○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
まず最初に、NHKの子会社NBC、NHKビジネスクリエイトの土地購入問題についてお伺いをします。
三百五十億円土地購入計画、NHK、経営委員会に諮らずと昨年十二月八日に報じられたこの問題は、たびたび本委員会でも論議をされてきましたけれども、事のてんまつがよくわかりません。果たして適切な対応がなされてきたのかとの疑念が湧かざるを得ません。計画を撤回したので終わりでは済まされない問題が含まれていると考えるものであります。
先日のこの委員会で、浜田経営委員長が、内部留保との関係で、NHKが関連会社の債務保証はできないと答弁されました。なぜNHKは子会社の債務保証ができないのか、その仕組みについて教えていただきたいと思います。
〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕
○井上参考人 お答え申し上げます。
NHKが債務保証できるのかという点につきましては、過去に当時の郵政省の考え方を問い合わせた際に、放送法には債務保証についての規定がありませんで、NHKの公共性に鑑みまして、そのような危険の負担を伴うことは実施できないと解すべきだという見解が示されております。
この考え方は現在も維持されているものと理解しております。
○田村(貴)委員 十二月八日の経営委員会のことを、浜田委員長は先日、この委員会で次のように振り返っておられます。
籾井会長と福井専務理事から計画について優先交渉権を得たという説明を受けた、そして、経営委員会としては、NHKが債務保証する文書や違約金の有無、交渉期限や建物の建設計画などについて質疑を行った、議論の過程で監査委員会からは、一連の手続や取引の妥当性などの面で不明な点が残るという発言もあったというふうにおっしゃったわけであります。
では、お伺いします。
債務保証する文書の有無についての質問に対して、NHKからはどのような回答があったんでしょうか、経営委員長。
○浜田参考人 当日の議論につきましては、非公表を前提で議論をしております。よりまして、差し控えさせていただきたいと思います。
○田村(貴)委員 籾井会長、NHKはどのようにお答えになったんでしょうか、債務保証する文書の有無について。
○福井参考人 十二月八日の経営委員会では、私の方から、関連団体が集まって渋谷の土地を購入する計画について優先交渉権を得たことについて説明をしております。それ以外についても、NHKが債務保証する文書があるかないかの有無、それから違約金の有無、購入までのスケジュールや期限、建物の建設計画などについて質疑を行っております。
○田村(貴)委員 債務保証に関する文書の有無についてNHKはどういうふうにお答えになったんですかと聞いているんですよ。
経営委員会では、理事から、手続に瑕疵があるなど厳しい意見が出されたとされています。結果的に、土地購入計画は撤回となったわけであります。
一体どのような問題があったのか、いま一度経過の説明をしていただきたいと思います。
○籾井参考人 御説明いたします。
本件につきましては、関連団体の将来のありよう、要するに、合併だ、統合だ、いろいろありますけれども、そういうことも含めまして、業務の効率性などの観点から、関連団体の社屋、NHKの近くに点在しておるのでございますが、これを一カ所にまとめていこうということは前から検討していたわけです。その途中で、この土地の問題が出る前にもいろいろな、ビルを買うとか買わぬとかそういう話もあったんですが、いずれもうまくいかなかった。
こういう状況の中で、土地の問題で可能性があるということが出てきまして、それで、仲介する人たちを通じましていろいろ交渉した結果、十一月十九日にNBC、ビジネスクリエイトが優先交渉権を得たわけでございます。それ以来、全役員出席の会やあるいは理事会で意見交換を重ねてまいったわけでございます。
これは経営委員会の議決が必要なことではありませんけれども、重要な事項でありますので、十二月八日の経営委員会でも報告を行いました。経営委員会や執行部から、執行部はその朝の理事会でもいろいろな意見が出ました、反対意見も出ましたし。でも、そういうことを踏まえて、経営委員会に話を、報告を持っていったわけです。
そうすると、やはり経営委員会の方でも慎重論が多くて、このまま進めてもうまくいかないというのが私の総合的な判断でございました。
十二月十八日までこの優先交渉権というのは有効で、それまでに返事をしないと無効になる、こういう種類のものでございましたから、やはり理事会でのいろいろな意見、それから経営委員会における皆さんの御意見等々を踏まえて、私としては、最終的には、これはこのままこれ以上進まない方がいいという判断をして、経営委員会終了後に臨時の役員連絡会を開いて、正式な手続に入ることをやめ、したがいまして、関連企業並びに相手の方にもこれを御報告したということで、この話はここで終わったわけでございます。
○田村(貴)委員 全くわかりません。今述べられたのは事務的な手続だけであって、そして、経営委員会で議論があって、結果的にやめたということの繰り返しなんですね。
今からNHKは放送センターを建てかえるんですよね。巨額のお金を使ってやるわけですよね。こういう三百五十億円の土地購入の問題でこれだけ議論があって、それが何が問題だったのかということを視聴者に、そしてここで明らかにしないと、やはり信頼というのは得られないと思いますよ。
NHKは、計画撤回に至った経過について、一応こういう回答をもらっています。経営委員や執行部の一部から、慎重な対応を求める意見が示されるなどさまざまな意見が出て、このまま進めてもうまくいかないと総合的に判断した。うまくいかないと籾井会長も言われた。
慎重な対応を求められたというのは、どういうことなんでしょうか。うまくいかないとするところの理由というのは何なんでしょうか。この際、はっきりお答えいただきたいと思います。
○籾井参考人 私の記憶によりますと、何を慎重にすべきかという御意見はなかったと思います。ただ、こういう問題は慎重に運ばなければならない、こういう御意見だったわけでございます。
当然のことながら、我々としては慎重に運ぶわけでございますけれども、それでもやはり、慎重に運ばなければならないという意見の中に、私はネガティブファクターが随分あるというふうに察知いたしました。したがって、総合的に判断して、やめたわけでございます。
これがこれだからこうやってやめたということではないんです。やはりこういうものというのは、皆さんがやるぞということがあって初めてやれるわけでございます。
○田村(貴)委員 そのネガティブファクターについてお伺いをしているわけなんですよ。
会長は、計画の段階でポジティブなサインを送っていたとこの委員会でも答弁されています。報道によれば、放送センターに子会社九社の社長を集めて説明会まで開いた。用意周到にされてきたわけでしょう。そして、入札までした。その計画が、経営委員会の一日で撤回となったわけなんですよ。手続上よほどのことがあったのではないかと思うのが、これは自然なことであります。
そこで、お伺いしますけれども、会長、しっかりお答えいただきたいと思うんですけれども、NHKの子会社が土地の購入資金を銀行から借り入れる際に、銀行側の求めに応じて、NHKは計画に責任を持つとする文書を提出されたとされています。
籾井会長、その文書というのは、債務保証と同等の意味をなす文書だったんですか。
○福井参考人 銀行には何も紙は出していませんし、そういうものは存在いたしません。
○田村(貴)委員 紙は存在しない、出していないということですね、確認します。
そうしたら、浜田経営委員長、その経営委員会の質疑を通じて、債務保証の事実があったのかなかったのか、これはイエスかノーかでお答えいただきたいと思います。
○浜田参考人 なかったと思います。
○田村(貴)委員 なかったと。五文字ですね。確実な話ですね。(浜田参考人「はい」と呼ぶ)確認します。なかったということです。
そうしたら、一体何が問題なのか、ますますわからなくなってまいりました。だから、これはやはり説明していただかなきゃいけません。
質問をかえます。
放送法二十九条、経営委員会の職務について、「重要な不動産の取得及び処分に関する基本事項」というのがあります。経営委員会に諮らず入札まで至ったのは、二十九条に抵触している、違反ではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
○浜田参考人 昨年十二月二十二日の監査委員会の報告によりますと、NHKビジネスクリエイトによる土地購入に関する件は、買い受け申込書を提出し優先交渉権の内定を得たことは放送法に違反するとは認められないとしております。
経営委員会としても、監査委員会の報告を受け、同じ認識をしております。
○田村(貴)委員 きょうは限られた時間なので、ほかの質問もありますので、いつまでもできないんですけれども、多数の会派から多数の議員が、この問題の事実はどうなんですか、なぜ巨額の土地購入が途絶えてしまったのかと。それはやはり、今後の放送センターの建てかえのことを考えても、しっかり説明すべきだと私は思うわけです。こうした計画を適正に立案、国民に、視聴者に説明をしていくことを求めたいと思います。
こうした問題できちんと適正な処理ができていないと、さらに大きな建てかえに移ったとしても、疑念は残ります。視聴者・国民の理解は得られない部分も出てくるということを私は指摘しておきたいというふうに思います。
次に、放送法について尋ねます。
高市大臣がこの間、一つの番組のみでも政治的公平性が遵守されていないと総務大臣が判断する場合には電波の停止もあり得る等々の答弁それから発言について、私は、大臣所信質疑でここで取り上げました。
放送法第四条第一項第二号の政治的公平性の適合性の判断については、これまで、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断することとされてまいりました。しかし、大臣は、昨年五月十二日参議院総務委員会で、補充的な説明とした上で、一つの番組のみでも、第四条の政治的公平性を確保されているとは認められない場合があるとされたのであります。
では、その政治的公平性の適合性の判断は、何をもって判断するのか。判断する権限があるのかという点について、総務省の見解を伺いたいと思います。
総務大臣が、仮に、個々の番組で政治的公平性に疑義が生じた、疑問を持たれた、それで審査をするとしましょう。そして、その審査の過程では、当然、番組制作に係る事実確認等が必要になってまいります。審査の過程で、放送局から総務省への報告や資料提出というのが不可避なものとなってまいります。
では、その資料提出にかかわる放送法の規定はどうなっているでしょうか。
放送法百七十五条に、総務大臣は、政令の定めるところにより、放送事業者に対してその業務に関しての資料の提出を求めることができると定められています。その政令とは、放送法施行令第七条で定められています。放送法百七十五条と施行令七条の定める資料提出というのは、放送法第四条の項目を対象としているんでしょうか、していないんでしょうか。
つまり、放送法第四条、「放送番組の編集に当たつて」の、「一 公安及び善良な風俗を害しないこと。」「二 政治的に公平であること。」「三 報道は事実をまげないですること。」「四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」について、百七十五条で求めるところの対象ではないんですよね。これを確認したいと思います。いかがですか。
○今林政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘になりました放送法第百七十五条は、総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、放送事業者などに対しその業務に関し資料の提出を求めることができると規定しております。
これを受けまして、これも先生から御指摘いただきました放送法施行令第七条におきまして、「総務大臣が資料の提出を求めることができる事項」といたしまして、番組基準及び放送番組の編集に関する基本計画に関する事項、審議機関の組織及び運営に関する事項、この審議機関は放送番組審議機関のことでございますが、それから議事の概要並びにその答申または意見に対して講じた措置に関する事項、それから、訂正または取り消しの放送に関する事項などが列挙されているところでございます。
したがいまして、総務大臣は、放送法第百七十五条により資料の提出を求める場合におきましては、これら列挙されたもののみについて資料の提出を求めることができると考えられます。
委員から御指摘、御質問がございました放送法第四条の規定への抵触がないかを調査するための資料は、そういった調査が必要な場合でも、個々の事案によりましてその内容は異なると想定されます。
したがって、総務大臣がその資料の提出を求めることができるかどうかということは、その事項が先ほど申し述べました放送法施行令第七条に列挙されたものに当たるのかどうかということによるものと考えられます。
以上でございます。
○田村(貴)委員 施行令七条の範囲については御説明があったんですけれども、もう一度確認します。放送法第四条のこの四項目について総務省の方から事業者に対して資料を求める、このことを定めているのが百七十五条ではないということですよね。四条の四項目に対して、百七十五条はどうなんでしょうか。
○今林政府参考人 重ねてで恐縮でございますが、放送法四条の規定への抵触がないかを調査するための資料というものは、その調査が必要な場合におきましても、個々の事案によって内容は異なるものと想定されますので、その個々の事案に応じて考えられるものと存じます。
○田村(貴)委員 個々の事案というのはどういうことなんでしょうか。放送法第四条の四項目も個々の事案の中に入るという理解でいいんでしょうか。
○今林政府参考人 先ほど申し述べましたとおり、資料提出を求めることができるかどうかというのは、施行令第七条に列挙されたものに当たるかどうかということでございますが、今申し述べましたとおり、放送法第四条の規定についても、その調査が必要な場合、その個々の事案によって考えられるということですから、一義的に否定されるものではないということかと存じます。
○田村(貴)委員 繰り返しになりますけれども、それは百七十五条の中に放送法四条の、施行令七条には放送法四条と書いていないんですけれども、そういう理解になっちゃうということなんですか。確認します。
○今林政府参考人 法律の中に、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、資料の提出を求めることができると規定されておりまして、その施行令に先ほど申しました事項が列挙されているものでございます。
それ以上の定めがございませんので、私どもといたしましては、法律の施行に必要な限度ということで、この第四条の規定への抵触がないかを調査するための資料というものについても該当するものと考えております。
ただし、その場合でも、先ほど申しましたとおり、列挙されたものに当たるかどうかというところが個々の事案によって違うものと考えられます。
○田村(貴)委員 施行令七条には、「第五条」から次、次と書いて、具体的に書かれているわけなんですよ。しかし、今、局長の答弁では、第四条も、大くくりにしたらその中に入ってもいいと。驚きの見解ですね。私たちもこれはちょっと考えてみたいというふうに思います。
では、個々の番組で四条に照らして問題があると判断した場合、これはどうやって検証、証明していくんですか。
○今林政府参考人 先生御承知のとおり、放送番組は、放送法の規定に従いまして、放送事業者の自主自律によって編集されるべきものというのが放送法の大原則でございます。
したがいまして、第四条の第一項各号に適合しているか否かということは、まずは放送事業者の皆様がみずから判断いただくべきことということでございます。
その上で、先生もお話ございましたように、必要に応じて、個別具体的な事案に応じて、放送事業者の皆さんからの事実関係を含めた報告を踏まえまして、必要な対応を行うことになるというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 いろいろな場合があると思うんですけれども、これは資料の提出の強制力があるんでしょうか。それから、資料の提出を事業者が拒否する権利はあるんでしょうか。
○今林政府参考人 いろいろな場合があると思いますけれども、先生御指摘の趣旨が、例えば放送法百七十五条の規定によって求めることができる資料、あるいは行政指導といったことに関連して求める資料ということでございますが、放送法第百七十五条の規定によって資料の提出が求められた場合については、放送法の百九十三条の規定におきまして、資料の提出を怠り、または虚偽の資料を提出した者は、二十万円以下の過料に処するとされているところでございます。
他方、行政指導につきましては、任意で資料の提出をお願いするということでございますので、放送事業者の方々がこれを断ったという場合でも、こういった罰則などの適用はございません。
行政指導は、御承知のとおり、行政手続法第二条第六号を根拠としておりまして、処分のように相手方に義務を課したり権利を制限したりするような法律上の拘束力はございませんで、相手方の自主的な協力を前提としているものであるため、強制力はないということでございます。
○田村(貴)委員 四条の四項目については、なおさらそういうことだというふうに思います。それは、憲法上の表現の自由、それから番組編集の自由、表現の自由、これがやはり基本であるというふうに考えます。うなずいておられますから、そうなんでしょう。
はっきりさせておきたいのは、資料提出の権限はない、それから客観的判断はやはり下せないというふうに私は思うわけです。
少し古い議事録を読ませていただきました。
一つは、平成六年、一九九四年三月二十四日の衆議院逓信委員会で、当時の局長は次のように答弁されています。
事が起こって疑わしいなというときに、まずその会社に物を言って、それが疑わしくないということの証明をあなたの方でしてくださいと。それは、当方は放送番組編集の自由をたっとびますから、のこのこ手を突っ込むことはいたしません、まずあなたで正であるということを証明してくださいと。まあ、挙証責任の転換というのでしょうか、
こういう過去の答弁があります。
もう一つ、平成五年、一九九三年十月二十八日、これは参議院逓信委員会での局長答弁であります。
編集、放送が偏向されたかされなかったかということにつきましては、まず第一次的に当該会社に、放送局に自分の番組についてはこうだった、公正でしたとか偏向してたとか、そういうことをそちらに調べてもらう。
まず会社に自分のところを判断してもらいまして、その結果をいただきます。その結果を我々は見せてもらいますという仕組みをとっているということによって矛盾なく事を進めさせていただく、
そういうふうに答えておられるわけであります。
挙証責任の転換、第一次的には会社に判断を委ねる。放送法に照らして疑義が生じたときに、その検証というのは、放送事業者のみずからの取り組みに委ねる、これは放送法の核となるところだというふうに私は思うんですけれども、このときから大分時間がたっています。総務省は、その立場に変わりはありませんか。
〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕
○今林政府参考人 先生御指摘のとおり、過去さまざまな議論がございましたけれども、そもそも放送法は、放送事業者の自主自律を基本とする枠組みになっておるところは御指摘のとおりでございます。
放送法第四条第一項各号に適合しているか否かというのは、まずは放送事業者の皆さんがみずから判断するべきものと考えます。
具体的に申しますと、放送事業者が放送番組の編集の基準をみずから定めて、これに従って放送番組の編集をすることということで、これが第五条に定められておりますし、放送事業者は放送番組審議機関を設置し、そこで放送番組の適正を図るために必要な事項を審議することということが第六条に規定されております。
したがいまして、放送法におきましては、放送事業者の自主自律によって放送番組の適正を図る枠組みがしっかりとつくられているというふうに考えております。
したがいまして、総務省は、国民・視聴者の利益を確保する観点から、そういった放送法が遵守されているかどうかについて、放送番組の適正性の観点から、放送法を所管する立場から従来より必要な対応を行っているところでございまして、例えば行政指導を含む対応につきましても、その立場から個別の事情などをよく勘案した上で、従来から極めて慎重に検討して実施してきているところでございます。
○田村(貴)委員 放送事業者の自主自律が基本であるといったことを確認させていただきました。
高市大臣にお尋ねしたいと思います。
政府、総務省が挙証責任を果たしようにも物証がない、なぜならば、資料を請求する権限が法的に与えられていないからであります。
高市大臣は、政治的公平性を確保されているとは認められない場合があるというふうに述べられることもあったんですけれども、それは法の建前からして確認のしようがないのではないか。それを大臣が判断するとならば、極めて主観的な判断につながっていくのではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○高市国務大臣 まず冒頭に申し上げますけれども、田村委員が最初におっしゃったように、私が一つの番組をもって電波をとめる可能性があるというふうに国会の中で発言をしたことはございません。私自身が電波をとめると申し上げたことはないということは申し上げさせていただきます。
それから、放送番組は、放送法の規定に従いまして、放送事業者の自主自律によって編集されるべきものでございます。したがって、放送法第四条第一項各号に適合しているか否かは、まずは放送事業者がみずから判断すべきである、これもこれまで答弁をしてまいりました。そのための仕組みとして、第五条に規定されているように番組の編集基準を定めていただくことや、六条に放送番組の審議機関を設置していただくことなど、自主自律的な取り組みのための条文がございます。
その上で、必要に応じて、個別具体的な事案において、放送事業者からの事実関係を踏まえた御報告も踏まえて、必要な対応をとるということはございます。これはあくまでも、ちまたで話題になっておりますように、放送法百七十四条の放送業務停止命令であったり、電波法七十六条の無線局の運用停止命令をイメージしたものではございません。ここもまた、はっきり申し上げておきます。
その場合におきましても、正当な表現の自由を制限することがないように、極めて慎重な配慮のもと運用すべきであるということは、従来からそのように取り扱ってきていますし、いずれにしても、これまで、放送事業者に対して、放送法第四条の政治的公平などに違反したという理由で行政指導や業務停止命令などが行われた事例というのはございません。重大な注意義務違反があったと放送事業者がみずからお認めになり、また報告も受け、そして、こちらから今後遵守に対する要請をお願いする、注意をしていただくということについて要請をするといった事例はございました。
そもそも、平成二十二年に放送法は抜本改正されました。恐らく、昭和二十五年に放送法ができてから一番大きな改正だったと思います。そのとき、日本共産党さんは反対されましたが、それ以外の全党全会派が賛成しておられます。
この折の大改正をしたときの議論の中で、放送法第四条に法規範性があること、そして、この番組準則、放送法第四条に違反すると認められた場合に、電波法七十六条や放送法第百七十四条などの適用の可能性もあるということ、しかしながら、その運用というのは極めて慎重に行わなければならないことなどが答弁されております。
そういう意味では、検証に用いる資料の有無、そういった御指摘でございますし、大臣が判断するということだったらおかしいじゃないかという問題意識かと思いますが、それぞれ、百七十四条にしても、「総務大臣は、」ということで、総務大臣が主語になっております。日本国憲法第五章において、内閣は行政権の主体としての地位を認められており、そしてまた、日本は議院内閣制でございますから、やはりそれぞれ各省の大臣が所管する法律を誠実に執行していく、しかし、その場合に、法に従って、法に定められた内容に従って公正に執行していくということである、このように考えております。
○田村(貴)委員 たくさん御答弁いただきました。
高市大臣、ちょっと踏み込み過ぎているんじゃないかなと私は思うんです。法の建前とか制度について話される中で、やはり踏み込み過ぎている。
例えば、この間の答弁でも、BPOの自主自律によって報道番組の適正を図るというのが基本であってもと。その後に、そういった取り組みをいただいても、どうしても必要な場合には、放送事業者から事実関係を踏まえた報告を受けて必要な対応を行うと。対立してあるわけなんですね。
私は、所信質疑のときに大臣に聞いたんです。いろいろ、番組について疑義がある、そして聴取したとかそういう動きがある中で、では、大臣自身は、個々の番組に問題があるのか、極端に政治的公平性が遵守されていない番組があるんですか、そういう認識を尋ねたら、個々の番組には問題があったと認識していないと何度も答えられたんですよ。
差し迫って公平性を欠くような番組はないとおっしゃっておられながら、わざわざ、どうしても必要な場合はとか行政指導とか、そういうことで持ち出してこられるのは、やはり私は踏み越えているんじゃないかなと思います。
大臣の発言というのは非常に重いものがあります。これはやはり萎縮という影響も出ているということを指摘させていただきたいというふうに思います。
放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、また規律されることはありません。それは放送法三条に定められています。そして、憲法二十一条、表現の自由に基づくものでもあります。報道の自由も、この表現の自由の保障に含まれます。なぜなら、報道機関の報道は、国民の国政への参画のための知る権利に奉仕する機関であるからであります。だからこそ、放送法第四条は倫理的規定であり、法規範とならない、これが大方の通説となっています。規律について、第一次的には放送事業者の自律に任せるものであります。
時間が余りないんですけれども、私は、やはり規制機関については、きょうは欧米の状況について、アメリカとかイギリスとかの状況についてお伺いしたかったんですけれども、ちょっと時間がございません。
基本的に、行政機関の長が放送内容を判断して行政処分できる国というのはなかなか珍しい、欧米諸国では、ないというふうに理解をしています。
先ほど大臣は、憲法において内閣に行政権がある、その地位があるから、各省の大臣がそれぞれ所管する分野の行政を執行するという感じの答弁をされたと思うんです。
総務省にお伺いしたいと思います。
これは憲法上の制約があるんでしょうか。第三者による規制機関を、現憲法のもとで、放送法、電波法を変えることによってそれは可能だと私は考えるんですけれども、いかがでしょうか。
○今林政府参考人 先生御承知のとおり、現在の憲法下におきましても、過去には、行政委員会でございます電波監理委員会というものが放送行政を所管していた時期がございます。
これを考えますと、例えば放送法、電波法を改正して、放送行政の所管を第三者機関に委ねるということは、論理的には可能であると考えます。その具体的なあり方については、憲法との関係などを総合的に検討する必要があると考えます。
なお、行政委員会でございますが、なぜ、それでは今その委員会になっていないのかと言いますと、これも大臣も何度か御答弁申し上げておりますが……(田村(貴)委員「いえ、質問は違います。できるのか、現憲法下で」と呼ぶ)ですから、現行憲法下においても可能ではあるというふうに考えております。
○田村(貴)委員 言論、表現の自由にかかわる放送行政の規制というのは、やはり政府から、政党から独立した規制機関がまともな姿だ、これが世界の常識だということを指摘しておきます。
総務大臣の監督ではなく、新たに放送委員会、独立行政委員会を設置し、放送行政を規律するように、そういう制度を求める、制度改正を求めたいと思います。これが我が党の立場であります。放送行政は、独立した規制機関が必要になっているのではないか。
きょうはいろいろ質問したかったんですけれども、過去に、二〇〇七年、二〇一〇年に放送法の改正、総務省の方が番組編成に対して権限を持とうとした、そういう事例も私は学習したんですけれども、結果的には削除となったという歴史も聞きました。
そうした歴史を踏むならば、もう独立した規制機関が必要ではないのか。BPOもあります。ちゃんと活動しています。そういう議論をするときに今来ているのではないかなというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○高市国務大臣 過去に日本でも委員会があったことはございましたけれども、責任の所在が不明確ということで、これがなくなったということでございます。
よその国、諸外国の例も先ほどおっしゃいましたけれども、一般的に、政治的公平も含む番組規律は諸外国でも定められているところが多うございます、放送行政を所管する組織で運用されていますが。
例えば、アメリカは、大統領が任命する委員から構成される合議制の委員会であるFCCが放送行政を所管していますし、フランスでは、大統領が指名する委員長及び上下院が指名する委員から構成される合議制の委員会がございます。イギリスも、英国放送協会、BBCへの特許状の付与など一部の許認可は、大臣を長とする文化・メディア・スポーツ省が所管しております。放送内容に関する規律を含む放送行政は、この省の大臣が任命する委員から構成されるOFCOMが所管しています。
さまざまなあり方というのが各国の事情に応じてあります。
日本のところは、現在、先ほど申し上げましたような理由から、行政権を持つ、責任を持つべき所管大臣が責任を持って行っていく。また、非常に放送業界は技術進歩の速い世界でございますので、迅速な対応という意味からも、所管大臣が責任を持って行う、ただし、法に基づいて。こういう考え方でございます。
○田村(貴)委員 しかし、独立規制機関であることは間違いないわけなんですね。日本は違うわけなんです。
不偏不党、政治的公平性の判断を当の政治家自身が下すこと、これはできません。番組編集にかかわる資料を要求する立場にもありません。そして、総務大臣が、例えば政治的公平性の判断ができる由もないというふうに思い、きょう私は質問をさせていただきました。
この間の高市大臣の、たとえ一つの番組であっても、あの発言と、政府統一見解、この撤回を重ねて要求して、きょうの質問を終わります。
終わります。