○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
まず最初に、災害による農業被害対策について質問します。
今月六日の当委員会で私は、一連の大雨、台風被害について被害額を確認し、支援策について質問しました。
江藤大臣は、被災農業者向け強農、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型、この補助率を十分の三から引き上げるという方向で今やっていますと答弁されました。そして、農水省が七日に発表した支援対策では、農業用機械や畜産等の再建、修繕、再取得に対する国の補助率を十分の三から十分の五に引き上げることが盛り込まれました。補助率の引上げによって、農家の負担は軽減する、あるいは軽減する可能性が出てまいりました。これはいいことであります。
しかしですよ、大臣。しかし、この十分の五へのかさ上げの適用は、台風十九号の被災農家に限って行われるというではありませんか。台風十五号やあるいは九州北部豪雨については十分の三のままとしたわけであります。なぜ台風十九号だけなのですか。説明してください。
○江藤国務大臣 極めて厳しい御指摘だと思っております。
このことについては、私もこのパッケージをまとめるに当たって、何とかならないかということで、かなり苦労をいたしました。特定非常災害に指定された台風十九号、これは過去に五回しか指定されたことがない。そして、国からお金を出すに当たっては、財政民主主義、財政規律というものを背景にして、国民の理解を得ながらやらなければいけない。そのお金を支出したことに対する根拠がなければいけない。
ですから、十五号だろうが十九号だろうが、被災された方々の痛みとか、それから負担については変わらないわけでありますから、それを委員が、どうして区別したのかと言われれば、申しわけない気持ちはありますが、しかし、時々私が委員会で御答弁させていただいているように、政治は万能ではなくて、やはりどこかで一定の線を引かなければならないという現実にも直面するということだろうと思います。
ちゃんとした答弁になっていないかもしれませんが、一連の経緯としてはそういうことでございます。
○田村(貴)委員 ちゃんとしたお答えになっていないんですね、理由が言われていないので。
厳しい指摘だと言われましたけれども、もうちょっと厳しいことを言います。これは私が言ったんじゃないですよ。佐賀県の山口知事が、八日に、この補助率の問題のみで記者会見されています。江藤大臣の名前も出てきますので、よく聞いていただきたいと思います。
たまたま起きた災害が全体から見て大きいか、戸数が少ないとか、そういうことで語るのであれば、被災地に寄り添うとか、被災農家の声を聞くとか、そういったところというのに意味はあるんだろうかとすら私は思います、ましてや佐賀豪雨災害につきましては、江藤農林水産大臣も来ていただいて話を聞いていただいて、現場のことをよく考えながらやっていただくということで、ずっと一貫して江藤大臣はそのように話をしていただいておりましたので、私は間違いではないのかなと今回思いました、このように山口知事は会見したわけであります。
佐賀県も、そしてその他の被災自治体、被災県も、被災農家向けのこの補助のかさ上げ支援というのは相当な期待があったんじゃないですか。ほかの県からも要望が来ていますでしょう、農水省。
大臣、被災県の、私、今佐賀県の知事のお話をしましたけれども、この不満の声をどう受けとめておられますか。
○江藤国務大臣 つい直近でも、佐賀県知事とはお会いをいたしました。私に対しては直接苦言は申されませんでしたけれども、多分のみ込まれたんだろうと思います。
例えば、私の田舎なんかでも、雨が降って三軒、四軒だけやられたとか、一軒だけトラクターが、それからコンバインがやられたとか、いろいろな案件があります。大きい小さいの区別なくやることが、それは基本的には正しいやり方だろうと思いますが、先ほどの申し上げ方と重複して大変恐縮ですけれども、しかし、国の財政を預かる、そして国のお金を支出する、それには根拠が要る。どういう根拠に基づいてこういうかさ上げを行ったのか。そして、その根拠となる後ろには、特定非常災害という指定があった。そして激甚災害という指定もあった。激甚には佐賀はもちろんなっておりますけれども。こういうことも勘案した上で、それは、佐賀県の方々にはお会いする機会もこれからたびたびあると思いますから、このことについては御理解をいただくようにお願いするしかありませんが、私が常に申し上げているのは、被災者支援は、国だけでやることではなくて、県の方々や地域のJAの方々、当該市町村の方々も力を合わせて農家の方々の負担を減らす努力をするというのが基本線ですから、何とか御理解をいただいて、この復興に向けて力を合わせていきたいと考えております。
○田村(貴)委員 大臣が最初に言われたところが大事なんですよね。規模としては小さな災害で、被災農家とか被災家屋が数軒しかなかった、こういったところを救済する制度がないんですよ。だけれども、その人にとってみたら、家を失った、財産を失った、生活の糧を失った、同じ苦しみなんですよ。そこに行政が応えなくてどうするんですか。今回の措置はやはりおかしいです。
資料をお配りしています。佐賀県大町町のハウス農家の被害であります。
ちょっと説明しますと、この農家はハウスにおいてキュウリ栽培をやっています。大人の背丈まで水が上がってきて、冠水しました。加えて、近隣の工場からの油が押し寄せました。キュウリ栽培に必要なかん水チューブも、それから炭酸ガス発生機も、農機具も、全部やられました。全滅です。もう使うことはできません。そして、この農家の自宅がどうなっているのか。自宅は、油が入って、全壊の被災判定ですよ。まさに、家を失った、収入の糧も失った。これは、災害の規模の大小を問わず、被災者、被災農家にとってみたらみんな同じ苦しみなんですよ。台風の種類、災害の規模で一人一人の支援に差をつけるというのはおかしいんじゃないですか。甚大な被害ですよ。
山口知事は、この会見で、大町町の機械、施設等の被害額は、一戸当たり、一戸当たりですよ、二千三百三十四万円、それぐらいの被害が出ていると言っているんですよ。これだけの被害が出ているんだったら、台風十九号、そしてこの佐賀の豪雨水害と一緒じゃないですか。なぜそうやって差をつけていくのですか。
大臣、今大臣のこの国の建前からいうと、十九号には寄り添うけれども十五号や九州北部豪雨には寄り添わないということになりますよ。そうじゃないですか。
○江藤国務大臣 国からの支援内容に御不満があるということは、私も十分認識をいたしております。しかし、十分の三ということであっても、中には、私もこの現場には行かせていただきました、御自身でハウスの共済に入っていらっしゃる方もおられます。十分の三だけが全てではありません。そして、市町村の方々、それから当該都道府県からの支援がある場合もございます。
最終的に農家によってその補填の率について差が出ることについては、それは農水大臣としては、もっとやりたい、もっとしてさしあげたかったという気持ちはありますが、寄り添う気持ちがないというのは、委員、それは言い過ぎだろうというふうに思います。
○田村(貴)委員 被災者に寄り添うと言われたんです。しかし、現実は被災自治体と被災農家をがっかりさせている。これが現実なんですよ。ですから、今回の措置は全ての被災農家に対してちゃんと行うことを強く求めたいというふうに思います。
次の質問に入ります。日米貿易協定について伺います。
本協定案の特徴は、強力な再協議規定があることであります。また、日米共同声明の三では、本協定の発効後、四カ月以内に次の交渉テーマを決めて協議を再開するとしています。さらに、附属書1のB節五条には、米国は将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求するとあります。
そこで、再協議についてお伺いします。
既にこの協定に盛り込まれた対象それから品目、これを再協議で排除する規定はありますか。例えば、牛肉、豚肉の関税率の変更であるとか、セーフガードや関税割当てなどの見直しについては、再協議の対象から除くという規定はありますか。教えてください。
○大角政府参考人 お答え申し上げます。
九月二十五日の共同声明では、今後、どの分野を交渉するのか、その対象をまず協議することとしておりまして、今後の交渉の内容はこの協議の中で決まっていくということとなっております。今後の協議において日米間で合意したもののみが、交渉の対象となると考えております。
いずれにいたしましても、どの分野を交渉することで一致しても、我が国の国益に反するような合意を行う考えはございません。
○田村(貴)委員 再協議の対象は自由に設定できますよね。そして、それを排除するものは何もないということです。確認されたものがまた再協議されていく。蒸し返しもあるということですよ。アメリカは、輸入自動車に対する二五%の追加関税をカードにして、日本の農業への攻勢をかけてくるのではありませんか。米、水産物、林産物、収穫前後防カビ剤表示義務、残留農薬基準など、これらが俎上に上らない、のせないという保証はこの協定のどこかにありますか。
○江藤国務大臣 本協定の中にはございませんが、これまで日本が過去に結んだ協定の中で、国際的な常識としても、このようなものについては先々に向かっても排除するというものを規定した条約は存在しておりません。
○田村(貴)委員 文書、協定上の中ではその保証はないということですよね。だから、出てくる可能性はあるということです。出てくる可能性があるので大丈夫かとずっと聞いているわけです。
協定四条の(b)では、自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める措置を適用することを妨げてはならないと規定しているわけです。
これは、米国通商拡大法の規定にそっくりであります。同法二百三十二条では、ある産品の米国への輸入が米国の国家安全保障を損なうおそれがある場合、関税の引上げ等の是正措置を発動する権限を大統領に付与すると。よく似ていますよ、この協定は、二三二条項に対して。アメリカは、通商拡大法二百三十二条に基づいて、鉄鋼やアルミニウムなど、カナダ、メキシコ、EUなどの国々に対して追加関税措置をこの間とってまいりました。
しかし、このアメリカのやり方は、国内政策に必要な緊急制限措置には当たらず、WTO違反の可能性が指摘されています。だからこそ、相手国から報復措置を今受けているわけであります。
自動車や自動車部品について、アメリカのトランプ大統領が結論を出すというふうにも報道されていますし、そう伺っています。日本政府は、米国の二三二条に基づく一方的なこの措置について、どのように考えているのか、どのような見解をお持ちなのか、この際、聞かせていただきたいと思います。
○若宮副大臣 田村委員にお答えさせていただきます。
まず、米通商拡大法の二三二条による追加関税を日本の自動車・自動車部品に賦課することにつきましては、現在までも、同盟国である日本との貿易関係、これは米国の経済的な繁栄のみならず、安全保障上にも貢献しているものというふうに考えております。日本からの自動車及び自動車部品の輸入に関しましては、これは、米国の安全保障上の障害になったことは今までもなく、これからもないというふうに考えているところでもございます。
また仮に、自動車等に関しまして、この貿易制限的な措置が導入されるということになりますと、これは、米国の自動車産業を含むアメリカ全体の経済、そしてまた、ひいては世界経済、あるいはこの自由貿易体制にもマイナスの影響を及ぼすものというふうにも考えてございます。
こういった、私ども、我が国の立場につきまして、今回の日米交渉の機会はもちろんでございますけれども、意見書ですとか、あるいは公聴会を通じまして、明確にアメリカ側には伝えてきてございます。こうした私どもの立場には変わりはないということをまず申し上げておきたいと思います。
また、この自動車や自動車部品に係る米通商拡大法の二三二条の扱いにつきましては、日米首脳共同声明におきまして、両国は、協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動をとらない、こういった旨を明記されてございます。
そして、これが日本の自動車・自動車部品に対します追加関税を課さないという趣旨であるということは、首脳会談で安倍総理からトランプ大統領にも明確に確認をさせていただいているところでもございます。
いずれにいたしましても、この貿易制限措置の応酬というのはどの国の利益にもならないというふうに考えてございます。ルールに基づきます多角的な貿易体制を重視する私ども日本といたしましては、いかなる貿易上の措置もWTO協定に整合的であるべきだ、このように考えているところでございます。
○田村(貴)委員 時間が来ました。
副大臣、見解を示されましたけれども、やはり、二三二条項というのは強力なカードだと思います。これに基づく本協定案はやはり日本に一方的な譲歩を迫ってくる、こういう条項が盛り込まれているということが大問題だということを指摘して、きょうの質問を終わります。