○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
森林経営管理法案につきまして、再度質問をします。
五月九日の本委員会、私の質問に対して、齋藤大臣は次のような答弁がありました。我が国の森林の適切な管理を図るためには、現に経営管理が不十分な森林について経営管理の集積、集約化を図ることが課題、そのように述べられました。今まで行われていた参議院の本会議質問においても、同じ答弁が何度もあったというふうに思います。
そこでお伺いしたいんですけれども、現に経営管理が不十分な森林というのはどれぐらいの規模にあるのでしょうか。
○沖政府参考人 お答えいたします。
民有林のうち私有人工林約六百七十万ヘクタールについて、その約三分の一の約二百二十万ヘクタールは既に適切に経営管理がなされておりまして、残りの約三分の二の約四百五十万ヘクタールが経営管理が不十分な状態になっているものと考えております。
○田村(貴)委員 資料をお配りしております。この資料は、林野庁が訂正をして、提出し直した資料です。新たに挿入された解説図であります。
この解説図の左側の破線の中の大きな白い部分、これが今長官がお答えになった、現に経営管理が不十分な森林と言ったところであります。その下が集積、集約化された二百二十万ヘクタールなんですけれども、それでは、この二百二十万ヘクタールの集積、集約化されたというのは、どういう基準に基づいてこういう形になっているんでしょうか。
○沖政府参考人 お答えいたします。
既に集積、集約化された私有人工林といたしました約二百二十万ヘクタールは、既に森林経営計画が策定されていると推定される森林の面積に加えまして、水源林造成事業の契約面積の合計としておるところでございます。
○田村(貴)委員 そうすると、森林経営計画にある二百二十万ヘクタール以外は、森林経営計画外にあるわけです。その森林経営計画の定めがない森林というのは、経営管理が不十分というふうになるわけなんですよね、こういう図表を出されますと。これは完全にこういうふうに仕切ってしまっているわけなんですよ。
この解説図では、経営管理が不十分な森林とされた四百五十万ヘクタール、三分の二の森林の行き着く先は、これは矢印を描いていますよね、矢印の先はどうなっているか。公的管理下に置かれる、ないしは、新たに経営管理を担ってもらう必要があるというふうに書いています。この二つのうちどちらかなんですよ。その新たに経営管理を担ってもらうというのは、この法案にある素材生産者等の林業経営者になるということなんですよ。
ここの白い破線の中の、長官が経営管理が不十分とされた、いわゆる森林経営計画の策定がないところの森林、これはいっぱいありますよ。きれいに管理されて、手入れの行き届いた山はたくさんありますよ。これを十把一からげにして、経営管理が不十分と言い切っていいんですかね。長官、いかがですか。
○沖政府参考人 お答えいたします。
今、田村委員がおっしゃられました点線で囲ったところ、ここは、林業用に供する、将来的に使っていくというところを想定しているわけでございますけれども、この経営計画、その下のまず二百二十万ヘクタールについて述べますと、経営計画は、森林所有者等が一体的なまとまりを持った森林をみずから経営する場合に、市町村森林整備計画に即しまして、森林経営に関する長期的な方針や、森林の主伐、造林、間伐等に関する五カ年の計画を策定しまして、市町村等の認定を受けることができるものでございます。
経営計画策定者が計画を遵守することで適切かつ持続的な森林経営を推進する制度でございますので、経営計画が策定されている森林、これが、森林計画制度により裏打ちされた、確実に集積、集約化された森林でございまして、上の白地のところでございますけれども、ここについては、そういう意味におきましては、森林経営計画が策定されていない森林ということになりまして、市町村長の認定が行われていない、適切かつ持続的な森林経営が行われていることが担保がされていない森林というふうに考えております。
○田村(貴)委員 いろいろおっしゃいますけれども、この図はこの図だけなんですよ。二百二十万ヘクタール以外の四百五十万ヘクタールが、一番最初に長官が言われたように、経営管理が不十分と十把一からげにされているわけですよ。その行き着く先というのは、経営管理権が離されるわけなんですよ。こういう図をつくったらいかぬです、やはり。またわけのわからないものが出てきた。
資料の二枚目、お配りしています。管理がされていないと言われる範疇に入る森林であります。高知県佐川町の森林、二十ヘクタールで、森林経営計画の対象外であります。管理をしている坂本昭彦さんにお話を聞いてまいりました。政府の言うように集積、集約化されるならば、高性能林業機械を入れなければいけない。償却や維持にもお金がかかることになり、そのため、大量伐採をしなければいけない。高知県は台風も上陸し、とり過ぎれば風で倒れ、豪雨で崩れる。ちょうどいいあんばいで切るのが大事で、とり過ぎればリスクが増すと。まさにそのとおりだというふうに思います。
こうしたやり方で、森を、森林を維持管理しているところは、日本全国にたくさんあります。こうしたところは全て経営管理を担ってもらわなければいけないということなんでしょうか。
○沖政府参考人 お答えいたします。
本法案におきましては、森林所有者による経営管理が適切に行われていない可能性があり、経営管理権を市町村に集積することが必要かつ適当である森林について、市町村が森林所有者に対し、森林の経営管理の意向に関する調査を行うこととしてございます。
この意向調査によりまして、森林所有者の経営管理の意向を把握して、森林所有者みずからが、又は委託によりましてですけれども、経営管理を行う意向がある場合は、森林は引き続き森林所有者にお任せし、また、森林所有者が経営管理する意向のない森林について、これにつきましては、市町村が経営管理権を取得できるものとしているところでございます。
○田村(貴)委員 今の長官のお話だったら、この図は完全にうそになっちゃうんですよ。だって、その森林所有者ですよ、この高知県の佐川町の方がですよ、いや、私たちはこれまでも自分で管理しています、森を育てていきますと言うんだけれども、この図でいうと白い部分に属されて、行く先は公的管理か、新たに経営管理を担ってもらうところに行くじゃないですか。だから、この図はおかしいと言っているんですよ。これはどうするんですか。
きょうは時間が限られているので、齋藤大臣、この答弁をずっとされてきたと思うんですけれども、今お話を聞いていただいた中で、こういう、機械的そして決めつけ、恣意的な図を出されると、これは、全国の森林管理者、所有者の方はどう思われるでしょうかね。私は、大変誤解を与えてしまうし、御立腹されてしまうのではないかと思うんです。
新たにつけ加えられたこの解説では、大変問題であります。これは削除した方がいいと思いますけれども、大臣、お話を聞いておられて、いかがでしょうか。
○沖政府参考人 お答えいたします。
今委員御指摘の図でございますが、まず、二百二十万ヘクタールの、森林経営計画が策定されている分については、森林行政の確実性を期するという意味では、森林経営計画制度に裏打ちされた、まさに確実に集積されたもの、残りの四百五十が市町村長による担保がされていないということでございまして、そうした意味におきましては、確実性を持ってこうした印、二百二十万の、下、残りということを掲げさせていただいてございます。
また、御指摘のように、地域によりましては、自伐林家の方で、今、佐川町のこうした例もございます。こうした例につきましては、今回、四百五十万ヘクタールというふうに言っておりますけれども、林業用としては二百四十万ヘクタールになるんですけれども、我々の方の森林・山村多面的機能発揮対策交付金といったような事業も使っていただいておりまして、全国で見て、こういうところはやはり千、二千ヘクタールぐらい確かあるということはあると思います。
○田村(貴)委員 いや、だから、そういうふうにいろいろいろいろ言われるんだったら、そういうことを資料に載せるべきなんですよ。こういう、機械的に、恣意的に一括して書くとわからなくなってしまうんですよ。間違いになっちゃうんですよ。これはやはり削除すべきであります。
この新たに経営管理を担ってもらう必要がある、その担い手というのはどういったところなのか。
二月六日に林野庁が都道府県に発した、育成を図る林業経営体の選定で選定される林業経営体は、法案の新たな森林管理システムにおける意欲と能力のある林業経営者となっていくんでしょうか。二月六日の発した通知というのは、この法案にある意欲と能力のある林業経営者を指しているのでしょうか。お答えください。
○沖政府参考人 お答えいたします。
本年二月六日付で都道府県等に発出いたしました長官通知「林業経営体の育成について」及び経営課長通知の「育成を図る林業経営体の選定について」でございますけれども、林業経営の集積、集約化の受皿の確保が重要であるとの認識に基づきまして、意欲と能力のある林業経営体へと育成を図る林業経営体の考え方を示したものでございます。
本通知は、地方自治体に対する技術的助言という位置づけで発出したものでございますが、本法案が成立した場合は、本法に基づきまして経営管理実施権の設定を受け得る民間事業者に係るものとして改めて発出することを検討しているところでございます。
なお、本通知では、素材生産の生産量又は生産性のどちらかについて、五年後おおむね二割以上又は三年後におおむね一割以上、現状から増加させる目標を有していることという規模拡大の考え方を示してございますが、現在の規模そのものの大小を問うていないところでございます。
○田村(貴)委員 もう、林野庁の方から選定してくれと言われて、都道府県の側では選定されているんですよ。
例えば宮崎県。ホームページで、その選定された業者名、全部出ています。林野庁長官の長官通知に基づいて選定したので公表しますと。公表されたこの林業経営者、見て驚きましたよ。二十五業者いるんですけれども、何と、私がこの間この委員会で取り上げてきた盗伐問題、盗伐をしている業者まで入っておるんですよ。盗伐の現場を所有者が現認し、警察に通報し、警察が来て現認している、そういう事例をやっている盗伐業者までが意欲と能力のある林業経営体とみなされているわけなんですよ。結果、こういうところに結びつけたいがためにむちゃなことをやっているわけなんですよね。大問題だと思いますよ。
森林所有者、林業関係者の意向を十分に聞き入れず、恣意的な数字をつくりました。意欲がないと決めつけられた。そして、多くの所有者が今度は能力がないと決められて、山の手入れを十分にして頑張っている方々も経営管理が不十分だとまた決めつけられてしまった。この図表はそれを物語っているわけなんです。そして、経営管理権を移されようとしているわけです。しかも、その移され先には、移譲先には盗伐業者まで入っている。
森林経営管理法というのは問題だらけじゃないですか。大臣、いかがですか。私、新たに出されたんだから、ちゃんと見ましたよ。見たら、これはやはりおかしい、この資料は。この資料の撤回とやはり審議のやり直し、求めたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○伊東委員長 齋藤農水大臣、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁ください。
○齋藤国務大臣 資料につきましては長官から説明をさせていただいたとおりでありますし、法案の扱いについては、私の方からのコメントは控えたいと思っております。
○田村(貴)委員 また質疑をします。
きょうは終わります。