○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
国有林野の管理経営法の改正案について質問します。
まず、ずっと議論されている樹木採取権者についてお伺いします。
去年の林政審の速記録を読ませていただいたんですけれども、この樹木採取権者の対象についてです。「大手の方を入り口で排除することはできないですけれども、」と言われていますね。そして、樹木採取区の「その規模が必ずしも大手企業の今の財務状況からみて魅力ある規模なのかということもあるかもしれません。」このように説明されているわけであります。
答弁で大手企業とは言われていないんですけれども、林政審の議論の中で林野庁は大手企業と言われているんですよ。樹木採取者というのは大手企業のことを念頭に置いているんですね。
○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
今御紹介、御指摘いただきました林政審の中では、今御指摘いただきましたように、大手企業を入り口で排除するものではないということで議論があったかというふうに承知しておりまして、要は、中小企業者を基本的には念頭に置いておりますけれども、大手を排除する趣旨ではないということのお話だったかというふうに思います。
したがいまして、今お話がございましたように、御指摘ございましたように、大手のみを念頭に置いているということはないということでございます。
○田村(貴)委員 対象に入るということであります。
そして、その樹木採取者に最長五十年の伐採権を与えるということであります。複数の伐区、それから数百ヘクタールに及ぶ森林を一手に担わせる。ですから、この林政審の説明では、逆に言うと、その規模が大手企業にとって魅力ある規模なのかわからないと。結局、ここに行き着いていくわけですよね。
五十年、五十年と言いますけれども、先ほどから、森林組合の方からも長期の権利設定を求める声もあると言われました。先月、農林水産委員会で栃木県に視察に行ったときに、ある森林組合の代表の方は、五十年たったらうちの森林組合はどうなっていくのかという発言も出されたわけですよ。答弁と説明が納得できるような形に今なっていないと思います。
五十年といったら、これはパイロット事業で全国で十カ所ぐらいでしょう。わずか十の樹木採取者に独占的な権益を与えることになるんじゃないですか。経営難で途中で施業を放棄されたら、国は大きなリスクを買ってしまう。
そうした意味からも、こういう設定はやめるべきだ、そして、この法律は条文を変えなければいけないというふうに思います。
それから、植栽義務化についてですけれども、本会議で吉川大臣はこのように答弁されました。国の申入れに応じる者を選定するから確実に植栽が行われるとしたわけなのであります。
しかし、担保がないんですよ。この申入れと、意欲と能力のある林業経営者と国との間の約束事というのは、契約書にするんですか。それとも、植栽については業者の方からは同意書をとるのか。契約書と同意書、これは交わすのかということをお伺いしたいと思います。
○牧元政府参考人 今回の制度につきましては、樹木採取権につきましては、あくまでも区域内の樹木を伐採することができる権利でございまして、植栽は権利の対象外ということでございます。植栽については国が責任を持って行うということでございます。
そして、植栽につきましては、ただ、伐採と一貫して行うことがコストの低減に向けて望ましいということで国が申し入れるということでございまして、これは契約を締結して植栽を行うということと考えております。
○田村(貴)委員 契約書を交わすんですね。そして、樹木を植栽するという同意は文書にして提出されるんですね。どうなんですか。
○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
本法案における「植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」という規定に基づきまして、国が樹木採取権者を公募する際に、樹木採取権者が植栽の作業を行う旨を国が申し入れることとして、この申入れに応じて申請した者の中から樹木採取権者を選定をするというこの手続でございます。
これによりまして、樹木採取権者は確実に樹木の採取と一体的に植栽を行うことになるということでございます。
○田村(貴)委員 そういうのを空約束と言うんですよ。これは係争になったらどうするんですか。担保はないじゃないですか。
林政審の議論の中で、この先、木材需要が大幅に、かつ長期的、継続的に広がっていくことが見込まれる場合には、より長期の、大面積の権利を設定させていただくこともありますと言っているじゃないですか。
対象は、大企業を排除しない。そして、広範囲にわたる森林を担わせる、最長五十年。しかも、契約的な取決めは、担保がない。やはりこれは、こういう提起の仕方は大問題であるというふうに思います。私たちは認めることはできません。
次の質問に入ります。
育成単層林の経営の採算性についてお伺いします。
林野庁がことし四月に示した森林・林業・木材産業の現状と課題というものには、「望ましい森林の姿」という図が載っておりました。木材生産を目的とする育成単層林を三分の二に集積、集約することとしていますけれども、この育成単層林というのは、育成、伐採、植栽を繰り返していくわけですよね。
この基本というのは、林野庁が主張されている五十年の標準伐期で主伐していくということの理解でよろしいですね。
○牧元政府参考人 御指摘いただきました「望ましい森林の姿」の中では、地域の自然条件に応じまして、御指摘ございましたように、一千万ヘクタールの人工林のうち、林業に適した森林六百六十万ヘクタールでは、適切な間伐や再造林による育成単層林として維持をいたしまして、それ以外では、針葉樹と広葉樹がまざった森林等へ誘導するということによりまして、多様で健全な森林を育成することとしているところでございます。
人工林におきましては、現在、若い林が非常に少なくて資源構成に偏りがあるということが非常に問題でございます。伐期が到来した資源を適時に伐採いたしまして、その後、再造林を行うことによって、切って、使って、植えるという循環利用を進めていくことが私どもは大事だというふうに思っております。
ただし、この際、自然条件などによりましては、長伐期による森林経営が適している場合がもちろんあろうかと思います。したがいまして、一律に五十年での皆伐のみを進めるものではなくて、地域の実情に応じた適切な資源管理を図ることが重要と考えているところでございます。
○田村(貴)委員 でも、説明の資料は、五十年周期、そして標準伐期は五十年と書いているじゃないですか。ここが基本となるわけですよ。
そういうやり方で今からこういう「望ましい森林の姿」に変えていくとどうなっていくかということについて質問したいと思いますけれども、国有林の二〇一七年の再造林、保育の費用は、一ヘクタール当たり幾らですか。資料ももらっていますけれども、お答えいただけますか。
○牧元政府参考人 お答えいたします。
国有林における再造林については、二〇一七年度の実績で、植栽、下刈り等の初期経費としまして、これは条件のいいところ、悪いところも含めまして、一定の条件のもとで計算をいたしますと、一ヘクタール当たり平均で約二百二十万円程度かかっているところでございます。
○田村(貴)委員 一方で、林野庁の資料によれば、国有林の立ち木の販売価格は、二〇一七年度、一立米当たり二千六百円となります。一ヘクタール当たりの立ち木の量というのは平均で五百立米としてありますので、一ヘクタール当たり百三十万円の販売額というふうになります。百三十万円の販売額に対して、再造林と保育にかかる費用というのは二百二十万円。ペイできないじゃないですか。赤字を生むんですよ、こういうやり方だと。
だから、やはり、一律ではないと言うけれども、基本は一律なんですよ。短伐期、そして皆伐の方針、これを大規模集約化して育成単層林に求めるわけでしょう。こういうやり方が将来的にどうなっていくのかということです。赤字を繰り返すことになっていくのではないですか。長官、いかがですか。
○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
我が国の森林は、資源が充実して主伐期を迎えつつある一方で、若い林が非常に少なくて資源構成に偏りがある状況であるということでございます。このため、伐期が到来した資源を適時に伐採して、その後、再造林を行うことによりまして、切って、使って、植えるという循環利用を進めていく必要があるために、一定量の主伐は必要であるというふうに考えております。
また、自然条件などによっては、長伐期による森林経営が適している場合もあることに加えまして、さまざまな育成段階とか樹種から構成される多様な森林に誘導していくことが重要と考えておりますので、繰り返しになりますけれども、一律に皆伐のみを進めるわけではなくて、長伐期化等による多様な森林整備を進めることが重要というふうに考えております。
○田村(貴)委員 戦前、大規模に皆伐してしまいました。そして、戦後、一斉に造林したものの、今から短伐期そして皆伐でやってしまったら、やはり林業は衰退する一方だというふうに指摘せざるを得ないと思います。
私たちは、短伐期皆伐の施業を木材生産の中心にすることはもう改めるべきだというふうに主張したいと思います。はげ山をつくらずに、持続可能な森林を可能とするために、長伐期多間伐、この施策をしっかりと中心に据えることを要求するものでありますけれども、吉川大臣、私は、これからの望ましい森林、森のあり方というのは、長伐期多間伐、これをやはり中心にすべきだと思うんですけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。
○吉川国務大臣 人工林におきましては、現在、若い林が非常に少なく資源構成に偏りがあることから、伐期が到来した資源を適時に伐採をして、その後、再造林を行うことによりまして、切って、使って、植えるといった循環利用を進めていくことが重要と考えているところでもございます。
この際、自然条件などによりましては、長伐期による森林経営が適している場合もあります。一律に五十年での皆伐のみを進めるのではなくて、地域の実情に応じた適切な資源管理を図ることが重要と考えているところでもございます。
○田村(貴)委員 基本的な方向性が違いますので、私たちはこれを主張していきたいと思います。
そして、こういうやり方では経営的に維持できない、また借金、赤字を抱えてしまうということに加えて、自由貿易協定、経済連携協定であります。TPP、EPAでどうなっていくのか。林産物の関税、TPP発効で十六年目に撤廃ですよね。そしてEPAでは八年かけて全ての関税が撤廃、しかもセーフガードなしです。今から安い林材がたくさん入ってくる。太刀打ちできるのかという問題も迫っているわけであります。
林野庁は、私有人工林において、現状一千五百万立米の国産材供給が、十年後には二千八百万立米になるKPIを示していますけれども、こういう外的要因をもって本当に達成できるんですか。そういう具体的な根拠を示していただきたいと思うんですよ、一千五百万、二千八百万。いかがですか。
○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
御指摘いただきました国産材供給量に係るKPIについてでございますけれども、これは、私有人工林からの国産材供給量につきまして、私有人工林の集積、集約化等を推進するための目標として定めたものでございまして、御指摘ございましたように、二〇一五年の千五百万立方を、二〇二八年に二千八百万立方まで伸ばすというふうにしているところでございます。
一方、森林・林業基本計画の中でも、二〇一四年実績の二千四百万立方を、二〇二五年には四千万立方に伸ばすというような目標も別途掲げているところでございます。
いずれも、国産材の需要の増大ということでは同じ方向性を持った目標ということでございまして、私ども、この基本計画の目標設定に当たりましては、需要、供給両面からいろいろ分析を重ねた上で、このような目標を設定しているものでございます。
○田村(貴)委員 需要があるのか、需要をつくっていくのか、この議論については次にさせていただきたいと思います。
きょうは質問を終わります。