、餌米の、先ほど申し上げたように、飼料米の予算というものは、農家の不安がないように確実に措置をさせていただく。
そういうことで、需要に見合った生産をするので米価を安定させ、さらには、水田のフル活用を図ることによって、政府の支援も得ながら、農家の所得も安定をさせていくという方向でこれからの米政策というものは運営をしていくべきだろうというふうに考えているところでございます。


○田村(貴)委員 いろいろやってきたんだけれども、米が安過ぎて赤字を埋めることができないというこの現状があるから、こうした声が起こっているわけです。さらに、直接交付金の廃止等によって農家が困窮していく。それはまさに、米潰し政策と言われても仕方がないような状況だというふうに思います。米づくりを守るあらゆる農家を応援する政策に抜本的に転換することを求めたいと思います。
次に、昨年の九州北部水害に伴う農地の被害復旧について質問します。
福岡県朝倉市は、九州北部豪雨で一番大きな農業被害を受けました。多くの田畑、果樹園、ハウス等におびただしい土砂が流れ込みました。
資料をお配りしています。左上の写真は稲刈りができなくなった田んぼ、これは私がことしの一月末に現地へ行って撮ってきた写真であります。右上の写真は大量の土砂につかった果樹園であります、柿畑。下の二枚の写真は博多万能ネギのハウスでありますけれども、ここで栽培されている方はこの地での栽培はもう断念されたというふうに伺いました。
豪雨水害から九カ月たっても、多くの田畑は土砂に覆われたままであります。災害復旧事業はおくれています。
そこで伺いますけれども、ちょっと時間の関係上、私が言いますので、正しいかどうかだけ答えてください。
災害復旧事業の朝倉における規模なんですけれども、全体では七百六十ヘクタール、平地で約五百四十九ヘクタール、そして、自力で復旧させている人を除いた災害復旧対象は約二百ヘクタール、平野部以外は二百十一ヘクタールで今やろうとしているということですけれども、大体こんなものですかね。


○荒川政府参考人 お答えいたします。
先生おっしゃったような平野部、山間部の分布になってございます。


○田村(貴)委員 それで、査定は終わって、今からやるんですけれども、土砂撤去はまさに今からだというところなんですよね。
私がお伺いしたときに、JAの職員さんがこうおっしゃいました。目の前の土砂がなくなることが、営農再開への意欲が出てきます。そのとおりであります。土砂が撤去されないとどうにもできないんです。
ある農家の方はこうおっしゃいました。昨年は稲の収穫もできず、裏作の麦も植えることができなかった、何とかことしの田植までには復旧してほしい。
大臣、この切実な農家の願いに、一刻も早い土砂の撤去が求められています。未曽有の豪雨被害についてはもう伺っておられると思いますけれども、この土砂を撤去しなければ、当然、作付ができません。このままでは離農者が出てまいります。六月の田植に備えて種もみを発注する、そして育苗、こういう段階に来ています。今、工事を前に進めるならば、六月の田植に間に合います。
大事なのは、諦めないことであります。諦めないで頑張る。営農再開はまさに復興のシンボルになってまいります。工事業者ももう選定されています、落札されています。だからあとは、工事を早く進める、これが一番必要であると思います。大臣、いかがでしょうか。早く進めていく必要があるんじゃないでしょうか。


○齋藤国務大臣 今、委員御指摘のように、今回の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた朝倉市を始めとする地域、早期の営農再開を図るためには、まず迅速に農地を復旧することが何よりも重要であると認識をしております。委員と同感であります。
そのため、朝倉市で行われる農地の災害復旧事業のうち、平野部につきましては、おおむね復旧工事の発注が完了をしたところでありまして、平野部の全ての農地で平成三十年度中に復旧工事が完了する見込みに今なっております。
ただ、一方の山間部の農地につきましては、土石流により甚大な被害を受けておりまして、河川の復旧完了後に復旧工事に着手をする、そういう段取りになりますものですから、営農再開までまだ期間を要する見込みとなっているところであります。
いずれにいたしましても、早期に営農再開ができるように、地元の皆さんの意向をしっかり踏まえながら、全力で支援してまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 平野部においては平成三十年度内に復旧完了、こういうめどと、それから計画を市民とそれから農家の方に示して、展望をやはり持てるようにしていただきたいというふうに思います。まずは田植に間に合わせることが大事だというふうに指摘させていただきたいと思います。
それから、ちょっと時間の関係上、質問を飛ばします。
工法が変わってまいります、現地において。例えば、ブルドーザーの入れ方が、農地の表土を削ってしまうから、オペレーターもいないから、バックホーと三トンブルを入れるとか、この工法の変更に伴う国に対する申請等々の変更については、ぜひ自治体に寄り添ってアドバイスをしていただきたい、そして支援もしていただきたいというふうに思います。
最後に、諫早湾干拓事業について伺います。
午前中も議論がありましたけれども、福岡高裁は、潮受け堤防水門の開門を強制しないよう国が漁業者側に求めた請求異議訴訟で、開門はせず、基金案などで解決を図るよう和解勧告をいたしました。
この福岡高裁が示した和解の方向性では、開門によらないことを前提に、開門にかわる基金等の方策でというふうにされているわけであります。
政府が考える基金というのは、あの長崎地裁の和解勧告で示した、百億円、四県、四漁協が基金を管理する、そうした有明振興基金をイメージされているんでしょうか。


○荒川政府参考人 お答えいたします。
国が福岡高裁に提案をいたしました基金案でございますけれども、これは、先生お話ございました長崎地裁の和解協議におきまして、四県、それから四県の漁業団体から御意見、御提案をいただいて、有明海の漁業振興や再生に必要な取組内容を盛り込んで、それを実現できる仕組みとして御提案をさせていただいたものでございます。
この基金案につきましては、有明海の再生に向けて、より効果的に活用され、よりよい成果を導けるように、今後とも、関係者の御意見を伺いながら、その活用について検討してまいりたいと思っております。


○田村(貴)委員 よりよい方向性になりませんよ。だって、同じスキームじゃないですか。
一年二カ月にわたって和解の協議をやってきたんだけれども、国が提案したやり方ではのめなかったと決裂したじゃないですか。また同じことをやるんですか。
和解に至らなければ、裁判は続いて、七月三十日に判決が予定されています。その判決がどうであれ、漁民側が上告すれば、また裁判が続いてまいります。
伺います。
国は、いつまでも裁判を続ける気なのか、それとも、和解によって解決を目指すのか、どちらなんでしょうか。


○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
本件につきましては、今月五日、福岡高裁の和解勧告が出てあるわけでございます。その中で、「開門しないことを前提に開門に代わる基金等の方策による解決を図ることが、現在の混迷、膠着した状況を打開する唯一の現実的な方策」だという御判断をいただいたところでございまして、これを重く受けとめておるところでございます。
したがいまして、国といたしましては、この請求異議訴訟で行われております和解協議におきまして、開門によらない基金による和解に至れますように、しっかり対応してまいりたいと思っております。


○田村(貴)委員 そうであるならば、やはり、考え方、それから和解の提案の仕方を変えていかなくてはだめですよ。
仮に、四県の漁協が国の和解案を、仮にですよ、のんだとしても、漁連は訴訟当事者ではありません。漁民原告が納得できる和解案を提示する以外に解決の方向性はないじゃないですか。既に、高裁に対して、この和解のテーブルに着くことはできませんと、きのう、もう意見を出していますよ。どうするんですか、この入り口の段階で。和解のテーブルにも着けないじゃないですか。
大臣、どうしますか。今の案では入り口にも着けないんですよ。またやるわけですか。違う案を出さない限り解決はできないと考えますけれども、大臣、どう考えておられますか。


○齋藤国務大臣 今、事務方から答弁させていただきましたように、私どもとしては、今回の福岡高裁の和解の御判断、それから漁業団体の苦渋の決断というものは重く受けとめるべきと考えておりまして、国としては、開門によらない基金等による和解に至れるよう、真摯に対応していきたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 行き詰まっているのは、どうやら政府の方にあるようであります。
なぜ漁民原告がこの和解に応じられないのか。きのう提出した文書の中にこういうくだりがあります。「確定判決に基づく開門請求権の一方的放棄を前提とするのは、司法制度の軽視であり、あまりにも偏波で不公平である」と。
確定判決を行った福岡高裁のこの和解案、その提示は、私も余りにもひどいなというふうに思います。ここを重く厳粛に受けとめても、だめなものはだめなんです。
大臣は、歴代の農水大臣の中で、漁民原告と、大臣就任の後から、挨拶されていません、懇談されていません。漁民側は、提案がいいものならば幾らでも今から話合いに応じると言っているわけでありますので、まず、対立が続いている漁民原告の話を聞く、そして、お互い胸襟を開いて話し合っていく、そういうスタンスをやはり持って事に当たっていくしかないなと思います。
そのことを強く指摘して、きょうの質問を終わります。ありがとうございました。