○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
前回に引き続き、農地中間管理事業法の一部改正案について質問をします。
昨年十一月の規制改革推進会議農林ワーキング・グループの会議では、農水省は次のように法案に関する説明をしています。
転貸面積がここ二年間で極端に下がっている、今まで農地集積、集約化の機運が以前からあった平場については平成二十七年度でほぼ一段落している、機構と地域とのつながりが少し弱い、農地バンク事業の手続等に関する不満が多い、機構に貸したくても機構が借りてくれないなどと説明しているわけであります。これは去年の話であります。だから地域の話合いを重視する、人・農地プランを重視するんだという話であります。
しかし、こうした問題点というのは、機構をつくる段階から、創設当初から指摘されてきたのではありませんか。なぜ今さらこんな指摘をするんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○小里副大臣 地域の話合いに基づく人・農地プラン、これは平成二十四年に開始をされまして、平成二十六年の機構法制定時に、農地バンク事業の円滑な推進を図るための手段として法的に位置づけられたところであります。
現在、九割以上の市町村、千五百八十七市町村において約一万五千のプランが作成されておりますが、プランの中には、農地の出し手が記載されていないものが半数を占めるなど、地域の話合いに基づくものとは言いがたいものもあると認識をしているところであります。
このため、人・農地プランを真に話合いに基づくものにする観点から見直しをするものでありまして、すなわち、市町村、農業委員会など地域の関係者の参加のもとで地域の全体のアンケートをとった上で、これを地図に落とし込んで活用して、地域の話合いにおいて、農業者が地域の現況、将来の地域の課題を関係者で共有をし、今後の農地利用を担う経営体への農地の集約化に関する将来方針の作成につなげていこう、そういうものであります。
○田村(貴)委員 四年間やってみて、真の話合いがされていなかったと今副大臣はおっしゃったけれども、そうした問題点がいっぱい出てきたということじゃないでしょうか。
二〇一三年五月三十日の規制改革会議、ここで農水省は次のようなことを発言しています。個別の相対的な手法だけではなかなか農地流動化が加速化されない、そのような状況を解消するということで農地中間管理機構というものを構想した。この会議で、当時の奥原経営局長は、流動化した農地は相当に大規模な農場や企業がうまく利用しないと意味がない、こういうふうに発言されているわけですよね。
こうした考え方というのはもう転換するということでしょうか。いかがですか。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
先ほどの質問との関連でいきますと、まず、地域重視というのは、もちろん、国会でも人・農地プランを法定化していただいたということで、国会で修正のものを踏まえて我々は当然のように運用をしておりますので、地域重視ということは前々からの考え方であったわけですが、その考え方は同じですけれども、その手法について、まだまだ改善すべき点があるということで、今回、地図をもって全体の、地域の課題を見えるようにする、そういうような考え方をとっているわけでございます。
この話と、制定当初の規制改革会議での農林水産省の発言というのもまた少し別の話でございまして、農地バンクの、つくるという意義自体は、農地中間管理権と言っておりますけれども、直接相対で貸し手と借り手が、出し手の人が出したい時期にやるということだけで終わってしまいますと、やはりどうしても分散錯圃という我が国特有の農地の保有形態というのは解消されないんじゃないかということがあって、一旦、一つの公的な機関であります農地バンクが借りて、それで徐々に集約化を進めていこうということでございますので、この相対の手法だけではなかなか流動化が加速されないということは今も同じ問題だと思っていまして、これは地域を重視するかどうかということとはひとまず別の問題だというふうに認識をしているところでございます。
それから、当時の担当局長などの発言ということで、流動化した農地は相当に大規模な農場や企業がうまく利用しないと意味がないという御発言があったという御指摘でございます。
我々も改めて当時の議事録を見させていただきましたけれども、そこの中で、これは、いろいろな例示、先生の御指摘のような例示をした中に、例えば新規就農者なんかも入れた上で、「要するにこれから本当に経営を発展させて、コストも下げていける、こういう方々のところに重点的に土地が集まりうまく利用されなければ意味がない」、こういうのが正確に引用するまとめでございまして、個々の大規模かどうかというよりも、コストを下げる、本当の意味で経営としてやっていく、そういう方に農地バンクを通じて担い手として育っていただこうという意味でございまして、この意味でも、我々、今回やっていることは変わらないというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 矛盾だと思いますよ。改善するところがある、多々あるからこういう提案をされているんじゃないんですか。
それから、農地中間管理機構というのは、地域の話合いで担い手を探して決めるようなやり方では外からの企業参入を阻害する、こういう発想から議論が始まっているわけであります。そういう考え方は改めないと今局長はおっしゃって、一方では、地域の話合いを重視する改正だと。私は、これは矛盾に満ちているというふうに思います。
もう一点。二〇一三年九月の農地中間管理機構の創設に関する規制改革会議の意見、この中では、借り主の選定について、公募は公平であるべきだとはしながら、担い手の規模拡大の取組を阻害するなと注文をつけました。農業委員会の法的関与は要しないべきだとか、農地利用集積円滑化団体は廃止も含め整理合理化すべきだとか、人・農地プランの法制化は適当でないだとか、プランを貸付先の決定にそのまま利用すべきではないなどとしたわけなんです。
今回の法改正に当たって、こういう点というのは、発想というのは改めるという理解でよろしいんですか。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
先生の御指摘の各種の御意見は、これは農林水産省の意見ではございませんで、規制改革会議の方々の個々の意見ということでございますので、それ自体については、私どもはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
農林水産省として法律を運用していくということであれば、当然のことながら、最終的に法律化された農地バンクの仕組みが全てでございます。その中を見ますと、配分計画の原案は市町村も作成可能。そういう中で、必要に応じて市町村は農業委員会の意見も聞くということが、農地バンク法の十九条三項に規定されております。ですから、農業委員会の法的関与は要しないとすべきという意見はあったかもしれませんが、今の最終の法律案では、今でもそういう位置づけは少なくともあるということでございます。
加えまして、農地利用集積円滑化事業はもちろん当時併存させておりましたし、人・農地プランは国会の修正により法制化された、この制度をもとに我々は運用していたわけでございます。
今回の考え方はどうかということでございますが、そういう全否定的な意見ではなくて、既にもう一部いろいろ加わっていたことについて、その後の運用実態を踏まえまして、やはりこれを改善するという観点から、農業委員会については、人・農地プランの作成の話合いへの参画というものに法律上の根拠を与える、それから、円滑化団体については、全体の状況を見ながら、なお、ブロックローテーションなどの特色ある取組を行っている者については、市町村と同様に、農地バンクの配分計画の原案を作成できるということとした上で統合一体化するという考え方でございますので、我々としては、独自の現場の検証に基づきまして案を提出させていただいているということでございます。
なお、この改正案につきましては、規制改革会議にも我々の案として説明し、答申としてもほぼ同じものが出ているところでございます。
○田村(貴)委員 官邸からの方針が丸ごと踏襲される流れにあるから、私はこういう指摘をしているわけであります。
今度の法改正に当たって、現場からは、じゃ、今までは一体何だったんだ、この数年間は何だったのかというような声が出ているわけであります。
資料をお配りしています。
円滑化団体の実績の推移、これを見たら一目瞭然であります。二〇一〇年度から順調に実績を伸ばしてきたんですけれども、二〇一三年度は五万四千八百八ヘクタールまで伸びてきました。機構の発足によって、翌年度は一万七千四百四ヘクタールまで激減しているわけであります。
もう不要だと言いながら、言われながら、今さら、円滑化団体との連携が必要だと言われるわけですよね。だから、一体何だったんだという声が出ているわけであります。
先ほどからの議論の中で、農地中間管理機構をもし廃止したら混乱が起きてしまうんじゃないかというような御指摘があっていますが、既にもう混乱が起きているわけですよね。そして、矛盾と不備が多過ぎて、それを補うための提案で更に混乱が深まってしまうのではないかというふうに私は思うわけであります。だから、これだけの修正の提案に至らざるを得なかったということじゃないでしょうか。
大臣にお伺いしたいと思います。
現場がやはり混乱してきた、こういう認識はございますか。それから、これまでのやり方がやはりまずかったということで、そのよくなかったという裏返しが今度の法改正につながっているというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○吉川国務大臣 農林水産省といたしましては、当初から、農地バンクの配分計画の原案を市町村もつくることができることとするなど、都道府県段階に設置をする農地バンクと地域との連携も図っていくという考えを持っていたところでもございます。
今回の見直しにおきましては、現場の声を踏まえながら、こうした考え方を更に進め、ブロックローテーションなどの特色ある取組を行っている円滑化団体につきましては、市町村と同様に、農地バンクの配分計画の原案を作成できることといたしまして、これまでどおりの取組がそのまま農地バンクの取組となるようにし、農業委員会につきましては、人・農地プランの作成に向けた地域の話合いへの参画に法律上の根拠を与えることによりまして、その活動を使いやすくする等の措置を講じたところでございます。
これらの措置につきましては、もちろん関係団体も納得の上で行うものでございまして、現場が混乱しているとは考えてはおりませんけれども、むしろ、農地バンクと地域とのつながりが強まって、現場段階でよりスムーズに集積、集約化が進むものと考えているところでもございます。
○田村(貴)委員 さあ、そうでしょうか。結局、円滑化団体の実績は取り込んでいきたいというような中身ではないかと思います。
農業委員会のことについても質問します。
利用状況報告の廃止に関して、都道府県への報告を廃止したとしても、担い手が機構から農地を借り受ける契約というのは解除条件付賃貸借契約でありますよね。解除条件を満たすかどうか、これについて、誰が確認して機構に連絡をするんでしょうか。
○大澤政府参考人 農地バンクは、権利設定を受けた者が農地を適正に利用していない場合や正当な理由なく利用状況の報告をしない場合には、賃貸借又は使用貸借を解除できることとされております。これは先生の御指摘のとおりでございます。
今回の見直しにおきましては、農地が適正に利用されているかどうかは農業委員会が年一回の利用状況調査で確認することとしておりまして、農業委員会において農地が適正に利用されていない事例が発見された場合には、それを農地バンクに報告するということになります。これは農地法六条の二に基づくものでございます。
○田村(貴)委員 農業委員会に役割をしっかり持ってもらうということであります。
ただ、この法律ができる段階のときに、各県の農業委員会組織が農地の借受けルールの策定、変更の際、都道府県農業会議の意見を聞く、この規定の導入を求めたんですけれども、政府はこの導入を拒否しました。それから、農地利用配分計画の原案策定の段階の中で農業委員会に意見を聞くという仕組みについても、義務規定にはしなかったわけであります。
農業委員会は、利用意向情報の提供、話合いへの参加、位置づけが明確にされたと言われます。しかし、法的関与は不要と言っているわけです。公選制まで廃止されてしまったわけであります。しかし、情報は出してくださいよ、そして地域で話合い、しっかりコーディネートしてくださいよ、今言った機構に対しての役割もちゃんと持たせていく、仕事もふやしていくということです。
一体、政府、農林水産省は、農業委員会を、この機構法の中でどういう位置づけを持っているのか、これについて伺いたいと思います。単なる機構の下請機関として位置づけているのか、それとも、ちゃんと法的関与も含めて、権限を持ってもらってしっかりやってもらうのか、そこについて答弁していただきたいと思います。いかがですか。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
農業委員会の位置づけにつきましては、これも全国農業会議所の要望を受けて、人・農地プランの根拠規定であります二十六条に三項として位置づけたわけでございます。
これにつきましては、人・農地プランでございますので、人・農地プラン自身は農地バンク法の、根拠法に位置づけられてはおりますけれども、機構という名前が人・農地プランの中に、逆に明示的にはっきりと主体として出てくるわけでございます。あくまで市町村が農業者の協議の場をつくり、それを取りまとめるということがまずあって、その中で利用権設定等の機運が出てきたときには農地バンクが出てくる、こういうたてつけになっているというふうに理解しております。
そういう中での人・農地プランの会議への参加などの協力の農業委員会の位置づけでございますので、我々としては、農業委員さんあるいは農地利用最適化推進委員さんがその会議の場でコーディネーター役を担っていただき、市町村と協力しながらコーディネーター役を担っていただいて、地域の話合いを実質的に活性化させていただくモーターとなっていただくことを期待しております。
○田村(貴)委員 円滑化団体にも、それから農業委員会にも頑張ってもらうという理解でよろしいんですね、はい。そうしたら、改める点はたくさん出てくると思いますよ。
目標値についてもお伺いしたいなと思っております。
耕地面積に占める担い手の割合、集積率を八割に引き上げていくと。前回、私の質問では、これはKPIだというふうに答弁されました。ところが、耕地面積が減少になっている、年々減少になっている、分母が減っているから、そうしたら集積率は上がるじゃないか、こういう矛盾のもとで集積率のカウントをされているといった問題も前回させていただきました。
おさらいですけれども、前回、私、資料も配りましたが、集積の目標面積、二〇一四年当時の耕地面積が四百五十四万ヘクタールと公表されています、これを基準とした場合、八割となると三百六十三万ヘクタールになりますけれども、計算上はこうなりますよね。いかがですか、局長。
○大澤政府参考人 私どもとしては、二〇一四年当時の耕作面積を基準として考えておりませんので、計算すれば、それは皆さん計算されればよろしいかと思いますけれども、政府としては、過去の一時点を捉えた数値目標として設定しているものではございません。
○田村(貴)委員 過去の一時点を起点としていないと。
資料を配らせていただきました。
これは、農林水産省が全国にも示している数字であります。年間集積目標面積、赤枠で囲っていますね、四十七都道府県別に。この数字は、試算の仕方、積算の仕方は下に書いているとおりでありますけれども、農林水産省の側から都道府県の方に、こういった年間目標を持ってやられたらどうですかという数字であります。
これに対して、右端の方に、過去四年間の集積増加面積というのがございます。四倍になっていかなければいけないというところでありますけれども、全体では一・八倍。都道府県別に見てみますと、いろいろ差はあるんですけれども、目標八割、ここには到底及ばないといった状況にあるのは間違いないといったところであります。
これまでの取組の中で、政府がKPIとして目標値を持って、そしてこれを検証していくという流れの中にあって、この数字というのはやはりシビアに見ていかなければいけないんじゃないですか。達成できるんですか、本当に。
地域で話合いを重視すると言われました。それは本当に結構なことだと思います。これは大事なことだと思います。そして、さまざまな改善点を挙げられたということについても、これは当然のことだというふうに思っています。
しかし、耕地面積に占める担い手の割合というやり方をもって目標値を持っていくならば、どんどん耕作放棄地はふえていて、耕地面積は減っているわけですから、おのずとこれは矛盾に差し迫るというような状況なんです。
これは、どうなんですかね、目標達成できるんですか。改めて伺います。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
現在の担い手への農地面積の集積状況から見ますと、現在五五・二%でございますので、二〇二三年に目標を達成するためには相当集積を加速しなければいけないという問題意識は強く持っているところでございます。
他方で、現在の農業人口の高齢化、減少の度合い等を見ますと、やはり今後、農地は加速度的に出てくる、担い手を探している農地が出てくるというふうに考えてございます。
そうした中で、やはり、目標について、八割は難しいから少し違うものにしましょうということを出すと、逆に、担い手の方に集めなきゃいけないというニーズが非常に高くなっているときに目標を下げるということを仮にするとしますと、現場に誤ったメッセージを与えることになるのではないかというふうに考えています。
ですから、目標は高いものに置きながら、いろいろな措置を改善することによって、まず機運を高めていきたいというふうに我々は考えてございます。
○田村(貴)委員 ある自治体に行ってお話を聞いたら、その自治体の集積率が二割程度にとどまっている、そうしたら、本県の目標が四割だと言われるわけですよ。そういうことになっているんですよ、都道府県にしてみたら。だから、どうやって八割に上がるのか。都道府県の段階で、県の段階でそう言われたんですよ、四割にしか上げないと。そういう状況だったら、ほかが、八〇%どころじゃなく、もっと上げないといけないところが出てくるわけですね。
今、格段とふえてくるというふうにおっしゃったんだけれども、そういう展望をやはり示さないといけませんよ。そういう展望というのは、KPIの中でこの数字が示されている、じゃ、何年までにどこがこういうふうに集積率が上がるという展望を指し示す必要があると思うんですけれども、それはあくまでも目標でありますからと、何もおっしゃらないんですかね。いかがですか。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
私も、地域別にやはり、こうやったら行けるという道筋とそれから目標というのをつくっていく、これが大事だというふうに考えてございます。ただ、それをまた国がつくるということについては、逆にまた地域との離反を招いてしまうんじゃないかということを危惧いたします。
そういうこともありまして、今回はやはり、国会でも法律制定当時にも御修正いただいたような人・農地プラン、これに着目いたしまして、地域別に真剣に考えていただいた上で、農地の集積の考え方、それからそれに至る道筋、これを地域ごとにつくっていただこう、こういう考えに至った次第でございます。
○田村(貴)委員 大臣、最後にお尋ねしますけれども、地域で話合いを重視すると言われました。それから、手続も簡素化していくということであります。ならば、農地中間管理機構、もう必要性はないのではないかと思いますけれども、いかがですか。
○吉川国務大臣 農業者の高齢化が進み、今後リタイアする農家が増加することを考えますと、農地バンクが農地を中間保有をして、再配分を繰り返して、分散錯圃を解消していくことがますます重要となっていると考えております。
今回の見直しにつきましては、農地バンクの必要性を再認識した上で、中間保有機能を十分に発揮させる観点から、農地バンクと、JA、農業委員会など地域のコーディネーター役を担ってきた組織が連携を強めて、一体となって、農地集約化のための話合いを推進していこうとするものでございます。
このため、農林水産省といたしましては、都道府県単位の農地バンクか市町村段階の組織かという二者択一で考えるのではございませんで、それぞれのよさを生かして一体的に集積、集約化を進めていく考えでございまして、今回の見直し案を御審議いただいているところでもございますので、御理解をいただければと存じます。
○田村(貴)委員 いよいよ問題と矛盾が大きくなった、これが明らかになったということを指摘させていただいて、きょうの質問を終わります。