○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
家畜改良増殖法案、そして家畜遺伝資源の不正競争防止法案について質問をします。
今回、和牛遺伝資源の二法案の提出のきっかけとなったのは、一昨年の六月、和牛の精液、受精卵が輸出検査を受けずに中国に持ち出されたことによります。動物検疫をすり抜けて和牛の精液、受精卵が持ち出され、そして中国の税関で発覚しました。なぜ日本の動物検疫を簡単にすり抜けられたのか。その責任についてはどうお考えになっておられますか。また、今後の対策についてはどう考えておられるでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
動物の精液や受精卵、これを海外に輸出する場合には、家畜伝染病予防法におきまして、輸出前検査を受けた上で、輸出検査証明書を添えて税関に輸出申告を行うことが義務づけられておりますが、牛の精液や受精卵については、二国間で家畜衛生条件が結ばれている国がないため、輸出検査証明書が発行されず、事実上輸出できないことになっておるところでございます。
一昨年の中国への和牛遺伝資源の不正輸出未遂事案でございますが、動物検疫所の輸出前検査を受けず、税関への申告も行わずに不正に輸出しようとしたものでございまして、まことに遺憾でございます。
このため、農林水産省といたしましては、税関を含む関係機関や船舶会社等に対しまして、精液及び受精卵の輸送に用いられる専用の容器を輸出しようとする者が来た場合には動物検疫所に連絡するように要請をいたしました。
国際定期フェリーが就航する港におきましては、家畜防疫官による見回りを強化をいたしまして、さらには、空港とか港でのポスターの掲示や出国者に対するリーフレットの配布などによりまして、水際監視の強化を図っているところでございます。
加えて、先般御審議いただき成立いたしました家畜伝染病予防法の改正法におきまして、輸出入検疫に係る家畜防疫官の検査権限を強化することとしておりまして、こうした取組によりまして、精液及び受精卵の違法な持ち出しの防止を徹底してまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 事実上、輸出はできない仕組みになっているというのであれば、輸入に対しても輸出に対しても、しっかり動物検疫を進めていってもらわなければいけないというふうに思います。
続いて、家畜改良増殖法の二条二項について質問します。
この二条二項には、次のように定められています。「種畜の飼養者、家畜人工授精所の開設者、獣医師、家畜人工授精師その他の関係者は、国及び都道府県が行う家畜の改良増殖の促進に必要な施策に協力しなければならない。」
なぜ、今回、畜産関係者に国、県への施策の協力義務を新たに設けたんでしょうか。協力しなければならないとする国及び都道府県が行う家畜の改良増殖の促進に必要な施策というのは何のことでしょうか。説明をお願いします。
○水田政府参考人 お答えいたします。
御指摘の改正法の第二条第二項でございますけれども、家畜の改良増殖におきましては、国及び都道府県が果たすべき役割も引き続き重要でございますが、関連技術の普及など昨今の状況を鑑みれば、現場で業務を実施されておられます種畜の飼養者、家畜人工授精所の開設者、獣医師、家畜人工授精師その他の関係者、こういった方々がその役割を適切に果たすことがより一層重要となっていると考えております。
今般の第二条第二項の改正の趣旨でございますが、このように種畜の飼養者などの関係者が重要な役割を担っていることを明らかにするために、家畜の改良増殖において役割に伴う重要な責務を示すこととしたものでございます。
具体的には、これまでと同様に、家畜改良増殖目標の実現に向けました家畜の遺伝的能力評価を始めとする施策や遺伝的多様性の確保などに御協力いただくことを念頭に入れておりまして、これによって民間の家畜改良事業者の自由な改良の権利を害するような、そういったことを考えているわけではございません。
○田村(貴)委員 それでは、もうちょっと確認していきたいと思うんですけれども、この二条二項の規定というのは、強制力がない努力目標ということですよね。裁判規範性がない、つまり、裁判行為を規律するものではない、そして、プログラム規定、法的拘束力はないという理解でよろしいのでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
努力義務規定でございますので、委員のおっしゃるとおりでございます。
○田村(貴)委員 県は県の目標があるんですよね。しかし、現場においては、例えば、農家が授精師さんと協力し合って独自に改良を行っている例もあるわけです。優秀な種雄牛を生み出すこともあり得るわけであります。
この二条二項の規定のもとでも、県などの家畜改良増殖目標と異なる方向だからといって民間の家畜改良が阻害されることはない、つまり、種雄牛の造成は自由であるということを確認したいんですけれども、いかがでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおりでございます。
○田村(貴)委員 では、大臣にも農林水産省にも聞いていただきたいんですけれども、ちょっと具体的な事例をお伺いいたしました。
ある県では、県の方から種雄牛を造成するなと単刀直入に言われている、それで、種雄牛をつくったら和牛登録協会の登録を拒否されたと。これは余りにもおかしい話ですから、御本人さんは異議申立てをして、そして後に是正されたということですね。さらには、県の意向に従わないという授精師さんなので、県の精液を提供しないと言われた、こういう事例があります。
さらには、共進会です。県の持っている種雄牛、それから県内産の種雄牛以外は出品を認めない、これは共進会になりませんよね。先ほど、多様性の確保というふうに言われています。それから、家畜改良事業団で精液を供用されている種雄牛も対象としない。こういう共進会での、何といいますか、中に入れてもらえないというような事例があったというふうに伺っています。
家畜改良増殖法は、改定後も、こうした県の方針と違うからといって不当な排除あるいは圧力が加えられるようなことがあってはいけないと私は理解していますけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘されているような事案について、ちょっと私も把握しておりませんでしたので、よくお聞きさせていただければというふうに思います。
○田村(貴)委員 流れは、種雄牛の造成というのは法に基づいて自由であるべきだ、そしてそれを阻害してはならないといったところを確認してきたんですけれども、このような県の事例が私の耳には入ってまいりました。これは、全部が全部じゃないと思うんですけれども、これではやはり多様性の確保などはできないわけであります。
大臣にもお願いしたいのは、法の趣旨に基づかないこうした実態というのは正していかなければならないし、必要ならば、そういう自治体、県の方に対しても法の趣旨をしっかりと改正後も説明をしていただきたい、是正していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○江藤国務大臣 これは法律ですから、法に基づいてしっかりやるということがまず基本だということを申し上げたいと思います。
その上で申し上げますけれども、やはり、知的財産的という、不当競争にならないようにという、なかなか難しい切り口からこれは切り込んでいるという側面もこの二法にはありますので、この業界にかかわる方々はやはり同じ方向をなるべく向いていただくことも一方で多分必要なんだろうと思います。
しかし、例えば私の宮崎なんかは、鹿児島の個人が持っている種雄牛の種は普通に入っております。それが全国の共進会に出ることは何ら阻害されるものではありません。そのような事例があるということが若干驚きでもありますし、登録協会は、基本的に、牛が生まれたら鼻紋と耳標をつけるというのが基本でありますので、トレーサビリティーの関係がありますから。これも、種雄牛をつくるなというような命令が、それはちょっと、個別に生産局で聞かせてみますけれども、なかなか私の想像の範囲では起こり得ないのではないかと思います。
精液を渡さないということにつきましては、いかにも怪しい人については、今回はちゃんと登録をしないと、これは知事の認可になりますけれども、扱えなくなりますし、保管もできなくなるわけでありますから、この法律のもとでは、精液、受精卵については一定の規律が課せられることは承知をしていただきたいと思います。
○田村(貴)委員 私がお話をお伺いしたのは、怪しい人ではなくて、立派な種雄牛をつくっておられる方であります。そして、精子を渡さない、そして種雄牛をつくるなと実際に言われて、本当に困っていると。それで、この二条二項の改定によってこれが強まるものではないのかという懸念が表されたので、あえて私は、ここの問題できょうお伺いしたところです。きょうの答弁をしっかりと踏まえて対応していただきたいというふうに思います。
そして、続いて、近隣農家同士で精液、受精卵の譲り合いを行っている農家があります。お互いの支え合いであります。そういう事例に対して、今回の法改定によってこのような農家が営農できなくなるようなことはあってはならないと考えますけれども、どうでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
農家同士が精液を譲り合うということでございますけれども、農家の場合、自家利用のために精液を持つということはできますけれども、そうでなくて他人にそれを譲るということになりますと、家畜人工授精所の許可をとっていただかなければ法律に違反するということになりますので、そういった場合には家畜人工授精所の開設許可をおとりいただくということになろうと思います。
○田村(貴)委員 そうしたら、ちょっとまとめになるんですけれども、家畜改良の主体はやはり県になります。県のもとで血統の多様性を維持保全するという観点からも、県という優越的地位を利用して民間や個人の自由な家畜改良を抑圧するような契約は、これは妥当でないというふうに考えます。
これは一般論でいいです。先ほどの例じゃなくて一般論でいいですけれども、個人の自由な民間の家畜改良を抑圧するような契約というのがもしあれば、これはやはり正していかなければならないと思います。契約の中で種雄牛をつくるなというふうにあるんだったら、その契約はおかしいですよね。そういう契約は妥当ではないと考えます。きちんとそういうふうに指導していただきたいと思いますけれども、いかがですか。最後です。
○水田政府参考人 お答えいたします。
個別具体的な事例をよくお聞きした上でお答えさせていただきたいと思いますが、契約の内容につきましては、契約当事者間で合意して契約をするということになりますので、契約の内容について事細かにどうこうという形で指導ができるかどうかという面も含めまして、よく事例をお聞かせいただければというふうに思います。
○田村(貴)委員 確認なんですよ、水田局長。民間、個人の自由な家畜改良を抑圧するような契約はだめですよね、二条二項に照らしても。それを聞いているんですよ、一般論で。法解釈です。契約に基づいてやっているんですか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
県が契約をする場合にはやはり公益性というものがあろうかというふうには思っておりますので……(田村(貴)委員「違う違う、そんなことは聞いていない。県は県であったとしても、民間」と呼ぶ)民間の場合ですか。民間の場合ですと、民間のその改良事業者の方のお考えというのがありますので、そのお考えと、それから、それを譲り受けられる方のお考えがございます。そういう中で売買の契約を結ばれるということでございますので、そこについて、どこまで、どのように指導できるかというところはあろうかと思いますが、個別具体的にまた相談させていただきたいと思います。
○田村(貴)委員 個別の事案で聞いているんじゃないです。今の、一般で、法の解釈で聞いているんですよ。
二条二項に対して、先ほどから、基本的にこれまでの考え方を踏襲すると言われているんだったら、県は県のやり方があるけれども、個人の自由な家畜改良を抑圧するものではない、これは変わりはないですねと聞いているだけなんですよ。個別具体的な例は何もないんですよ。別に国外流出をやろうとしているわけでも、あこぎなことをやろうとしているわけでもないんですよ。そして、多様性の確保も含めてやっているわけですよ。
何か問題ありますか、水田局長。
委員長、とまっています。とめてください。
○吉野委員長 時間をとめてください。速記をとめてください。
〔速記中止〕
○吉野委員長 速記を起こしてください。
水田局長。
○水田政府参考人 お答えいたします。
種雄牛の造成者とそれを譲り受ける方が契約を結ぶということでございますけれども、その契約の中身についてでございますよね。(田村(貴)委員「委員長、これはとめてもらわないと、私は同じことを何度も聞かないかぬ。四回目ですよ」と呼ぶ)済みません。
○田村(貴)委員 いいですか。その二条二項では、「国及び都道府県が行う家畜の改良増殖の促進に必要な施策に協力しなければならない。」これは優位性が書かれているんですかと聞いているんですよ。県の方針に人工授精師さんもみんな従わなければいけないというふうに見えぬこともないから、そうじゃないだろうということを聞いているんですよ、一般的に。それで、民間個人の自由な家畜改良をこの二項は抑圧すべきという定義にはなっていませんねと聞いているんです、再度確認して。
違うんですか。違うんだったら議論を一からしないといけない。
○水田政府参考人 お答えいたします。
それはおっしゃるとおりでございますけれども。
○田村(貴)委員 おっしゃるとおりということで、確認できました。
大臣、よろしいですか。それでは、二条二項が国や県の優位的立場を利用するものでないということを確認しましたので、そういうことで現場の指導等にも当たっていただきたいというふうに思います。
時間がなくなりましたけれども、江藤大臣、宮崎県に私も行ってまいりました。JA中央会、それから小林市の市長さんにもお会いして、やはり畜産雄県の宮崎県のお話を聞いてまいりました。子牛の価格が十万円から十五万円下がっている、そして、観光業が非常に苦境に陥っていて上位の肉が売れない、肥育牛が出荷できない、屠畜場の在庫がいっぱいになっている、子牛が入らないと。まあ、ずっと続いてきている議論なんですけれども、子牛の価格下落、それから和牛の価格の低迷、これは去年の十一月ぐらいを分岐点にして下がっているわけなんですよ。
何が起因しているかといったら、いろいろあるかもわからないけれども、一番大きいのはやはり消費税の増税ですよ。消費税の増税で、去年、クリスマスシーズンも歳末も、枝肉は上がるどころか下がりっぱなしなんですよ。だから、今度、需要喚起とか、それから、この問題を解決するときに一番大きなインパクトのある政策は、私は消費税の減税だというふうに思うわけです。
消費税の減税については、政権与党自由民主党からもお話が上がっています。きのうも自民党の若手の議員の会合があって、そして記者会見も開いて、景気の致命的な下降を食いとめるためには消費税の減税が欠かせないとして、五%への引下げか消費税をゼロにすることを求めているという話です。私、共産党の田村はゼロとまだ言っていません。だけれども、自民党の方からは、もうゼロという言葉が出てきた。
安倍首相はリーマン・ショック級の出来事がない限り消費税を引き上げると言って、今起こっていることはリーマン・ショック並みか、あるいはそれ以上にあると。西村担当大臣も、それから自民党の岸田政調会長も、リーマン・ショック以上の厳しさを覚悟していると。
だとするならば、やはりここは減税でしょう。減税をして消費を喚起していく。これは、今すぐやっても、中長期的にも、物すごく効果があるし、お魚だけ、それからお肉だけ、限定しないで、全ての品目に対して減税は消費に回る。これは有効な施策だと思いますけれども、閣僚の一人として、安倍総理に、ぜひ江藤大臣、進言していただきたい。これは、農林水産業の発展と生産者と消費者をみんな助ける一つの大きな政策になると思いますが、いかがですか。
○江藤国務大臣 消費税の扱いにつきましては、我が党も含めて、さまざまな御意見があることは十二分に承知をいたしております。
三月二十四日の財金委員会で渡辺先生、それから御党の小池先生からもさまざまな御提案があったことは、ベーシックインカムも含めてさまざまな御提言があったことは承知いたしております。
このことについては、総理の答弁として私も議事録を読ませていただきましたけれども、今後の、この新型ウイルスに対応するための経済対策については、御提案いただいたことも含めて、さまざまな対応を検討していくというのが総理の答弁でありました。今のところはこれに尽きるんだろうと思います。
さまざま御提言があることは承知しておりますが、アメリカもかなり大きな経済対策規模、日本と比べてどうだという議論もありますけれども、諸外国においても、今のところは、主要諸外国でも、税制面での対応については、現段階で把握している限りですけれども、付加価値税の減免を行った例は今のところはないということでありますので、慎重な議論が必要だろうと思っております。
○田村(貴)委員 むげに否定されないところというふうに今受けとめたんですけれども。
需要喚起となるのは、やはり、このコロナ不況、コロナショックで、消費が落ち込んでいるところに追い打ちをかけているという経済状況です。そして、収入減になる。そして、運転資金がない、お金を借りている、返済しなければいけない。そういう状況の中で、ではV字回復というのはどうやって進めていくかですよね。そのときに、もう倒産しておった、廃業しておった、破産しておった、これじゃ話にならないわけですよ。それは絶対に防止して、そのときに所得がやはり拡大される方向に行っておかないと、物が買えないわけですよ、V字回復できないんですよね。
ですから、私は消費税を減税すべきだと。今私はここでパーセンテージは言いませんけれども、五%に戻すのは当然だろうというふうには思っています。
消費税の減税を強く要求して、ちょっと時間がどこまで来たのかわかりませんけれども、とまった時間も勘案して、時間が来たようですので、これできょうは終わります。
ありがとうございました。