193-衆-総務委員会  諫早堤防 国が開門協議率先を 衆院委で田村貴氏 解決の道提起

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 国営諫早湾干拓事業と有明海再生についてきょうは質問をします。
 開門差しとめ訴訟の和解協議がこの一年余り続いてまいりました。しかし、三月二十七日に、長崎地方裁判所はこの和解協議を打ち切りました。
 一九九七年、今から二十年前に潮受け堤防の排水門が閉め切られて、その後に有明異変が生じました。
地方議会では、多くの意見書が可決されました。開門を求める意見書七十六件、有明海の再生を求めるものは五十六件、そして開門の反対を求めるもの二十七件を含めれば、百五十九件もの意見書が政府に対して出されました。
 国策が、九州の有明沿岸四県の自治体と、そして住民、関係者を長期にわたって翻弄し続けてまいりました。そして、今、和解協議決裂のもとで、ますます溝が深まっています。
 このことについて、最初に、高市大臣、個人的なことでも結構ですけれども、思いがあれば、また御所見があれば伺いたいと思います。


○高市国務大臣 諫早湾の干拓事業につきましては、総務省の所管外のことでございます。現在、総務大臣としての職責にありますことから、個人的な考え方といったスタンスで私から答弁しがたいということについては御理解を賜りたいと思います。
 本件は、やはり所管省において適切に対応されるべき事柄だと思います。


○田村(貴)委員 では、きょう、農水省細田政務官にお越しいただきました。ありがとうございます。
 では、和解協議が実らなかった、今後どうしていくのかということであります。訴訟を長引かすということは、これは農林水産省も望むところではないと思いますけれども、いかがでしょうか。


○細田大臣政務官 今、先生御指摘ございました諫早湾の潮受け堤防の開門問題をめぐっては、裁判所の相反する判断が存在し、複数の争訟が現在でも提起されているという非常に困難な状況にあるというふうに認識をしております。
 このような中で、長崎地裁による開門を前提としない和解勧告を受け、長崎地裁での一年を超える和解協議を行ってきたところでございますが、その結果として今般和解に至れなかったことは、大変残念に感じております。
 私ども農林水産省としては、問題の解決に向けて、引き続き、争訟が提起されております本件をめぐる一連の争訟に適切に対応してまいりたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 この訴訟を続けていくということは、一つは、確定判決に農水省は従っていませんので、これまで約八億円近い制裁金を漁民原告に払い続けている。これからも、毎日九十万円、間接強制金を延々と支払い続けていく。
 確定判決に従わず、そして制裁金を支払う、それを国民の原資の税金から払うことについては、これは国民は納得しない話であります。裁判を延々と続けていってもらちが明かないから和解協議になった。和解協議が成功しなかったんだったら、やはり歩み寄ることが大事ではないかなと私は思うわけです。
 この一年間は一体何だったのかということで、漁民、営農者双方から落胆の声が報道されています。有明海問題を何とか解決したいから、三者は和解協議のテーブルに着きました。裁判を続けていけば、今政務官がおっしゃられた、その相反する二つの法的義務に縛られて、農水省も望まぬところの係争を続けていくことになります。そうであるならば、これは仕切り直しをするしかないわけなんです。協議をし続けるしかないんです。その協議の場をやはり設ける必要があると思います。
 私は、そのために国がイニシアチブを発揮すべきではないかというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。


○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 国といたしましては、長崎地裁が一年以上の和解協議を経てお示しになりました本年一月の和解勧告を重く受けとめまして、これを基礎にいたしまして協議の進展を図るべきというふうに考えておりましたが、本件をめぐりましては、開門を求める方々と開門に反対する方々との主張には大きな隔たりがございます。今回、裁判所の和解勧告に基づく和解協議では問題の解決に至ることができませんでした。
 そのような状況にございますので、委員の御指摘につきましては、現状において極めて難しいと言わざるを得ないというふうに考えてございます。


○田村(貴)委員 六つの裁判を延々と続けていっても、これは光は見えません。今までの裁判がそうだったじゃないですか。和解協議に至っても、合意は得られなかったじゃないですか。
 長崎地裁の訴訟指揮は、開門によらない解決案が前提でありました。これに無理がありました。その長崎地裁をしても、二月二十四日、開門しない案だけでなく、開門する場合に関する協議を並行して行う、  このことも提案されたんですよね。今度は、もうこの訴訟指揮はなくなったわけですので、開門を前提としないということに縛られないはずであります。これから、営農者、漁民、そして農水省が、和解あるいは新たな場面での協議をぜひ探求していただきたいと思います。
 そのためには、やはり開門も選択肢の中に入れていく、これは当然のことです。そして、農漁共存の知恵を出し合うことがやはり何といっても解決への道につながると思いますけれども、この基本的なスタンスについては、政務官、いかがでしょうか。


○細田大臣政務官 今、種々お話がございましたが、長崎地裁の和解協議においては、先生から御指摘があったとおり、裁判所から開門を前提としない和解勧告というのが行われました。これが開門を求める方々には受け入れられず、開門にかわる基金と開門についての並行協議を行っても和解成立の見込みが高いとは言えないので、和解協議を打ち切るという長崎地裁の判断が示されたところでございます。
 他方で、福岡高裁の和解協議においては、同高裁から、長崎地裁の和解協議が進行しないとなれば、審理に戻さざるを得ないという考えが示されているところでございます。
 このように、現在、複数の争訟が並行して行われているということもございます。私ども農林水産省としては、今後、福岡高裁の訴訟指揮に従いつつ、本件をめぐる一連の訴訟に適切に対応してまいる所存でございます。


○田村(貴)委員 一連の訴訟に適切に対応していくということでは、これはいつまでたってもらちが明きません。それはもう御存じですよね、ずっとやっているんですから。和解協議で歩み寄ろうとして、それでだめだったんだったら、やはり協議しか解決するすべはないわけなんですよ。
 そこで、漁業者の原告は、和解のステージにやはりみんなが着くことを望んでいます。農水省のイニシアチブを発揮していただくことを強く求めたいと思います。
 毎日新聞三月二十八日付に、武田真一郎成蹊大学法科大学院教授のコメントが載っております。少し紹介します。「裁判所は法的判断しかできない以上、政策判断を含む解決策を示すことはそもそも無理がある。和解が決裂したことで足踏み状態が続くだろうが、開門して影響を調べるなどこれまでにない一歩を踏み出す時期に来ている」。こう識者も指摘しているではありませんか。
 事態打開には、開門を含めて協議しなければなりません。国が決断する、その状況に来ていることを強く指摘しておきたいと思います。
 和解案の中にあった有明海振興基金についてお尋ねします。
 この百億円の振興基金の目的は、水産資源の回復と漁業経営の発展にありました。和解は決裂しました。しかし、四県の漁民、漁連、漁協は、この基金案の実現を願っています。そうですよね。
 農水省の方から示された基金の中身は、タイラギ、アサリなどの生育に向けた施設の整備や母貝団地の造成、漁場管理などでありました。これは今の有明海に必要だからということで、基金の中で提案されたんですよね。しかし、この和解協議は実りませんでした。しかし、必要だと思って提案したことだったら、やるべきではないですか。
 有明海再生事業に加えて、この水産資源の回復の事業をこれからしっかりと行っていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。


○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 国といたしましては、引き続き、有明海特措法に基づきまして、関係省庁、関係県と連携しながら、漁業者等の御意見も伺いながら、有明海の再生に向けた取り組みを推進してまいりたいというふうに考えてございます。
 今後の有明海再生対策につきましては、現在進めております取り組みの成果なども踏まえまして、検討してまいりたいというふうに考えてございます。


○田村(貴)委員 この間の和解協議を、私も地元で、あるいはこの国会の場で見守ってまいりました。そして、去年の決算委員会においても、私、質疑に立たせていただきました。そのときにも苦言を呈させていただいたんですけれども、農水省の漁民、漁業団体に対する対応というのは非常にまずいものがあったというふうに思います。これが連続しています。
 例えば、和解協議が不成立の場合、基金ばかりでなく有明海再生に係る予算もなくなるか、減額される、こうしたことを漁民に対して説明されましたね。これについては、三県漁連の大きな反発を買い、山本農水大臣は、国会で、それは本意でなかったというふうに釈明されました。
 さらに、開門調査をする場合、原因特定のためには現行の再生事業がとまる可能性がある、これは佐藤局長、当事者なのでよく覚えておられると思うんですけれども。こうした旨の発言というのは、漁民、漁業関係者に対して、再生事業を人質にしたおどしだということで、これもまた大きな反発を生むことになったわけであります。
 きわめつけは、漁業団体幹部に対する、基金受け入れを求めての想定問答でありました。漁協のトップの想定問答、セリフまでつくった想定問答については、せんだっての農水委員会で我が党の畠山和也議員がただしたところでもあります。
こうした漁業関係者に対する高圧的な、上から目線、そして誤解を生むような接し方は、今後、この問題の解決に当たって、やはりそういう姿勢は改めるべきだというふうに思います。とりわけ想定問答集については、地元も含め、マスコミからは、失策であった、対応のまずさがあった、問題をこじらせてきた責任は国の姿勢にあると厳しく批判されているところであります。
 漁業者から反発と不信を招いたこれまでの対応について、これを総括して改めるべきではないかと思いますけれども、いかがですか。


○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 国といたしましては、長崎地裁による開門を前提としない和解勧告を受けまして、有明海全体の漁業環境の改善に向けた総額百億円の基金の検討ですとか、漁業団体への意見聴取といった長崎地裁の訴訟指揮に従いまして、昨年の一月以来、この和解勧告に沿った和解の成立に向けまして、真摯に努力してきたつもりでございます。
 これに対しまして、漁業団体におきましては、それぞれの漁業団体が組織内で議論を重ねていただきまして、国の提案した基金の受け入れの可否について御判断をいただいたものと承知をしております。
 そうした中で、長崎地裁の和解協議におきまして和解に至れなかったことは、大変に残念に思っております。
 いずれにいたしましても、国といたしましては、問題の解決に向けて最善の努力を図っていくという必要があるというふうに考えてございます。


○田村(貴)委員 問いに答えていません、局長。
 今までの局長も含めた農水省の漁業関係者に対する、不信を買ったこと、そして怒りを買ったこと、このことについて、やはり総括とそれから反省が必要ではないですかと私は問うているんです。いかがですか。


○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 この諫早湾干拓問題につきましては、長年の経緯のある難しい問題だと考えてございます。
 漁業団体を初めとした関係者の御意見、御提案に耳を傾けながら、それらを踏まえまして、今後とも真摯に協議を重ねていきたいというふうに考えてございます。


○田村(貴)委員 農水省は和解の実現に誠実に対応してきたのか。今の答弁に見られるように、余り真摯な反省がないというふうに私は思わざるを得ません。漁業者と信頼関係を損ねる事実が余りにも多過ぎました。猛省を求めたいと思います。
 営農者側に肩入れするような姿勢が、長崎地裁の和解協議打ち切りの判断に傾けさせたともとれる、こうした地元の厳しい指摘もあります。報道からの指摘もあります。想定問答の提出を求めたいと思います。
 そして、国と営農者と漁業者の三者による協議の再開を農水省がイニシアチブをしっかりとってやっていくことを強く求めて、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。