○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う農漁業対策の拡充について質問します。
まず、江藤大臣に伺います。
この間、宿泊それから宴席、イベントのキャンセルが相次ぎました。そして、ホテルや飲食店を始め、農産物の納入先がなくなって、生産者は塗炭の苦しみの中にいます。既に廃業に至った方もおられます。報道を見ていても、廃業する農家がふえていくのではないか、町の漁業は終わってしまうなど、生産者の悲鳴が次々に上がっています。国民への食料供給に頑張っている生産者を廃業そして離農に追い込むことは、絶対にあってはならないというふうに考えます。
コロナ感染拡大に伴う、この死活問題に対する大臣の対応と決意について、まず最初にお伺いします。
○江藤国務大臣 まさに、これだけ世界じゅうでコロナが猛威を振るいますと、自国で食料を生産することの大切さというものが更に広く国民の間で理解されたというふうに思っております。そういう要望が国民の間で広がっている中で、生産基盤の崩壊を招くようなことは避けなければならない。
しかし、なかなか将来に光を見出せない方が、廃業に追い込まれそうになっている。そして、漁業者の方も、もう既に海に出ないと。魚はおるけれども、出てとったって売れないし、ガソリン代、いわゆる燃料代にもならぬから、漁に行くことをもうやめているんだ、私の地元でもそういう人はおります。そういう方々をどういうふうに支えることができるかということは、非常に日々悩んでおります。
今回の補正予算についても、先生方からの御指摘の中では、ALICの予算を加えれば五千四百億ほど積ませていただきましたけれども、なかなか行き届かないところが大いにあることは十分私も考えておりまして、足らざるところは反省しなければならぬと思っております。しかし、これをまず現場で御活用をいただいて、そして国民の方々の御期待に応えながら、そして、農家の方々がまさにエッセンシャルワークフォースとしてこれから将来にわたって頑張っていけるような施策を、今回の補正予算だけではなくて、もしかしたらもう一回あるかもしれませんので、それに向けても更に検討を進めているところでございます。
○田村(貴)委員 大臣、悩んでおられるとおっしゃったので、何点か提案させていただきたいと思います。
まず、肉牛農家の窮状を紹介したいと思います。岩手県の前沢牛は、一頭売っても手取りが、五十万円だったものが五千円になってしまった。餌代、水光熱費、税金も払えない。宮城県では、一時期、A5ランクの肉がキロ二千円を切る事態となっている。岐阜県でも、飛騨牛が高山市場でキロ二千円を切り、芝浦の市場ではキロ千七百円を割った瞬間もありました。宮崎県でも、八十万円で導入した子牛を育てたのに、三月に出荷したら八十八万円の値しかつかず、これまで三十万円以上かかった経費が丸々赤字となった、こういう状況であります。
そこで、農水省に、牛マルキン、肉用牛肥育経営安定交付金制度について伺います。
農水省は、ALIC事業の一環として、生産者負担金の納付を猶予するとしています。では、お伺いしますけれども、肥育農家が経営難で納付金を猶予され支払わなかったときに、交付金は従前どおり九割交付されるんでしょうか、確認したいと思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
生産者負担金の納付猶予でございますけれども、これは生産者負担金を納付猶予と言っておりますが、後で支払う必要はございませんでして、実質免除と同じでございます。
したがいまして、生産者負担金を支払わなくても、マルキンが発動したときには国費の分は支払われるということでございます。交付金の四分の三が交付されるということになる次第でございます。
○田村(貴)委員 それだったら、やはり緊急時の支援策にならないと思いますよ。だって、二十五カ月ぐらい一生懸命育てていただいた、今は厳しいから、農家の皆さん、納付金は猶予します、払わなくてもいいですよ、しかし、国が責任を持って交付金は九割払いますよというのがやはり緊急時の政策だと思いますよ。大臣、そう思われませんか。
昔、貸し渋り、貸し剥がしという言葉があったけれども、これは出し渋りじゃないですか。これを聞いたら農家の方はやはりびっくりしますよ。こういうときだからこそ、四分の一の負担金の支払いは免除する、そして国が全額責任を持ちますよと。そして、九割の補填も十割ぐらいに引き上げてこそ、やはりこの緊急時の対応策だと私は思うんですよ。検討されたらいかがですか。これだったら従前と変わらないと思います。
そして、これだけしたとしても、農家の利益は出てこないのであります。生産コストと販売価格、この乖離は埋まらないのであります。経営を維持するためには、大きなやはり制度の拡充が必要です。さらに、交付金は出るのに二カ月かかります。待っていられないという声が全国各地から上がっています。岐阜県では、肥育をやめる人も出てきたと伺っています。
大臣、離農者が現瞬間、出ています。緊急事態に即応した、この肉牛農家の支援策、強化すべきじゃないですか。
○江藤国務大臣 極めて厳しい御指摘をいただいたと思っております。
制度設計上、本来であれば、一対三の一の部分をお支払いいただかなければマルキンのお金は出ないというのが制度上の仕組みでありますけれども、今回は支払いの猶予をして、四分の三という数字にはなりますけれども、これを出させていただくということは、今までにない支援策であります。しかし、その分の、支払い猶予した分を払ったとみなして四分の四払うべきだという御指摘は、私もそういう意見を聞いたことは正直ありますので、私の胸にはとめさせていただきたいと思います。
それから、早く払えというお話でありますけれども、これはやはり生産費の計算もありますし、地域マルキンのところもあれば全国マルキンのところもあり、それぞれの地域の事情がそれぞれあります。これは公金を、やはりALICのお金といえども、これは支出するわけでありますから、積算して、きちっとした根拠に基づいて数字を出さなければなりません。これはどんなに急いでもやはり二カ月はどうしてもかかります。
そして、今度出すものが、三月のものが五月に出ますので、大体二カ月ありますけれども、これは東日本大震災のときから毎月出すということになっておりますので、生産者の方々からしてみれば、毎月毎月マルキンが発動されているというふうに受けとめていただけておりますので、できるだけ早くする努力はさせていただきたいと思いますが、生産者ベースでいうと、毎月マルキンも発動されているというふうに御理解をいただけるんじゃないかと思っております。
○田村(貴)委員 胸には届いたということであります。しかし、大臣なんですから、胸の中にしまっておくんじゃなくて、これはやはり実践に踏み出していただきたい。
先ほどからずっと議論が続いています。経済がとまって、流通が途絶えているんですよ。農家の方は全然悪くない。だけれども、どうしようもないんですよ、売れないから、価格が下がっているから。だから、平時でない緊急時のそれに即した対応が必要だと言っているわけです。牛マルキン制度一つとっても、大幅にやはり制度を拡充すべきじゃないですか。そのことを要求しておきます。
漁業も深刻であります。
北海道、青森のホタテは輸出がストップしています。北海道のエビ、タコ、ナマコ、青森のサクラマス、岩手のドンコ、ケガニ、千葉のカジキ、対馬の養殖マグロ、アワビ、サザエ、アナゴ、愛媛、香川の養殖ダイ、沖縄のマグロと、いずれも価格が三割から七割下落し、また、市場でも値がつかない、航空便が欠航などの理由で休漁を余儀なくされているところもあります。大臣も先ほど、休漁の話を出されました。
水産庁にお伺いします。
魚価の下落に対する対策の中心に、漁業共済、積立ぷらすがあります。そもそも、漁業者のうち、漁業共済に加入している割合はどのくらいなんでしょうか。数字を示して教えてください。
○山口政府参考人 お答えいたします。
魚価の下落等により収入が一定以上減少した場合に収入補填を行うのが漁業収入安定対策事業、積立ぷらすでございますが、この加入率につきましては、平成三十年度におきまして、生産金額ベースで七四%でございます。
○田村(貴)委員 漁業者に占める割合を聞いているんですよ。金額ベースで七四%、ずっとこれしか言われないんですよね。そうすると、今漁業者がどういう窮状に置かれているかという実態がわからないじゃないですか。漁済がある、積立ぷらすがある、制度も拡充していると。だけれども、実態がわからないと、やはり制度というのはできてこないと思いますよ。
漁に出ても燃料代にならないと、出漁を諦める漁業者も多いわけです。そうした漁業者の実態、どのぐらい把握されていますか。今、漁に出られない、そして、出ても魚が売れない、だから支援を求めておられる方が漁業者のどのぐらいおられて、そして漁済に入っておられない方はどのぐらいいるのか、これはちゃんと示していただかないと、実効ある政策、実効ある対策は確立できないんじゃないですか。
その実態について把握されていますか、水産庁。
○山口政府参考人 今回のコロナウイルス感染症によりますことを含めまして、インバウンド需要や輸出が減少しているというお話につきましては、各地の漁業者の皆様、また漁業団体の方々からのお声を我々も伺っておるところでございます。
数として幾つかということにつきましては、残念ながら承知しているところではございません。
○田村(貴)委員 そこで、大臣にやはり要請しますけれども、漁業者はこの積立ぷらす、漁済に入っていなかったら、あとはもう融資ぐらいしかないわけですよね。非常にやはり手だてが薄いと言わざるを得ない。そして、その実態についても、どのぐらいの方が漁済に入っているか自体についても、私たち、教えてもらえない。こういう実態ですよ。もっと把握すべきだと思います。
そして、大臣、魚価の下落を補填するなどの直接の支援策、この際、やはり緊急時ですから、検討して取り組んでいくべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 魚価の下落分について支援するというのはなかなか、制度上、正直難しいです。物によって全く違う。
例えば、私たちがふだんから食べているような大衆魚についてはほぼほぼ価格の変動は見られませんが、高級料亭等で使われるようなノドグロとか、大間のマグロとか、それとかウニとか、そういったものは本当に半額とか三分の一の値段でしか、豊洲ドットコムあたりでも流通しておりますけれども、売られているような状況でありますから、これについて何とか支援したいという気持ちは私自身も強く持っております。しかし、それをピンポイントでこの魚種だけやるということは正直厳しいというのが正直なところでございます。
先ほどから、長官から答弁がありましたけれども、積立ぷらすに入っていない方もおられます。この実数を把握する努力はせねばならぬと私も思いますけれども、今入っていない方についても、ぜひ入っていただきたい。
そして、もう一つ申し上げたいのは、持続化給付金については、漁業者の方々はこれも確実に対象となりますので、持続化給付金についても、浜の方々にちゃんと内容を説明して、しっかり申請をしていただいて、給付を受けられるような体制を整えていきたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 持続化給付金、当然であります。これは一回じゃなくて連続してやっていただくことも要請したいと思います。
そして、大臣、直接のやはり支援が難しいと言うんですけれども、これはやっていますよ、外国では。その話をしたいと思うんですけれども。
その前に、政府の一次補正の概算を見たときに、物すごい、私、違和感を感じたんです。なぜならば、これを見て初め説明を受けたときに、農水省の対策のトップは、農林水産物の販売促進、飲食業の需要喚起、そして一ページ目に、もう既に非難ごうごうの、ゴー・トゥー・キャンペーンによる需要喚起と書いてあるんですよ。そして二番目には事業継続と雇用維持がありますけれども、労働力の確保と融資などの資金繰り、先ほど述べたALICの事業であります。
今最も必要とされているのは、生活となりわいを維持するための直接支援であると考えます。
農水省の補正予算は五千四百四十八億円であります。一方、アメリカではどうでしょうか。国立国会図書館に調べていただきました。
農家への直接支払いが一兆七千二百億円、五%の価格下落が生じた場合、損失額の八五%を補償する。そして、農畜産物の買上げ、出てきましたね、農畜産物の買上げ、配給に三千二百億円、野菜、果物、乳製品、食肉をそれぞれ百億円ずつ買い上げてフードバンクに供給する。さらに、主に穀物を対象とした価格暴落対策の財源を補充するために一兆五千億円。図書館で調べていただきました。さらに、低所得者、児童への食料支援、二兆六千八百億円を含めると、アメリカの農業、食料支援額は六兆二千億円にも達するんです。桁が違います。考えが違います。対策の中身が全然違います。
緊密な関係のアメリカがこれだけの対策をやっているんだったら、日本でもやったらどうですか。できないわけないと思いますよ。緊急事態に何としても農家を救おうという構え、これがやはり感じられません。離農、失業者は出さない、そうおっしゃるんだったら、やはりこれだけの直接の支援をやっていかないと、これはもう大変な窮状に追い込まれてまいります。
生産者への大規模な直払い、連続した農産物の買上げ、こうした対策をやはり二次補正も含めて打ち出すときに来ているのではないでしょうか。最後に大臣にこのことを質問しておきたいと思います。
○江藤国務大臣 今先生が、米国の分について六兆円というふうなお話だったんですけれども、これはフードスタンプの分も入れた数字ですよね。(田村(貴)委員「はい、説明しました」と呼ぶ)ですよね。ですから、いわゆるこの緊急対策の分は二兆三百三十億円と私は承知いたしております。
米国と比べて日本の数字の面で競争するつもりはありませんけれども、米国の農業の総産出額は四十一兆六千億ということであると、この予算規模は、全体に見る割合は四・九%になります。一方、日本は総農業産出額が九兆一千億ですから、今回立ち上げた五千四百億余りの予算は六%に当たりますので、決して、アメリカの予算の規模に対して日本の内容が見劣りをするというものではないということは申し上げておきますが、ただ、内容について、直接支払い的なことを入れる、それからフードバンクへの供給等を入れるということについては、これはしっかり勉強しなきゃいけない部分もありますが、なかなか日本の場合とアメリカの場合と若干事情が違いまして、この内容についてはまた精査をさせていただきたいと思っております。
○田村(貴)委員 時間が来ました。
きょうあすの生活に困っておられる生産者を今すぐ救済、支援すべき対策を急いで確立することを強く要求して、質問を終わります。