192-衆-総務委員会 総務委員会 郵便局で米保険販売 田村貴氏追及 TPP先取り 衆院委

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 今国会では、TPPの協定の審査が続いています。TPPは、多国籍企業の利潤追求のために、暮らしや経済のあらゆる分野において貿易拡大に向けた規制緩和が進められるものであります。
 その協定書第十一章、金融では、全ての保険、銀行、その他の金融サービスが含まれています。また、日米の交換文書では、日本郵政の販売網へのアクセスや日本郵政グループが運営するかんぽ生命が民間保険会社より有利になる条件の撤廃に認識が一致したと明記されています。
そこで、日本郵政の保険業務について質問をいたします。
 お配りしている資料一は、日本郵便とかんぽ生命における金融商品の取り扱い一覧表であります。資料二は、日本郵政とアフラックとの連携について及び取扱局の推移についていただいた資料であります。

(配布資料はコチラ)

 この資料を見てまいりますと、がん保険の商品の取り扱いはアフラックと書いてあります。かんぽの七十六支店で取り扱いとされています。これは法人相手だというふうに伺っておりますけれども、個人相手のアフラックのがん保険の取扱局は郵便局という理解でよろしいんでしょうか。では、その直近の取扱局はどれだけの数になっているか、教えてください。


○稲澤参考人 お答えいたします。
 アフラック様の個人向けがん保険でございますけれども、二〇一六年十月一日現在でございますけれども、がん保険の取扱局数は二万六十五局となっているところでございます。
〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕


○田村(貴)委員 がん保険の種類はアフラック一社だけでしょうか。


○稲澤参考人 郵便局におけるがん保険の取り扱いでございますけれども、アフラック一社でございます。


○田村(貴)委員 驚く話です。
この資料にもありますように、法人向けの生命保険会社は七社、自動車保険は五社、バイク自賠責は十社と、複数社の商品を取り扱っているのに、なぜがん保険だけは米国企業一社、アフラックだけなんでしょうか。説明してください。


○稲澤参考人 日本郵便、いろいろな商品、多数ございますけれども、郵便局において販売する商品の供給会社でございますけれども、がん保険について広く公募を行わせていただきまして、経営基盤でございますとか、実績でございますとか、商品性、あるいは全国的な販売、事務支援体制、保険金等支払い管理体制等につきまして総合的に判断の上、選定をさせていただいたものでございます。がん保険につきましても、二〇〇七年に公募をいたしまして、アフラックを選定させていただいたところでございます。
以上でございます。


○田村(貴)委員 なぜ一社なのかという質問にはお答えになっておられないと思います。
 経過からいうと、日本生命と日本郵政は二〇〇八年から提携関係にありました。がん保険の共同開発でも商品設計を終えて、システム面でも対応は完了していたというふうにされています。なぜこの提携は断たれてしまったんでしょうか。


○千田参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のがん保険につきましては、二〇〇八年二月から、日本生命とがん保険の共同開発の準備を進めてまいりました。その後、二〇〇九年の三月に政府に対しまして、第三分野、がん保険の限度額規制に関する政令改正要望を提出いたしましたけれども、その実現の見通しが立たなかったというふうなことで開発を断念したというふうなことでございます。
 二〇一三年に既に一部の郵便局で受託販売をしておりましたアフラックの商品の取り扱いを拡大するということが、お客様サービスの向上と郵政グループの企業価値向上の観点から適当であるというふうに企業として判断したものでございます。


○田村(貴)委員 よくわかりませんけれども。
 日本生命は、当時、異例のコメントを発しました。かんぽ生命とは五年以上にわたりさまざまな面で協力をしてきた経緯があり、遺憾だ、こういうコメントを発したのであります。
 先ほどお答えになったがん保険、アフラック一社の取扱局は二万六十五局です。これは、生命保険募集委託契約している全国の郵便局の九七・一%、まさに郵政のネットワークそのものであります。米国の一社の商品が郵政のネットワークをフルに使って販売されている、保険を扱う日本の企業はあまたある中、参入はしていない。これはある意味、民業圧迫ではないんでしょうか。
 郵政のネットワークの開放というのは、アメリカ側の強い要求でありました。民営化の流れは、アメリカの対日要求と期を同じくして進められてまいりました。
 例えば、二〇〇六年十月の第十回郵政民営化委員会で、在日米国商工会議所会頭で元アメリカ通商代表部、USTR理事のチャールズ・レイク氏は、郵便保険会社が民営化後新たに提供する商品、サービスに変額年金、医療・傷害保険等の第三分野商品を列挙したことに対して、こう述べています。新規業務の主なターゲットをACCJ会員企業が専門とする分野にあえて絞り込んだことは大変遺憾に思っておりますと。つまり、新商品はアメリカの企業でという要求をむき出しにされたんです。また、第一段階としてやるべきことは、郵便局ネットワークに民間保険の参入を認めと述べているわけであります。
 このチャールズ・レイク氏というのは、どこの企業のトップですか。
〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕


○稲澤参考人 お答えいたします。
 お尋ねのチャールズ・ディトマース・レイク二世氏につきましては、アフラック、アメリカンファミリー生命保険会社、正式名称で申し上げますとアメリカン・ファミリー・ライフ・アシュアランス・カンパニー・オブ・コロンバスの日本における代表者、会長と承知しております。


○田村(貴)委員 余りに露骨なアフラック側からの介入であったと私は受けとめました。
 郵便局の窓口には、かんぽ生命とアフラックの保険が一体となったカタログやチラシがいっぱいあります。国会内の郵便局でも多数置いてありました。「郵便局からお届けする「アフラックのがん保険」」お得ですよといっぱい書いています。こちらは、「郵便局取り扱い記念」「アフラックの社会貢献活動」、ここまでPRするパンフレットが置かれている。このチラシは、「郵便局でアフラックのがん保険をお取扱いしています」「がん保険のお申込みをいただいたお客さまに抽選で合計一万百名様にカタログギフトをプレゼント!」と、ネットワークの開放がまさにこうした商法となってまいりました。
 なぜそこまで、米国一社の企業を優遇して商品を独占的に販売する、こういう形になっているんでしょうか。


○稲澤参考人 お答え申し上げます。
 先ほどもお答え申し上げたとおりでございますが、郵便局において販売する商品の供給会社でございますが、広く公募を行い、経営基盤、実績、商品性、全国的な販売、事務支援体制、保険金等支払い管理体制等について総合的に判断の上、選定をさせていただいているものでございます。がん保険についても、アフラックを選定したところでございます。
 先ほどお答え申し上げたとおり、限度額規制に関する政令改正要望等々がありましたけれども、ただいま現在、アフラックの商品の取り扱いというのを二万局まで拡大するというところまで来ております。これは、お客様サービスの向上と郵政グループの企業価値向上の観点から適当だと判断したものでございまして、当グループの経営判断でございます。一社やってございますが、仮にそのほかのを郵便局で販売ということがございますれば、仮にそうした御提案があった場合には、御相談をいただくことになるのかなというふうに思っておるところでございます。
 先生、今パンフレットというのがございましたけれども、今、私どもはかんぽの代理店でございます、簡保もやってございますけれども、その中で足りない保障の部分について、がん保険というものをあわせてお客様に御紹介させていただくということで、お客様の多様なニーズに応えてまいりたいというふうに思っているところでございます。
 以上、お答え申し上げます。


○田村(貴)委員 いろいろ言われましたけれども、選択できるがん保険というのはアフラック一社の商品しかないということであります。
 販売へのアフラック社のかかわりはどうなのかということなんですけれども、金融庁と総務省は郵政民営化委員会に意見を求めました。その中で、アフラックのがん保険を販売する郵便局に対する教育と指導の部分について、「株式会社かんぽ生命保険の新規業務に関する郵政民営化委員会の意見」という文書の中に、次のような記述がございます。郵便局に対する教育と指導については、アフラックががん保険にかかわる全般的な教育、指導を、株式会社かんぽ生命保険が郵便局個々のデータを踏まえた教育、指導を行うとしているが、両者の責任関係が曖昧にならないよう、役割分担を明確に実施することが重要であると。
 教育と指導にアフラックが乗り出していく、そういう意見となったんでしょうか。


○安藤(友)政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十六年六月十九日付ということになりますが、「かんぽ生命保険の新規業務(がん保険の受託販売等)に関する郵政民営化委員会の意見」におきましては、今委員から御指摘のありました記述があることは、そのとおりでございます。


○田村(貴)委員 そうなんですよ。アフラックが郵政の職員、社員に対して全般的な教育、指導をすると。私もこの文書を読んでびっくりしました。
 現場の社員の方にお伺いしました。そうしたら、エリアマネジメントの郵便局の営業会議にまでアフラックの社員が出向いてくるそうであります。そして、こうこうこういうふうに売ってほしいと要求されるというお話を聞きました。
 さらに、社員に配られる単独マネジメント局速報値という文書があります。私はそれを見させていただきました。そこには、「かんぽの提案先には、必ずがん保険の提案書を持参し活動量アップを!」と指示されています、びっくりマークまでついている。つまり、アフラックがん保険販売は、かんぽ生命の商品と必須条件ということになっています。そして、大きい文字で「必ずやる できるまでやる 絶対やる」、この文字で指図をされています。恐るべき強制であります。
 お伺いしますけれども、郵政の社員においてこのがん保険の販売というのはノルマがあるんでしょうか。


○稲澤参考人 お答えいたします。
 会社の健全な経営に必要な収益を上げる、確保するということが必要でございますので、各商品について、郵便局ごとあるいは社員ごとに営業目標といったものがございます。
 事業を営む以上、会社の収益目標を掲げて、この達成に向けて社員全員で取り組むということは必要なものであるというふうに私どもとしては認識をしておるところでございます。
 以上、お答え申し上げます。


○田村(貴)委員 契約の販売の目標設定まで要求していますよね。現場の社員から伺った話ですけれども、東京管内のエリアマネジメントでは、一つの局当たり月に四万八千円の月掛け保険料を契約することが目標となっているそうであります。現実はそうなっているわけですね。アフラックがん保険の異常なまでの力の入れ方だというふうに思います。
 第百二十二回の郵政民営化委員会、二〇一四年十一月ですけれども、日本郵便の河本執行役員は何と発言しているか。一取扱者当たりの量というものをアフラック社は期待しておりますので、取扱局がふえる、取扱者がふえることによって、そこは相似形で当然ふえるものだとアフラック社のほうは考えておりますと。そして、アフラック側がとにかく稼働局、稼働者をふやしてほしいと言っていると述べているわけであります。
 アフラック社がここまで稼働力を求めて、そして、かんぽ生命が八百名のパートナー営業社員を、郵便局に販売促進で動いていく。局と社員には目標値を持たせて、売れ売れと指図していく。どこまでこうしたアフラックがん保険に肩入れをしていくのか。
 一私企業に郵政のネットワークを使わせるその理由について、お答えいただけますか。


○稲澤参考人 先ほどからお答えをさせていただいているとおりなんでございますけれども、郵便局において販売する商品については、広く公募を行い、選定をさせていただいたところでございます。
 先ほども、これもお答え申し上げたところでございますけれども、郵便局での取り扱いを今二万局までがん保険を拡大しておりますけれども、これはお客様サービスの向上と郵政グループの企業価値の向上の観点から適当であるというふうに、私どもグループとして判断をさせていただいたものでございます。
 以上でございます。


○田村(貴)委員 それでは、総務省の方にお伺いいたします。
 今るる申し上げてきましたけれども、こうした外資の一私企業の単一の商品を、郵便局のユニバーサルサービス、二万局のネットワークを使って、アフラック社の要求どおりにこういう販売方式を続けていることについて、総務省はどのように判断されているのか、お伺いしたいと思います。


○安藤(英)政府参考人 お答え申し上げます。
 日本郵便がどの保険商品にどのような販売体制を構築いたしまして取り組んでいくのかということにつきましては、これは日本郵便の経営判断事項であると私どもとしては考えてございます。
 先ほどユニバーサルサービスの言及がございましたけれども、がん保険の販売につきましては、これは法律で規定されておりますユニバーサルサービスの範囲内には入っていないということでございます。


○田村(貴)委員 いや、全国の郵便局で扱う商品は特定私企業の一商品しかない、これはユーザーから考えてもおかしい話なんですよ。だって、ほかの保険については日本企業の複数社の商品があるじゃないですか。何でここだけがこういうことになっているのかと聞いているんですよ。TPP絡みなんですよ、後で言いますけれども。
 そこで、高市大臣にお伺いしたいと思います。
 結局、チャールズ・レイク氏の要求どおりになってきたんですね。そして、日本から見れば、これこそ民業圧迫ではないかというような事態となっています。郵政事業というのはアメリカ資本に食われてしまうのではないか、こういう懸念が現場から、関係者から起こっています。
 やはり守るべきは郵政のユニバーサルサービスではないのか。長年国家が、郵便、簡保、貯金、それが行ってきた事業を民営化したもとでも国民にあまねく守っていく、そして国民が選べる選択肢も持って提供することがやはり大事だろうと私は考えますけれども、大臣の所見をお伺いできればと思います。


○高市国務大臣 日本郵便が郵便局でがん保険の取り扱いを行うかどうか、どの社のがん保険を販売するかということについては、日本郵便の経営判断に委ねられております。
 また、先ほども答弁ありましたが、がん保険の販売は法令で定められているユニバーサルサービスの範囲には含まれておりません。


○田村(貴)委員 がん保険の独占的な販売について、こうした状況をつくり出してきたのはTPPでありました。それは、がん保険の業務提携が発表されたときに、アフラックの首脳が、TPPでの日米交渉に好影響を与える、こうしたことをコメントしたことからも明らかであります。
 しかし、情勢は変わってまいりました。アメリカの新大統領がトランプ氏になります。トランプ氏はTPP脱退を掲げておられます。そして、オバマ政権時における米国議会の承認も、もはや絶望視されていますよね。アメリカが参加しないもとでTPPの発効というのはあり得ません。安倍総理も、昨日、参議院の答弁で、大変厳しい状況になってきたとお認めになっておられます。もうけはアメリカ本国に吸い上げられていく、こうした販売方式をおかしいじゃないかと指摘する関係者もたくさんおられます。
 私は国益に反するようなやり方だと思いますけれども、こうしたTPPをめぐる情勢が変わってきた今、やはり郵政事業における金融そして保険の取り扱いのあり方を見直すべきではないかと思いますけれども、高市大臣、いかがでしょうか。


○高市国務大臣 そもそも、日本郵便ががん保険の商品供給会社としてアフラックを選定したことを発表したのが平成十九年の十一月でございます。ですから、ことし御議論をいただいているTPPの話とは、私は直接的な関係があるとは考えておりません。
 先ほども申し上げましたが、アフラックとの業務提携は、日本郵便の経営判断によってなされたものですから。
 総務省として申し上げられるのは、日本郵便において、企業価値ですとか利用者の利便性の向上、ここに向けて適切な経営が行われるということを期待いたしております。


○田村(貴)委員 郵政とアフラックが提携を発表したときの日本経済新聞の見出しは、「TPP交渉に追い風」だと。先ほども言いましたように、アフラック側の首脳がまさにTPPに好影響を与えると言っていることを述べている。さらに、チャールズ・レイク氏が、郵政民営化委員会の中で重ねて参入を呼びかけ、ネットワークを使わせろと言ってきたんですよね。まさにTPPの先取りといった中で今の業務形態になっていると私は指摘せざるを得ません。
 お配りしている資料の三なんですけれども、生命保険会社の支払い漏れ等による追加支払い件数の推移であります。金融庁からいただきました。
 かつて不払い問題が起こって、処分命令が下されました。そして、平成二十一年度に業務改善計画が各社から出されましたけれども、支払い漏れは後を絶ちません。アフラック社は、平成二十三年度、二十四年度、外部発見、つまり契約者からの苦情と指摘によって追加支払い件数がトップであります。決して褒められたものではありません。この状況から見ても、この会社がぬきんでて優良な企業とは言えないと思います。
 では、何でこの企業一社だけなのか。アフラックの商品は本当に大丈夫なのか。選択肢が一つしかない、支払いまで責任が見えない商品を私たちは扱っていていいのか。郵政の社員の人たちが現場でこうした疑問の声を上げていることを、日本郵政の皆さん、ぜひ聞いていただきたいと思います。
 日本郵政は、民営化後も、我が国唯一のユニバーサルサービスを提供する会社であります。トランプ氏は、TPP反対で、二国間協議を主張しているとも報じられています。二国間協議となれば、さらにそれ以上の対日要求が今から迫られてくる話、これはアフラックだけで済む話ではないというふうに私は危惧の念を持ちます。
 アフラックのような外資系企業が郵政グループの業務に食い込む懸念が指摘されています。郵政のネットワーク、ユニバーサルサービスを、アメリカ資本そしてグローバル企業のもうけの対象にしてはなりません。TPP批准に私は強く反対をします。そして、現行の、今のがん保険の取り扱い、それから外資のあり方について、全般的に保険業務の見直しを行うべきだと思います。
 以上のことを強く要求して、本日の質問を終わります。ありがとうございました。