196-衆-農林水産委員会-10号 平成30年04月17日 森林の健全育成に逆行 田村衆院議員が経営管理法案を批判

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
私の方からも、加計学園の獣医学部開設をめぐる愛媛県が作成した文書について質問をさせていただきたいと思います。
大臣に尋ねます。
農林水産省の職員がこの文書を保有していたとわかったのは、いつの時点でしょうか。そしてまた、齋藤大臣がこの文書の存在を知ったのは、いつの時点でしょうか。端的にお伺いします。


○齋藤国務大臣 調査している途中の水曜日、十一日の水曜日に、私のところに、口頭でですけれども、愛媛県文書がありそうだという報告が私にありましたので、私が承知をしたのは、その水曜日ということになります。
恐らく、直ちに私のところに第一報があったのではないかなというふうに私は思っております。


○田村(貴)委員 そうすると、職員がこの文書の存在を確認したのは、十一日以前、十日か十一日ということになるんでしょうか。


○齋藤国務大臣 そうですね。十日の報道で、それから調査を始めていますので、十一日に、まあ、ちょっと、推測で言ってはいけませんけれども、私のところには直ちに報告があったんじゃないかなというふうに思っております。


○田村(貴)委員 では、この文書を農林水産省の方で受け取った後に、愛媛県、今治市そして加計学園に農林水産省の立場を伝えたことがありますか。その後にとった政策的な変化等があったでしょうか。


○池田政府参考人 お答えいたします。
この文書につきましては、行政対応の責任者である局長あるいは課長、この文書を見たり、文書について聞いたりしたことはございません。
いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、この文書が作成された、二十七年四月ということでございますが、その以前から、獣医師の需給に関しまして、数自体が全体として不足している状況にはないけれども、地域によっては産業動物獣医師の確保が困難なところがある、こういったことを一貫して説明をしてきたところでございます。


○田村(貴)委員 そうしますと、きのうの東京新聞にありました、地方創生推進室藤原次長やそれから安倍首相秘書官柳瀬氏に対してどんなやりとりがあったのか至急確認したいというようなメッセージを農林水産省から発したことはないということでよろしいんでしょうか。


○池田政府参考人 お答えします。
今般の調査におきまして、丁寧なヒアリングを行いましたけれども、そのような事実は確認をしていないところでございます。


○田村(貴)委員 まだまだ不明瞭なところがあって、事は政治、行政がゆがめられたかもしれないという疑惑の中で、私は、この愛媛県の文書というのは、かなりリアルなもので説得力を持つ文書になって、そしてごまかしようが、必要性もないというようなところの貴重な文書だというふうに思っています。その文書が農林水産省から出てきたといったところの背景は、この加計学園の問題を解明する上では非常に重要な事象であるというふうに思います。
きょうは法案審議でありますので、この続きはまた機会があったらお伺いしたいというふうに思います。
そこで、森林経営管理法案についてお尋ねをいたします。
私、前回の質疑の中で、農林水産省の説明資料の中で、経営意欲なし八四%、主伐の意思なし七一%という農林水産省が使っている数字は恣意的なものであり、所有者に対するアンケート結果から見ても、その結果を捏造したものであるというふうに、今もそういうふうに考えております。
この数字がもう各地に出回っているわけなんですよね。私は、今後、やはり正確な数字を出していただきたい、恣意的な数字じゃなくて、ありのままの森林所有者の気持ちを出してほしいというふうに思いますので、今後つくられる森林・林業白書を含めた文書にはまさかこうした数字は載らないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○沖政府参考人 お答えいたします。
森林所有者の経営意欲に関する資料は、現在作成中の平成二十九年度森林及び林業の動向、いわゆる森林・林業白書案においても掲載しているところでございますが、同白書案におきましては、数字の内訳について注意書きを行い、読者に誤解が生じないよう工夫しているところでございます。
なお、同白書案につきましては、本年四月十三日に開催されました林政審議会において当省から説明を行い、委員から特段の異論は出されなかったところでございます。
いずれにしましても、本資料を含め、新たな森林管理システムに関する各種資料等について、わかりやすい説明に努めていくこととしていきます。


○田村(貴)委員 確認しますけれども、そのままの数字を載せるということでしょうか、それとも改めるということですか。端的にお答えいただきたいと思います。


○沖政府参考人 数字は、その数字を引用していきます。


○田村(貴)委員 これは、やはりこの法案に私たちは明確に反対せざるを得ないと思います。入り口から捏造しているわけなんですよ。本当はないことをあるかのように偽って、そして所有者に対するアンケートの結果を、意欲という言葉まで持ち出して、そして捏造したわけであります。ここが起点になっている本法案は、やはり審議の土台を崩しているものと指摘せざるを得ないというふうに私は思います。この数字がひとり歩きしないように、再度申し入れたいと思います。
次の質問です。
山元立木価格が、長年低下の一途をたどってきました。そして、山は荒廃し、森林作業員が減少してきた。この実態について、その要因はどこにあるというふうに農林水産省はお考えになっていますか。


○沖政府参考人 お答えいたします。
戦後の経済復興に伴い木材需要が急増する中で、我が国の森林資源は、高度経済成長期において、その多くがいまだ利用期に達していなかったため、昭和三十九年に木材の輸入を完全自由化し、外材により国内の木材需要を満たしてきたところでございます。
その後、木材需要は、非木材等の代替材に移行したことなどから減少し、山元立木価格の低迷や林業の採算性悪化もあり、山村の人口減少や高齢化という現象も相まって、林業従事者の減少も進んでいるところでございます。
このような状況の中で、戦後造成された人工林がようやく本格的な利用期を迎えておりますが、経済ベースで十分に活用できておらず、また、適切な森林管理が行われていないという課題が存在していると認識しております。
今後につきましては、新たな森林管理システムの導入によりまして経営管理の集積、集約化を促進し、搬出コストや流通コストの削減を通じて国産材の競争力を向上させるとともに、緑の雇用事業等により林業従事者の育成、確保を図り、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の確立を確実に進めてまいります。


○田村(貴)委員 戦後、林業政策の失敗であったことはもう間違いがないところであります。ですから、その原点に立ち返って、やはり山のあるべき姿を求めていかなければいけないと思います。
次の質問です。
経営管理権集積計画、この策定に当たって、条件はこう定められています。経営管理が適切に行われていない森林を市町村が特定する。何をもって適正管理というんでしょうか。その基準について、この法文にはどこか書いていますか。


○沖政府参考人 お答えします。
市町村は、当該森林についての経営管理の状況とか、当該森林の存する地域の実情その他の事情を勘案して、当該森林の経営管理権を市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合に、経営管理集積計画を定めることとしてございます。
このため、具体的に申し上げれば、間伐などの森林施業の過去の履歴や路網の整備状況、担い手の活動状況等を総合的に勘案しまして、経営管理権を集積しなければ適切な経営管理が確保されるか否かを判断するということになると考えております。


○田村(貴)委員 その基準やガイドラインが今示されていなかったら、これは市町村の恣意的な判断、そしてバランスを欠いた見方になっていくのではないかというふうに思います。この点も指摘させていただきたいと思います。
そして、大きな問題は、集積計画に不同意であっても、同意しなくても同意とみなす規定というのは、これは保有者の財産権をやはり侵害すると指摘する方もおられます。なぜ、こんな強権的な手法をこの法案では取り入れているんでしょうか。


○沖政府参考人 お答えいたします。
経営意欲の低い森林所有者の中には、市町村と行う調整にかかる手間を敬遠して不同意の意思表示をされる方、また、同意、不同意すら明らかにされないような方等多く存在しますし、経営管理権集積計画の作成に支障が生じることが想定されるところでございます。
このため、本法案におきましては、森林所有者が市町村の定める経営管理権集積計画に同意しない場合でも、市町村の長による勧告、都道府県知事の裁定等の一定の手続を経て、市町村に経営管理に必要な権利を設定することができることとしております。
なお、その際、森林所有者に対しては、意向調査や同意する旨の勧告を経ることとしているほか、意見書を提出する機会を付与することなど、慎重な手続を踏むこととしております。
また、裁定の手続を経て市町村に権利設定された場合であっても、経営管理集積計画の公告の日から五年経過した後に、市町村の長は、意見書を提出した森林所有者から取消しの申出があった場合などには、計画を取り消すものとしており、森林所有者の権利に十分配慮した仕組みとしているところでございます。


○田村(貴)委員 この規定には法制局からも意見があったというふうに伺っております。そして、主伐を目指さなければ不同意としてみなす、こういう仕組みが基本であります。この規定は本当に厳し過ぎると思います。
さらに、森林所有者に還元される利益についてです。
木材の販売価格から伐採及び再造林、育成に要する経費を控除してなお利益がある場合とされています。山の保有者に対して利益が還元される保証はあるんでしょうか。


○沖政府参考人 お答えいたします。

今般創設することとしております新たな森林管理システムにおきましては、販売収益から伐採等に要する経費を控除してなお利益がある場合に、林業経営者は森林所有者に金銭を支払うこととしており、必ずしも利益の還元を受けられることが保証されるわけではございません。
しかしながら、このシステムにおきましては、経営管理実施権は林業経営者の同意に基づいて設定されるものであり、集積、集約化される森林については、基本的に経済ベースに乗るものを想定していることに加え、経営管理実施権の設定を受けて林業経営者が実施する林業経営に係る経費については、標準的な単価設定とするように指導することにより、林業経営者が販売収益を上げるために相当の経営努力をすると見込まれることから、森林所有者に対しても利益が還元されることが想定されるところでございます。


○田村(貴)委員 要するに、やってみないとわからないということで、いみじくも、必ずしも利益が還元されるものではないといったところなんですよね。これはやはり大問題だというふうに思いますよ。
どんなふうに言われようと、本来、立木を幾らで売って、そして経費と利益をどれだけ見積もるのかというのは、これはやはり森林所有者、オーナーさんが行うべきだというふうに考えます。こんな枠組みでは、さまざまなモラルハザードを起こしかねないというふうに私は指摘をするものであります。
そもそも、林業と森林をこういう状況まで追い込んだのは、木材価格の低下を招いた政府の林業政策を起因としているところであります。山林所有者の意思を軽んじ、そして経営意欲がないと決めつけて市町村の負担をふやすばかり、川下の成長戦略を最大限追求する、こういう法案にはやはり納得、同意をすることはできません。森林の健全な育成と逆行するやり方は認められないということを述べまして、私の質問を終わります。