193-衆-総務委員会 4K8K実用放送は拙速 電波法改正で田村議員ただす

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 4K、8Kの実用衛星放送の開始に伴う問題について、及びその対策について質問をいたします。
 左旋円偏波を使用する4K、8Kの実用放送では、旧式の設備や不適切な施工によって、電波が漏えいするとしています。漏えいによってどういう問題が生じるのでしょうか、御説明をいただきたいと思います。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、旧式の受信設備、これは宅内配線部分のブースターでございますとか分配器、端子、心線がむき出しで直づけされているような設備から電波が漏えいをする、それによりまして、既に運用されているほかの無線局に混信を与えることが心配をされているところでございます。
 具体的な事例で申し上げますと、例えば、電波が漏えいしました場合に、既に使われているWiFiと言われるものの通信速度が低下をして、ウエブサイトの表示が遅くなったり、あるいは動画を再生しているときに動画がとまってしまうといったような実態的な影響が出てまいるというふうに考えてございます。


田村(貴)委員 総務省からの「旧式の衛星放送用受信設備の例」という資料をお配りさせていただいています。二枚目の方が拡大しているのでわかりやすいかなというふうに思います。
 例えば、自宅で従来のこうしたコネクターそれからブースターを使って左旋放送を受信して視聴するとします。隣の家ではWiFiを使って無線LANを利用されているとします。そうすると、その端末にフリーズが起こったり、あるいはテレビに受信障害が起こってしまう、そういうことがあり得るという理解でよろしいでしょうか。

 

(配布資料はこちら)


南政府参考人 委員御指摘のとおり、左旋の対応した中間周波数というものから、使用しますと電波が漏れ始めるということで、同じ中間周波数を使っております他の無線局ということで、今御指摘のように、WiFiが当面想定されているものでございますけれども、そういったものに影響を及ぼすおそれがあるということでございます。
 旧式の設備が左旋の中間周波数に対応していない場合に、伝送される信号品質そのものが劣化してしまう場合がございますので、その場合は、4K、8Kのアンテナに取りかえたとしても信号自体が受信できない、そういう事態も起こり得るというふうに考えております。


田村(貴)委員 ですから、それぞれのテレビにつなぐときに、こうしたコネクターあるいはブースターが必要になってくるということであります。
 もう少し理解を深めるためにお聞きしますけれども、例えば、集合住宅、マンションに左旋の対応の共同アンテナをつけたとします。そして、この放送が各戸で見られるようになるんですけれども、見る見ないにかかわらず、各戸においてこうした新しい受信設備を設けなければ電波障害が発生するということでよろしいんでしょうか。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 集合住宅において右左旋両方に対応するような共同アンテナに取りかえるというふうにいたしました場合で、かつ、宅内配線部分につきまして旧式な設備が引き続き使用されてしまっているというケースにおきましては、先ほど申し上げましたとおり、左旋の中間周波数に対応していないものですから、信号品質が劣化しますので、そもそも4K、8K放送が受信できなくなってしまうというケースもございますし、電波の漏えいによって、既に運営されているWiFi等の無線局に混信を与えますので、それによって通信速度が低下するという問題が生じる。
 特に、集合住宅のケースでございますと、近接する複数の部屋に同時に思わぬ影響が及ぶというケースも考えられるというふうに考えてございます。


田村(貴)委員 やはりこれは大変なことだと思うんですね。とりわけ集合住宅では、全戸でこういう対策をしないと、自分はもうテレビを見ないという方もおられるし、4K、8Kはまだ先だと思っていても、電波の漏えいによってWiFi無線に干渉する、それから、テレビを見ておられる方はそこで受信障害が起こってくる。そういう相互干渉があるということは、これはやはり大変な事態になってくるんじゃないかなというふうに思うわけです。
 そこで、お伺いしますけれども、来年十二月から実用衛星放送が始まります。そのときでもいいんですけれども、あるいは二〇一九年でもいいんですけれども、左旋電波受信世帯というのはどのぐらい想定されているんでしょうか。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 今後さらに数字は精査をしてまいりたいというふうに考えてございますが、一応、二〇二〇年、全国の世帯の約五〇%、二千六百万世帯が4K、8Kが視聴できる状況をつくるというのが私どもの目標でございます。
 ケーブルでごらんになられている場合は支障は全くございませんので、衛星放送を直接受信する世帯というのは現在約三分の一ぐらいございます。そのうち、先ほど申し上げました左旋円偏波を受信するようなアンテナを取りかえて、かつ、宅内配線部分は旧式の設備に対応しているというケースは、さらに一定の割合、絞られてくるというふうに考えてございますので、現在は二百万から四百万程度の世帯が左旋の受信を行う可能性があるのではないかというふうに見込んでいるところでございます。
 今後、精査はさせていただきたいと思ってございます。


田村(貴)委員 国の目標は、この間も私、質疑のときにも述べましたけれども、ちょっと予想がつかないということであります。
 私も素人で、例えばテレビの接続子がふえたら、勝手にこれをいじって、分配器を買ってきてやったりもしたことがあるんですけれども、これはちょっと素人の手に負えないような、言ってみれば、網線ですね、網の部分と中心線、これが露出していてはいけない、ちゃんと被膜する、覆っていくという形にならないと、左旋電波そのものも落ちてしまうし、そして干渉が起こってしまうから、余り素人的にさわってはだめだということでしょうか。


南政府参考人 私どもも、承知しております限りにおきましては、やはり素人が簡単な工具でいじることによってさらに混信が起きる可能性があるというふうに聞いておりますので、そこは専門の業者に、その施工方法も含めてきちんと周知をした上で、適切な対策を施していただく必要があるというふうに考えてございます。


田村(貴)委員 お話を聞いていたら、ますます大変だなというふうに思うわけです。
 つまり、集合住宅だったら各戸でしないといけない、そして、どの家でも各部屋にテレビ、F型コネクターの接続端子があれば、その中の対応もやっていかなくちゃいけない、そうじゃないと万全が期されないというお話だったというふうに思います。
 そこで、法案では、衛星放送用受信環境整備事業というのが掲げられているわけですけれども、この受信環境整備に対する支援というのは、誰が、どこに、どのようなことをする事業なんでしょうか。


南政府参考人 御説明申し上げます。
 受信設備環境支援事業の中身でございますけれども、4K、8Kの実用衛星放送の開始に伴いまして、先ほど申し上げました宅内配線部分のうち、旧式の設備と申しますのはこれから定める技術基準を超えて電波が漏えいするものでございます。そうした場合に、当該技術基準に適合するような必要な改修、施工工事といったようなものに対して一定の支援を行ってまいりたいということでございます。
 実は、これにつきましては、以前、地デジを移行させるということの際に、デジサポと言われております間接補助事業者等をちゃんと中心にいたしまして、工事事業者、施工管理者が連携して、視聴者の皆さんの申請をいわば代行していただくような、そういう形で円滑に工事を実施したという経験も私どもございますので、そういった経験をベースにしまして、今後、工事事業者、施工業者をどういうふうに関与させていくのか、あるいは販売店における周知啓発をどうするかということも含めて、具体的な対策方法を検討してまいりたいと考えてございます。


田村(貴)委員 それでは、この整備事業の予算はどの程度を見込んでおられるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 電波の、こういった形で、新しい、漏えいするということの実態調査については、今、速やかにこれから実施をしてまいりたいというふうに考えてございまして、夏までにきちんとした規模を算出していこうというふうに考えてございます。
 平成三十年度、三十一年度の二カ年にわたってこの支援を実施する予定でございますけれども、それにつきましては、現在、調査のために必要な経費として十二億円ほど予算を積んでございますが、それと同程度の規模になるのではないかというふうに見込んでございます。
 これは、今後さらに、実態調査も踏まえて、全国的な調査も踏まえて精査をしてまいりたいと思っております。


田村(貴)委員 対策の事業は打ち出したんだけれども、その予算規模についてはまだわからないということであります。
 そもそもなぜ左旋円偏波で実用放送が開始されるのかという、そもそもの疑問があります。これにかわる方法はないのでしょうか。先ほども議論がありましたけれども、わざわざ二・五ギガヘルツに落としていく、そこでは、WiFiと干渉して無線LANの端末ではフリーズが起こったり、あるいはテレビそのものが見られなくなってしまうという問題がある。なぜ、そもそも左旋回で電波を送ることになるんでしょうか。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合というところにおきまして、4K、8Kの衛星放送を実用化する際の伝送路のあり方につきまして、関係者とよく議論をさせていただきました。
 この中で、いわゆるBSあるいは百十度CS、この全ての帯域は、右旋の帯域はもう全て埋まっておりまして、これ以上周波数的に割り当てる余裕がないという状況でございましたものですから、4K、8Kの実用放送をスタートするに当たっては、同じ帯域なんですけれども、回転方向が反対側の、右旋に加えまして左旋と言われる円偏波を使うことによって、いわば同じ帯域でダブルの放送をすることができるというやり方を使うことによって、左旋による実用放送を可能にしていきたいというふうに考えたところでございます。
 なお、中間周波数の御指摘につきましても、回答してよろしければ回答させていただきたいと思うんですが、これは、国がというよりも、電波産業会という、民間規格が定められておりまして、低い周波数から順番に埋めていくという作業をしていただいております。右旋の電波につきましては、一から二ギガヘルツという一番低い中間周波数をお使いになられて、左旋につきましては、そのすぐ上の二ギガヘルツから三ギガヘルツというものを使用してございます。
 先生のおっしゃるように、混信を全く与えるおそれのない、誰も使っていないようなもっと高い中間周波数を使えばいいじゃないかという御議論はもちろんあろうかと思うんですけれども、そうしますと、機器がそもそもないということもございますので、一から機器を開発すると製造コストがやはり高くなってくるという問題、あるいは、宅内配線の伝送距離が、周波数が高くなればなるほど距離が短くなってまいりますので、そうすると、非常に技術的な制約があって実用化するのが難しくなるという問題があるというふうに考えてございます。


田村(貴)委員 なかなか難しい問題だなというふうに思います。
 NHKにもお越しいただいております。
 NHKは、来年十二月、8Kで左旋円偏波の放送事業を開始すると伺っております。NHKとして、こうした電波干渉の問題等々についてどう考えておられるのか、対策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。


森永参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、アンテナで受信した信号が屋内の受信設備から外部に漏えいすると、同じ周波数で提供される電気通信サービス等に影響を与える可能性があることはNHKとしても認識しているところでございます。
 受信環境整備のために、適切な受信機器の導入や工事に国が支援を行うことは、4K、8K衛星放送の普及に大変重要だというふうに考えております。
 NHKとしては、国などと連携し、適切な受信環境が整備されるよう、技術指導など関係業界への働きかけを行ってまいりたいというふうに考えております。


田村(貴)委員 お話をまとめますと、どの程度の電波障害が起こるのかということについてもなかなかわからない、それから、対策補助制度を設けるとしているんだけれども、具体的な方策が決まっているわけでもない、それを幾らかけるかも未知数である、しかし、来年十二月からはもう実用衛星放送が開始されるということです。
 何か順序が逆立ちしているような気がしてならないんですけれども、局長、いかがですか。


南政府参考人 お答え申し上げます。
 4K、8Kの実用衛星放送、やはり東京オリンピック・パラリンピックが開かれます二〇二〇年というものを大変意識して、それよりも前に、その時点で本格的に普及させるために前倒しをして実用放送も実施することとしたものでございまして、今後、4K、8Kに対するニーズもさらに顕在化してくるというふうに私ども期待をしているところでございます。
したがいまして、4K、8K実用衛星放送が二〇二〇年の時点で本格的に普及をするということを可能にするために、前倒しで衛星放送の受信設備からの電波漏えい対策というものについてもしっかり取り組む必要があるというふうに考えてございまして、平成二十九年度から、漏えいの実態調査あるいは技術基準策定のための調査、あるいは受信環境整備のための周知啓発というものには速やかに取り組む予定に考えてございまして、改めて、平成三十年度から、受信設備の改修支援についても、財政当局とよく相談をした上でスタートさせてまいりたいというふうに考えてございます。
 いずれにしても、実際に視聴されようとする方、要するに右左旋専用のアンテナに取りかえる方は早ければもう来年中にも出てまいりますので、適切な機器の使用や適切な施工を呼びかけながら、万全の対策を早目早目に打っていく必要があるというふうに考えてございます。


田村(貴)委員 高市大臣にお伺いします。
 こういう電波障害が起こり得る可能性がある、そして電波干渉が起こる可能性がある。その手だてがあって、対策があって、国民合意があって初めて実用放送ではないかなと私は思うわけなんです。
 二〇一八年の実用放送、今、局長は、東京オリンピック・パラリンピックがあるから前倒しと言われたんですけれども、これは、前倒しは前倒しなんですけれども、少々前のめりしているのではないかなと思いますけれども、いかがですか。


高市国務大臣 今、衛星放送をごらんの御家庭でも、先ほど来答弁させていただいたとおり、CATVを御利用のところは心配がないわけでございます。
 しかしながら、今後、視聴を希望される方がまず販売店において左旋対応アンテナを購入される際に、まずは適切な機器を使っていただくように視聴者への周知、広報というのは徹底してまいりますし、また、アンテナの設置や交換にあわせて施工業者が受信設備のふぐあいを確認するということによって、漏えい対策についても万全を期するということは重要だと考えております。
 先ほど来御説明申し上げましたが、平成三十年の実用放送開始に先立って、平成二十九年度からは総額十二億円の予算措置を行い、平成三十年度からは電波利用料の使途を追加した漏えい対策を行って、万全の準備を整えてまいりたいと考えております。
 周知、広報は特に重要でございますので、しっかり行ってまいります。


田村(貴)委員 周知も行うというところまでお答えいただきましたけれども、やはり実用放送はもう来年始まると決まっているわけですね。
 その対策については、きょう審議しましたけれども、よくわからない、見えてこない、具体的でない。これは実用放送が始まってトラブルが起こってしまってからでは遅いと思うわけですよ。だって、WiFiというのはもうほとんど国民はいろいろなところで利用していますよね。こうした問題が生じることがわかっていて、その対策が不透明な中で実用放送が開始されるというのは、やはり国民の納得するところではないかなというふうに思うわけであります。
 そこで、この対策を万全なものとすること、それから、せんだっての質問の中では、4K、8K、テレビは売っています、4Kテレビは売っていますけれども、これがチューナーがないと見られない、必要な機器が要るという話もして、それも周知徹底するというふうに言われました。
 私は、NHKが、やはり放送の中で、こうした問題がありますよ、こうした対策が必要ですよと放送することが一つの周知徹底になるのではないかなと思いますけれども、NHK、その辺はいかがでしょうか。


森永参考人 お答え申し上げます。
 確かに、左旋を受信するための方法や電波干渉の対策方法などの周知、広報というのは大変大事だというふうに思っております。国及び我々放送事業者、受信機器メーカー等の関係団体が一体となって取り組みを進めていくものというふうに考えております。
 NHKとしても、4K、8K衛星放送の普及に向けて役割を果たしてまいりたいと思います。


田村(貴)委員 4K、8K放送の開始に当たっては、あくまでも国民合意を経てやっていくことを望みまして、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。