197-衆-農林水産委員会-10号 平成30年11月28日 漁業法について質問 田村貴昭

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
法案について質問します。
区画漁業権等に企業を参入させる、そして漁業権の優先順位を廃止するという議論は、これまで官邸サイドで行われてきました。そんな中においても、水産庁は、漁協に第一順位の免許を与えておくことが必要であるというふうに言ってまいりました。
二〇一五年二月九日の国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングでは、水産庁はこういうふうに述べています。水産庁企画課長でありますけれども、漁協に第一順位の漁業権を付与しているという点につきましては、海面を総合的に利用する、ただでさえ狭い日本の漁場を細分化、固定させてはならないのでというふうに理由をつけているわけであります。
水産庁は、漁協に第一順位の免許を付与する立場をとってきたじゃないですか。明確に述べているじゃないですか。大臣、長官、官邸に押し切られちゃったんですか。なぜ立場を変えたんですか。


○長谷政府参考人 お答え申し上げます。
議員御指摘の国家戦略特区ワーキンググループにおきましては、漁協が漁業権を公平に分配するための行司的役割を果たしているならば、本来、そのような役割は公的機関である市町村が担うべきであるという指摘を受けていたものだと承知しております。
これに対しまして、水産庁といたしましては、各漁業者間の日常的な漁場利用上の紛争を調整し、漁場を総合的に利用するための管理を行う役割を市町村が担う場合、地方自治体の水産部局の職員数が限られていること、そして漁業権は市町村の行政区域とは無関係に設定されていることから、行政コスト、管理調整の迅速性、効率性及び実効性の観点から現実的ではないと考えるとの回答を行っているものでございます。
さらに、狭い地先の海面に多くの漁業者が生けすやいかだを設置して営む養殖業に関しては、各漁業者間の日常的な漁場利用上の紛争を調整し、狭い漁場を各漁業者が総合的に利用するための管理を行う者として、地先の海面の資源状況や漁場環境、各漁業者の操業状況等、管理調整に必要な情報を熟知しており、みずからは養殖業を営まない漁業協同組合に管理を担わせるのが適当である旨の回答を行っております。
今回の改革案におきましても、このような漁業協同組合による管理機能を評価した上で、海区漁場計画の作成のときにおいて適切かつ有効に活用されている漁業権が団体漁業権であるときは、団体漁業権として設定すること、漁場の活用の現況や利害関係人の意見について検討した結果、団体漁業権として区画漁業権を設定することが漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、団体漁業権として区画漁業権を設定することを法律に位置づけたところでございます。


○田村(貴)委員 いろいろいろいろおっしゃるんだけれども、漁協への第一順位の免許というのは堅持してきたんですよ。結果としては、いろいろたてつけはあるんだけれども、知事の恣意的判断を生んでしまうし、そして、企業の漁業権、これの付与は今度の法案で出ているわけなんですよ。押し切られているわけなんですよ。けしからぬことだと思いますよ。
たくさんの問題点が審議の中で出てまいりました。まだまだ議論しなければいけないというふうに思うんですけれども、海区漁業調整委員のことについてもお伺いしたいと思います。
海区漁業調整委員は、原則十五人、漁業者又は漁業従事者が過半数を占めなければいけないというふうに法案でも定められています。
お伺いしますけれども、漁民委員というのは、過半数であれば何人でもよろしいんでしょうか。漁業者の代表が過半を占めなければいけない、そこまで漁業者、漁業従事者の意見、声というのを大切にしなければならないというのであれば、なぜ公選制を廃止するんでしょうか。


○長谷政府参考人 お答えいたします。
現行制度におけます漁業者委員につきましては、選挙を行った場合の漁業種類などが必ずしもバランスよく選ばれていないというようなことですとか、実際は投票実施率が低いといったこと、前回の選挙では、六十四、全国で海区漁業調整委員会があるんですけれども、八海区で選挙が行われていたということであります。そして、学識経験委員として本来漁業者委員の対象となる漁業者を選任するケースがあること、これは六十四海区中二十一海区ということであります。過去二十年間で一度も投票していない、投票が行われなかった海区が半数以上あるわけですけれども、選挙は実施しなくても、毎年、選挙人名簿の調製というものを市町村選管が行っております。この行政コストが発生している等の状況がございます。
このため、今般の改正の機会に、これらの問題を先送りすることなく、漁業者を主体とする漁業調整委員会の組織、機能をしっかりと残しつつ、地域の実情に柔軟に対応できるように、公選制から知事の選任制に移行するものでございます。
また、委員の定数は原則十五人として、その選任に当たっては、学識経験を有する者と利害関係を有しない者を含めた上で、漁業者が過半数を占めるようにしなければならないこととしておりまして、十五人の場合、八人であっても、九人であっても、十人であってもという趣旨であります。現行は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、法定で九人と決まっておりますので、一つの例でありますけれども、五地区から九人を選ぶみたいな無理が生じている。そういうことを解消するということも今回の法律案で可能になるということであります。


○田村(貴)委員 無投票の議員選挙、首長選挙というのは全国にいっぱいありますよ。いろいろ議論はあるけれども、それも民主主義の結果の話なんですよね。
今度の場合は、漁民の中から合議で選任されてきた人と、知事のおめがねにかなった人を指名する、これは決定的に違う話なんですよ。民主主義の度合いが違うんですよ。だから私たちは、こういうやり方はだめだ、納得できないと言っているわけです。
資源管理の問題についてもお伺いしたいと思います。
資源管理は、言うまでもなく、大事な問題であります、必要なことであります。しかし、その資源確保のための漁獲規制、漁獲制限というのは公平に、民主的に行う必要があります。ここは論をまたないと思います。しかし、現実はそうなっていません。その典型がクロマグロであります。
吉川大臣にお伺いします。
大臣は、私の本会議質問の答弁の中で、クロマグロの第四期間の資源管理における漁獲可能量の配分に当たっては、漁業者の意見を聞く時間が十分でなかったことを反省と述べられました。
第四期間の反省点というのは一体どういうことでしょうか。


○吉川国務大臣 クロマグロの第四管理期間の配分に当たりましては、都道府県別の配分について、パブリックコメントの期間を九日間しか確保することができませんでした。その結果、漁業者の意見を聞く時間が十分でなかったことを反省すると申し上げたところでございます。


○田村(貴)委員 特に沿岸マグロ漁師が訴えているのは、資源減少の原因をつくったのは大規模漁業であった、まき網などの大規模漁業に多くの枠を配分するのは不公平だというふうに指摘されたわけなんです。まき網は産卵期において操業するな、これは沿岸漁民の確固たる主張であります。パブリックコメントでも同様の意見がたくさん寄せられています。
水政審のくろまぐろ部会、ここでも沿岸漁業者が意見を述べていますけれども、資源枯渇の原因をつくった大規模漁業に枠を配分するのは不当だ、大規模漁業が安い値段で大量に出荷している、ならば沿岸に枠を与えよ、こういう意見がいっぱい出ているじゃないですか。
今度の第五管理期間のクロマグロの漁獲規制に、これらの声というのは反映されているんでしょうか。そして、産卵親魚をとるなという声は、水産庁としてはちゃんと受け入れているんでしょうか。


○長谷政府参考人 第五管理期間以降の漁獲可能量の配分に当たりましては、水産政策審議会資源管理分科会のもとに専門家や漁業団体の代表を委員とするくろまぐろ部会を設け、議論を行ったところでございます。
部会では、定置漁業者やはえ縄漁業者など、各地の沿岸、沖合漁業者を含む関係者を参考人として招致いたしまして、御意見を伺った上で、過去の実績に加えて配分に当たって考慮すべき要素や、漁獲枠の融通の促進などの管理に関する論点など、配分の基本的考え方を取りまとめたところでございます。
水産庁としては、この取りまとめに沿って第五管理期間の配分案を作成いたしまして、現在、十一月十六日から三十日間、パブリックコメントを行っているところでありまして、沿岸漁業者を含む関係者の意見の反映に努めたところでございます。
また、委員御指摘の産卵親魚の問題でございます。
そのような御意見については、沿岸漁民への説明会や、くろまぐろ部会の参考人の御意見などでも伺っているところでございます。
このことについては、くろまぐろ部会の取りまとめでも、ISCという科学機関がございます、北太平洋まぐろ類国際科学小委員会でありますけれども、この場では、親魚量と加入量の間には明確な関係が見られていないことから産卵期の漁獲を特別に区別せずに資源評価及び将来予測を実施しており、これに基づくWCPFCの資源管理措置も産卵期の漁獲を区別しておりません、そのため科学的には、親魚の漁獲を控える場合産卵期かどうかは重要ではなく、小型魚の漁獲を規制する方が将来の親魚資源回復に大きく貢献すると、結論が示されているところでございます。
一方で、多数の沿岸漁業者がこの問題を訴えている現状を踏まえまして、この問題への丁寧な説明に努めていくべきであるというふうにも示されております。今後とも、沿岸漁業者の御理解が得られるように、このことについて説明を行ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 要するに、沿岸マグロ漁師、マグロ業界の声は聞かない、そして、まき網の業界の主張と配分はしっかりやっていくということですよね。どちらの味方なんですかね。圧倒的多数は沿岸漁民ですよ。今度の漁業法の改定の審議にしても、九割以上、沿岸漁民の立場に立たないといけないんじゃないですか。
ISC、北太平洋まぐろ類国際科学小委員会の話を言われました。親魚の量とそれから加入量との間には明確な関係が見られないというんだけれども、明確な関係が見られないということは、わからないということなんですよ。わからないんですよ、因果関係は、いまだに。
そして、逆に、産卵親魚の乱獲が資源に与える影響もあるという知見もあるんですよ。そういう知見にもちゃんと向き合ったらどうですか。ちゃんと議論したらどうですか。
これだけの漁業者の方が、余りにもひどいとり方だ、そして、資源が枯渇している、自分たちは一本釣りで資源を守りながらクロマグロをとってきたんだと。この声こそやはり聞くべきではないですか。
だから、これから資源管理、TAC、IQ導入をしていく、クロマグロの八番目、九番目、十番目をつくっていくという段階でも、どれだけ沿岸漁民の声が反映されるのかというのは甚だ疑問であります。大変心配であります。
くろまぐろ部会のヒアリングの中で、こういう声があります。漁業者の声を反映できる漁業者参加型の資源管理を本気で目指すべきだと。私は同感であります。
お伺いします。
クロマグロを含めて、TAC、それからIQの導入において、漁民の意見というのはこれからどうやって聞いていかれるおつもりなんでしょうか。これは、大臣、私は本会議でも質問しましたので、お答えいただけますか。


○吉川国務大臣 TAC、IQの導入について、どのように意見を聞くのかということを私の方からお答えさせていただきます。
漁獲可能量の配分につきましては、水産政策審議会での諮問やパブリックコメントなどによりまして、沿岸漁業者の意見を反映できる仕組みとなっているところでもございます。これらの手続を丁寧に進めていきたいと考えております。


○田村(貴)委員 パブリックコメント、確かに、意見を言う機会ではあります。しかし、これは、農水省、水産庁の皆さんと膝を交えた双方型の議論にはならないわけなんですよね。それから、水政審においても、今度の漁業法の改定の問題については、まともな審議をされてきていないじゃないですか。
声を吸い上げる、声を聞くといいながらも、その仕組みができ上がっていない、こここそやはり考えるべきだと思いますよ。
先ほど、産卵親魚の問題、漁民の声を聞かないという形になっているんですけれども、お伺いしたいのは、全国の大手まき網業界、企業とか団体があるんですけれども、ここに水産庁から再就職をしている方の状況について報告していただけますか。


○長谷政府参考人 お答えいたします。
国家公務員法の第百六条の二十四第二項等の規定に基づいて再就職に係る届出がなされている者ということで、一般社団法人全国まき網漁業協会に一名、日本遠洋旋網漁業協同組合に一名、北部太平洋まき網漁業協同組合連合会に一名が再就職しております。


○田村(貴)委員 水産業界全体では、四年間の報告で十三人、再就職、天下りをされていますね。そして、今、大手まき網業界に対しては三人の方が天下りしている。当時の、退職時の補職名は、水産庁増殖推進部付、水産庁資源管理部漁業調整課長、水産庁資源管理部参事官。そして、就職先は、顧問、顧問、専務理事となっているでしょう。
水産庁のOBがこうした力を持った業界に再就職をする。そうしたら、どういうことになっていくのか。第四管理期間で漁業者の声を聞かなかった、沿岸漁民の声を聞かなかったという事態になるんじゃないですか。こういうことをやっているから、強い者の意見を聞き、そして小規模漁業者の声を聞かないという状況になっているわけです。ここは猛省を促したいというふうに思います。
漁業法の改定に道筋をつけた規制改革推進会議、これは、一番影響を受ける沿岸漁民の声も聞いておりませんよね。二回の会合の中で一回だけ沿岸漁民の方が出ておられて、そして意見陳述をされているというような状況であります。
今からTAC、IQを導入すると言われるんですけれども、クロマグロのように、私は、沿岸漁民の声が置き去りにされかねない、これからもこんな形で資源管理していくんだったら、いや、本当にひどいことになってしまうんじゃないかなというふうに思うわけです。
大臣、改めてお伺いしますけれども、漁業者の中で九四%が沿岸漁業者、ほとんどが小規模漁業者なんですよね。この漁業者の方たちが、多面的な機能、そして私たちの食料をしっかりと供給していただいている、海の安全も環境の保全も守っていただいているということですよね。こうした一番の当事者の声を、これからの漁獲制限や資源確保という点でもちゃんと声を反映していくシステムを、今ないから、パブコメと水政審だけだから、ちゃんとシステムをつくっていく、これが必要だと思いますけれども、大臣、いかがですか。


○吉川国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、パブリックコメントによりまして沿岸漁業者の意見を反映できる仕組みとなっておりますが、これらの手続を丁寧に進めてまいりたいと考えておりますけれども、更に必要であれば皆さんの声をよく聞くことにしていきたいと考えております。


○田村(貴)委員 時間がなくなりましたけれども、私、きのうときょうと、まだ二回しか審議していません。たくさんの問題点、たくさんの課題が出てまいりました。更にこの審議を深めていくことを要求いたしまして、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。